ITEM2018 日立製作所 ブースレポート
デジタル技術とモダリティを融合した多彩なソリューションで放射線科,画像診断に貢献
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2018-5-8
日立製作所ブース
日立製作所は,“Creating new value through innovation and digital technologies”を展示テーマに,CT,MRI,超音波診断装置など各種モダリティに加え,AI,手術支援ソリューションのエリアを設けた。デジタル技術とモダリティを融合させ,日立グループが持つアナリティクス技術を生かして,放射線科,画像診断に貢献していく姿を示す展示を行った。ステージプレゼンテーションでは,RSNA 2017で紹介した新しい取り組み“DI×AI(Diagnostic Imaging with AI)”(W.I.P.)とヒューマノイドロボット「EMIEW3」が,将来的に放射線科にどのように役立ちうるかについて,イメージ映像などを用いて紹介した。
初日(13日)には,新製品である64列マルチスライスCT「SCENARIA View」を披露するアンベールイベントを行い,執行役常務ヘルスケアビジネスユニットCEOの渡部眞也氏が挨拶した。渡部氏は,日立が得意とするAIやIoT といった新しいテクノロジーを駆使して,医療や健康にかかわるさまざまな社会的課題を解決し,より良い生活を提供するというヘルスケア事業の目的を述べた上で,新製品SCENARIA Viewへの期待を次のように語った。
「2010年に64列のSCENARIA,2013年に16列のSupriaを発売し,この2システムを軸にCT事業を展開してきた。2016年の統計では,CTの世界シェアは6%,5番目の規模となっているが,SCENARIA Viewの発売によりさらに飛躍していきたい」
挨拶に続き,初披露されたSCENARIA Viewは,新開発の逐次近似応用再構成機能“IPV”により高画質と低被ばくの両方で高いパフォーマンスを発揮するとともに,大開口径のガントリ,3ユニット構成など,操作性や快適性,設置性にも優れたCTとしてアピールした。
このほかMRI,超音波診断装置,骨密度測定装置,X線システムの新製品や新機能,手術室環境をトータルに提案するデジタル手術支援ソリューション「OPERADA」,DI×AIの開発状況が展示・紹介され,来場者の関心を集めた。
●CT:逐次近似応用再構成機能IPVを実装したSCENARIA Viewを発表
●画像診断支援:画像診断の質と効率の向上を支援するDI×AI
●手術支援ソリューション:手術室環境をトータルに提案するデジタル手術支援ソリューション「OPERADA」
●骨密度測定装置:検査室レイアウトに柔軟に対応する「ALPHYS LF」
●MRI:ECHELON SmartとTRILLIUM OVALの臨床活用の広がりをアピール
●超音波診断装置:肝臓エラストグラフィのアプリケーションに“Combi-Elasto”を追加
●X線システム:逆起倒タイプがリリースされた胃部集団検診X線システム「ESPACIO AVANT」
●CT:逐次近似応用再構成機能IPVを実装したSCENARIA Viewを発表
SCENARIA Viewは,CT検査における課題を解決すべく,1)ルーチンで使用できる被ばく低減機能,2)高スループットやワークフローの改良,3)さまざまな患者対応(高齢・高体重)をコンセプトに開発された,最新の64列マルチスライスCTである。ブースでは,その特長を3つの“みえる”で紹介した。
まず,「低被ばくで“診える”」をキーワードに紹介されたのが,新開発の逐次近似応用再構成機能IPV(Iterative Progressive reconstruction with Visual modeling)である。これは,逐次近似再構成を応用したノイズ低減技術“IntelliIP(Advanced)”を進化させた技術で,X線一般撮影と同等の被ばく線量と自然な質感での画像表現をめざして開発された。オブジェクトモデルと統計学的モデルに,新たに周波数特性を踏まえた物理モデルを組み合わせ,繰り返し処理を行う手法により,FBPと比較して画像ノイズを最大90%低減,被ばくを最大83%低減,高コントラスト分解能と低コントラスト検出能が最大2倍というFull IRに迫る性能を,専用の処理ユニットなしで達成した。また,Full IRはFBPと比べるとテクスチャが崩れることが指摘されていたが,IPVでは低コントラスト帯のMTF劣化を抑制し,周波数特性をFBPに近づけることで,テクスチャの改善を実現した。撮影設定は,部位と強度(9段階)を選ぶだけと簡単で,ルーチン検査や検診にためらいなく使用できる。
