2016-4-22
シーメンスヘルスケアブース
2016年1月に,シーメンス・ジャパンからヘルスケア部門が独立し,シーメンスヘルスケアとして新たなスタートを切った同社にとって,今回は初めてのITEMとなった。最初のITEMにおいて同社は,「新たなバリューで,医療の将来を創造する」をブースメッセージとして発信した。このメッセージには,医療にかかわる人々に最高レベルの価値を提供し,信頼されるパートナーになるという思いが込められている。ブース内では,それを具現化した最新の製品・技術・サービスが数多く披露され,来場者の関心を集めた。
初日に報道関係者向けに会見を行った,代表取締役社長兼CEOの森 秀顕氏は,「シーメンスのDNAは,イノベーションと言っても過言ではない」と強調した上で,「日本では医療機関の経営環境が厳しい状況にある。私たちは,病院経営に役立つようなイノベーションを提供していく」と述べた。その代表的なものが,DICOM情報をデータセンターが一元管理し,蓄積されたビッグデータを基に医療機関が経営や業務効率改善に役立つ分析を行えるクラウドサービス「teamplay」である。臨床的な有用性はもちろんのこと,そこからさらに一歩踏み出して文字どおり「新たなバリュー」を提供していく姿勢を打ち出したと言える。
このほか,ブース内では,「女性医療」のコーナーを設けて,スクリーニングから精査,治療計画・支援,フォローアップまでを貢献する製品群を紹介。今回のITEM前には提携する社会医療法人博愛会相良病院が,乳がん検診・診療用にMR-PETの「Biograph mMR」を導入することが発表されるなど,同社が女性医療の領域を強化していることがうかがえた。
「teamplay」以外の新製品としては,2015年の第55回日本核医学会学術総会に合わせて発表されたPET/CT「Biograph Horizon」,外科用X線撮影装置では「Cios Select」と「Cios Fusion」の2機種,超音波画像診断装置ではミドルクラスの「ACUSON NX3」を紹介した。さらに,CTコーナーでは,2016年3月のECR(欧州放射線学会)で発表されたばかりのハイエンドクラスのdual source CT(DSCT)である「SOMATOM Drive」(薬機法未承認)が参考出品された。
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●イメージングIT:業務効率の改善など病院経営に貢献するteamplay
シーメンスヘルスケアのブースで大々的にPRされたのが,teamplayである。医療情報のビッグデータを扱うクラウドサービスと同社が位置づけているteamplayは,2015年の北米放射線学会(RSNA)で発表され,満を持して日本での展開が開始された。teamplayは,CT・MRIなどの画像診断装置から得られるDICOM画像とそのタグ情報を,同社が管理するデータセンターに自動的に蓄積する。蓄積された膨大なビッグデータからは,放射線線量情報や検査プロトコールの管理,装置の利用情報の分析が行える。容易な操作手順で,線量や検査件数などの情報をグラフ表示し,検査に関する情報を容易に分析できる。
線量情報は装置や部位ごと分析が可能で,自施設の装置や検査だけでなく,国内外の多施設や学会などのガイドラインと比較できる。このデータを基に施設内の線量の目標値を設定して,最適化を図れる。また,線量情報をベースに検査プロトコールの見直しや改善も可能だ。さらに,画質や線量情報を基に,最適なプロトコールをほかの装置にリモートで設定して,複数の装置間で共有させられる。これにより,検査者によるバラツキなどをなくし,プロトコールの標準化を行える。
検査件数についても従来のRISより高度な分析が可能になった。一般的なRISでは,機種別に検査数の統計を出すといったことが中心であったが,teamplayでは,リアルタイムで検査担当者ごとの検査時間や検査数を収集し表示する。このデータを分析することで,検査手順や手技に関する技術を共有化してワークフローを改善し,検査時間の短縮など効率化を図れる。
teamplayにはマイクロソフト社のクラウドサービスである「Microsoft Azure」が採用されており,データセンターに蓄積される情報はすべて暗号化されるなど,高度セキュリティ技術によってセキュアな環境で運用していける。また,厚生労働省・経済産業省・総務省が公表しているいわゆる3省4ガイドラインに準拠。データセンターに送信されるDICOM画像とタグ情報は,個人に関する情報が削除・変換され,特定できないようにしており,医療機関は安心してteamplayを利用できる。teamplayの対応モダリティはCT,MRI,血管撮影装置,一般X線撮影装置,PETやSPECTなどの核医学装置といったDICOM規格に対応しているもの。DICOM規格に対応していればメーカーを問わずモダリティの情報を収集,分析することが可能だ。
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●女性医療:“seek”“find”“act”“follow”を一気通貫で支援するソリューション
シーメンスはワールドワイドで女性医療を重要な領域ととらえて,診断・治療のソリューションを提供している。今回のブースでは,スクリーニングを意味する“seek”,精査を表す“find”,治療計画や支援の“act”,術後のフォローアップを指す“follow”をキーワードに,それぞれのニーズに応える製品を紹介した。
