2017-4-25
日立製作所ブース
日立製作所は,“Radiology Solutions through Digital Healthcare”をテーマに,デジタル技術を活用した画像診断機器やヘルスケアITなど,多彩なソリューションを紹介した。ブースを「画像診断ソリューション」「低侵襲治療ソリューション」「放射線治療ソリューション」「デジタルヘルスケア」の4つのエリアに分けて新製品・新機能を展示するとともに,定量化技術を紹介する特設コーナー「Quantitative Imaging Theater」やプレゼンテーションステージでは,日立独自の解析技術やサービスを来場者にアピールした。
新製品としては,静音化技術による快適性や経済性を追求した1.5T超電導MRIシステム「ECHELON Smart」や超音波診断装置「ARIETTA」シリーズの最上位機種「ALOKA ARIETTA 850」,コンパクトな胃部集団検診X線システム「ESPACIO AVANT」, X線骨密度測定装置「ALOKA ALPHYS A」などが初めて展示され,来場者の関心を集めた。画像診断機器は,高画質・高機能を追究するハイエンドシステムの開発と同時に,ECHELON Smartや最新ソフトウエアが搭載された64列/128スライスCT「Supria Grande」などに見られる,省エネ化・コンパクト化といった経済性に貢献する開発が行われており,医療現場の多様なニーズに応える姿勢を示した。
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●定量化技術を紹介する「Quantitative Imaging Theater」
診断画像ソリューションエリアに隣接した特設コーナー「Quantitative Imaging Theater」では,“可視化を超える”をテーマに診断画像の定量化技術を映像で紹介した。質の向上や診断の均質化につながることが期待される定量化は世界的な潮流となっており,各社が研究開発を進めているが,日立は独自のシミュレーション技術を基にした高度なデータ解析技術で,診断画像の定量化に取り組んでいる。シアターではMRI,超音波診断における3つの技術を紹介した。
MRIの定量化技術“QPM(Quantitative Parameter Mapping)”(W.I.P.)は,各種コントラスト画像の作成に必要な信号を一度に三次元で撮像し,パラメータフィッティングで得た定量値マップから各種強調画像を作成する技術。頭部ルーチン検査で撮像されるT1強調画像,T2強調画像,T2*強調画像,プロトン密度強調画像,FLAIR画像に加え,水画像,脂肪画像,定量的磁化率マッピング“QSM(Quantitative Susceptibility Mapping)”(W.I.P)を生成できる。頭部ルーチン検査が5分程度に短縮でき,撮像後には任意断面の二次元画像を作成することも可能である。
QPMでも得られるQSMは,生体組織が持つ固有の磁化率を定量的に評価する技術である。T2*強調画像では出血と石灰化は同じような低信号を示すが,QSMでは局所的な磁場強度の違いから,それぞれ異なる輝度で描出されるため容易に鑑別可能となる。また,酸素摂取率(OEF)計測への応用研究が進められており,従来はPETでしかできなかったOEF計測がMRIで非侵襲的にできるようになると期待される。
超音波診断における定量化技術“SWM(Shear Wave Measurement)”は,超音波エラストグラフィの手法の一つであるShear Wave Imagingにおいて,1回の測定で剪断波の伝搬速度Vsを複数回計測する。そして,エラー処理を行い,有効な値の割合を信頼性指標VsN(%)として表示することで,肝線維化評価の精度向上に貢献する。
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●MRI:快適性や経済性に配慮した1.5T超電導MRIシステム「ECHELON Smart」を国内初展示
MRIは,新製品の1.5T超電導MRIシステム「ECHELON Smart」が展示された。ECHELON Smartは,画質,スピード,快適性,エコロジー,設置性に特長を持つシステム。中でも特徴的なのが,撮像音を最大94%低減する静音化技術“SmartCOMFORT”の搭載で,撮像時間と画質を従来と変えることなく静音化を実現した。脳ドックで撮像される画像(T1強調画像,T2強調画像,T2*強調画像, FLAIR画像,MRA)に適用でき,モーションアーチファクト低減技術“RADAR”も併用可能である。また,高速ADコンバータを搭載し,ノイズ低減処理の最適化によるSNR向上,そしてRFシステム,グラディエントシステムのパフォーマンス向上により高画質化・高速撮像を可能にした。撮像時間は,頭部のDWI,FLAIR画像,T2強調画像,MARで約3分半,T1強調画像,T2*強調画像,頸部MRAを加えても約7分で検査を完了でき,静かな環境で短時間の頭部検査を提供する。ブースでは,SmartCOMFORTを体感できるVR体験コーナーも設けられた。
また,経済性や設置性の向上も図っている。“SmartECO”コンセプトとしては,液体ヘリウムを消費しないゼロボイルオフに加え,超電導状態を維持するための冷却装置を一定時間停止する省エネモードを搭載し,消費電力をMRI本体だけで17%低減。さらに,チラーや機械室の放熱量が低減することや電源容量を29kVAまで下げたことで,全体の消費電力低減につながる。MRIと機械室電源ユニット間のケーブルを延長したことで,自由度の高いレイアウトが可能になった“SmartSPACE”も大きな特長である。永久磁石型オープンMRIから超電導MRIへのリプレイスではスペースの確保が課題となる場合が多いが,ECHELON Smartの機械室は,検査室の隣室に限らず廊下を挟んだ離れた場所にも設置することができ,自由度の高い設計が可能となる。会場では,3パターンのレイアウト例を,ホログラム映像を用いて紹介していた。
