VARIAN RT REPORT

2024年9月号

人にやさしいがん医療を 放射線治療を中心に No.23

バリアンが提案する新たなソリューション ─Advanced Oncology Solutions─

辻井 克友/藤原 康生(株式会社バリアン メディカル システムズ Advanced Oncology Solutions部)

はじめに

バリアン メディカル システムズ(バリアン)は,「A world without fear of cancer─がんの脅威に負けない世界」をビジョンとし,医療従事者の方々とともに歩んできた。近年,バリアングローバルでは「Advanced Oncology Solutions(AOS)」というソリューションを展開している。AOSでは,高品質な医療のためのサポート,リソースの最適化,業務の効率化を目的としてさまざまなサービスを提供している。日本では2024年4月より,コミッショニングおよびマシンQAに関する医学物理サービスと,放射線治療部門のワークフロー最適化サービスを開始した。本稿では,バリアンコミッショニングサービスおよびマシンQAコンサルティングサービスを紹介する。

コミッショニング

1.コミッショニング業務の課題
コミッショニングとは,リニアックおよび治療計画装置が臨床使用するために十分な機能,必要な機械的精度や計算精度を有することを確認・調整する試験である。以前よりコミッショニングに関するインシデントが多く報告されており,慎重に実施しなければならない1)。放射線治療品質管理機構の提言によると,コミッショニング期間は2~3か月必要とされている2)。一方,コミッショニング業務による診療のダウンタイムや医療従事者の超過勤務などの課題があり,医療従事者や事務担当者はプレッシャーや不安を抱えながらの業務となる。コミッショニング業務は,リニアックを新規導入する際に「立ちはだかる壁」と言える。

2.バリアンコミッショニングサービス
バリアンコミッショニングサービスは,上記の課題を解消するサービスである。本サービスは,図1のとおり,コミッショニング前・中・後の3つのステップから構成されている。すべてのステップにおいて,ご施設へのていねいな説明やディスカッションを心掛けて実施する。本サービスの対象装置は「TrueBeamシリーズ」であり,コミッショニング期間は2週間としている。
この2週間という短期間でのコミッショニングを実現するために,さまざまな独自のツールを使用している。まず,TrueBeamシリーズのDeveloper Modeを使用することで,ビームオンを1回押すだけで複数の照射野条件を連続的に照射することができる(ユーザーがDeveloper Modeを使用するにはライセンス購入が必要である)。次に,Representative Beam Dataを使用することで,ビームデータ測定やビームモデリングにかかる時間を短縮できる。また,検証用プランも用意しているため,計画立案する時間も短縮できる。データ解析にはバリアン独自に開発した解析ソフトウエアとスプレッドシートを使用することで,解析時間短縮とヒューマンエラー低減を実現している。検証項目や評価基準はAAPM MPPG5ガイドラインに沿っている。
バリアングローバルにはコミッショニング専任チームが存在しており,年間100件以上のコミッショニングサービスを提供している。蓄積された膨大なノウハウやデータを活用して,測定したデータとの比較検証を実施している。また,リニアックおよび治療計画装置のバージョンアップに関する情報もグローバルで共有しており,迅速な対応が可能である。これらはグローバル企業であるバリアンの強みである。
国内では国立病院機構南和歌山医療センターにご協力をいただき,パイロットスタディを実施した(図2)。ご施設の課題として,施設スタッフの業務負担の一時的増大と短いコミッショニング期間があった。国内外から4名のバリアン所属の医学物理士(グローバルコミッショニングチーム責任者を含む)が訪問し,施設スタッフとともにコミッショニングを実施した。1週目にバリアンが持ち込んだ3D水ファントム,線量計および電位計などを使用して,ビームデータ測定および検証を実施した(図3)。2週目にはご施設所有の測定機器にて,再度MU校正やVMAT検証などを実施いただいた。後日,コミッショニング結果の報告会を実施し,ご施設のサインをいただき完了した。濵 瑞貴医師からは,「バリアングローバルの医学物理士も複数名来られての作業でしたが,作業が進むにつれ,和気あいあいとした雰囲気となり質問などにもていねいに答えていただきました。バリアン社独自のプログラムを用いて正確かつ効率良く測定を行い,最短期間での治療再開により地域医療への影響も最小限にすることができました。再開後もまったく問題なく治療を行えています。また,最短期間での治療再開は病院の収益の向上も見込めることから,コストパフォーマンスについても非常に良いと考えています。常勤医学物理士やリニアック更新経験が豊富な技師を有する病院でも,他業務に時間を割きながら,効率良く短期間での治療再開を可能にし,また,常勤医学物理士が不在かつ更新経験がない技師のみの病院でも,教育面やコミッショニング後のサポートを含め,力強い味方になってくれると確信しています」との評価をいただいた。

