ITEM2013 日立メディコ / 日立アロカメディカル ブースレポート
日本初展示となった3T MRI装置「TRILLIUM OVAL」や製品化10周年を迎えるUSアプリケーションなど多彩なトピックスを紹介
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2013-4-18
日立メディコ/日立アロカメディカルブース
メインステージ
日立メディコ/日立アロカメディカルは,RSNA2011以降の展示会で継続して掲げているテーマ「embracing life through innovation」のもと,診断システム,メディカルITシステム,治療システムのカテゴリーに分け,新製品を中心に日立メディコグループの製品群を展開。ブース正面中央に据えられたステージでは,新製品などのトピックスの紹介と合わせ,グループ全体の技術を結集してヘルスケアの進歩に貢献していく姿勢をアピールした。
新製品としては,この4月に日本とグローバルで同時発売となった同社初の3T MRI装置「TRILLIUM OVAL」や,X線透視撮影システム「DIAVISTA」が初めて展示され,来場者の関心を集めていた。また,超音波診断装置では,同社が世界に先駆けて製品化したアプリケーション「Real-time Tissue Elastography(RTE)」と「Real-time Virtual Sonography(RVS)」が10周年を迎えることが紹介された。(4月12日取材)
●MRI:3T MRI「TRILLIUM OVAL」が日本初登場
RSNA2012で参考展示され,4月に日本とグローバルで同時発売となった3T MRI装置「TRILLIUM OVAL」が,日本で初披露となった。2012年4月に発売された1.5T MRI装置「ECHELON OVAL」のコンセプトを継承し,さらなる高画質化を図って臨床的可能性を拡大した。TRILLIUM OVALがラインナップされたことにより,同社では,0.25〜0.4Tの永久磁石型オープンMRIから,1.5,3Tの高磁場装置までがそろうことになり,幅広いユーザーへのMRI装置の提供が可能になる。
TRILLIUM OVALの大きな特長は,快適性と高画質の両立と,“WIT”によるワークフローの向上である。横74cm,縦65cmの楕円形ワイドボアは,テーブルに横たわった被検者の身体の形に合わせたデザインで,被検者が楽な姿勢で検査ができる快適な空間を実現している。横方向に拡張したことで,肩などの磁場中心での撮像が困難な部位でも,横63cmまで広げたテーブルの左右に被検者を移動させることで高画質の画像を得ることができる。傾斜磁場コイルを楕円にすることは,従来は技術的に困難であったが,日立グループが持つ核融合炉のプラズマを制御するシミュレーション技術と高度な解析技術により,楕円傾斜磁場コイルパターンが実現した。
また,4ch-4port独立制御可能なRF照射コイルを採用し,RF照射不均一による画像ムラを抑制する「OVAL Drive RF/OVAL Drive QS(Quad RF Shim)」により高画質を実現。高精細な高速撮像が可能となり,機能イメージングや代謝物イメージングのルーチンでの適応も実現の可能性が見えてきた。
さらに,トータルワークフローを改善した「WIT(Workflow Integrated Technology)」により,使い勝手やスループットの向上が図られている。WIT RF Coil systemは,寝台に常時据え置き可能なSpineコイルとWIT Posterior Head/Neckコイルを基本に,各部位はアタッチメントの交換のみで撮像可能で,セッティング時間を短縮することができる。また,着脱可能で50cmの高さまで下げることができるWIT Mobile Tableや,被検者情報をガントリ前面のモニタで確認・編集できるWIT Monitorなどにより,患者・操作者両方の負担が軽減し,検査全体のワークフローの最適化が可能になる。
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●超音波診断装置:製品化10周年を迎えるRTEとRVSの特設コーナーを設置