ECHELON Smartはワークフローを簡略化することでスループットの向上も図っており,受信コイルは頭部用と脊椎用を常時据え置きのまま検査を行え,腹部用や関節用コイルは被検者に載せたり,巻き付けたりするだけで簡単にセッティングできる。新しく整形領域用の多目的コイルに8チャンネルコイルが追加されたことで,xyzの3断面でパラレルイメージングが可能になり,入室から退室までのトータルな検査時間のさらなる短縮に貢献する。
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●CT:128スライスへと進化し新機能を追加した「Supria Grande」をアピール
CTは,開口径75cmのガントリ,3ユニット構成,設置面積12m2のオープン&コンパクトな16列マルチスライスCT「Supria」と64列マルチスライスCT 「Supria Grande」が,最新ソフトウエアを搭載し,さまざまな新機能が追加されたことを紹介した。Fine Recon機能の搭載により,それぞれ16列/32スライス,64列/128スライスのシステムへと進化し,より多くの情報を得られるようになっている。
Supria Grandeは,「Speed」「Quality」「Comfort」の3つのテーマで展示された。Speedでは,全身を0.625mm厚で撮影でき,1回の息止めで体幹部を10秒以内で撮影できるスピードを有することから,高画質かつ短時間のCT検査を提供できることをアピール。また,電源をオンにしてから約4分半で検査を開始できる高速システム起動は,救急病院やクリニックから好評を得ている。
Qualityでは,アルゴリズムを改良したノイズ低減処理“Intelli IP RAPID”の実装により,画像演算時間が約半分となったことで実用性が向上し,ルーチン検査で高画質を取得できるようになった。また,新機能として“軌道同期スキャン”が搭載された。単純撮影と造影撮影を同一らせん軌道で行うことで,サブトラクション画像の位置ズレによるアーチファクトを低減し,明瞭な3D画像の取得が可能になっている。
Comfortでは,被検者,検査者,経営者にやさしい機能を紹介した。新しい機能としては,画像再構成中にボタンひとつで緊急患者の画像を優先的に再構成する“優先リコン”機能と,消費電力を最大55%低減する“Eco mode”が搭載された。Eco modeは,機器の動きを適切に制御するOn-time Standby機能と待機時消費電力を抑制するOff-time mode機能により省エネを実現し,病院経営に貢献する。また,Supriaシリーズが工場からの輸送に鉄道を積極利用することで,CO2排出量低減に貢献したとして,3月に国土交通省のエコレールマークを取得したことが紹介された。
SupriaとSupria Grandeは共通のコンパクトガントリを使用しているため,ユーザーのニーズに合わせて16列から64列へのアップブレードが可能となっている。Supriaシリーズは発売から3年半(2017年3月末時点)で,国内817台,全世界で1291台が導入されている。
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●超音波診断装置:ARIETTAシリーズにハイエンド装置「ALOKA ARIETTA 850」が登場
超音波診断装置は,ハードウエアや制御エンジンを一新し,多くの新技術を実装したARIETTAシリーズ最上位機種「ALOKA ARIETTA 850」を展示し,次世代超音波を担うシステムとしてアピールした。ALOKA ARIETTA 850は,「Pure Image」「Seamless Workflow」「Your Application」の3つをコンセプトに,臨床価値の高い画像を臨床医に提供することをめざして開発された。
診断に有用な画像の取得・表示のために,さまざまなハード面の改良が行われている。4G CMUT(CMUT リニア SML44 プローブ)は,先端の振動子に日立が開発したシリコンウエハー(半導体の膜)を用いることで,軟らかい生体への接触において歪みが生じにくく,高いパルス特性を確保できる。これにより周波数帯が広がり,2〜22MHzの広帯域を実現。部位ごとに低〜高周波のリニアプローブを使い分ける必要がなくなり,1本でさまざまな部位の検査を可能にした。また,超音波の送受信技術“eFocusing”は,浅部から深部まで全領域に焦点を合わせることができ,鮮明な画像を描出する。これらの技術で取得した画像は,液晶モニタよりも黒に強い有機ELモニタ(22インチワイドモニタ)に表示され,高コントラスト分解能の画像で臨床医の診断や治療を支援する。
また,姿勢が不自然になりやすい検査者の負担を軽減するため,人間工学に基づきハードウエアの各所も改良。可動域の広いモニタアームや基本操作を5つのスイッチで行える操作卓を採用し,検査者へのやさしさにも配慮した。
最上位機種として,診断や治療を支援するアプリケーションも充実している。超音波ガイド下での経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)を支援するため,日立はITEM 2016で複数穿刺での穿刺ラインをシミュレーションする“3D Sim-Navigator”を展示したが,今回新たに“E-field Simulator”を開発した。これは,複数電極の配置から電気がどのように流れるかをシミュレーションし,焼灼されると想定される範囲をCT画像やMRI画像に重畳表示する機能で,より安全で正確な治療をサポートする。