2つ目の特長である「ワークフローが“視える”」は,検査工程の自動化や画像処理の高速化によりワークフローを改善し,被検者の入室から退室までを短時間化することをめざした。AI技術を応用した“AutoPose”機能によるスキャン範囲の自動設定,最大60枚/秒の画像再構成処理,また,後処理においてはMPR画像と3D画像を自動作成するといった機能により,検査時間を従来比で約30%短縮可能にする。
さらに,「やさしさが“見える”」では,被検者が快適に検査を受けられ,操作者の負担を軽減する機能やデザインが採用されている。まず,ガントリの開口径は,SCENARIAの750mmから800mmへと50mm拡大し開放感が高まった。これに合わせて,テーブルの横スライド機能も160mm(左右80mm)から200mmへと拡張し,セッティングが容易になっている。なお,開口径は広がったが,ガントリ自体の大きさはSCENARIAとほぼ変わらないことに加え,画像処理ユニットが省略されて,ガントリ,寝台,コンソールの3ユニット構成となったことで設置性が向上した。ガントリ前面に設けられた24インチタッチモニタ“Touch Vision”やブレスガイドは,使用できる言語に新たにアラビア語が加わり,全11か国語で被検者への検査説明や息止めガイドを表示する。操作系も使いやすさを追究し,操作ボタンをまとめた集中操作パネルをガントリ前面の左右に設置した。
SCENARIAの上位システムとして,撮影機能も強化している。金属アーチファクト低減技術“HiMAR”と“Dual Energy Scan”を搭載し,より臨床に有用な画像の提供を可能にしている。日立のDual Energyは,80kVと140kVの2つのエネルギーによる撮影で異なるX線吸収率の画像を得るもので,撮影方法は,同じ位置を2回ずつ撮影する方法と,同一のらせん軌道で撮影する“軌道同期スキャン”を用いて80kVと140kVを別々に撮影する方法がある。なお,解析はザイオソフト社,テラリコン社のワークステーションで可能である。このほか,テーブルを高速移動することで80mm範囲の頭部パーフュージョン撮影を可能にする“Shuttle Scan”も実装されている。
日本国内ではITEM 2018初日の4月13日に発売し,以後,中国・米国を除く海外では2018年第1四半期中,2019年度に米国,中国での発売を予定しており,3年で500台の販売目標を掲げている。
●画像診断支援:画像診断の質と効率の向上を支援するDI×AI
ステージプログラムでも紹介された新しい取り組みDI×AI(Diagnostic Imaging with AI)(W.I.P.)は,「デジタルテクノロジーを活用し画像診断の質と効率の向上を支援」することをコンセプトとし,放射線科のさまざまなシーンをサポートするため,現在開発が進められている。日立が持つAI,ビッグデータ,センシング,IoT,VRなどの技術を応用し,検査受付では検査リストのチェック,撮影では位置決めや撮影の効率化,画像診断では定量化や読影支援を行うようなアプリケーションの提供をめざしている。
今回の展示では読影支援にスポットを当て,病変の検出,計測,レポートまでをAIでアシストすることで,読影効率を向上させる技術の開発状況を紹介した。一例として展示された肺がんの画像診断では,検出が難しいと言われる小結節やGGN(ground glass nodules:すりガラス様結節)も含めた病変の検出(マーキング表示)からサイズ計測まで自動で行われ,医師の読影後にはボタン一つでキー画像が添付されたレポートが出力される,というように一連の流れを自動化することで,読影時間を短縮できる可能性を紹介した。
ここで用いられる日立のAIは,医師の知見を基にしたルールベースとディープラーニングを融合した“Hybrid Learning”という方法を採用している。学習モデルに医師の知見に基づく特徴量を取り込むことで,「病変検出精度が高い」「出力の根拠を特徴量で示すことができる」「データ量の確保が困難な病変へも対応できる」といった特長を有する。
画像診断支援のDI×AIの取り組みとしては,第一段階として肺がん(肺がんCAD),脳疾患(白質解析,脳動脈瘤CAD),ロコモ解析(筋肉解析)から始め,以降,乳がんCADや認知症CAD(脳萎縮評価,鉄沈着評価)と段階的に開発を進める。これらはアプリケーションとして装置コンソールやワークステーション,PACSへの導入,または,クラウド上での提供を想定し,従来のワークフローや読影環境を変えることなく利用できることをめざしている。