超音波診断装置では,同社が世界に先駆けて製品化したアプリケーション「Real-time Tissue Elastography(RTE)」と「Real-time Virtual Sonography(RVS)」が10周年を迎えることが紹介された。これらの機能については,臨床現場での認識も広がり,診断でも用いられるようになってきている。
組織の弾性を画像化するRTEは,筑波大学との産学連携で開発された。正常組織と腫瘍の硬さの違いを利用して,プローブで軽く圧迫したときの歪みの程度をカラー化し,Bモードと重ね合わせて観察することで,視覚的にもわかりやすい診断支援機能となっている。RVSは,超音波画像とCTやMRI画像の同じ断面をリアルタイムに表示する技術で,それぞれの画像の利点を高め,欠点を補い合うことができる。病変の同定が容易になり,RFAなどの穿刺治療をサポートする。ブース内にはRTEとRVSの特設コーナーが設けられ,それぞれの開発者である筑波メディカルセンターの植野 映氏
,東北大学の岩崎隆雄氏
のインタビュー映像が上映された。
装置は,ジェネラル,Women's Health,整形領域に分けて展示された。ITEM初展示となった2012年発売の「Noblus」は,“操作者,使用シーン,検査領域を選ばない”をコンセプトに開発されたコンパクト装置で,多機能かつミドルクラスレベルの画質を有する。同社が,高機能かつコンパクト化を追究したSmart Imaging Device(SID)として位置づける装置である。機能としては,3D表示,カラードプラ,RTEなどが搭載されているため,外来や検診など,場所やシーンを選ばずに精密な検査をすることができる。また,操作パネルを跳ね上げて収納することができるため,診察室の机上に設置することも可能となっている。
このほか,プレミアム〜ハイエンドクラスとして,4Dエラストが可能な「HI VISION Ascendus」,循環器用の多彩な機能を搭載した「ProSound F75」,ハイエンドクラスの「HI VISION Preirus」を展示。ミドルクラスとしては,「ProSound α7」「HI VISION Avius」「F37」などが展示された。
なお,RVSはAscendus,Preirusの上位機種に,RTEはほとんどの装置に搭載可能である。
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●X線撮影装置:検診向けFPD透視撮影システム「DIAVISTA」など,今後さらなる市場の拡大が見込まれる装置を中心に紹介
X線システムでは,FPDタイプの透視撮影システム「VISTAシリーズ」から3製品展示され,新製品として4月8日にリリースしたX線透視撮影システム「DIAVISTA」が紹介された。
近年,活性化しているFPD透視装置の検診市場をターゲットとしたDIAVISTAは,検診や内視鏡IVR(消化器内科)に特化した製品として,30cm×30cmの視野サイズを持ち,短時間検査・省スペース・低ランニングコストを実現した。また,同社の透視撮影システムのハイエンド装置である「CUREVISTA」は,テーブルは固定したまま,映像系を縦方向・横方向に任意に移動させることができる。患者を固定したまま撮影できるため,内視鏡やカテーテルを挿入した状態でも安全な検査を実施できる。昨2012年に発売された「EXAVISTA17」は,画素サイズ139μmで,17インチ×17インチの大視野FPDを搭載した多目的検査システム。映像系や天板のストローク,撮影可能範囲,斜入角度,立位/逆傾斜角度において,左右対称性デザインを実現し,臨床使用での自由度を高めている。
マンモグラフィシステムでは,「Selenia Dimensions」を展示した。トモシンセシス撮影に対応し,1回の圧迫で,2D,3D(トモシンセシス),2D+3Dの撮影が可能となっている。トモシンセシスで多角度の断面を確認することにより,乳腺が重なって見えにくくなっている腫瘍を見つけたり,反対に腫瘍と思われたものが乳腺の重なりであることがわかるなど,診断能を向上させることができる。トモシンセシス撮影では,±7.5°の範囲を15回撮影をするが,被ばく線量はガイドラインに定められている線量よりも低く抑えられており,検診での使用も可能となっている。
回診装置では,「Sirius Star Mobile」が展示された。搭載するFPDは,富士フイルムメディカル社の「FUJIFILM DR CALNEO flex」か,コニカミノルタヘルスケア社の「AeroDR」から選んでアドオンすることができ,ユーザーのFPD環境に合わせた提供が可能である。
