ITEM2019 日立製作所 ブースレポート 
“デジタル技術と協創でヘルスケアに新しい価値を創りだす”ことをめざした多彩なソリューションを提案


2019-4-18

富士フイルム


日立製作所ブース

日立製作所ブース

日立製作所は,ヘルスケアステートメントの“Innovating Healthcare, Embracing the Future”を掲げ,「デジタル技術と協創によりヘルスケアに新しい価値を創りだす」というビジョンに基づいた多彩なソリューションを提案した。4月からヘルスケアビジネスユニットCEOに山本章雄氏が就任し,初日(12日)に行われたプレス向けのブースツアーで挨拶した。山本CEOは,新製品を展示しているMRIや超音波診断装置をはじめ,CTや放射線治療装置などの機器に加え,DI×AI(Diagnostic Imaging with AI)の取り組みにも注目してほしいと述べ,「AIは業界全体が開発を競っている領域。われわれは,医療現場の働き方改革に対してもAI技術でサポートできるのではないかと考えて,DI×AIの取り組みを進めている」とし,今後の開発に期待してほしいと呼びかけた。
新製品としては,2019年1月に発売された3T超電導MRI「TRILLIUM OVAL Cattleya」を展示するとともに,1.5T超電導MRI「ECHELON Smart Plus」を発表。超音波コーナーでは,2018年11月発売のミドルレンジ超音波診断装置「ARIETTA 65」と2019年1月発売のエントリークラス「ARIETTA 50」を展示し,ARIETTAシリーズの拡充をアピールした。また,X線透視撮影システム「CUREVISTA」の画像処理エンジンが「FAiCE-V NEXT STAGE2」にバージョンアップし,新しいWire Focus機能などによりさらなる低被ばく・高画質化が可能になったことが紹介された。

4月に就任した山本章雄ヘルスケアビジネスユニットCEO

4月に就任した山本章雄ヘルスケアビジネスユニットCEO

 

●MRI:3T MRI「TRILLIUM OVAL Cattleya」と1.5T超電導MRI「ECHELON Smart Plus」を披露
●超音波:エントリーモデルからプレミアム機までラインアップしたARIETTAシリーズ
●CT:逐次近似処理技術“IPV”と大開口径ボア搭載の「SCENARIA View」
●AI:AIアシストによる画像定量化・読影支援技術をデモンストレーション
●X線システム:被ばく低減・高画質化を可能にする画像処理エンジン「FAiCE-V NEXT STAGE2」の新機能をPR

 

●MRI:3T MRI「TRILLIUM OVAL Cattleya」と1.5T超電導MRI「ECHELON Smart Plus」を披露

MRIは,高機能アプリケーションを多数搭載した3T超電導MRIの「TRILLIUM OVAL Cattleya」と,新製品の1.5T超電導MRI「ECHELON Smart Plus」のモックアップが展示された。
新しくリリースされたECHELON Smart Plusは,“検査全体のスループット向上”をコンセプトに開発された,「ECHELON Smart」の後継機種。高速化と自動化のソリューション“SynergyDrive”により,被検者の入室から退室,後処理までのMRI検査全体の時間を短縮する。高速化においては,高速撮像技術“IP-RAPID”が実装された。IP-RAPIDは,アンダーサンプリングによるデータ収集と繰り返し再構成(IterativeProcess)による最適化・融合で,画質を維持しながら撮像時間を短縮することが可能で,撮像時間を約50%短縮しても,従来と同等の画像を得ることができる。被検者の負担を軽減できることはもちろん,救急においては頭部のスクリーニング(T2WI,T1WI,FLAIR,T2*WI,DWI,MRA)を約4分で撮像できるなど有用性が高い。IP-RAPIDは時間短縮だけでなく,従来と同等の撮像時間での分解能向上や,より広範囲の撮像に利用することもできる。ブースでは,マルチコントラスト(FatSep T2WI+FS)と組み合わせることで,脊椎や骨盤,関節,頭頸部などを5分程度で撮像するシーケンスや,広範囲DWIや同期併用も可能といった利点を紹介し,ルーチン検査を高速化,高画質化する装置であることをアピールした。
また,自動化においては,さまざまな操作を1アクションで自動化する“AutoExam”により時間短縮を図る。“AutoPose”による自動位置決めや,MRA撮像後に自動でクリッピング処理を行う“AutoClip”により,撮像から後処理,転送までの工程の自動化を進めることで,操作者の手間を軽減し,検査全体のスループット向上に貢献する。
TRILLIUM OVAL Cattleyaは,楕円形ボアを搭載した「TRILLIUM OVAL」のハードウエアの特長はそのままに,臨床価値を高める多数の高機能アプリケーションが搭載された。“QSM”は,従来の磁化率画像が磁化率“強調”画像であるのに対し,局所的な磁化率差を推定して磁化率を“定量化”する技術としてアピールされた。反磁性の石灰化と常磁性の出血を鑑別できるほか,脳への鉄沈着も画像化できることから認知症の早期診断への応用も期待されている。このほか,高速3D撮像シーケンスである“isoFSE”や,コントラスト調整が可能な“isoDIR”,フローアーチファクトを抑制し明瞭なプラークイメージングを実現する“isoMSDE”など,最新アプリケーションが実装されている。

