2021-4-28
富士フイルムヘルスケアブース
富士フイルムヘルスケアは,2021年3月31日に富士フイルムによる日立製作所の画像診断関連事業の買収手続きが完了したことから,同日より社名を変更し,富士フイルムのグループ会社としてスタートを切った。富士フイルムグループの一員として最初の出展となった今回,展示ホールDに富士フイルムメディカルブースとL字型に並ぶ位置にブースを展開。富士フイルム医療ソリューションズ(旧横河医療ソリューションズ)のブースも合わせて,グループの出展面積は展示会場で最大となった。白を基調に,富士フイルムのコーポレートカラーであるグリーンを配したブースでは,コーポレートスローガンの「Value from Innovation」やグローバルブランディングキャンペーンとして発信している「NEVER STOP」を掲げ,グループ加入を強く印象づけた。
ITEM初日に行われたプレス向けのブースツアーでは,富士フイルム取締役専務執行役員メディカルシステム事業部長兼メディカルシステム開発センター管掌の後藤禎一氏と,富士フイルムヘルスケア代表取締役社長の山本章雄氏が挨拶した。後藤氏は,「富士フイルムメディカルは医療IT,富士フイルムヘルスケアは画像診断機器と重複する部分が少なく,グループ全体で製品のフルラインアップを実現した。両社の製品をAIでつないでいくことがわれわれの戦略だ」と述べた。続いて山本氏は,「“REiLI”など富士フイルムのテクノロジーにより,富士フイルムの有するコアテクノロジーと,われわれが持つコアテクノロジーを早急に融合させて,われわれにしか提供できないソリューションを作っていきたい」と意気込みを語った。
今回の展示では感染対策の一環として,人が密にならないように一方通行の見学ルートが設定された。展示では,2020年4月に発売されたデジタルX線透視システム「CUREVISTA Open」のデモンストレーションが行われたほか,64列128スライスCT「SCENARIA View」や1.5T超電導MRI「ECHELON Smart Plus」の最新バージョンのリリース,超音波診断装置のアプリケーションアップデートなど,臨床現場のニーズをとらえた開発の成果が披露された。
|
|
●デジタルX線透視システム:925もの現場の声から誕生した「CUREVISTA Open」
●CT:心臓へのIPV適用など「SCENARIA View」の最新アップデートを紹介
●MRI:「ECHELON Smart Plus」が進化し,さらなる高速化・自動化を実現
●超音波診断装置:プレミアム装置の画質やアプリケーションを継承した「ARIETTA 750SE」
●デジタルX線透視システム:925もの現場の声から誕生した「CUREVISTA Open」
展示ルートの最初を飾ったのが,2020年4月に発売されたデジタルX線透視システム「CUREVISTA Open」だ。汎用デジタルX線透視診断装置「CUREVISTA」を約12年ぶりにフルモデルチェンジしたCUREVISTA Openは,「真価,さらに進化。」をコンセプトに,ユーザーへのヒアリングから得られた925もの現場の声を基に開発された。特に,収益性を上げるための多目的活用や,近年増加しているX線透視下での低侵襲治療にフォーカスした機能を豊富に実装し,発売1年でユーザーからは高く評価する声が数多く寄せられているという。
展示では,「検査はだれもが快適に。」「低被ばく。なのに高画質。」「これからは多才な働きもの。」の3つの価値をポイントに紹介した。快適な検査においては,CUREVISTAから継承した独自の2WAY ARM(2ウェイアーム)を搭載し,テーブルを完全に固定することで,手技中のヒヤリハットから解放されることをアピールした。2WAY ARMは,縦・横・斜めに映像系ユニットが稼働することで視野移動ができる機構で,低侵襲治療で内視鏡やカテーテルの挿入,穿刺などの手技を行う際にも患者を動かさずにすむことから,患者と医療者の双方に安心安全という価値を提供する。
また,低被ばくと高画質の両立は,13のテクノロジーで構成される新被ばく低減プログラム“IntelliDOSE”を構築することで実現した。新技術としては,コリメータ4辺が独立して可動し任意に照射野を絞ることができる“IntelliSHUTTER”や,前後フレームから補間画像を生成して従来の半分のパルスレートでも画質を維持できる “IntelliFRAME”などを搭載できる。
さらに,稼働率の向上においては,スタッフの業務の効率化と時間短縮,対応する検査の幅の拡張,検査増を可能にする機能を実装した。コントローラのGUIを刷新して操作性の向上を図ったほか,X線管装置とテーブルにタッチスクリーンディスプレイを搭載し,患者に寄り添いながらの操作を可能にした。多目的性においては,X線管が180°回転する機構により,車椅子やストレッチャーでの撮影,胸部撮影にも対応する。また,長尺撮影やトモシンセシスのアプリケーションを搭載することで,特殊な撮影への対応が可能になり,より稼働率を向上させて収益向上に寄与することができる。
