2015-4-21
シーメンス・ジャパンブース
シーメンス・ジャパンは,昨年と同様に「Answers for life.」をテーマに展示を行った。ITEM前に発表された多くの新製品を中心に,シーメンスの持つ先進的な画像診断テクノロジーで,正確な診断とリスクの少ない治療をサポートし,厳しい医療現場の環境の中でワークフローや経営にも貢献することをアピールした。例年と異なり展示会場のほぼ真ん中に設けられたブースでは,CT,MRIなどのモダリティ別の展示に加えて,Cardiology,Women's Health,Therapyの3つの領域でシーメンスが提供するソリューションを総合的に提案した。
展示会初日に開催されたメディア向けの会見で挨拶した代表取締役社長兼CEOの織畠潤一氏は,ヘルスケア領域の事業展開について,「シーメンスは,イノベーション・リーダーとして売上の10%近くを研究開発費に投資しており,単なるサプライヤーではなく医療機関のパートナーとして,臨床的な価値を高める先進の技術・製品を提供することで人々の健康増進に貢献していきたい」と述べた。また,常務執行役員ヘルスケアイメージング&セラピー事業本部長の森秀顕氏は,ITEMに合わせて発表された多くの新製品の中から,ハイエンド機能の搭載と運用コストの低減を両立した1.5T MRI「MAGNETOM Amira」,シングルソースCTでデュアルエナジー検査を可能にする“TwinBeam Dual Energy”,3D TEEプローブと自動計測技術でTAVIなど心臓手術を支援する「ACUSON SC2000 PRIME」について紹介した。そのほか,ブースでは,血管撮影装置の新しいラインとなる「Artis zee PURE」シリーズ,さらに小型・軽量化を図ったワイヤレスFDを搭載した移動型X線撮影装置「Mobilett Mira Max」,syngo.viaで培った3D機能を融合した新しいPACS「syngo.plaza 3D+」など,新製品を中心に展示を構成した。(4月17日取材)
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●MRI:最新ソフトウエアを搭載し,運用コストを削減した1.5T MRI「MAGNETOM Amira」
1.5T MRI「MAGNETOM Amira」は,3T MRIなどの上位機種向けのソフトウエアであるバージョン“E11”を搭載し,静音撮像法である“Quiet Suite”,体動アーチファクトを大幅に軽減して3D撮像を可能にする“FREEZEit”,高密度受信コイル“Tim4G”などが利用できる新しいハイエンド1.5T MRIである。一方で,ヘリウムの蒸発をゼロにする“ゼロボイルオフテクノロジー”と,マグネット内の液体ヘリウムの状態を常時モニタリングして,ヘリウム循環が必要ない時にはコンプレッサーを停止する“Eco-Power”によって,最大30%の電力消費削減を実現した。さらに,施設の検査数に連動した保守プランが用意されており,ハイエンド機能をコストを抑えて利用したいという,ユーザーのニーズに応える製品となっている。ボディコイルは13エレメントと高密度の構成ながら,約1kgと軽量で形状も軟らかく被検者に負担のない検査が可能になる。
そのほか,小児(新生児)用の16チャンネルコイルとして“Pediatric 16 coil”を展示した。Pediatric 16 coilは,小児を寝かせるクレードル部分が脱着できる構造となっており,検査室の外で鎮静を行い検査が可能なタイミングでクレードルごとセッティングでき,スムーズな小児MRI検査が可能になる。従来に比べて検査時の騒音を最大97%低減するQuiet Suiteと併用することで,小児検査に最適なMRIソリューションが提供できることを紹介した。
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●CT:1管球のCTでデュアルエナジー撮影を可能にする“TwinBeam Dual Energy”を発表
CTコーナーでは,JRC2015前に発表された1管球でデュアルエナジー(DE)撮影を可能にする新技術である“TwinBeam Dual Energy”を紹介し,それを搭載したシングルソースCTの最上位機種「SOMATOM Definition Edge」を展示した。
