VARIAN REPORT

2017年7月号

No.7 肝臓癌:臨床編

広島大学病院:肝臓癌に対する定位放射線治療の現状

木村 智樹1)/永田  靖1)/河原 大輔2)(1)広島大学病院放射線治療科 2)広島大学病院診療支援部放射線治療部門)

はじめに

肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)に対する体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy:SBRT)は,肺腫瘍ほど一般的ではないものの,その施行頻度は徐々に増加している。HCCにおけるSBRTの位置づけは,標準治療である肝切除,同じ局所治療であるラジオ波焼灼術の適応がない場合に施行され,肝動脈化学塞栓術(transaretrial chemoembolization:TACE)と併用することが多い。局所効果は良好で,3cm以下のサイズであれば3年局所制御割合は90%以上を見込める。
表1に主な治療成績を示す1)〜6)

表1 主な治療成績

表1 主な治療成績

 

肝臓癌に対するSBRTの実際─当院での方法

当院では,2013年9月の新外来棟オープンに伴って「TrueBeam」(バリアンメディカルシステムズ社製)を導入した。TrueBeamの最大のメリットは,Flattening Filter Free(FFF)を用いた照射時間の短縮であり,1回線量の大きいSBRTにおいてより顕著である。われわれの施設では,肺,肝腫瘍に対して「abches」(エイペックスメディカル社製)を用いた呼気呼吸停止下で,non-coplanar固定8門での三次元照射によるSBRTを行っている。この場合,FFFによる1門ごとの照射時間の減少により,呼気呼吸停止時間が大幅に短縮され,高齢者に対しても苦痛なく照射可能となった。さらに,われわれはTrueBeamの導入に前後して,SBRTの処方法を腫瘍中心に対して設定する方法(アイソセンタ処方)からplanning target volume(PTV)の95%に照射された線量で評価する方法(D95%処方)へ移行した。線量分割もアイソセンタ処方48Gy/4回から,PTV平均線量がほぼ等価となるD95%処方(80%isodose)40Gy/4回に変更した。
図1に,両処方法による線量分布の相違を示した。同じ処方線量の場合,D95%処方ではアイソセンタ処方より実質的に線量増加となり,総monitor unit(MU)値が増加することから,FFFによる高線量率照射はこの面においても照射時間短縮に有用である。

図1 処方法による線量分布の相違

図1 処方法による線量分布の相違
SBRT 40Gy/4回,PTVに対するD95%処方(80% isodose:a)とアイソセンタ処方(b)の線量分布。D95%処方では,PTV(青)の辺縁に処方線量である40Gyライン(80% isodoseライン:オレンジ)がほぼ一致し,低線量域(15Gyライン:赤)はアイソセンタ処方の分布より範囲が狭くなっている。

 

症例1:治療効果判定に注意を要した症例

SBRT後の治療効果判定は,通常modified RECIST7)に準じてダイナミックCT/MRIでの動脈相早期濃染の有無により判定するが,われわれのSBRTを施行した67病変の検討では,19病変(28.4%)でSBRT後3か月以上にわたり持続した早期濃染を認めた8)。このため,治療後早期(特に3か月以内)での効果判定は早計で,6か月程度での効果判定が適切と思われる(図2)。

図2 SBRT後に早期濃染が遷延した一例

図2 SBRT後に早期濃染が遷延した一例
SBRT 48Gy/4回(アイソセンタ処方)を施行。治療前に肝S5に10mm大の早期濃染を認める(a)。SBRT後2か月目では早期濃染がさらに拡大し(b),6か月でも明瞭な早期濃染を認める(c)。SBRT後11か月で早期濃染はほぼ消失した(d)。

 

症例2:胃近傍の症例

HCCに対するSBRTにおける適応規準の一つに,原発巣が消化管近傍でないことが挙げられる。肝硬変を有する症例では消化管潰瘍が通常よりも生じやすく,SBRT後に難治性消化管潰瘍や穿孔などの重篤な有害事象を生じやすい。このような場合は,volumetric modulated arc therapy(VMAT)を用いて,消化管への線量低減を図ることが可能である(図3)。

図3 VMATにて胃の線量低減を図った一例の線量分布

図3 VMATにて胃の線量低減を図った一例の線量分布
PTV(青)に対してSBRT40Gy/4回(D95%処方,80%isodose)を行い,腫瘍(赤)が近接する胃前庭部への線量低減のため,VMATを用いて同部への線量を低減した()。
PAGE\*MERGEFORMAT3はアイソセンタ処方の分布より範囲が狭くなっている。

 

今後の展望と課題

HCCに対するSBRTは有望な治療モダリティの一つとなりつつあるが,前向き試験が少なく,長期予後が不明であるなど,エビデンスの創出が急務である。現在,本邦では,5cm以内の初発単発症例に対し,40Gy/5回(D95%処方,70%isodose)を照射する多施設共同試験(STRSPH study)が進行中である。再発症例も含めた新たな臨床試験も待たれる。また,日常臨床においては,現在の三次元照射からVMATへの移行による総治療時間の短縮が期待される。

●参考文献
1)Andolino, D.L., et al. : Stereotactic body radiotherapy for primary hepatocellular carcinoma. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 81, e447〜e453, 2011.
2)Kang, J.K., et al. : Stereotactic body radiation therapy for inoperable hepatocellular carcinoma as a local salvage treatment after incomplete transarterial chemoembolization. Cancer, 118, 5424〜5431, 2012.
3)Bujold, A., et al. : Sequential phase I and II trials of stereotactic body radiotherapy for locally advanced hepatocellular carcinoma. J. Clin. Oncol., 31, 1631〜1639, 2013.
4)Sanuki, N., et al. : Stereotactic ablative body radiotherapy for small hepatocellular carcinoma ; A retrospective outcome analysis in 185 Patients. Acta. Oncologica., 58, 399〜404, 2014.
5)Kimura, T., et al. : Stereotactic body radiotherapy for patients with small hepatocellular carcinoma ineligible for resection or ablation therapies. Hepatol. Res., 45, 378〜386, 2015.
6)Takeda, A., et al. : Phase 2 study of stereotactic body radiotherapy and optional transarterial chemoembolization for solitary hepatocellular carcinoma not amenable to resection and radiofrequency ablation. Cancer, 122, 2041〜2049, 2016.
7)Lencioni, R., Llovet, J.M. : Modified RECIST(mRECIST)assessment for hepatocellular carcinoma. Semin. Liver Dis., 30, 52〜60, 2010.
8)Kimura, T., et al. : Dynamic computed tomography appearance of tumor response after stereotactic body radiation therapy for hepatocellular carcinoma ; How should we evaluate treatment effects? Hepatol. Res., 43, 717〜727, 2013.

 

●そのほかのセミナーレポートはこちら(インナビ・アーカイブへ)

【関連コンテンツ】
TOP