新製品の1.5T MRI「ECHELON Smart Plus」

新製品の1.5T MRI「ECHELON Smart Plus」

 

画質を維持して撮像時間を50%短縮する高速撮像技術“IP-RAPID”

画質を維持して撮像時間を50%短縮する高速撮像技術“IP-RAPID”

 

約4分で救急の頭部スクリーニングが可能

約4分で救急の頭部スクリーニングが可能

 

マルチコントラストを併用した5分シーケンスを紹介

マルチコントラストを併用した5分シーケンスを紹介

 

高機能アプリケーションを搭載した3T MRI「TRILLIUM OVAL Cattleya」

高機能アプリケーションを搭載した3T MRI「TRILLIUM OVAL Cattleya」

 

磁化率を定量化する“QSM”

磁化率を定量化する“QSM”

 

●超音波:エントリーモデルからプレミアム機までラインアップしたARIETTAシリーズ

超音波診断装置のコーナーでは,プレミアム機「ARIETTA 850」,ミドルレンジの「ARIETTA 65」,エントリークラス「ARIETTA 50」のARIETTAシリーズを中心に展示した。このうち, ARIETTA 850は画質が改善され,フィルタを強くかける画像処理パラメータの追加によりコントラストと分解能が向上。腹部や消化管だけでなく,超広帯域(2~22MHz)対応の半導体プローブ「4G CMUT」による乳腺や表在領域の視認性を向上させる。“RTE(Real-time Tissue Elastography)”と“SWM(Shear Wave Measurement)”によるエラストグラフィや,微細な血流を描出する“DFI(Detective Flow Imaging)”など,多彩なアプリケーションも併せて紹介した。
「ARIETTA 65」は,ARIETTA 850をコンパクトにした,クリニックや中規模病院をターゲットとした装置。画像処理技術やRTEなどのアプリケーションをARIETTA 850から受け継ぎ,多様な検査に対応するほか,モニタアームやパネルデザインにエルゴノミクスデザインを採用し,検査者の負担を軽減する工夫を取り入れている。また,ARIETTA 50は,さらに使いやすさを追究したモデルで,タッチパネルに多くの操作機能を集約し,操作パネルのボタンを必要最小限にすることで,よりシンプルな操作で検査を行うことができる。なお,ARIETTA 65,ARIETTA 50はともに,21.5インチの大型モニタとタッチパネルを搭載。また,内蔵バッテリーにより非常時などにも1時間程度のバッテリー駆動が可能になっている。
ARIETTA 50のリリースに合わせて,プローブも複数開発された。展示された腹部用コンベックスプローブ「C253」,表在用リニアプローブ「L442」,心臓用セクタプローブ「S11」は,ARIETTA 850やARIETTA 65にも接続できる互換性を持つ。装置,プローブともにラインアップを拡充することで,ユーザーのニーズに合わせた提案が可能となっている。
また,DI×AIコンセプトの超音波での取り組みについても紹介された。超音波では自動計測などに取り入れており,機械学習されたデータベースを参照しながら自動認識処理を行うことで,心内膜を高精度にオートトレースして検査時間を短縮する技術をアピールした。

プレミアム機ARIETTA 850をコンパクトにした「ARIETTA 65」

プレミアム機ARIETTA 850をコンパクトにした「ARIETTA 65」

 

使いやすさを追究したエントリークラス「ARIETTA 50」

使いやすさを追究したエントリークラス「ARIETTA 50」

 

ボタンを必要最小限に絞り込んだARIETTA 50の操作パネル

ボタンを必要最小限に絞り込んだARIETTA 50の操作パネル

 

