大腸がんの罹患率・死亡率の増加が問題視されている今,注腸]線検査や内視鏡検査に代わりうる新しい検査法として,CTコロノグラフィ(CTC)が注目されている。CTCは最近,マルチスライスCTの多列化の進展や画像処理法・表示法の進歩などにより,ようやく実際の臨床に使用される段階になってきた。このような状況下,CTC診断を実際に体験する「CTコロノグラフィ トレーニングコース」がパシフィコ横浜・アネックスホールにて午後1時から開催された(協力:ザイオソフト/アミン,GE横河メディカルシステム)。昨年に続いて2回目となる今回のテーマは,「前処置法・撮影法,そしてコンピュータ支援検出を用いた診断法の実際」。昨年同様,今井裕氏(東海大学医学部放射線科),飯沼元氏(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)が司会進行を務め,海外から迎えた2名の特別講師による講演や80名が参加できるハンズオンセミナーなどが行われた。
まずはじめに,海外からの特別講師である吉田広行氏(ハーバード大学マサチューセッツ総合病院)が,「欧米におけるCTC:現状と将来展望」と題して講演。吉田氏は米シカゴ大学時代からCTCとCADの研究開発に携わり,海外で高く評価されている。大腸がんは米国ではがん死因の第2位,わが国では第4位(女性では第1位)であり,その対策が急務とされているが,ポリープの段階で発見し切除することで,がんを予防できることが特徴という。大腸がんスクリーニングによる早期発見がきわめて有効と言えるが,米国では対象となる8千万人に対して内視鏡検査はわずか400万人/年しか実施できない。そこで,新たな大腸がんスクリーニング法としてCTCへの関心と期待が急速に高まっている。米国ではNCIが6億円もの予算をかけて2006年からマルチセンタートライアル(ACRIN6664)を実施。その結果,CTCのエビデンスが認められ保険適用される可能性が高く,米国で一気に普及することが予測しうる。吉田氏はさらに,現在のスクリーニングツールとしてのCTCプロトコルや前処置法,CTスペック,2D/3D画像処理と表示法などに言及し,また,これからのスクリーニングツールとして,下剤をほぼカットできるLaxative-free CTC,バーチャル腸管洗浄である電子クレンジング,CADによる感度・特異度の向上について紹介し,CTCがスクリーニングのスタンダードになる時代の到来を示唆した。
続いて特別講師として,ベルギーでCTCのトレーニングコースを行っているPhilippe Lefere氏(Staff radiologist at Stedelijk Ziekenhuis)が,前処置の詳細な説明に始まり,腸の拡張法,被ばくを減らす画像収集法,専用ソフトによる読影法,教育法などについて,欧州のトレーニングの実際を紹介した。
さらに,竹内健氏(浜松南病院内科)による読影レクチャー,市川珠紀氏(東海大学医学部放射線科)によるデジタル前処置および森本毅氏(聖マリアンナ医科大学放射線医学教室)によるCADの応用のミニレクチャーが行われ,その後,画像ワークステーションを用いたハンズオン・セミナーが実施された(講師は,小樽病院放射線科・平野雄士氏,山下病院放射線科・山崎通尋氏,国立がんセンター中央病院放射線診断部・三宅基士氏)。欧米でのトライアルで優れた検出能が認められたCTCの今後の動向が大いに注目される。 |