VARIAN RT REPORT

2023年5月号

人にやさしいがん医療を 放射線治療を中心に No.15

バリアン全社共通のトレーニング体制 〜放射線治療を支えるトレーニング〜

清水 弥生(株式会社バリアンメディカルシステムズ カスタマーエデュケーション部)

バリアンのエデュケーション&トレーニング体制

エデュケーション&トレーニングチームは,トレーニングを通じてバリアンのビジョンである「がんの脅威に負けない世界」の実現に貢献するべく,患者へ安全安心な治療を提供することをミッションとしてユーザーへのサポートに取り組んでいる。
バリアンのエデュケーション&トレーニングは全世界共通で,エデュケーションセンターで提供するエデュケーションコース,ユーザーの施設で実施するオンサイトトレーニング,問い合わせに対応する専門のヘルプデスク,実際の臨床病院から直接学ぶクリニカルスクール,専門家によるコンサルティングサービスと,製品の基本トレーニングから臨床面でのトレーニングまで包括的にサポートする体制を取っている。

全世界7か所のトレーニングセンター1)

バリアンでは,どこのセンターでも同一内容のエデュケーション&トレーニングを提供することが可能であることをコンセプトとし,トレーナーの教育を行っている。すべてのトレーナーは,全世界共通のプログラムでトレーナー教育を受け,ライセンスを取得した後,ユーザーへのトレーニングを行っている。
日本では,駒澤大学-VARIAN放射線治療人材教育センターにおいて,治療機を使用したエデュケーションコースを実施している。日本で実施していないコースなどは,海外のエデュケーションセンターでも受講することが可能である。
近年,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により移動や集合しての講習受講が難しい状況となった際,バリアンでは一時的にエデュケーションセンターを閉鎖したが,がん治療を止めてはいけない,という思いからすぐにオンラインの形態を取り入れ,エデュケーションコースを継続した。オンラインであっても各受講者にバーチャルな装置を割り当て,個別に演習することが可能な体制を整え,従来センターで行っていた形態をそのままオンラインで実現してきた。この実績を基に,現在ではエデュケーションセンターでの実施のほか,講師とのオンラインでのトレーニングやオンデマンドでの講習受講など,トレーニング方法に多様性を持たせている。
トレーニングの種類詳細については,バリアンの公式Webサイトにも記載があるので参照していだたきたい2)

図1 全世界7か所のトレーニングセンター1)

図1 全世界7か所のトレーニングセンター1)

 

VarianThink:新しいトレーニング手法の開発

全世界で多くのユーザーにトレーニングに参加していただいているが,センターでの実施,オンラインでの実施共に,人数制限やコースのスケジュールによっては,希望の日時に受講できないというケースもあった。そこで,バリアンでは,時間,場所を選ばず,ユーザーの都合に合わせて自身のペースで学べるオンデマンドトレーニングツール「VarianThink」を開発した(図2)。グローバルでは2022年にスタートし,コンテンツは8か国語で提供している。日本語のコースは2023年2月から正式に開始し,放射線治療計画システム「Eclipse」やアップグレードのトレーニングビデオがリリースされている。今後も製品の種類,対応バージョンなど,日本語対応のコンテンツをさらに充実させていく。
VarianThinkでは,対象者が限定されている製品のエデュケーションコースのほかに,全ユーザーを対象とした,テクニカルヒントを集めたショートビデオやウェビナーの視聴が可能である。エデュケーションコースコンテンツでは,ビデオ視聴以外に,クラウド上にある仮想端末を利用して操作確認を行うことができ,インストラクターとの直接の質疑応答により不明点を解消することができるように構成されている。

図2 オンデマンドトレーニングツール「VarianThink」

図2 オンデマンドトレーニングツール「VarianThink」

 