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●CT:128スライス対応となった64列CT「SCENARIA」を展示
CT装置は,64列128スライスCT「SCENARIA」が展示された。2010年に発売したSCENARIAは,昨2012年7月から128スライス対応にシステムをバージョンアップし,倍密度での画像再構成が可能となった。従来の64列装置を導入している施設でも,システムのバージョンアップで128スライス対応にすることが可能である。バージョンアップすることで,1mmや2mmといった高い空間分解能が求められる耳小骨などの撮影においても,高分解能の画像が期待できる。
左右に80mmずつ,計160mmの移動が可能な横スライド寝台は,心臓だけでなく肩などの撮影の際に,撮影中心により近づけることが可能となる。また,重症患者など自分で身体を動かすことができない患者であっても,横スライド機能を利用してベストポジションで撮影することができる。全身どの部位でも0.35sec/rotの高速撮影を可能とし,三次元画像再構成アルゴリズム“CORE法”の採用で,ハイピッチ撮影を実現。180mm/秒の撮影が可能で,胸腹部であれは3.8秒,胸部だけの場合は1.7〜1.8秒程度で撮影できる。
SCENARIAには,逐次近似法を応用した画像処理技術Intelli IPの第2世代となるIntelli IP(Advanced)を実装しており,低線量撮影時の画像ノイズを低減させることができ,被ばく線量を抑えた検査が可能となる。また,高周波強調フィルタ適用時のノイズを効果的に低減することができ,ステント内腔の評価などにおいて有用である。
昨年に続き展示された専用モニタと専用3D眼鏡でCT画像をステレオ視する,3D Realizer「eXtation」は,大腸内視鏡や気管支内視鏡の表示にも対応するようになった。
●核医学・治療装置:高精度に腫瘍のみに線量を集中させる「TomoHDシステム(TomoTherapy)」を紹介
核医学・治療装置のコーナーでは,放射線治療装置「TomoHDシステム(TomoTherapy)」(アキュレイ社製)と,三次元放射線治療計画システム「Pinnacle3」の新しい機能とプラットフォーム(フィリップス社製)を中心に展示が行われた。
CT装置の技術を応用したTomoTherapyは,加速管がガントリ内を回りながら,マルチリーフコリメータが高速20msで開閉し,周囲の正常組織への照射をできるだけ少なくしながら,腫瘍のみに線量を集中させることができる。ヘリカルスキャンCTのように,テーブルをスライドさせて照射するのが特徴で,一度に135cm範囲の治療が可能。全身の腫瘍に対して適応でき,腫瘍の形状や数,大きさを問わずに,同じ手順での治療が可能となっている。2008年の保険適用後,適用部位が拡大しているIMRT(強度変調放射線治療)を受ける患者数が増加しつつあるが,TomoTherapyでは30人/日の治療が実施可能である。日本国内で33台,海外では400台前後が稼働している。
治療計画装置Pinnacle3は,再治療計画のワークフローを簡略化してAdaptive Radiotherapyにも対応できる“Dynamic Planning”と,アトラスベース&デフォーメーション臓器自動抽出“Auto-Segmentation with SPICE”を実装した新しいプラットフォームProfessionalにより,短時間で精度の高い計画作成を可能にする放射線治療プランニング環境を実現する。複数回にわたって治療を行う放射線治療では,治療経過中に患者の体型が変化することがあり,再治療計画が必要となる場合がある。Dynamic Planningでは,照射前と照射期間中のCT画像を用いて,照射前の腫瘍やリスク臓器の輪郭からの変形や変化量を自動で計算して再治療計画を行う。ビーム情報をはじめとするあらゆる初回の治療計画データのコピーも行われ,1から計画を作り直す必要がなく,容易かつ短時間に再治療計画が可能となる。また,再治療計画が必要かどうかのアセスメントも容易に行え,Dynamic Planningにより,再治療計画に要する時間を大幅に短縮することができる。従来のPinnacle3からバージョンアップのみで使用することができ,操作者はシンプルなマウス操作を覚えるだけで利用可能となる。
