VARIAN REPORT

2018年4月号

技術解説:ナレッジベース治療計画ソフトウエア“RapidPlan”

技術解説:放射線治療計画装置におけるナレッジベースの取り組み

原  毅弘(株式会社バリアンメディカルシステムズマーケティング部)

放射線治療計画の現状

放射線治療計画装置は,幅広い治療技法や治療装置に対応可能な汎用的なものと,intensity modulated radiation therapy(IMRT)/volumetric modulated arc therapy(VMAT)やstereotactic body radiation therapy(SBRT)/ stereotactic radiosurgery(SRS)などの特定の治療計画に特化した専用的なものが市場に提供されている。
治療計画の一連のワークフローにかかわる職種は,医師や診療放射線技師,医学物理士など幅広く,放射線治療計画装置はそのすべての使用者にとって扱いやすいよう設計されている。また,欧米などでは職種ごとに治療計画のタスクが細分化されていることもあり,放射線治療計画装置の機能やアプリケーションもそれに対応している。例えば,放射線治療計画装置に登録したビームデータの確認は医学物理士のみが実施できるというように,職種ごとに制限設定が可能となっている。
日本では,治療計画プロセスにかかわる職種は施設によって異なる場合が多く,さらに,放射線治療計画装置の複雑化が進んでいるため,使用者はその特性を十分理解した上で使用する必要がある。登録されているビームデータが線量計算でどのように使用されるのか,IMRT optimizationの仕組みなど,コンピュータ化しているからこそ,基本的なデータや仕組みについて十分な知識を有しておく必要がある。また,放射線治療計画装置の特性を正しく理解し適切に使用するために,多くの経験が必要になるとされる。
放射線治療計画装置の使用経験は,治療計画立案の結果に影響を及ぼす可能性があるという報告もある。Batumalaiら1)の報告では,IMRT治療計画立案の比較検証において,IMRT治療計画経験が豊富な立案者が最も優れた計画を作成したとしている。どの立案者の計画も臨床的に許容範囲にあるが,熟練者の方がより短時間で精度の高い計画を立案したとある。このように,立案者によって発生する可能性のある治療計画のばらつきをいかに抑え,効率的に立案するかがIMRT/VMAT治療計画における一つの課題と考えられる。それらの解決をサポートするべく開発されたのが,当社が2013年にリリースした放射線治療計画装置「Eclipse」に搭載可能なナレッジベース治療計画ソフトウエア“RapidPlan”である。

ナレッジベースプランニングの考え方

IMRT治療計画立案におけるナレッジベースを活用した例を挙げてみると,overlap volume histogram(OVH)を用いてデータベースから過去の治療計画の最も類似した患者ケースを抽出し,最適と考えられるdoes volume histogram(DVH)を臨床ゴールとしてoptimizationに適用する手法をWuら2)が報告している。ランダムに選択した15人の頭頸部がん患者のIMRTにおいて,マニュアルで作成した臨床計画と比較したところ,ナレッジベースを活用したすべての治療計画が臨床計画とほぼ同等でありながら,少ないoptimizationプロセスで解を得ることができたとしている。これによりIMRT治療計画のトライアンドエラー時間の大幅な短縮に成功している。Mooreら3)は,planning target volume(PTV)とリスク臓器のオーバーラップ体積と,リスク臓器の平均線量の関係に着目し,オーバーラップ体積から平均線量を予測する手法を検討した。optimization開始前に目標である予測線量を事前に把握しておくことで,リスク臓器への線量のばらつきと平均線量の低減に成功している。このような流れの中,Yuanら4)が発表したターゲットとリスク臓器の解析手法を基にRapidPlanが開発された(図1)。

図1 RapidPlan標準画面

図1 RapidPlan標準画面

 

RapidPlan

1.RapidPlanの特徴
RapidPlanは,IMRT,VMAT,陽子線治療の治療計画に特化し,データベースに保存された過去の治療計画データを解析して患者ごとにDVHを予測,その予測に基づいてoptimization条件を定義する機能を有している。過去のデータに基づいた治療計画を立案することで,治療計画のばらつきを低減し治療計画の一貫性を担保すると同時に,各患者に適応した治療計画を提供するためのサポートを行う。RapidPlanは,大きく2つのコンポーネント“Model Configuration”“DVH Estimation”から構成されている。

