4月9日(金)の午前9時10分から11時まで,JRSのシンポジウム2「遠隔診断の現状と将来展望」が行われた。司会は,宮坂和男氏(メディカルイメージラボ)と藤井正彦氏(神戸大学)。
近年,読影を行う放射線科医不足を補う手段として遠隔画像診断が利用されるようになり,大学病院の外部法人や個人営業,大小さまざまな会社組織まで,ビジネスとして展開するケースも大幅に増えている。
冒頭,宮坂氏から,遠隔画像診断を利用する施設は約2000,サービスを提供する会社は約50という矢野経済研究所のデータが紹介され,まさに現在は発展期にあたるという。その一方,読影の質の担保や体制の整備,セキュリティなど安全面の担保,人材の確保,安定した経営の継続など,課題が指摘されていることも事実だ。
本シンポジウムはまさに,現状の遠隔画像診断の課題を学会としてのルールづくり,システム面,地域医療ネットワーク構築などの切り口で取り上げ,さまざまな立場の演者からそれぞれの見解が発表された。
JRC2010開催を前に,「CT診断を格安で中国に下請け」という見出しの新聞記事が報道され,4月6日の読売新聞夕刊には一面トップで掲載されて注目を集めた。大阪府の画像診断サービス会社が,2008年から中国人医師による画像診断サービスを国内の1/4くらいの格安料金で行っていることが問題視されている内容。日本医学放射線学会や日本放射線専門医会・医会などは,画像診断は医療行為であり,日本の医師免許を持たない者が行うことは法律に反するなどの見解,ガイドラインを2009年に策定した。本シンポジウムではこのガイドラインを中心に,遠隔画像診断の考え方やルール,セキュリティなどについての議論が交わされた。
まず最初に,江原 茂氏(岩手医科大学)が遠隔画像診断ガイドラインについて,上記の見解を述べ,専門医としての業務と日本の医師免許のない意見提供とは明らかに異なると強調。ガイドラインには強制力はないが,共通認識のもとに最低限のルールとなると述べた。今後も実態を見ながら,継続的に議論を進める必要があるとした。 |