VARIAN REPORT

2017年3月号

No.3 悪性リンパ腫:臨床編

がん研究会有明病院:悪性リンパ腫の放射線治療の現状

小口 正彦(がん研究会有明病院放射線治療部)

はじめに

悪性リンパ腫に対する放射線治療は,最近の放射線照射技術の進歩によって劇的に変貌しつつある。放射線治療は,悪性リンパ腫病巣の局所制御に最も有効な手段である。WHO分類や病態別に,放射線治療の果たす役割は異なるので,目的別の区分を表1に示す。

表1 放射線治療の果たす目的別役割

表1 放射線治療の果たす目的別役割

 

Involved site radiation therapy(ISRT)

薬物療法の進歩によって長期生存者が増加する一方で,広い範囲に放射線治療を受けた患者では,正常組織の遅発性放射線有害反応が問題となってきた。国際リンパ腫放射線腫瘍グループ (International Lymphoma Radiation Oncology Group:ILROG)は,専門家が最近の医学の進歩を検討して,ホジキンリンパ腫,節性非ホジキンリンパ腫,節外性非ホジキンリンパ腫,小児悪性リンパ腫,皮膚原発悪性リンパ腫に対する放射線治療のガイドラインを発表した1)〜6)
ガイドラインの要点は,放射線治療技術や画像診断技術の進歩によって,治療体積と照射線量を科学的かつ適切に小さくできることである。病巣を的確に診断することが重要であり,造影CTや,FDG-PET造影CT,MRIなどの画像診断の進歩の恩恵を受けている。新しい概念であるISRTは,International Commission on Radiation Units and Measurements pub. 83(ICRU Report 83)に基づく臨床標的体積(CTV)である。従来の骨構造を基準とした二次元治療計画による involved-field radiation therapy(IFRT)と比較すると,三次元CT治療計画によるISRTは,小さい範囲に設定可能である。さらに,強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)や画像誘導放射線治療(image guided radiation therapy:IGRT),呼吸管理照射(active breathing control:ABC),四次元CT治療計画(4-dimensional CT imaging)などを利用することにより,標的体積に十分な線量を照射して高い局所制御率を得つつ,周囲の正常組織の被ばく線量を低下させ,有意に有害反応発症頻度と程度を低減することが可能である。

Volumetric modulated arc therapy (VMAT:RapidArc)によるISRT

「RapidArc」は,バリアンメディカルシステムズ社の放射線治療装置と放射線治療計画システムを組み合わせて強度変調回転放射線治療(VMAT)を可能にするシステムである。当院でのRapid Arcを用いたISRTの経験は,胃悪性リンパ腫12例,節外性NK/T細胞リンパ腫鼻型8例,中咽頭悪性リンパ腫7例,頭頸部リンパ節悪性リンパ腫5例,眼窩悪性リンパ腫3例,十二指腸悪性リンパ腫2例,脳悪性リンパ腫再発1例の38例であった。RapidArcを用いたISRTの具体例を症例1〜3に示す。

●症例1:ワルダイエル輪原発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 stageⅡ
薬物療法R8CHOP3療法にてmetabolic CRとなり,地固め治療としてRapidArcを用いた30 Gy/15回のISRTを行った。急性毒性として,咽頭粘膜の発赤と軽微な嚥下時不快感,味覚低下,一時的な口渇を認めたのみであった。線量分布図を図1に示す。

図1 ‌症例1:ワルダイエル輪原発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 stageⅡに対するRapidArcを用いたISRTの例

図1 ‌症例1:ワルダイエル輪原発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 stageⅡに対するRapidArcを用いたISRTの例

 

●症例2:眼窩原発の辺縁帯B細胞性リンパ腫MALT型 stageⅠ
重度の緑内障を合併していたのでCTVをできるだけ小さくした。RapidArcを用いて24 Gy/12回のISRTを行った。急性毒性として,軽微な結膜発赤を認めたのみであった。経過観察期間中に,白内障や涙量の減少はない。完全寛解を2年間維持している。線量分布図を図2に示す。

図2 ‌症例2:眼窩原発の辺縁帯B細胞性リンパ腫MALT型 stageⅠに対するRapidArcを用いたISRTの例

図2 ‌症例2:眼窩原発の辺縁帯B細胞性リンパ腫MALT型 stageⅠに対するRapidArcを用いたISRTの例

 

●症例3:胃原発の辺縁帯B細胞性リンパ腫MALT型 stageⅠ
RapidArcを用いて30.6 Gy/17回のISRTを行った。呼吸移動対策として,バリアンメディカルシステムズ社の「リアルタイム ポジショニング マネジメント システム」でモニターしたcone beam CTによるIGRTを行った。急性毒性として,軽微な食欲不振を認めたのみであった。経過観察中の肝機能・腎機能は軽微な上昇にとどまった。完全寛解を2年間維持している。線量分布図を図3に示す。

図3 ‌症例3:胃原発の辺縁帯B細胞性リンパ腫MALT型 stageⅠに対するRapidArcを用いたISRTの例

図3 ‌症例3:胃原発の辺縁帯B細胞性リンパ腫MALT型 stageⅠに対するRapidArcを用いたISRTの例

 

まとめ

RapidArcを用いたISRTによって,治療効果を高く保って治療することが可能となった。これにより,悪性リンパ腫患者の放射線治療中のQOLは著明に改善した。長期経過観察によって,遅発性毒性が少ないことが証明されると期待されている。

●参考文献
1)Swerdlow, S.H., Campo, E., Pileri, S.A., et al.: The 2016 revision of the World Health Organization(WHO)classification of lymphoid neoplasms. Blood, 127・20, 2375〜2390, 2016.
2)Specht, L., Yahalom, J., Illidge, T., et al.: Modern radiotherapy for Hodgkin lymphomadfield and dose guidelines from the International Lymphoma Radiation Oncology Group(ILROG). Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 89・4, 854〜862, 2014.
3)Illidge, T., Specht, L., Yahalom, J., et al.: Modern radiation therapy for nodal non-Hodgkin lymphoma-target definition and dose guidelines from the International Lymphoma Radiation Oncology Group. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 89・1, 49〜58, 2014.
4)Yahalom, J., Illidge, T., Specht, L.: Modern radiation therapy for extranodal lymphomas ; Field and dose guidelines from the International Lymphoma Radiation Oncology Group. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 92・1, 11〜31, 2015.
5)Specht, L., Dabaja, B., Illidge, T., et al.: Modern radiation therapy for primary cutaneous lymphomas ; Field and dose guidelines from the International Lymphoma Radiation Oncology Group. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 92・1, 32〜39, 2015.
6)Hodgson, D.C., Dieckmann, K., Terezakis, S., et al.: Implementation of contemporary radiation therapy planning concepts for pediatric Hodgkin lymphoma ; Guidelines from the International Lymphoma Radiation Oncology Group. Pract. Radiat. Oncol., 5・2, 85〜92, 2015.

 

●そのほかのセミナーレポートはこちら(インナビ・アーカイブへ)

【関連コンテンツ】
TOP