seekのスクリーニング向け製品としては,デジタルマンモグラフィの「MAMMOMAT Fusion」を展示した。乳がん検診では,多くの検査を行うため,スピーディに撮影が行え,使い勝手も良い装置が求められる。MAMMOMAT Fusionは,こうした要求に応える装置として開発された。被検者の登録から検査までをワンクリックで自動設定できる“One-click-to-Image”や,設定した角度に自動的にアームが稼働する“シングルタッチ”などの機能を有する。検出器には,直接変換方式FDを採用したことで,検診車への搭載も可能である。また,被検者の乳房に合わせて最適な圧迫となるようにする“Op-comp”,乳房に接触すると圧迫の速度を緩やかにする“Soft-Speed”といった,検査を受ける女性の負担を考慮した優しい機能も充実している。
findの精査向けのものとして,超音波検査を自動化する「ACUSON S2000 ABVS HELX Evolution」が紹介された。乳がん検診における超音波検査の有効性を示すJ-STARTの結果が公表されるなど,乳がんの画像診断における超音波画像診断装置の重要性が高まっているが,一方で超音波検査は,検査者の熟練度などによって,その結果が異なることがある。そこで,ACUSON S2000 ABVS HELX Evolutionでは,プローブの走査を自動化して,検査者依存のない安定した画像を得られるようにした。組織弾性を測定するエラストグラフィ機能“Virtual Touch Technology”も搭載する。操作はタッチパネル方式を採用。検査画像は,専用ワークステーション「syngo Ultrasound Breast Analysis(sUSBA)」で縦断,横断,冠状断の3断面を表示。過去画像やマンモグラフィ画像と並列表示して読影を行える。
女性医療については,MR-PETの「Biograph mMR」が相良病院で乳がん検診・診療に使用されることになったのも大きなトピックスである。2016年10月から任意での検診や術前・術後の検査に用いられる予定である。ブース内では,MRI受信コイルとPET検出器を同心円上に重ねて配置されている独自のガントリの内部構造が見られるようにしたスケールモデルが展示された。このガントリ構造のために,MRIの形態情報とPETの機能情報が同時にきわめて高い位置合わせの精度で描出できる。
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●CT:ECRで発表された最新DSCTのSOMATOM Driveが参考出品
シーメンスは2015年に,医療機器メーカー初のCT「SIRETOM」の製品化から40周年,世界初のDSCT「SOMATOM Definition」の発表から10年を迎えた。この長年の歩みの中で,革新的な技術を生み出し市場に存在感を示してきた。今回の展示では,同社CTの代名詞とも言えるDSCTを前面に押し出し,“yes, DS”をテーマに掲げて,最新技術を来場者に紹介した。
中でも最も注目を集めたのが,参考出品された最新のDSCTであるSOMATOM Drive(薬機法未承認)である。プレミアムクラスの「SOMATOM Force」に次ぐハイエンド装置としてECRでお披露目されたSOMATOM Driveは,新開発のX線管“Straton MX Sigma”を搭載。検出器に“StellarInfinityDetector”を採用した128スライスのDSCTである。スキャン速度は458mm/s,時間分解能も75msという高性能を有し,心臓CTのほか,4D撮影で威力を発揮する。Straton MX Sigmaは,ハイパワーを特長としており,管電圧を70~140kVで10kV単位で設定でき,低電圧撮影でも従来よりも20%高い管電流を使用することが可能である。加えて最近のトレンドであるLow kVイメージングやX線スペクトルを変調したスキャンなども可能となっておりpersonalized low doseの実践を可能としている。
このほか,CTに関しては,読影支援システム「syngo.via」を発展させて,臨床研究や技術開発向けに用意される「syngo.via Frontier」が展示され,そのアプリケーションである“Cinematic Rendering”の画像が来場者に紹介された。
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●MRI:頭頸部領域の画質や検査効率を飛躍的に向上させる“GOBrain”と“Simultaneous Multi-Slice(SMS)”
MRIのコーナーでは,ハイエンドクラスの3T MRI「MAGNETOM Skyra」が展示された。シーメンス独自のコイル技術である“Tim(Total image matrix)”が第4世代へと進化。超高密度コイルエレメントと128のRFチャンネルからなる“Tim4G”により超高分解能撮像や全身撮像が容易に行える。操作性にも優れており,“Dot(Day optimizing throughput)”エンジンの採用により,検査部位や被検者に応じて最適なシーケンスを自動設定できるなど,検査効率とワークフローを向上する。さらに,静音技術である“Quiet Suite”によって,70%以上のノイズを除去。小児検査などにおいて,被検者の負担を軽減する。