●手術支援ソリューション:手術室環境をトータルに提案するデジタル手術支援ソリューション「OPERADA」
オープンMRIを中心に手術室環境をトータルに提案するデジタル手術支援ソリューション「OPERADA」を紹介するコーナーでは,OPERADAを構成する新しいツールとして,MR(Mixed Reality:複合現実)コンテンツと手術ナビゲーションシステム「OPERADA Arrow」の体験型展示を行った。中低磁場オープンMRIの豊富なラインアップを持つ日立は,1999年の東京女子医科大学脳神経外科手術室へのオープンMRI提供を皮切りに,デジタル技術による手術支援の知見を蓄積してきた。それを基に,オープンMRIをはじめとした同社製の各システムだけでなく,手術台や生体モニタなども含めて,手術室環境をパッケージ提案するOPERADAを2018年3月にリリースした。
ブースでは,MRヘッドマウントディスプレイ「Microsoft HoloLens」(マイクロソフト社)で手術室を体感できる新開発のコンテンツを展示した。HoloLensは,透過型ゴーグルに仮想イメージ(ホログラム)を表示し,実空間の視界に重ね合わせるMRデバイス。開発したコンテンツは,実際に手術室で用いることで,OPERADA稼働により手術室がどのようになるかを体感することができる。医療施設への提案力の向上や,稼働に向けたオペレーションのトレーニングなどに利用することを想定している。なお,ITEM会場では実空間が手術室ではないため,MRに代わってVRコンテンツを展示し,来場者はHoloLensを装着してさまざまなデジタル機器で構築された手術室を疑似体験した。
また,医療機器としてクラスⅢの認証を受け,2018年3月に発売した手術ナビゲーションシステム「OPERADA Arrow」も展示。赤外線センサーで術具に装着したポインタを認識し,CT画像やMR画像に術具位置を重ね合わせて表示する。±1mmの高精度でナビゲーションが可能であり,2D/3D表示対応や自由度の高い画面レイアウトなど,ユーザビリティにも配慮したシステムとなっている。
このほかOPERADAを構成するツールとしては,手術室内に設置するオープンMRI「OPERADA Open」,術中MR画像やナビゲーション画像,生体モニタ画像,術野映像などを統合し,医局など手術室から離れたところにも配信する映像統合配信システム「OPERADA Stream」がある。
●骨密度測定装置:検査室レイアウトに柔軟に対応する「ALPHYS LF」
骨密度測定装置は,2018年4月に発売した新製品の腰椎・大腿骨用のX線骨密度測定装置「ALPHYS LF」と,2017年に発売した前腕用X線骨密度測定装置「ALPHYS A」の実機を展示した。
ALPHYS LFは,従来製品「DCS-900FX」と比べてアーム開口範囲を拡大したことで,X線一般撮影装置と同室に設置する場合にも,アーム部とX線管が干渉せず,さまざまなレイアウトに柔軟に対応する。一般撮影室に設置する場合には,X線装置と寝台を共用することが多いが,アームが大きく開口することで,立位撮影台を寝台の頭側/足側に横並びで配置することも可能になる。施設ごとに異なる検査環境により柔軟に対応できるとともに,被検者が移動することなく臥位でのX線検査と骨密度検査をスムーズに連続して行うことができる。
また,専用の固定具は被検者の体に密着するように改良され,ポジショニングのしやすさと測定精度・再現性が向上すると期待される。
ALPHYS Aは,台車が上下動することで,車椅子に座ったまま,あるいは体位に制限がある被検者の検査も実施しやすいという特長を持つ。両装置とも,オプションで5色のカラーシートから選択でき,検査室の色調に合わせて導入することができる。
●MRI:ECHELON SmartとTRILLIUM OVALの臨床活用の広がりをアピール
MRIシステムは,1.5T超電導MRI「ECHELON Smart」と3T超電導MRI「TRILLIUM OVAL」の2台を実機展示した。
ECHELON Smartは,画質,スピード,快適性,エコロジー,設置性が特長のシステムである。撮像音を最大94%低減する静音化や,オープンMRIからのリプレイスも可能な設置性が高く評価され,発売から約1年で世界販売台数58台となっている。静音化技術“SmartCOMFORT”はDWIにも適用可能となり,頭部ルーチン検査では,プリスキャンも含め静かな環境での検査を提供する。なお,SmartCOMFORTでは体動補正技術“RADAR”も併用が可能となっている。位置決めサポート機能“AutoPose”も搭載されており,例えば脳梗塞症例における発症後数時間の超急性期と数日後の亜急性期の画像を比較する場合にも,まったく同じ断面での比較が可能である。臨床画像の展示では,1回の脂肪抑制法FatSep撮像で,T2強調画像,またはT1強調画像と脂肪抑制画像のマルチコントラストを得る使い方を,撮像時間を短縮させる工夫として紹介した。