●ヘルスケアIT:ニーズの高まる医療クラウドサービスや,施設に合わせたIT製品のパッケージを提案
ヘルスケアITコーナーでは,電子カルテシステムや医用画像システム(PACS),レセプトチェックシステムの実機を展示するとともに,日立の医療クラウドサービスについてパネルでの展示が行われた。
近年,医療機関の各種データのバックアップの重要性が強く認識されはじめ,施設とは離れたデータセンターにデータを預けるクラウドサービスへの注目が高まりつつある。現在日立では,電子カルテと医事会計システムのデータを預かる「安心バックアップ」サービスを提供している。データの保存には,Tier 4レベルの高い信頼性を持つ日立製作所のデータセンターを利用している。今年度中に画像データを預かるサービス「データバックアップ/アーカイブサービス」の提供も予定しており,さらに将来的には,ベンダーに依存しない画像の取り扱いや,施設間連携のプラットフォームとなるゲートウェイをデータセンターに置き,医療施設がより地域連携に参加しやすい環境の整備などを行っていく予定だという。
病院向けの画像システム「ImageConcier ICW-1000」は,検査履歴が時系列で表示され,PACSの扱いに慣れている読影医だけでなく,臨床医にも使いやすいシステムとなっている。また,画像システム「WeVIEW」は,検診業務トータルサポートシステム「Hellseher Next」とともに展示された。検診施設での使用に適した操作性やスピードを追求したWeVIEWは,多くの検査を迅速に処理するための工夫として,4面構成の提案も行われた。
ほかにも,小規模施設・診療所向けとして,画像システム「NV-Light」とクリニック向け電子カルテ「Hi-SEED AS」,レセプトチェックシステム「べてらん君」を組み合わせたトータルソリューションも提案された。豊富なチェック機能を搭載したHi-SEED ASは,病名を登録した時に,リアルタイムでべてらん君との照会が行われるため,レセプトチェック時の手間が省け,記載漏れやミスを防ぐことができる。べてらん君は,紙のレセプトに近いイメージのレイアウトであり,従来のレセプトに慣れた医事課のスタッフも比較的スムーズにシステムに移行することができるという。
電子カルテシステムとしては,200床以下の中小規模病院向けの「Open-Karte」も展示された。Internet Exproler上で利用可能なWeb型であることが大きな特長で,クライアント側へのソフトウエアのインストールや,クライアントライセンスが不要なシステムとなっている。
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●測定装置:X線撮影装置と撮影台を共用できる骨密度測定装置「DCS-900EX」などを展示
日立アロカメディカルの製品として,骨密度測定装置と放射線測定装置のラインナップが展示された。
骨密度測定装置としては,腰椎,大腿骨,前腕骨専用の「DCS-900EX」と前腕骨専用の「DCS-600EXV」,さらに超音波で測定を行う踵骨用の「AOS-100SA」の3機種を展示。DCS-900EXは,X線撮影装置と撮影台を共用できることが特長で,キャスター付きで簡単に移動もできるため,一般撮影室に追加導入することができる。また,前腕骨の測定を容易に行うために開発されたDCS-600EXVは,ボタン1つで撮影からレポート作成までが行われ,検査者によらず安定した骨密度のデータを得ることができる。AOS-100SAは,コンパクトで場所を選ばないことが大きなメリットで,出張検診やX線検査室を設けていないクリニックなどで使用することができる。
放射線測定装置としては,電子ポケット線量計「マイドーズシリーズ」や,表面汚染や線量率を測定する各種サーベイメータ,放射線医薬品の放射能量を測定するキュリーメータが展示された。
お問い合わせ先:
株式会社 日立メディコ
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TEL 03-3526-8809 FAX 03-3526-8810
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