今回の展示では,MAGNETOM Skyraに搭載されるソフトウエアの最新バージョン“syngo MR E11”に搭載された頭頸部領域向けの2つのアプリケーションが紹介された。その1つGOBrainは,Dotエンジンの最新バージョン“DotGo”とTim4Gにより,検査時間の短縮化を図った。頭頸部領域の撮像における位置決めを自動化し,5分程度で検査を施行できる。もう1つのSimultaneous Multi-Slice(SMS)は,複数断面を同時収集することで撮像時間の短縮化を図り,高分解能データを収集する。従来,神経線維を画像するMRトラクトグラフィでは,神経線維の走向に沿って撮像を行うため,時間がかかっていた。SMSでは,multi-band EPI を応用した“blipped CAIPIRINHA”で撮像することで,短時間で空間分解能に優れる画像を得ることができる。
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●核医学:リプレース需要に応えるPET・CT「Biograph Horizon」
核医学コーナーに展示されたのは,同社PET・CTの最新装置であるBiograph Horizonである。2015年11月の日本核医学会総会に合わせて日本国内で発表されたこの装置は,16スライスCTを搭載し,「高画質」「検査効率」「コスト効率」を追究して開発された。
国内市場でPET/CTが登場してから10年が経つ中,医療機関ではリプレース需要が高まっている。このニーズに応える製品として展開されるBiograph Horizonは,TOF-PETが可能で,検査効率が良いのが特長。従来機種と比較してSNRを200%改善するとともに,検査効率を約50%向上し,入室から撮像,画像確認までのトータルの検査時間を大幅に短縮できる。PET検出器にはスライス厚2mm,空間分解能4.3mmの高感度“Hi-Rez LSO検出器”を採用しており,1ベッド90秒の短時間撮像が行え,ランダムノイズを抑えた画像が得られる。また,ガントリの奥行きを130cmに抑えたことで,被検者の精神的な負担を軽減する。
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●X線:外科用X線撮影装置のラインアップを拡充し幅広いニーズに対応
X線撮影装置では,新製品として外科用X線撮影装置の「Cios Select」「Cios Fusion」を紹介した。シーメンスは外科用X線撮影装置として,従来「Cios Alpha」をラインナップしており,心臓,消化管,泌尿器,整形外科領域などオールラウンドの製品として展開していた。今回新たに加わった両機種は,線量自動設定機能“IDEAL”を搭載し,低被ばくかつ高画質の撮影が可能。Cアームの内径を73cmと広くすることで,ポジショニングなどの作業を容易にしている。
2機種のうち,Cios Selectは9インチのI.I.搭載の一般整形外科向けで,X線管と検出器の距離が78cmと広いながらも,装置本体はコンパクト設計となっており,フレキシブルに手技に対応する。一方,Cios FusionはFDを採用した脊椎,脊髄の手術にも対応する製品。FDのサイズは2つから選択できる。このFDには,データ収集や画像処理,キャリブレーション,透視プログラムの管理を一元化する技術である“Retina”が用いられている。また操作方式にはタッチパネルを採用している。Ciosシリーズのラインナップ拡充により,医療機関は自施設のニーズに合った最適な装置を選択できるようになった。
血管撮影装置では,「Artis zee BA PURE」が展示された。これにsingle source CTの最上位機種「SOMATOM Definition Edge」を組み合わせたIVR-CTの「Angio-CT MIYABI」も合わせて紹介された。2015年に発表されたArtis zee BA PUREは,インターフェイスを新たに設計。寝台横の操作卓の操作画面を室内の大型モニタに表示することで,視線の移動を減らす“Heads Up Display”を採用した。また,3D撮影を支援する“3D Wizard”やフュージョン機能“syngo 2D/3D Fusion”を利用できる。今回は高度なインターベンションを支援する新しいアプリケーションとして,大動脈瘤ステントグラフト内挿術においてCT画像から大動脈をトレースして透視像とフュージョンする“EVAR guidance”や慢性完全閉塞治療用“CTO Guidance”のデモンストレーションが行われた。
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●US:ハイエンドクラスの機能を搭載した汎用型装置の「ACUSON NX3 Elite」
新製品として展示されたACUSON NX3 Eliteは,2016年2月に発表されたミドルクラスの超音波画像診断装置。“ScanSmarter”をコンセプトとした操作方式とし,10.4型タッチパネルモニタを搭載。ボタンやスイッチ操作などを極力少なくし容易な操作性を実現して,検査者が手技に集中できるようにした。また,画像を表示するモニタには21.5型の大型高精細モニタを採用している。上位機種の機能を受け継いでおり,“eSieTouch Elasticity”が可能である。また,腹部用コンベックスプローブ・表在用リニアプローブにはハナフィレンズを搭載。近位から遠位までスライス厚が均一な画像を得ることができる。
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●お問い合わせ先
シーメンスヘルスケア株式会社
住所:品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎ウエストタワー 5F
TEL:0120-041-387
URL:http://www.healthcare.siemens.co.jp/medical-imaging