2013年に発売され,全国7大学をはじめ多くの施設で稼働しているTRILLIUM OVALは,臨床での使用経験が積み重ねられている。ブースでは,実機の展示とともに,さまざまな部位の臨床画像も供覧された。4ch-4portで独立制御可能なRF照射コイルによる高いRF均一性に加え,医師からの助言を得てアプリケーションのチューニングを行うことで,頭部や整形領域だけでなく,腹部,前立腺,乳腺など全身領域で使いやすい装置となっている。また,ECHELON OVAL(1.5T)においては,金属アーチファクト低減技術HiMARの搭載が可能になり,人工関節症例など整形領域における使いやすさが向上した。
●超音波診断装置:肝臓エラストグラフィのアプリケーションに“Combi-Elasto”を追加
超音波診断装置を紹介するコーナーでは,ARIETTAシリーズのハイエンド装置「ARIETTA 850」,保険適用となった肝臓用エラストグラフィを搭載した「ARIETTA E70」,POCUS(Point Of Care Ultrasound)向けの「ARIETTA Prologue」の3機種を展示した。
半導体技術を用いた超広帯域(2~22MHz)プローブ「4G CMUT(CMUT リニア SML44 プローブ)」とともに展示したARIETTA 850は,画質,ワークフロー,アプリケーションのすべてにおいて最上位機種にふさわしい性能を有し,診断や治療を力強く支援する。今回,バージョンのアップデートが行われ,肝臓エラストグラフィのアプリケーションに新しく“Combi-Elasto”が追加された。従来からstrain elastographyである“RTE(Real-time Tissue Elastography)”とshear wave elastographyである“SWM(Shear Wave Measurement)”が搭載されていたが,別々のアプリケーションのため,それぞれ計測する必要があった。Combi-Elastoでは簡単な操作で同時計測が可能になり,ルーチン検査に容易に追加できる。計測結果として,LF Index(Liver Fibrosis Index),剪断波伝播速度(shear wave velocity:Vs)に加え,線維化F値・炎症A値に相当する定量指標(F IndexとA Index),脂肪量に相当する定量指標(ATT)が表示され,肝疾患の総合鑑別をサポートする。
●X線システム:逆起倒タイプがリリースされた胃部集団検診X線システム「ESPACIO AVANT」
X線システムは,移動型システムとしてFPD搭載型「Sirius Starmobile tiaraシリーズ」と,アナログ/デジタル撮影に対応する「Sirius Starmobile tiara airy」の2機種,X線透視撮影システムとして高画質と低被ばくを両立する「CUREVISTA」と,車載可能な胃部集団検診X線システム「ESPACIO AVANT」の2機種が展示された。
このうちESPACIO AVANTは,新しいオプションとして2018年1月に提供が開始された逆起倒タイプを展示した。このオプションにより,従来の起倒方向ではレイアウトできなかった検診車などへも導入が可能になる。FPD搭載のESPACIO AVANTは,画像処理エンジン“FAiCE-V NEXT STAGE1+”を実装し高画質化を図るとともに,操作卓やX線高電圧装置などを小型化した省スペース設計となっている。また,回転しても胃部を視野中心にとらえやすい船底型ローリング天板を採用することで,被検者の負担を軽減するとともに,位置決めをしやすいというメリットを持つ。
ブースでは,多言語胃部X線検査支援システム「e-検査ナビ」(アイエスゲート社)を組み合わせて展示した。これは,検査における体位変換の指示説明を,壁面や天井に設置したモニタにイラストや文字で表示するスタンドアローンのシステム。日本語をはじめ8か国語と,手話表示に対応する。聴覚障害のある被検者や外国人でも,イラストを用いたわかりやすい指示で安全に検査を行える。
●お問い合わせ先
社名:株式会社日立製作所
住所:東京都台東区東上野 2-16-1 上野イーストタワー
URL:www.hitachi.co.jp/healthcare