2017-2-21
胃部集団検診X線システム
「ESPACIO AVANT」
(株)日立製作所(以下,日立)は,検診車に搭載可能な胃部集団検診X線システム「ESPACIO AVANT」(エスパシオ アバント)を2月24日から日本国内で販売開始する。
本製品は,X線検出器であるFlat Panel Detector(以下/FPD)を車載用X線システムに採用するとともに,据置型のX線システムに搭載される高性能な画像処理エンジンを採用することで,高画質化を実現し,診断の質の向上に貢献する。また,従来システム*1 と比較して,遠隔操作卓を約20%小型化し,X線高電圧装置の高さを約40%低くしたことで,検診車内をより広く使用することが可能になる。
日本の胃がんの罹患者数は,2016年に約13万人*2 と,大腸がんの約15万人*2 に次いで2番目に多いものの,胃がんによる死亡者数は減少傾向にある。これは,医療技術の発達や検診の普及に伴い,早期がんであれば身体への負担が小さい腹腔鏡手術などの治療が可能となったためであり,日本では,胃がんの早期発見に向け,定期的なX線検査や内視鏡検査による検診が推奨されている。
日立は1960年から,胃部集団検診用の透視(動画)と撮影(静止画)の両方が可能な車載用X線システムを提供しており,映像機器(FPD)や透視撮影台が動くことで被検者の負担を軽減できる2wayアームやローリング天板などの特徴を有している。
今回,販売開始する「ESPACIO AVANT」では,システムのこれまでの特徴を継承し,さらにX線検出器にFPDを採用することで,車載でありながら,医療機関などで使われるX線システムと同等の高画質な透視・撮影画像を提供することが可能となり,疾患の早期発見をサポートする。
●新製品の特徴
1. X線検出器にFPDを採用し,より高画質で快適さを実現
胃部集団検診X線システムの検出器としてFPDを採用。従来システムは,X線検出器にイメージインテンシファイア*3(以下/I.I.)を使用していたが,I.I.は真空管のため,透視撮影画像が円形となり,画像周辺部にゆがみが生じてしまうため,診断が難しい場合があった。今回採用したFPDによる透視撮影画像は四角形で,周辺部もゆがみの少ない画像を描出することができるため,明瞭なX線画像を作成することができる。また,FPDを採用したことで,透視撮影台の下部スペースがコンパクトになり,形状もラウンドフォルムにしたことで,検診車内において被検者が感じる視覚的な圧迫感を軽減し,より快適な検査環境を提供する。
2. 省スペースを実現した遠隔操作卓,X線高電圧装置
遠隔操作卓の体積を同社従来システムと比較して約20%小型化を実現。さらに,X線高電圧装置の高さを150cmから88.8cmと低くしたので,検診車内のレイアウトの自由度も高まる。
3. 操作性を向上し,検査者の負担を減らす操作パネル
X線条件を設定する操作パネルに,タッチパネルとダイヤルを採用。タッチパネルで直観的な操作が可能となるほか,管電圧や撮影時間など,細かい数字などの条件設定をダイヤルで素早く行うことができることから,操作者の負担を軽減し,短時間に多くの被検者を検査する集団検診をサポートする。
4. 被検者の負担を低減し,快適な検査環境を提供する日立独自のローリング天板
胃を含む上部消化管検査では,造影剤のバリウムを内壁全体に付着させて撮影を行うが,透視撮影する上部消化管の角度や位置を調整(位置決め)する必要がある。本システムでは日立独自の天板回転法により,回転中心を被検者の体軸付近に保ちながら天板全体を左右に回転(ローリング)できる。加えて,映像機器(FPD)が天板に対し左右前後に移動するため,素早く位置決めができる。これらにより,上部消化管検査(検診)が迅速に行えることから,被検者の負担を低減する。
5. 高画質を実現する日立独自の画像処理エンジン「FAiCE-V NEXT STAGE1+」
施設内で使用する据置型のX線システムに搭載していた日立独自の画像処理エンジン「FAiCE-V NEXT STAGE1+」(フェイス ブイ ネクストステージ ワン プラス)を採用しており,この画像処理エンジンは,動き追従型ノイズ除去技術「MTNR」*4,マルチDRC 処理「M-DRC」*5 などで構成されている。これにより,車載システムで据置型と同等の高画質の検診・検査を実現する。
*1 CLAVIS MOBILE ESPACIO(クラビス モバイル エスパシオ)
*2 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター統計予測(2016年7月)。
*3 I.I.(image intensifier):入射されたX線に相当する可視光像に変換する機器。
*4 MTNR(Motion Tracking Noise Reduction):フレーム間の動きを検出し,動きに合わせて残像を抑える技術。従来,X線透視撮影中に,被検者の動きによる残像が生じることで画質に影響があったが,本技術により,動きによる残像を抑え,高画質化を実現する。
*5 M-DRC(Multi Dynamic Range Compression):画像内の構造に応じて強調具合を変更する技術。従来の透視DRC に比べて強い輪郭強調が可能となり,視認性が向上する。
●販売価格(税抜き)
1億5500万円〜(システム構成により価格は異なる)
●問い合わせ先
(株)日立製作所ヘルスケアビジネスユニット マーケティング本部[担当:大森]
TEL 03-6284-3100
http://www.hitachi.co.jp/healthcare