●CT:逐次近似処理技術“IPV”と大開口径ボア搭載の「SCENARIA View」

CTは,昨年のITEM 2018でアンベールされた64列マルチスライスCT「SCENARIA View」と64列/128スライスCT「Supria Grande」のモックアップを展示した。このうちSCENARIA Viewは,逐次近似処理技術“IPV” (Iterative Progressive reconstruction with Visual modeling)が大きな特長で,FBPと比べ画像ノイズを最大90%低減,被ばくを最大83%低減,高コントラスト分解能と低コントラスト検出能が最大2倍という性能を実現している。Full IRで課題と言われている画像の質感(テクスチャ)についても,周波数特性をFBPに近づけることで改善されている。
また,高速化・自動化のソリューションSynergyDriveも実装し,被検者の入室から退室,画像処理までの一連の検査時間を短縮し,検査スループット向上に貢献する。AutoPose機能では,スキャノグラムから画像処理を行って撮影範囲の自動設定が可能で,操作者は設定された範囲を確認・調整するだけで,すぐに撮影に入ることができる。これにより,従来と比べ高い再現性と時間短縮が可能となっている。
さらに,ガントリは80cmの大開口径ボアを搭載しながら,コンパクト,かつ被検者に圧迫感を与えない滑らかな四角楕円デザインを採用。3ユニット構成で,日立CTの特長である高い設置性も確保している。ガントリ前面の24インチタッチモニタ“Touch Vision”では,11か国語表示,手話表示,また小児向けのアニメーション表示が可能で,適切で確実な検査の実施を支援する。開口径の拡大にあわせて,テーブルの横スライド機能も200mmへと拡大し,さらにポジショニングをしやすくなった。また,体格の大きい被検者の検査もしやすい点が高く評価されており,国内はもとより,ヨーロッパや中南米でも導入が進んでいる。
撮影機能としては,金属アーチファクト低減技術“HiMAR”や“Dual Energy Scan”を搭載。80kVと140kVの2つのエネルギーによる撮影で異なるX線吸収率の画像を得るDual Energy Scanは,同じ位置を2回ずつ撮影,または同一のらせん軌道で撮影する“軌道同期スキャン”の2種類の撮影法がある。ほかにも,テーブルの高速移動で80mm範囲の頭部パーフュージョン撮影を可能にする“Shuttle Scan”も実装している。

64列マルチスライスCT「SCENARIA View」は2018年度グッドデザイン賞を受賞

64列マルチスライスCT「SCENARIA View」は2018年度グッドデザイン賞を受賞

 

低コントラスト分解能を向上させる逐次近似処理技術“IPV”

低コントラスト分解能を向上させる逐次近似処理技術“IPV”

 

逐次近似処理技術“IPV”による画像(日立製作所提供)

逐次近似処理技術“IPV”による画像(日立製作所提供)

 

●AI:AIアシストによる画像定量化・読影支援技術をデモンストレーション

近年,日立が力を入れて開発を進める“DI×AI(Diagnostic Imaging with Artificial Intelligence)”は,デジタルテクノロジーを活用して画像診断の質と効率の向上を支援するもので,最新の開発状況が紹介された(すべてW.I.P.)。DI×AIでは,医師の精神的負担の90%低減,効率の40%向上を目標に,検査受付から画像診断までの放射線科ワークフローをシームレスにするAI開発に取り組んでいる。ブースでは,画像定量化技術や読影支援技術のデモンストレーション展示が行われた。
画像定量化においては,脂肪・筋肉解析を紹介した。従来,脂肪解析と筋肉解析のそれぞれの技術を開発してきたが,これをベンダーフリー化するとともに,大腸CT画像からも解析できるよう改良し,単体の脂肪・筋肉解析ソフトウエアとして開発を進めている。開発には日立健診センターのデータを用いており,筋肉量や筋肉内脂肪量,筋肉年齢などのわかりやすい指標で,解析結果の定量化・視覚化することをめざしている。
読影支援では,肺がんCADと脳動脈瘤CAD・白質解析を紹介した。いずれも,病変検出から解析,レポートまでの読影業務をAIでアシストすることで,時間短縮をめざす。肺がんCADのデモンストレーションでは,読影画面を開くとAIで検出・サイズ計測された病変が丸印で示され,医師が各病変を選択してステータスを決定,全体を読影後にレポートに添付する画像を選び,レポートをPDF出力するまでの,AIアシスト読影の一連の流れが紹介された。
DI×AIの開発ロードマップとしては,現在,肺がん検診(肺がんCAD),脳ドック(脳動脈瘤CAD,白質解析),ロコモ検診(筋肉解析)向けのAI開発を進めており,将来的には,乳がん検診(乳がん超音波CAD),認知症診断支援(脳萎縮の評価,鉄沈着の評価:AMEDの支援の下,研究中)にも取り組むことを予定している。

放射線科ワークフローをシームレスにする“DI×AI”(W.I.P.)

