2019-4-22
フィリップス・ジャパンブース
フィリップス・ジャパンは,“No bounds. Better healthcare”をブーステーマに掲げ,患者を中心にシームレスにつながる医療をめざし,最新のソリューションを展示した。ITEM 2019では,ヘリウムフリーのMRI「Ingenia Ambition 1.5T」や新開発の管球を搭載した「Incisive CT」,ライブカメラを搭載した一般X線撮影装置「DigitalDiagnost C90」など,多彩な新製品を出展し,見どころ満載のブースで来場者を迎えた。
初日(12日)のプレス向けブースツアーでは,堤 浩幸代表取締役社長が挨拶し,「今回は,“イノベーションをより加速する”が一つのテーマ。新しい装置,新しいソリューションで,新しい価値を創造していくという,フィリップスのビジョンを示した展示となっている。われわれがどのように考え,患者さんや医療従事者にどのようなベネフィットを提供していこうとしているのかを理解していただける良い機会になると思う」と述べた。
フィリップス・ジャパンは,呼吸・睡眠事業を扱うフィリップス・レスピロニクス合同会社を2019年4月に統合。“One Philips”として組織の壁をなくして協創をより加速させ,効率的なオペレーションを実現していく姿勢を打ち出している。その具体的な内容を紹介するため,今回の展示では,“境界”を越えて現場の課題を解決するソリューション群をアピールした。
●MRI:“ヘリウムフリー”の新型MRI「Ingenia Ambition 1.5T」を披露
●血管撮影装置:高度化するカテーテル治療に対応する「Azurion 7 C20 with FlexArm」をデモンストレーション
●CT:“Tube for Life”をコンセプトに開発された128スライスのマルチスライスCT「Incisive CT」をアピール
●X線:タッチパネルスクリーンとライブカメラの搭載で検査時間短縮と確かな画像診断を実現する「DigitalDiagnost C90」
●超音波診断装置:ユニバーサル・プレミアム装置「EPIQ Elite」をアピール
●ソリューション:モダリティやサービスの垣根を越えたソリューションを提案
●MRI:“ヘリウムフリー”の新型MRI「Ingenia Ambition 1.5T」を披露
MRIエリアでは,4月に発売されたばかりの1.5T MR装置「Ingenia Ambition 1.5T」を大きくアピールした。Ingenia Ambition 1.5Tは,新開発の“BlueSealマグネット”により,わずか7Lの液体ヘリウムで超電導状態を維持できる“ヘリウムフリー”が大きな特徴となっている。従来の超電導MRI装置は,約1500Lの液体ヘリウムでマグネットを冷却する必要があるため,近年の世界的なヘリウム供給問題や,装置重量やクエンチパイプによる設置制限,クエンチ時のダウンタイムやヘリウムの再充填によるコスト負担などが課題となっていた。フィリップスは,この課題に対するソリューションとして,マグネットに巻き付けた細いチューブに液体ヘリウムを循環させてマグネットを冷却する“Micro-coolingテクノロジー”を開発。これを採用したBlueSealマグネットには,7Lの液体ヘリウムが密封されており,クエンチ発生時にも外部にヘリウムを排出する必要がなく,また,耐用期間中のヘリウム補充も必要なくなった。
ヘリウムフリーとなったことで,マグネットの重量が従来装置と比べて約900kg軽量化し,クエンチパイプも不要となった。そのため,建物の上層階や,屋外に隣接しない部屋でも設置することが可能で,設置の自由度が向上し,設置時の施工コストも削減することができる。
また,ユーザーによるクエンチマネージメントを可能とする新機能“EasySwitch Solution”が実装された。スイッチひとつで一時的に消磁,励磁が可能で,吸着事故が起きてしまった場合にも約1時間で磁場を落とし,吸着物を取り除いた後は自動ランプアップが開始され24時間以内に復旧することができる。磁場立ち上げ時にヘリウムの補充が必要ないため,コスト負担やダウンタイムを最小限に抑えられる。