高エネルギーと低エネルギーの2つのX線出力でスキャンを行うDual Energy(DE)は,低・高管電圧CTの融合画像や造影剤成分のみを抽出した非造影CT,石灰化や骨除去画像や結石の成分解析など,従来のCTでは得られないさまざまな情報を取得することができる。シーメンスでは,2管球を搭載したデュアルソース(DS)CT「SOMATOM Definition」を2005年に上市し,DEイメージングに関する豊富な実績とさまざまな技術を蓄積してきた。今回,そのDEイメージングをシングルソースCTでもルーチンで利用可能な技術として開発されたのが,TwinBeam Dual Energyである。シングルソースCTによるDEイメージングには,出力を変えて2回スキャンする方法や高速スイッチングなどの方法があるが,TwinBeam Dual Energyでは,1つの管球から発生するX線に対して,線質の最適化を実現するフィルタを入れることで2つのエネルギーのX線を照射することが可能になり,精度の高いデュアルエナジー撮影が可能になった。画質の低下や被ばく量を増やすことなくルーチン検査(シーメンスでは,これをTrue Dual Energyと定義している)で利用可能で,これまでDSCTで蓄積されてきたさまざまな画像解析アプリケーションを利用することができる。TwinBeam Dual Energyは,SOMATOM Definition Edgeのほか,「SOMATOM Definition AS+」にも搭載することが可能だ。
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●血管撮影装置:シングルアームの「Artis one」,豊富な機能の「Artis zee PURE」シリーズをアピール
血管撮影装置は,領域別の展示コーナーである“Cardiology”内に循環器向けのシングルアーム血管撮影装置「Artis one」を,新製品の「Artis zee PURE」シリーズは,搭載されるアプリケーションを中心にモニタやプレゼンテーションで紹介した。
Cardiologyコーナーでは,Artis oneに加えてハイエンド機能をコンパクトにパッケージして機動性を高めた超音波画像診断装置「ACUSON X300 PE」,ケーブルレス超音波診断装置の「ACUSON Freestyle」を展示し,カテーテル室の総合的なソリューションを提案した。ITEM2014で発表され今回初めて実機の展示となったArtis oneは,床置きタイプながら,長手方向210cm,横手方向190cmの移動が可能で,循環器の撮影に必要とされる柔軟なCアーム駆動が特長である。会場では,ミドルサイズの30cm×30cmのパネルを搭載したモデルを展示し,テーブルを動かすことなく,Cアームの動きだけでシャント作成や下肢血管の撮影までカバーできることをアピールした。また,“HeartSweep”では,1回の造影剤の注入でさまざまな角度から心臓の撮影が可能になることを紹介した。
3月にリリースされたばかりの「Artis zee PURE」シリーズは,シーメンスの血管撮影装置のメインストリームである「Artis zee」シリーズの後継ラインとなる。Artis zee PUREは,ハードウエアを強化し,空間分解能の向上やアーチファクトを低減し,“3D Wizard”や“syngo 2D/3D Fusion”,“syngo DynaCT”など,インターベンションをサポートする先進のアプリケーションを搭載した。従来CTなどの3D画像との重ね合わせには,CアームでのDynaCTの撮影が必要だったが,syngo 2D/3D Fusionでは2方向のX線透視撮影のみで位置合わせが可能になり,素早い手技への移行と被ばく線量の低減を可能にした。そのほか,DynaCTでの術中の回転撮影から造影剤の流入の様子を描出する4Dイメージングを可能にした“syngo Dyna 4D”などについてプレゼンテーションを行って,来場者の注目を集めていた。
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●US:リアルタイム3D解析で心臓弁置換術をサポートする「ACUSON SC2000 PRIME」
超音波画像診断装置は,Therapyコーナーで,TAVIなどの心臓手術をリアルタイムに支援する循環器向けハイエンド超音波画像診断装置である「ACUSON SC2000 PRIME」と,ケーブルレスで穿刺などの手技をサポートするACUSON Freestyle,CT画像などとのフュージョンイメージが可能な「ACUSON S3000 HELIX」などを紹介した。
