VARIAN RT REPORT

2024年3月号

人にやさしいがん医療を 放射線治療を中心に No.20

頭頸部領域におけるART研究会(製品評価編)

「頭頸部領域におけるART研究会」では,放射線治療のエキスパートの先生方が集結し,頭頸部領域におけるETHOS TherapyおよびHyperSightを用いた適応放射線治療(adaptive radiotherapy:ART)に関して,検討および討論がなされた。今回は同研究会にて,頭頸部癌に対するARTの有用性の検討およびETHOS Therapyの製品評価を行った2名の先生の演題を報告する。
開催日:2023年9月23日 座長:松尾 幸憲 (近畿大学医学部  放射線腫瘍学部門)

頭頸部癌に対する適応放射線治療 〜潜在的ベネフィットの探索〜
茂木  厚 (国立がん研究センター東病院放射線治療科)

腫瘍の縮小・増大が生じた場合,ARTにより正常臓器線量の低減が可能

茂木  厚 (国立がん研究センター東病院放射線治療科)

この度,当院では,腫瘍が縮小・増大した頭頸部癌症例を対象にARTの潜在的有用性を検討した。検討した全例に対し,EclipseおよびVelocityを用いてARTを行った。
まず,中咽頭癌(T1N3b)で85mmのリンパ節転移を有し,治療計画時と比較して治療開始時にリンパ節の腫瘍増大と,治療経過中の急速な腫瘍縮小を認めた症例を検討した。リンパ節の腫瘍が増大した治療開始直後の線量分布は,ビームオーバーライドの場合では,咽頭の線量が79.3Gyと高くなったが,ARTでは76.4Gyに低下した。つまり,ARTによってリプランすることで,喉頭浮腫のリスクを軽減することができた。腫瘍が縮小した治療経過中の25フラクション目においては,ビームオーバーライドでは,喉頭頸部および口腔に高線量領域が広く出現したが,ARTによって最適化すると,より均一な線量分布が作成され,線量を下げることができた。25フラクション目のDVHパラメータをビームオーバーライドとARTの場合で比較すると,ARTの方で喉頭や両側耳下腺の線量を低下させることができていた。
2例目は,中咽頭癌(T3N0,p16陽性)で,口蓋室に外方性発育を示す右扁桃腫瘤を有し,この腫瘤は治療経過中に急速に縮小した症例である。腫瘤が縮小途中の15フラクション目の線量分布では,ARTによって最適化すると,対側扁桃や舌根の線量を低下させることができた。そして腫瘤が縮小し,内側に窪みが生じてきた29フラクション目では,ビームオーバーライドの線量分布では,そこに腫瘤があるものと認識されるため,対側扁桃や舌根にも広く線量がかかるが,ARTで最適化をすることで線量を下げることができた(図1)。このような外方性発育した腫瘤の縮小の症例などにおいて,ARTは効果を発揮するものと考える。また,舌根平均線量はビームオーバーライドでは60.7Gy,一方ARTでは41.3Gyまで下げることができた。軟口蓋平均線量は,それぞれ60Gy,56Gyと4Gy低減し,対側扁桃粘膜もリスク臓器(OAR)として制約を設定したことで,約15Gy低減することができた。DVHパラメータは,対側扁桃,舌根,軟口蓋全体をOARとして設定したところ,最大線量および平均線量を下げることができた。
頭頸部領域においては,業務負担のバランスを考慮し,ARTの適用は週単位の間隔で十分ではないかと考える。今後,ETHOS Therapyの利用が進み,データが蓄積されることで,効率的な運用ができるようになることが期待される。

図1 腫瘤縮小を生じた中咽頭癌:ビームオーバーライドによる線量分布と適応放射線治療による線量分布の比較

図1 腫瘤縮小を生じた中咽頭癌:ビームオーバーライドによる線量分布と適応放射線治療による線量分布の比較

 

近畿大学におけるETHOS Therapyの製品評価
植原 拓也 (大和高田市立病院放射線治療科)