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●X線システム:車載可能なFPD搭載胃部集団検診X線システム「ESPACIO AVANT」
X線システムの新製品として,2017年2月に発売した車載可能な胃部集団検診X線システム「ESPACIO AVANT」を展示した。従来の胃部集団検診X線システムはI.I.を搭載していたが,ESPACIO AVANTにはFPDを採用。据え置き型システムと同じ画像処理エンジン“FAiCE-V NEXT STAGE1+”を採用することで,高画質化を実現した。また,車載においてスペースを有効活用できるよう,従来システムと比べ操作卓を約20%小型化するとともに,画像処理コンピュータを操作卓内に格納。X線高電圧装置の高さも,従来の150cmから88.8cmに低くなっている。検査においては,船底型ローリング天板により被検者の体軸が回転中心付近に維持されるため,回転により胃部が視野から外れることがない。また,映像系・検出器は前後方向だけでなく,左右方向にも移動するため,被検者に動いてもらうことなく位置決めすることができ,被検者負担の軽減や検査時間の短縮につながる。
このほかX線システムとしては,FPD搭載の移動型システム「Sirius Starmobile tiara」と,アナログ撮影からデジタル撮影までさまざまな運用に対応する移動型システム「Sirius Starmobile tiara airy」,低侵襲治療ソリューションエリアに内視鏡治療ソリューションを構成するシステムとしてX線透視撮影システム「CUREVISTA」が展示された。
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●骨密度測定装置:スクリーニングから精密検査まで対応する前腕用の新製品「ALOKA ALPHYS A」
X線骨密度測定装置は,腰椎や大腿骨を測定できる骨密度測定装置「Dichroma Scan DCS-900FX」と,世界初展示となった新製品の「ALOKA ALPHYS A」の2機種を展示した。ALOKA ALPHYS Aは,これまで展開してきた前腕用X線骨密度測定装置「DCS-600」シリーズの後継となる新ブランドの装置で,健診施設やクリニックをメインターゲットとしている。従来機では1種類のスキャンモード(15秒)のみであったが,健診施設でのスループット向上に寄与する高速モード(7.5秒)と,より精度の高い検査を行える高精度モード(30秒)の3つの測定モードを標準搭載した。高齢化により増加する車椅子の被検者へ配慮し,台車を91〜104cmに上下動できるようにしたことで,車椅子のタイヤが台車に当たらないように調整可能となっている(オプション)。また,検査室の色調に合わせられるよう5色のカラーシートが用意されている(オプション)。6月からの販売を予定している。
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●放射線治療ソリューション:トモセラピーシステムの新シリーズ「Radixact」を紹介
放射線治療ソリューションエリアでは,新製品となるトモセラピーシステムの新シリーズ「Radixact」(アキュレイ社)を前面に出して紹介した。Radixactは,リニアックの出力が従来の850MU/minから1000MU/minへと高くなり,より短時間での照射を実現。また,新しいマグネトロンにより出力安定性が向上し,長時間にわたり一定の出力で照射できるようになったことで,シミュレーションと実照射の検証結果の差が小さくなる。ハードウエア面では,ガントリ奥にカウチキャッチャーを設置することで,広範囲照射で寝台が奥まで動いた場合にもたわむことなく,精度良く照射することができる。CTの撮影速度も,従来の1回転10秒から6秒に高速化し,治療全体のスループット向上に貢献する。
もう一つの特徴が,治療計画システム「Precision」も搭載した構成となった点である。照射用コンソールに加え,治療計画用コンソールが搭載され,計画から照射,検証まで,Radixactだけで放射線治療を完結させることが可能になった。CT画像とMR画像を取り込むことができ,画像変形による高精度な重ね合わせ評価ができる。治療計画では,アトラスベースで自動セグメンテーションが可能で,組織の輪郭を細かく描くことができる。
このほか,国内外での導入実績が豊富な粒子線治療システムの紹介や,治療計画システム「Pinnacle3」「RayStation」の実機でのデモンストレーションを行い,治療計画から放射線・粒子線治療までトータルに提供できることを示した。
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●データ活用によるデジタルヘルスケアソリューションをステージでアピール
日立製作所は,膨大な医療データをつくり,つなぎ,使うことで新しい価値の創出をめざしている。プレゼンテーションステージでは,データ活用を支えるIoTプラットフォーム「Lumada」や人工知能「Hitachi AI Technology/H」,ビッグデータアナリティクス技術を用いたデジタルヘルスケアソリューションを紹介した。検査支援ソリューションとしてMRIの位置決め支援機能“AutoPose”や定量化技術,サポートサービスの進化としてMRIのダウンタイムを最小化する故障予兆診断サービス「Sentinel Analytics」,さらに医療分析ソリューションについて解説。医療分析ソリューションは,回復期リハビリ病棟向けにまもなく販売を開始することが告知された。
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●お問い合わせ先
株式会社日立製作所
住所:〒110-0015東京都台東区東上野2-16-1 上野イーストタワー
URL:www.hitachi.co.jp/healthcare