オンサイトトレーニング

製品ごとの基本的な操作は,エデュケーションセンターやVarianThinkでのトレーニングで学んでいただくが,オプション機能やシステム全体を通しての運用方法などはユーザーの施設でトレーニングを行う。装置導入時はもとより,しばらく使用されてからのフォローアップトレーニングまで,オンサイトで実施している。

クリニカルスクール

バリアンでは,契約している臨床施設から,実臨床での経験や知識を提供していただくクリニカルスクールを全世界で展開している。日本から海外のスクールに参加することも可能である。
日本では,現在3つのクリニカルスクールを行っている。

  • 京都大学クリニカルスクール(前立腺コース,転移性脳腫瘍コース):強度変調放射線治療(IMRT)/強度変調回転放射線治療(VMAT)が浸透してきた状況下で,そのプランの内容を京都大学の豊富な知識と経験の下,講義と対話を交えながら再確認いただけるコースである。参加施設には,10年後の治療成績や有害事象の発生リスクの検討などをディスカッションしていただき,より良い治療計画に向けてのキーポイントを持ち帰っていただける。
  • がん研有明病院クリニカルスクール(各部位,臓器別テーマ):部位別のがんに対し,その手術療法の実際の手技や,薬剤療法のレジメンとコツ,放射線療法の注意点など具体的な治療方法について,臨床例を基にがん研有明病院の各科の専門医師からの講義,および集学的にディスカッションを行うスクールである。
  • 近畿大学クリニカルスクール(Halcyonの有効活用):近畿大学病院での放射線治療装置「Halcyon」の使用経験に基づき,Halcyon特有のコミッショニング方法,治療の流れやピットフォール,品質保証の方法,治療計画手法,Halcyon導入・使用時のコツ,安全で的確な使用方法を,講義と実習で学ぶスクールである。

 

今後も実臨床に生かせるクリニカルスクールを,国内の施設と連携して増やしていく予定である。

MyVarian

また,バリアンでは,直接のトレーニング以外に専用Webサイト「MyVarian」でユーザーとのコミュニケーションの場を提供している。バリアン製品を使用中のユーザーはアカウントを作成することで,MyVarianのさまざまなコンテンツにアクセスできる。

  • ドキュメントへのアクセス:製品のユーザーマニュアルやリファレンスガイドなど,豊富なドキュメントライブラリーの閲覧やソフトウエア,ハードウエア関係のドキュメントの利用が可能
  • サポート関係:使用中のバリアン製品に関する要望を,製品開発チームに直接伝えることが可能。使用中の疑問点に関して類似のQ&Aを検索できるknowledgeデータの利用,リサーチに役立つツールにアクセス可能 
  • トレーニング関係:MyVarianにログインすることでVarianThinkにアクセス可能となり,VarianThinkの豊富な動画コンテンツの視聴やトレーニングの参加が可能となる(一部有料コンテンツ)。また,MyVarian内でknowledgeベースプランニング「RapidPlan」のデータ共有など,ユーザー同士のコミュニケーションや知識の共有が可能
  • イベント関係:バリアンのイベント情報やウェビナーの申し込み・視聴が可能。アカウントの設定でイベントの案内も送付される。

 

おわりに

バリアンのエデュケーション&トレーニングチームは,これからもさまざまな形態でトレーニングや情報を提供していく。製品の使用方法のみならず,臨床に則した内容に特化したワークショップ,テーマを絞ったショートトレーニング,バリアンユーザーからの運用経験に基づいた有益な情報の共有などを展開し,より良い放射線治療,バリアンのめざす“Comprehensive Cancer Care”の一端を担っていく。

〈参考資料〉
1)Varian training locations.
https://www.varian.com/resources-support/education-training/training-locations
2)Courses and training.
https://www.varian.com/resources-support/education-training/courses-training?n=1&search-word=JPN

Halcyon 医療用リニアック:
医療機器承認番号 22900BZX00367000
放射線治療計画用ソフトウェア Eclipse:
医療機器承認番号 22900BZX00265000

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