ACUSON SC2000 PRIMEは,新開発の3D経食道プローブ(3D TEE)である“Z6Msプローブ”を搭載し,1心拍の撮像で形態だけでなく血流情報もリアルタイムで3D観察が可能な“True volume TEE Imaging”を可能にする。また,僧帽弁,大動脈弁の自動計測ソフトである“eSie Valves”では,ワンクリック約5秒でTAVIの手技で必要とされる弁輪径など人工弁のサイズ決定に必要なパラメータが自動で計測できる。さらに,Z6Msプローブでは,レンズ面の熱を逃がす特殊加工で検査中断などのリスクを低減し,細径のプローブや手元の操作スイッチなどで,治療のワークフローを妨げない迅速な検査を可能にする。経食道3D超音波検査では,従来データを得るために7秒から14秒(心拍)が必要なため,データの取得が難しかったり息止めの負担があり,術中でのデータ収集が難しかった。ACUSON SC2000 PRIMEでは,1心拍のデータ収集と自動計測機能で,手術のワークフローに影響を与えることなく,正確な治療のための情報を提供できる。
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●Women's Health:検診から精査,フォローアップまでカバーする超音波,マンモグラフィを展示
領域別展示の一つである“Women's Health”では,超音波画像診断装置の「ACUSON S2000 ABVS」と,トモシンセシス機能など高精度の画像収集が可能なマンモグラフィ「MAMMOMAT Inspiration PRIME Edition」と,検診などのスクリーニングに対応する「MAMMOMAT Fusion」が展示された。
ACUSON S2000 ABVS(Automated Breast Volume Scanner)は,ボリュームスキャンで得られたデータをもとに解析用ワークステーションで読影する,CTやMRIのようなワークフローが可能であり,検査者に依存しない再現性の高い検査が可能になる。また,さまざまな解析ソフトを用いた診断や,乳房の冠状断(正面からのスライス)での観察も可能で,術前のプランニングなど質の高い情報を提供できる。さらに,ABVSの本体は,ACUSON S2000 HELXであり,シーメンスのエラストグラフィ技術である,Virtual Touch ImagingやVirtual Touch Quantificationを用いた診断が可能であり,ACUSON S2000 ABVSが乳腺領域の検診から精査,フォローアップまで対応できる“3D Total Breast Ultrasound”であることをアピールした。
マンモグラフィでは,新開発の直接変換方式と同等の画質を得られる間接変換方式FDを搭載したMAMMOMAT FusionがITEMでは初お披露目となった。トモシンセシス機能など精密検査や確定診断のための高精度画像診断に対応する「MAMMOMAT Inspiration PRIME Edition」と合わせて,デジタルマンモグラフィのソリューションを紹介した。
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●X線撮影装置:MAXテクノロジーに対応するデジタルX線のラインナップを紹介
シーメンスのX線撮影装置では,小型・軽量化を図った新型ワイヤレスFD「MAX wi-D」と「MAX mini」を中心に,固定型の一般撮影装置や移動型X線装置などを連携して運用し,自由度の高い撮影と効率的な運用を行う,MAX(Multiple Advaces in X-ray)テクノロジーを提案している。展示では,これらMAXシリーズのワイヤレスFDを統合したフルオートX線撮影装置である「Ysio Max(イージオ・マックス)」,新製品の移動型フルデジタルX線撮影装置「Mobilett Mira Max(モビレット・ミラ・マックス)」を紹介した。
Ysio Maxは,フルオートポジショニングやFDパネル傾斜センサーと連動したアシスト機能“MAX align”など,撮影装置とFDが連動したスムーズな撮影を可能にする。立位,臥位の撮影台には固定のFDを搭載し,加えて2種類のワイヤレスFD(MAX wi-D,MAX mini)を組み合わせられるなど,整形外科領域や高齢者の撮影など,さまざまな検査に対応できるようにした。また,Mobilett Mira Maxは,ワイヤレスFDが小型・軽量化されたことで、MAX wi-Dに加え,小型(24cm x 30cm)のMAX miniや交換用バッテリーも積載できるようになり,より多くのバリエーションや長時間の撮影に対応した。