2.Model Configuration
Model Configurationでは,まず,あらかじめモデルに登録した治療計画の解析を実施する。各リスク臓器を照射野とターゲットの幾何学情報により分割し,分割された領域に対してそれぞれ解析を行う。特に,線量への影響が大きい照射野内領域に関しては,線源から任意のボクセルまでの距離を線量指標として表現し,geometry-based expected dose(GED)を求める。GEDは,距離のみならず,simultaneous integrated boost(SIB)に代表される複数ターゲットへの異なる線量指定や,ターゲットサイズ・位置も考慮されているため,より高精度に線量域内の線量指標を求めることが可能である。これらの線量指標を積算し,GED histogram(GEDH)を求める。GEDHと実際のDVHの関係を把握することで,インプットされた患者情報からリスク臓器の予測線量をアウトプットすることが可能となる(図2)。

図2 Model Configurationにおける解析結果

図2 Model Configurationにおける解析結果

 

3.DVH Estimation
RapidPlanを臨床患者に適応し線量を予測する場合,まずは臨床患者のリスク臓器をModel Configuration時と同様に,照射野とターゲットの幾何学情報により分割して解析を行う。GEDHから最も達成可能なDVHを計算し,その結果を予測DVHとする。予測DVHを基に,IMRT optimizationの線量制約を自動設定することで,ユーザーは過去のデータに基づいた治療計画を立案することが可能となる。

作成したモデルの評価とシェア

RapidPlanには,いくつかの先行施設のモデルが標準搭載されている。これらのモデルを各施設で利用することも可能である。また,RapidPlanでは構築したモデルを評価するツールを提供する。このツールを使用することで,モデル内の標準的な計画から乖離する計画を除外し,モデルの精度を高めることも可能である。また,世界のユーザーが自施設で構築したモデルや情報を共有する場を提供し,IMRT未実施の施設においても他施設が共有したモデルで作成した治療計画を参考に,自施設の計画作成を開始することも可能となっている。

放射線治療計画の将来

RapidPlanを使用することで,治療計画立案時間の短縮,一貫性の向上を実現することが可能である。IMRT先行施設においては,自施設の治療計画を使用してモデル構築することで治療計画の品質管理を行えるほか,複数の施設で成り立つネットワーク病院においては,モデル共有を通じて治療計画の標準化を行うことも可能である。しかしながら,施設の治療計画を解析しモデル構築するためには,適切な治療計画と計画数が必要となり,IMRT実施数の少ない施設では,初期搭載されたモデルや他施設から共有されたモデルを使用する以外選択肢がない。また,RapidPlanで作成された治療計画は,その計画が臨床上使用できるか否か,修正が必要か否かといった最終判断は人にゆだねられる。システムが向上すればするほど,一方でより人間の判断が重要となり,その判断なしで治療することは困難であると言える。今後は,治療計画においてシステムと人が役割を明確にし,うまく共存できるよう,システムのさらなる開発を続けることが重要となる。

さいごに

RapidPlanは世界で300施設以上,国内で20施設以上にインストールされている。放射線治療の発展の中で,高品質な治療計画を簡便に効率良く,そして一貫性を持って提供することが,今後の放射線治療計画において重要になると考えられる。「知識が導く,より適切な放射線治療」をめざし,バリアンは今後も新たな技術を開発し提供していく。

●参考文献
1)Batumalai, V., et al. : How important is dosimetrist experience for intensity modulated radiation therapy? A comparative analysis of a head and neck case. Pract. Radiat. Oncol., 3, 99〜106, 2013.
2)Wu, B., et al. : Data-Driven approach to generating achievable dose-volume histogram objectives in intensity-modulated radiotherapy planning. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 79・4, 1241〜1247, 2011.
3)Moore, K.L., et al. : Experience-based quality control of clinical intensity-modulated radiotherapy planning. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 81・2, 545〜551, 2011.
4)Yuan, L., et al. : Quantitative analysis of the factors which affect the interpatient organ-at-risk dose sparing variation in IMRT plans. Med. Phys., 39・11, 6868〜6878, 2012.

VARIAN REPORT
TOP