図1 バリアンコミッショニングサービスの流れ

図1 バリアンコミッショニングサービスの流れ

 

図2 南和歌山医療センターのスタッフとバリアンスタッフ 後列左から順に西診療放射線技師,石原医学物理士,バリアン社Olivier,Chandu,Jack,前列左から順に濵医師,バリアン社吉澤,辻井(敬称略)

図2 南和歌山医療センターのスタッフとバリアンスタッフ
後列左から順に西診療放射線技師,石原医学物理士,バリアン社Olivier,Chandu,Jack,前列左から順に濵医師,バリアン社吉澤,辻井(敬称略)

 

図3 南和歌山医療センターでのコミッショニング風景(a)とバリアン独自ソフトウエアによるデータ解析(b)

図3 南和歌山医療センターでのコミッショニング風景(a)とバリアン独自ソフトウエアによるデータ解析(b)

 

マシンQA

1.リニアックの品質保証業務の課題
リニアックの品質保証(リニアックQA)とは,導入された装置や機器の物理的かつ機械的性能において許容される精度内であることを保証する行為である。AAPM TG198レポートでは,リニアックQAとして計105項目が挙げられている3)。各施設の医療従事者は,治療技術や所有する機器に基づいて,手順,実施頻度,許容値などを記載したリニアックQAプログラムを臨床開始前に策定し,実施する必要がある。新規導入するリニアック,測定機器およびQAソフトウエアを理解する必要があるこの業務は,コミッショニングに続く「立ちはだかる壁」と言える。

2.マシンQAコンサルティングサービス
本サービスは,リニアックQA体制の構築に対するサポートおよび助言を行う。本サービスを導入いただくと,リニアックQAプログラム作成に費やす時間削減や,適切かつ効率的なQA実施などの効果がある。本サービスの内容を図4に示す。ご施設には約200ページに及ぶリニアックQAマニュアル(案)やQA用プランなどを納品する。本サービスの対象装置はTrueBeamシリーズであり,2024年8月時点での契約実績は27施設となっている。本サービス契約終了後の顧客満足度調査では,10点満点中9.4点と高評価であり,「効率的なリニアックQA体制の構築ができた」や「教育面が充実していた」などといった意見もいただいている。

図4 マシンQAコンサルティングサービス内容

図4 マシンQAコンサルティングサービス内容

 

さいごに

バリアンの提供するAOSサービスの中で,バリアンコミッショニングサービスおよびマシンQAコンサルティングサービスを紹介した。両サービスは放射線治療現場における「立ちはだかる壁」を限りなく小さくし,ご施設とともに高品質な医療の提供をめざすサービスである。今後もさまざまな「立ちはだかる壁」に対して,ご施設とともに解決できるサービスを提案していく。

〈謝辞〉
南和歌山医療センターの濵 瑞貴医師,村田伸一技師,西 雄太技師,石原佳知医学物理士をはじめスタッフの方々には,バリアンコミッショニングサービスを活用いただき,一緒に力を合わせて早期の臨床稼働再開を実現できた。この場を借りてお礼申し上げる。

●参考文献
1)Radiotherapy Risk Proflie. World Health Organization, 2008.
2)放射線治療装置導入に関するコミッショニング必要期間について. 放射線治療品質管理機構, 2008.
3)AAPM Task Group 198 Report : An Implementation Guide for TG 142 Quality Assurance of Medical Accelerators.

医療用リニアック TrueBeam:医療機器承認番号 22300BZX00265000
放射線治療計画用ソフトウエア Eclipse:医療機器承認番号 22900BZX00265000

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