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●Imaging IT:syngo.viaの機能を融合した3D PACS「syngo.plaza 3D+」
Imaging ITのコーナーでは,ITEM直前にリリースされた3D PACSである「syngo.plaza 3D+」を紹介した。シーメンスでは,モダリティから発生する画像データを集約し,自動解析処理技術によって読影の支援やワークフローの支援,高度な画像解析を行うことで読影業務をサポートするsyngo.viaを提供しているが,そのコア技術である自動認識技術の“ALPHA Technology”や“MM Reading”などの機能をPACSに搭載したのがsyngo.plaza 3D+である。部位の自動認識機能によって,前回と今回のMPR画像を表示し位置合わせをした状態で読影が可能で,比較読影が容易に行える。また,椎体や肋骨などのラベリングなども自動で行うことができる。読影の質の向上と同時に,業務効率を向上することで,病院の経営効率を上げることも期待できる。
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【メディアセミナー】超音波によるTAVI治療支援,デュアルエナジーの臨床講演を開催
シーメンス・ジャパンは,ITEM2015の会場内で4月17日(金),ACUSON SC2000 PRIMEの経食道三次元超音波(3D TEE)とデュアルエナジーについての臨床講演を行った。東京ベイ・浦安市川医療センターハートセンター長の渡辺弘之氏が「超音波3D経食道プローブの臨床有用性」について,東海大学医学部学部長の今井裕氏と同専門診療学系画像診断学准教授の丹羽徹氏が,「デュアルエナジーイメージングの臨床的有用性」について講演した。
「超音波3D経食道プローブの臨床有用性」について講演した渡辺氏は,最初に心臓と弁(大動脈弁,僧帽弁)の役割について概説し,画像診断としての心臓超音波の有用性を紹介した。高齢化に伴って弁膜症の患者は増加しており,外科手術を行うタイミングや適応を判断するために,最適な検査が心エコー検査であると渡辺氏は述べた。大動脈弁置換術(TAVR/TAVI)では,適切な人工弁を選択するために弁輪径の計測が重要であり,ACUSON SC2000 PRIMEでは新しい3D TEEプローブによって,短時間でデータを収集・解析できTAVIに必要な情報が得られるようになったと評価した。また,僧帽弁手術のガイドラインでは,弁置換ではなく弁形成術を第一選択として成功率を上げることが求められており,3D TEEでは弁の動きや部位,形態などを確認でき,形成可能性について多くの情報が得られると述べた。渡辺氏は,3D TEEエコーは,安全で的確な治療のために必要な検査であり,短時間でさまざまな解析が可能なACUSON SC2000 PRIMEへの期待は大きいと結んだ。
「デュアルエナジーイメージングの臨床的有用性」では,今井氏が東海大学医学部付属病院と画像診断センターの概要を説明したあと,丹羽氏がデュアルエナジー(DE)CTイメージングの臨床における有用性について臨床画像を含めて紹介した。丹羽氏は,DECTでは2つの異なった管電圧による撮影によって,従来の撮影と同等の線量で,シングルソースCTでは得られなかった新たな情報が得られることがメリットであるとして,低電圧と高電圧CTの融合画像(composite image)や石灰化や骨除去を行った画像(calcium and bone removal image),機能画像としてヨードマップや結石の性状解析などの臨床画像を呈示した。特に,結石の性状解析により治療方針の決定が可能になったことは,DEの価値が画像診断だけでなく治療領域にも及んでいることを示していた。最後に今井氏が,「DEイメージングは,撮影後の画像解析によって個々の症例に適切な診療情報を提供する個別化医療(personalized medicine)を可能にする技術である」と総括した。
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●お問い合わせ先
シーメンス・ジャパン株式会社
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