Micro-coolingテクノロジーでは,高い静磁場安定性(0.001ppm/hour)と傾斜磁場直線性(1.4%)を実現し,最大FOV55cmを歪みのない精度の高い画像を取得できる。高速化技術“Compressed SENSE”による撮像も可能で,時間短縮や画質向上に貢献する。
あわせて新製品としてリリースされた“VitalEye”がデモ展示で紹介された。VitalEye は赤外線カメラによる呼吸同期システムで,被検者にセンサーを装着することなく,ガントリに設置した赤外線カメラで呼吸の状態を検知し,呼吸同期をすることができる。咳などの突発的な動きがあった場合には,その時の信号を排除して同期することが可能である。動きの検知精度は1mm以下で,精度の高い検査を支援する。Ingenia Ambition 1.5Tと「Ingenia Elition 3.0T」に搭載が可能となっている。
またブースでは,Ingenia Ambition 1.5TとともにMRI対応生体情報モニタリングシステム「Expression MR400」も展示された。MRIのボア中心から1.5mの位置で使用することができ(磁場制限5000ガウス),EtCO2も測定可能なため,呼吸が止まった場合にもすぐに検知することができる。
●血管撮影装置:高度化するカテーテル治療に対応する「Azurion 7 C20 with FlexArm」をデモンストレーション
IGTシステムは,2019年3月から販売が開始された血管撮影装置「Azurion 7 C20 with FlexArm」の実機を展示した。多様化・複雑化するカテーテル治療に柔軟に対応するために新しく開発されたCアーム“FlexArm”を搭載している点が最大の特徴だ。FlexArmは8つの可動軸を持つ天井走行式のCアームで,新しいユーザーインターフェイス“Axsys motion control system”により手技や周辺機器を考慮した柔軟なレイアウト操作を直感的に行える。Cアームのワーキングポジション,スタンバイポジションへの移動は,スティック操作のワンアクションだけで可能。また,可動軸があることで,使用しない時にはレールに沿った移動だけでなく,Cアームをカテーテル室の隅にまで待避することができ,ワークスペースを従来よりも広くとることができる。科学的に実績のある客観的指標・システムユーザビリティスコアは92と,高スコアを獲得している(業界平均スコア68)。近年増加・拡大しつつある構造的心疾患(SHD)に対するカテーテル治療において,術者・スタッフにとって快適で,安全なレイアウトを実現し,手技に集中できる環境を提供する。
ブースでは,手技を想定したFlexArmのレイアウトとポジショニングのデモンストレーションが行われた。スタッフや周辺機器がアームを避けることなく,手技を中断せずにワンアクションでスタンバイポジションからワーキングポジションに移動する様子や,腕からのアプローチにおいてもテーブルを移動せずにアームが横方向に平行移動する様子などが紹介された。
13日(土)には,JRS共催ランチョンセミナー「IVRにおけるAzurionがもたらす革新と臨床的価値」が開催され,Azurion 7 C20 with FlexArmの開発にもかかわり,初号機を使用している米国のMiami Cardiac & Vascular Instituteから初期臨床報告が行われた。なお,2017年にリリースされたAzurionシリーズは,国内で約120台受注,すでに80台が設置されている。
●CT:“Tube for Life”をコンセプトに開発された128スライスのマルチスライスCT「Incisive CT」をアピール
CTは,上位機種の二層検出器搭載「IQonスペクトラルCT」と,128スライスのマルチスライスCT「Incisive CT」,16スライスのマルチスライスCT「Access CT」の新製品2機種をモックアップやモニタで紹介した。