ETHOS TherapyによるARTはPTV coverageを維持し,OAR線量低減を実現

植原 拓也 (大和高田市立病院放射線治療科)

今回,ETHOS TherapyのEmulatorを用いてETHOS Therapyの製品評価を行った。対象は,シスプラチン併用の化学放射線療法を施行した症例10例(上咽頭癌4例,中咽頭癌3例,下咽頭癌3例)で,全例に対しHalcyonでtwo-step法のIMRTにて治療を行い,位置照合には逐次近似法による画像再構成を行ったCBCTを用いた。全頸部照射で初回治療計画では46~50Gy,boost planはhigh risk CTVの病変部に対して70Gyまで続けた。各症例において合計7回分のCBCTに対するadapted planとscheduled planのDVHを評価した。CBCTに対するadaptationは週1回を想定した。ETHOS Therapy上で作成するreference planは全てtwo-step法でのinitial planと同様の照射範囲で,12門の固定多門IMRTで作成した。PTVに対してはD95%=98%の dose normalizationを行った。DVH評価を行うstructureは,PTV{D98%・D95%・D50%・D2%},脳幹{Dmax},脊髄{Dmax・D1cc},両側・対側耳下腺{Dmedian・Dmean}を検討した。最適化の目標値はJCOG1015を参照し,reference planを作成した。
ターゲットのplanの結果は,scheduled planよりadapted planの方がD98%を維持し,D2%が低減できていた。その理由は,PTV coverageのpriorityをしっかり高めたこと,特にD95%に関してはdose normalizationを適切に行うことができていたためと考えられる。
OARに関しては,耳下腺におけるadapted planとscheduled planで大きな差は認められなかったが,治療の後半時期では,adapted planの方でDmeanが低減できていた。脳幹においては,全時期を通してDmaxに2つのプランで差がなかったが,脊髄の線量は全時期を通してadapted planの方で低減できていた。また脊髄においては,scheduled planでは徐々に線量が上昇する傾向があったが,adapted planでは変化はなかった。
今回,adapted planでは,全症例の全てのstructureにおいて線量制約を達成することができた。しかし,scheduled planで治療の後半時期において脊髄の線量がacceptable criteriaを逸脱してしまった症例があった。その1例(中咽頭癌,cT1N1M0)の線量分布を見てみると,scheduled planで脊髄の線量が上昇し続けた理由として,右頸部リンパ節転移が2~6週目にかけて縮小していたことと,4,6週目には痩せの影響が考えられた(図2)。Adapted planでは,その都度最適化を行うことによってこのような影響を回避できていると考えられる。
ETHOS Therapyのadapted planは,PTV coverageを維持しながら,OARの線量低減を実現した。本研究では咽頭癌の全頸部照射において,治療の初期からどの時期においてもETHOS TherapyによるARTの有用性が示された。

図2 治療期間中に腫瘍縮小および痩せを認めた症例の脊髄線量と線量分布

図2 治療期間中に腫瘍縮小および痩せを認めた症例の脊髄線量と線量分布

 

●参考文献
1)Uehara, T., Nishimura, Y., Ishikawa, K., et al. : Cone-beam computed tomography-guided online adaptive radiotherapy for pharyngeal cancer with whole neck irradiation : Dose-volume histogram analysis between adapted and scheduled plans. J. Radiat. Res., doi: 10.1093/jrr/rrad103, 2024(Epub ahead of print).

ETHOS 適応放射線治療オンラインプランニングシステム:医療機器承認番号 30300BZX00075000
ETHOS 適応放射線治療マネージメントシステム:医療機器承認番号 30300BZX00076000
Halcyon 医療用リニアック:医療機器承認番号 22900BZX00367000
放射線治療計画用ソフトウェア Eclipse:医療機器承認番号 22900BZX00265000
放射線治療計画支援用ソフトウェア Velocity:医療機器承認番号 22900BZX00273000

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