このほか,低侵襲治療をより安全で快適にするための細かな工夫も施されている。低侵襲治療では内視鏡や超音波,心電計など多くの機器を使用するため,多くのケーブルが床をはうことになる。清潔や安全性の観点から好ましい状況ではないため,テーブルの左右に映像入力のターミナルを設けることで,床に広がっていたケーブルを整理できるようにした。また,X線管横に広角カメラを新たに設置し,カメラ映像で患者を観察できるようにした。これにより,術者は手技中に身体は固定したまま視線を少し動かすだけで患者の様子を確認でき,手技に集中することができる。さらに,治療中に切開などの処置が必要になった場合に,手元を照らすことができるSECURELIGHTを搭載。1時間程度の連続点灯が可能だ。
また,透視装置ではケーブルチューブを装置右側に設けることが多いが,CUREVISTA Openでは装置の左側に配置する設計とした。低侵襲治療では,術者は基本的に右側に立ち,テーブルを挟んで向かい側に看護師が入りサポートすることから,現場の看護師の要望に応えてアシスタントスペースを確保した。このほか,テーブルの背面を遮へいカバーで覆って散乱線を低減するなど,スタッフの被ばく低減にも配慮している。アーム部分にはシステムのステータスを表すイルミネーション(緑:スタンバイ,黄色:X線照射中,赤:エラー)も実装され,室内のどこからでも状態を確認することができる。
●CT:心臓へのIPV適用など「SCENARIA View」の最新アップデートを紹介
CTは,64列128スライスCT「SCENARIA View」が新バージョン「phase 3」にアップデートしたことをアピールした。展示されたモックアップは,社名変更に伴って,寝台マットやガントリ脚部のカラーが,シックな富士フイルムカラーに変更された。SCENARIA Viewは,逐次近似処理技術“IPV(Iterative Progressive reconstruction with Visual modeling)”による「低線量と高画質の両立」,高速化・自動化のソリューション“SynergyDrive”による「検査効率の改善」,80cm開口径と横スライド寝台による「快適な検査」をコンセプトに開発された装置。今回リリースされたphase 3は,新設計のフルデジタル検出器の搭載により,「SCENARIA」と比べて電気ノイズの最大40%低減,消費電力の45%低減(Off-time mode機能で最大78%低減),信頼性の向上と30%の軽量化を実現している。また,IPVが進化し,新たに心臓にも適用可能になった。冠動脈CT へのIPV適用により,診断参考レベル(DRLs 2020)の半分程度の線量でも明瞭な画像を得ることができる。心臓CTにおいては,自由度の高い心電図同期連動AECである“IntelliEC Cardiac”や,寝台の横スライドと小視野用Bow-tieフィルタを組み合わせた“IntelliCenter”を併用することで,さらなる被ばくの低減と画質向上を図ることができる。
ワークフローを向上させるSynergyDriveについては,撮影範囲の自動設定機能“AutoPose”を,従来の胸部に加えて頭部にも対応するアップデートを行った。OMライン,SMライン,RBラインの基準線をプロトコールにあらかじめ設定しておくことで,スキャノ画像から頭部の撮影範囲を自動認識する。これにより,操作者の作業負担を軽減し,操作者間の設定のバラツキを防ぐことができる。
また,CTに関連した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への取り組みも紹介した。COVID-19の臨床画像を供覧し,SCENARIA Viewでは0.35秒/回転の高速撮影によりブレのないクリアな画像が得られることや,IPVにより被ばく低減にも寄与すること,また,80cmの大開口径により高体重の患者の検査にも対応可能なことなどを紹介した。さらに,ガントリ・寝台・操作卓の3ユニットのコンパクト設計を生かして,COVID-19以前から車載CTとして提供を行っており,2021年3月現在で32台の受注実績がある。コンテナCTとしての提供も可能で,これらをCOVID-19検査用として活用し,患者動線を分離する提案を行った。
●MRI:「ECHELON Smart Plus」が進化し,さらなる高速化・自動化を実現
ITEM開幕前日の2021年4月15日に,1.5T超電導MRI「ECHELON Smart Plus」の新バージョンが発売された。高速化と自動化のソリューションSynergyDriveが進化し,さらなる検査時間の短縮と高画質化を実現している。その要となるのが,高速撮像機能“IP-RAPID 2nd”と高画質化ソリューション“REALISE Plus”だ。IP-RAPIDは,アンダーサンプリングと繰り返し演算IPにより画質を維持したままノイズを低減し,撮像時間を短縮する機能。これまで3DはTOF-MRAのみに適用可能であったが,IP-RAPID 2ndではほかの3D撮像やコントラスト調整が可能な“isoDIR”など,適用範囲を拡大した。一方,REALISE Plusは,コイルの感度分布を踏まえた再構成など,複数のノイズ低減方法を組み合わせることでSNRを最大46%向上させることが可能な,IP-RAPID向けのノイズ低減技術である。IP-RAPIDは,画質を維持したまま撮像時間を約半分に短縮できるが,REALISE Plusを併用することで,画質を維持したまま約1/3に撮像時間を短縮することが可能になる。