このうち,モックアップを展示して大々的にアピールされたIncisive CTは,“Tube for Life”をコンセプトに,医療機関が抱える財務や臨床,運用などの課題に対するソリューションとして開発された。多くの技術により高い耐久性を有するX線管球“vMRC管球”は,Incisive CT専用に開発された。通常,2〜3年で交換が必要となる管球の長寿命化を図るとともに,保守契約と併せて運用することで,耐用期間(10年)のX線管球にかかるコストを抑制・平準化することができる。運用面においては,ガントリの前面左右に“OnPlanタッチスクリーン”を搭載。患者の近くで,患者情報の登録や確認,撮影条件設定が可能となっている。操作性向上と検査の標準化向上に貢献する自動位置決め機能“iPlanning”とあわせて活用することで,データ取得までの時間を約19%短縮し,ワークフローを改善させる。また,リモートサポートにも対応しており,装置の状態を常時モニタリングし,問題が生じた際にもリモートサービスで迅速に対応することで,ダウンタイムを最小限に抑えることができる。
一方,新製品のAccess CTは,確かな診断とコスト削減という,多くの医療機関が持つニーズに答える装置で,ブースではモニタによる紹介が行われた。0.75秒回転,X線管球熱容量3.5MHU,検出器幅0.8mmの基本性能に加え,フラッグシップ装置に搭載されている画像ノイズ低減技術“iDose4”を搭載し,被ばく低減に貢献する。また,線量を抑えた撮影はX線管球の長寿命化にもつながり,コスト抑制も可能になる。コンパクトなガントリは設置性も高く,コスト面などとあわせて小規模医療機関への導入しやすい,“アクセスしやすいCT”として臨床への貢献が期待される。
●X線:タッチパネルスクリーンとライブカメラの搭載で検査時間短縮と確かな画像診断を実現する「DigitalDiagnost C90」
新製品の一般X線撮影装置「DigitalDiagnost C90」は,迅速な検査と確かな画像診断を追究したDigitalDiagnostシリーズの最上位機種で,多くの新開発の機能・技術が搭載された。大きな特徴が,天井走行式X線管支持装置“Eleva Tube Head”に搭載された12インチのタッチパネルスクリーンとライブカメラである。タッチパネルスクリーンでは,患者情報の確認,検査パラメータ変更,撮影画像の確認などが可能で,検査担当者の検査室と操作室の移動を減らすことができる。また,ライブカメラにより,照射方向からの映像をタッチパネルスクリーンや操作室のコンソール“Eleva workspot”で確認でき,適切な照射視野の設定や,曝射直前に患者が動いていないかを確認することができる。的確なコリメーションや再撮影のリスクを少なくすることで,被ばく低減に貢献するとともに,ワークフローの向上により,検査時間を1検査あたり約28秒短縮することが紹介された。また,全身領域に対応するグリッドレス撮影“SkyFlow Plus”にもオプション対応する。グリッドの付け替えやジオメトリ調整なく高画質な画像を取得でき,検査担当者の負担を軽減してさらなるワークフロー向上に貢献する。
さらに,確かな画像診断のために開発されたのが,一新されたマルチ周波数処理“UNIQUE2”と胸部骨除去機構“Bone Suppression”である。UNIQUE2は,従来よりも微細部の描出能が向上し,高画質な画像を実現する。Bone Suppressionは,撮影後,Eleva workspotから画像を転送するだけで,通常画像と骨除去画像の2枚の画像を取得できる新しいアプリケーション。追加撮影や追加機材なしで,肺結節の検出率を16.8%改善すると報告されている。
●超音波診断装置:ユニバーサル・プレミアム装置「EPIQ Elite」をアピール
超音波診断装置は,領域や検査シーンに応じた製品ラインアップが紹介された。最も注目を集めたのが,4月に発売された新型超音波診断装置「EPIQ Elite」である。EPIQ Eliteは,“1台ですべての領域を優れたパフォーマンスで診断したい”という臨床ニーズに対するソリューションとして開発された,ユニバーサル・プレミアム装置。従来,超音波診断装置はハイスペックになるほど,心臓,腹部,産婦人科など領域ごとにラインアップが分かれる傾向にあるが,EPIQ Eliteはこれら領域を含めた全身領域で高画質を提供することを可能にした。新しく開発された24インチHD Maxディスプレイは,米国放射線学会(ACR)が推奨する診断用ディスプレイの輝度基準350cd/m2を満たし,有機ELディスプレイと比べ輝度を40%向上している。また,10ビットのカラー深度を持つ広色域で10億色以上の色調表現が可能となっている。ビームフォーミング技術“nSIGHT”も進化し,1秒間にDVD 10枚分の信号処理が可能となり,近位部の画質向上と深部までの高い均一性を実現し,かつ高フレームレートで描出することができる。さらに,高分解能画像処理技術“XRES Pro”は,複数のパラメトリックフィルタを使用し,画像要素を細分化,解析することで,組織の粒状性を従来よりも高精度に表現することが可能になっている。