放射線科ワークフローをシームレスにする“DI×AI”(W.I.P.)

 

解析結果をわかりやすい指標でレポートする脂肪・筋肉解析(W.I.P.)

解析結果をわかりやすい指標でレポートする脂肪・筋肉解析(W.I.P.)

 

肺がんCADのデモンストレーション(W.I.P.)

肺がんCADのデモンストレーション(W.I.P.)

 

●X線システム:被ばく低減・高画質化を可能にする画像処理エンジン「FAiCE-V NEXT STAGE2」の新機能をPR

X線システムは,汎用X線透視診断装置のプレミアム機「CUREVISTA」,車載対応の胃部集団検診X線システム「ESPACIO AVANT」,移動型X線システム「Sirius Starmobile tiara airy」の実機が展示された。
今回のアップデートとして,ブースのプレゼンテーションステージでも紹介されたのが,CUREVISTAの新しい画像処理エンジン「FAiCE-V NEXT STAGE2」で実現する低被ばく化,高画質化の新機能だ。2020年4月から被ばく線量管理・記録が義務化されることもあり,被ばく低減に関する技術は例年以上に注目されている。ITEM 2019のJIRAプレゼンテーションコーナーでも,被ばく低減技術や線量管理技術をテーマにプログラムが組まれ,日立も12日(金),13日(土)の2日間にわたり,被ばく低減のコンセプト“IntelliDOSE”を紹介するプレゼンテーションを行った。
X線透視システムにおいては,被ばく低減技術として独自の“Frame Rate Conversion(FRC)”(フレーム補間)を以前から実装している。これは前後の画像から間の画像を生成することで動きを滑らかにする技術で,照射フレームを従来の半分にして線量を半減させながら,同等の透視像を表示することができる。なお,このような被ばく低減技術が評価され,日立は「低被ばく・高画質X線透視装置の開発と実用化」で第51回(平成30年度)市村産業賞功労賞(主催:公益財団法人市村清新技術財団)を受賞した。
FAiCE-V NEXT STAGE2へのバージョンアップでは,新しく3つの低被ばく・高画質化技術が搭載可能になった。まず,“IRノイズ低減”が撮影像に適用可能となり,IR(逐次近似処理)によりノイズを最大24%低減する。
そして,ERCPなどの手技におけるガイドワイヤの視認性を向上させる“Wire Focus機能”(オプション)として,“TARGET”と“WOW”(ワウ)の2機能も使用可能になる。TARGET(The ARtificial intelligence based Guidewire Extraction and Tracking processing)は,従来から実装されていたノイズ低減と動き補正を組み合わせた画像処理技術“MTNR”を進化させ,ガイドワイヤの視認性向上を強化させた機能である。対象物の動きの方向と量を画素単位で追従するオプティカルフロー処理により,細いガイドワイヤの視認性向上と残像の低減,SN向上を図っている。一方,WOW(Wire Optimum Weighted processing)は,サブトラクションアンギオグラフィ(DSA)のように,透視像の元画像から背景のサブトラクションを行い,ガイドワイヤの視認性を向上させる。ガイドワイヤが椎体などと重なって見えにくい場合にも,WOWにより視認性を高め,確実で安全な手技を支援する。IRノイズ低減やWire Focus機能は,4月から販売が開始される。

汎用X線透視診断装置のプレミアム機「CUREVISTA」

汎用X線透視診断装置のプレミアム機「CUREVISTA」

 

動きの方向と量を画素単位で追従する“TARGET”

動きの方向と量を画素単位で追従する“TARGET”

 

サブトラクションでガイドワイヤの視認性を向上させる“WOW”

サブトラクションでガイドワイヤの視認性を向上させる“WOW”

 

低被ばく・高画質なX線透視装置の開発で第51回(平成30年度)市村産業賞功労賞を受賞

低被ばく・高画質なX線透視装置の開発で第51回(平成30年度)市村産業賞功労賞を受賞

 

●お問い合わせ先
社名:株式会社日立製作所
住所:東京都台東区東上野 2-16-1 上野イーストタワー
URL:www.hitachi.co.jp/healthcare

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