展示では“Plus One”をキーワードに,IP-RAPID 2ndとREALISE Plusにより撮像時間を短縮し,従来と同じ検査時間で高精細3DやBSI(磁化率強調画像)などシーケンスを1つ追加する“Plus One Scan”を提案した。また,シーケンス追加以外にも,自由呼吸下での腹部撮像や全脊椎撮像,全身DWI,高分解能化など,より診断価値を高める検査への活用も紹介した。
SynergyDriveを構成するアプリケーションの一つである操作性向上機能“AutoExam”は,撮像条件設定や位置決め,画像処理,画像表示,画像保存の機能を登録することで,ワンボタンで自動的に検査を行える機能で,特に手間のかかるMRAのクリッピング処理を自動で行う“AutoClip”は,臨床現場から高い評価を得ている。これまでAutoExamは頭部のみだったが,バージョンアップにより位置決めが難しい膝関節もワンボタンでの検査実施が可能になった。また,自動位置決めの“AutoPose”が肩関節にも適用可能になり,検査現場に“余裕をPlus”できることをアピールした。
会場では,ECHELON Smart Plusのモックアップを,MRI用ボア内映像投影システム「Smart Theatre」と組み合わせて展示した。Smart Theatreは,プロジェクターと鏡を使用し,プロジェクションマッピングの技術を用いてボア内上面にひずみのない映像を投影するシステムで,閉鎖性の高いMRI検査の環境を改善し,被検者がリラックスして検査を受けられるようにサポートする。空や海などの映像のほか,残りの撮像時間などのインフォメーションも表示でき,映像とリンクしたBGMの提供も可能。これまではプロジェクターを検査室外に設置するため工事が必要だったが,プロジェクターをノイズシールドされた本体ケースに内蔵することで,検査室内への設置を実現。工事が不要になることで,既存ユーザーへも提供が可能になった。なお,室内設置型のSmart TheatreはオープンMRIへの提供も開始している。また,MRI検査室内映像システム「Smart Window」は,検査室の壁に動画を投影するシステム。投影された光が入退室する患者に直接当たらないように,プロジェクターを高い位置に設置し,プロジェクションマッピング技術によりひずみのない映像を壁に投影する。撮像中も映像を表示できるため,頭部がガントリの外に出ている整形の検査などでは検査中の不安感を緩和できると期待される。
●超音波診断装置:プレミアム装置の画質やアプリケーションを継承した「ARIETTA 750SE」
超音波診断装置は,ARIETTAシリーズの「ARIETTA 750SE」と「ARIETTA 65LE LV」の2機種を展示した。ARIETTA 750は,プレミアム装置「ARIETTA 850」の高画質化技術を引き継ぎつつ,ユーザーのニーズに合わせた機能を搭載したモデルで,“高い性能を求めやすい価格で”をコンセプトとしている。搭載モニタの異なる3機種を展開しており,22インチのワイドOLEDモニタ(有機ELモニタ)を搭載したLE,23インチ液晶モニタ搭載のSE,21.5インチ液晶モニタ搭載のVEがラインアップされている。
エコーの要となる画質においては,ARIETTA 850の高画質化のコンセプトPure Imageを継承。浅部から深部までオートフォーカスを実現する超音波送受信技術“eFocusing”や,腫瘤など組織辺縁を強調して視認性を向上させる“Carving Imaging”を実装している。
また,豊富なアプリケーションで検査を支援するコンセプトYour Applicationでは,“SWM(Shear Wave Measurement)”と“RTE(Real-time Tissue Elastography)”の2つをアピールした。SWMは,プッシュパルスでひずんだ組織が元に戻る際に発生する剪断波を計測する機能で,肝臓の硬さを推定し,線維化の進行度の評価を可能にする。計測結果として剪断波の伝搬速度(Vs)が数値で示されるが,この数値は1回のパルス送信で複数回計測し,不安定なデータを棄却して残ったデータの中央値が示されるようになっている。加えてVsの信頼性を表すVsNも示されるため,安定した評価が可能になる。さらに,肝臓の脂肪化の程度を推定するATT(超音波減衰)も表示され,線維化と脂肪化の推定で肝臓の状態を総合的に評価できる。一方,乳腺領域で活用されるRTEは,組織の硬さをカラーマップ表示する機能で,乳がん検診などにおいて硬さの情報を客観的に画像で残すことができる。RTEは自動化が進んでおり,フリーズをかけたタイミングで適切なフレームを自動で選択するオートフレームセレクト機能が実装された。また,腫瘤部分に点を置くと腫瘤と脂肪のひずみ率を自動で算出する機能も搭載され,より簡便に検査を行えるようになっている。
もう一つのコンセプトSeamless Workflowとしては,検査の手順や撮像条件,ボディマークやコメントなどをあらかじめ登録できる“Protocol Assistant”機能を紹介。参考画像も表示でき,スムーズな操作で検査時間短縮に貢献する。
ARIETTA 65LE LVは,クリニックから中規模病院を対象とした,よりコンパクトな普及機種で,SWMをはじめとした肝臓疾患評価に適したアプリケーションを搭載したモデルである。
●お問い合わせ先
社名:富士フイルムヘルスケア株式会社
住所:東京都台東区東上野 2-16-1 上野イーストタワー
URL:https://www.fujifilm.com/fhc