EPIQ Eliteが,どの領域でも高パフォーマンスを発揮すること紹介するため,ブースではブレストソリューション「AI Breast」や,肝臓領域を対象にしたCTやMRIなどの画像とエコー画像のフュージョン機能“PercuNav”もあわせて展示した。AI Breastは,トランスジューサに内蔵された電磁トラッキングコイルと,マットに埋め込まれたフィールドジェネレータを使った技術で,被検者はベッドに寝るだけで機能を使用できる。簡単な位置合わせでプローブの位置を装置が認識し,検査を進めると,スキャンに合わせて画面のプローブマークが追従する。腫瘤の位置をニップルからの方向,自動計測した距離で記録できるため,治療開始後に小さくなった腫瘤も検出しやすく,精度の高い検査が可能になる。
また,循環器向けの超音波診断装置として展示された「EPIQ CVx」は,循環器系診断に特化したワークフローの向上や再現性の高い自動解析技術が特長のシステムである。2019年から新しく,global longitudinal strain(GLS)などを自動解析する“AutoSTRAIN 4.0”が搭載されたことが紹介された。GLSは,左室機能評価の指標として注目されているが,解説の煩雑さや再現性が低いことが課題となっている。これに対してフィリップスは,2017年に買収したTomTec社の技術を活用し,断面認識やROI設定を自動化する技術を開発,AutoSTRAIN 4.0に実装した。6000例以上のデータベースを基に,AI技術を用いて心尖部四腔像,三腔像,二腔像の断面を,99%の成功率で認識する。この3断面を選択後に,ワンボタン操作をするだけで,非常に短時間でGLSを算出することができる。TomTec社のストレイン解析については,すでに多くの論文が報告されており,再現性,信頼性の高い指標を簡単に取得し,臨床に活用できると期待される。
ポータブル型のシステムとしては,2018年末に発売した「CX50 Xper」を展示した。新しいモニタを採用し,前機種の「CX50」から外観を一新した。3D経食道トランスジューサ「X8-2t」,セクタトランスジューサ「S4-2」に新しく対応したことで,「EPIQ/Affinitiシリーズ」などとの互換性を持ち,より幅広いシーンでの活用が可能になっている。
●ソリューション:モダリティやサービスの垣根を越えたソリューションを提案
フィリップスでは,モダリティやサービスを横断してソリューションを提供する体制をとっており,ITEM 2019のブースでも紹介エリアを設け,Cardiology,Oncology,Radiologyの3つのソリューションの取り組みを紹介した。Cardiology Solutionでは,健康な生活から予防,診断,治療,ホームケアまでの各段階において提供しているソリューションを,各社との協業によるサービスも含めてパネル展示した。普段の暮らしのなかでの循環器疾患への対策としては,心臓病を予防する口腔ケアや,心肺停止からの社会復帰率世界一の実現をめざすHeart safe city構想の取り組みを紹介。診断・治療を経たホームケアにおいては,CPAP装置「ドリームステーションGo」による安定した睡眠のサポートなどをアピールした。
また,Radiology Solutionでは,RISや電子カルテと連携し,装置の稼働状況を把握・管理する「PerformanceBridge」(日本未展開)を紹介した。各装置の予約状況と実際の実施状況の比較,装置の稼働状況や技師ごとの業務状況を日次や月次で解析し,グラフなどで視覚的にわかりやすく提示できる。最適な装置配備や運用,人的配置の検討に役立てることができ,病院経営を支援する。
●お問い合わせ先
社名:株式会社フィリップス・ジャパン
住所:東京都港区港南2-13-37 フィリップスビル
TEL:0120-556-494
URL:www.philips.co.jp/healthcare