2013-4-17
フィリップスエレクトロニクスジャパンブース
フィリップスエレクトロニクスジャパンは,RSNA2012と同じ「Imaging 2.0 : Transforming care, together.」をテーマに展示を行った。2010年に放射線領域を革新する新しいコンセプトとしてImaging 2.0を打ち出したが,RSNA2012からは,さらにサブコンセプトとして“Transforming care, together.”を加え,現場に寄り添い,ともに患者のケアにあたるというメッセージを込めた。フィリップスが日本でビジネスをスタートしてから今年で60周年を迎えるが,ユーザーとの継続的な関係を構築していく姿勢を示すブースを展開した。
初日のブース説明会では,ダニー・リスバーグ代表取締役社長と,フィリップスのAPAC(アジア太平洋地域)代表のArjen Radder氏が会見を行った。Radder氏は,「フィリップスは,2025年までに30億人の生活向上を目標としており,その達成のために意義のあるイノベーションを継続していく。フィリップスが参加している世界経済フォーラムでも,医療分野においては予防,在宅ケア,低侵襲治療などが課題として挙げられており,フィリップスでは,低侵襲治療を可能にするAlluraClarityの開発やIMRによる画質の向上と線量低減などで,課題にチャレンジしている。今後も持続的なイノベーションを図ることで予防から治療,在宅ケアまでに関わっていく」と述べた。また,リスバーグ代表取締役社長は,「フィリップスのグローバルな力を活用して,日本において意味のある取り組みを行っていく。日本の臨床とコラボレーションをしながら,装置やソフトウエアの研究はもちろん,患者さんの役に立つために何をすべきかを考えており,画質を保って被ばくを低減するIMR技術,検査時間を短縮するワークフローの改善,落ち着いて検査や治療を受けてもらうためのAmbient Experienceなどを研究・開発してきた。スループットが上がることは,経営面でも有用である。今後も患者さんを中心にして,臨床と力を合わせて,長いスパンで継続的にサポートしていく」と述べた。(4月12日取材)
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●CT:システムモデルを用いた逐次近似画像再構成法「IMR」を発表
CTコーナーは,「A New Era of CT Superb Image Quality(CT高画質の新時代)」をテーマに,新しい画像再構成技術や,Brilliance iCTシリーズ,Ingenuityシリーズの上位機種が紹介された。
CTの新しい技術として,Imaging 2.0のコンセプトのもとに開発され,RSNA2012で発表されたシステムモデル逐次近似画像再構成法「IMR」が紹介された。IMRの特徴は,1)FBPと比べ最大90%のノイズ低減,2)低コントラスト検出能の向上(インデックス比較でFBPの2.7倍),3)コンパクトな専用画像再構成ユニット「IMR Cube」による超高速再構成スピード(999枚の画像の再構成が5分以内),4)心電図同期検査に対応していることである。IMRは,その適応をRSNA2012では躯幹部領域〔IMR(Body)〕,ECR2013で心臓領域(IMR Cardiovascular),そしてITEM2013では頭部領域(IMR Neuro)と広げ,ブースではIMR Neuroも含め,FBP,iDose4と比較した多くの画像が紹介された。
ハードウエアでは,256スライスのBrilliance iCT,128スライスのIngenuityシリーズの上位機種となる「Elite」が紹介され,ブースではBrilliance iCT Eliteのモックアップが展示された。Eliteは,IMRを搭載するために最適な技術を搭載した装置で,新検出器「NanoPanelII」と再現性の高い操作性を持つユーザーインターフェイス「iPatient」を実装した。
NanoPanelIIは,次世代を見据えて開発設計された,信号のみを純粋に受け取ることのできる検出器で,ノイズに左右されにくいため,超低線量撮影においても画像の歪みを防ぐことができる。またiPatientは,求める画像レベルを指定すると自動でプロトコールが設定され,高い再現性を得られるとともに,患者本位の最適化を図ることができる。シンプルな操作性で,必要なクリック数も大幅に減少し,スループットの向上につながる。
従来からある逐次近似画像再構成技術「iDose4」が,今年から64スライス以上の全機種に標準搭載しての販売となり,オプションとしてBrilliance iCTシリーズとIngenuityシリーズにIMRが搭載可能となる。なお,EliteとIMRは4月から販売を開始している。
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●MRI:スループットの向上を追究した「Multiva 1.5T」
MRIでは,基幹病院や総合病院を主対象とし,ワークフローの改善を追究したシステム「Multiva 1.5T」を発表した。Multivaは,コンパクトな設計で,狭い検査室にも導入可能な装置となっている。SNRが最大になるRFコイルエレメントを自動的に選択できるSmartSelectを搭載し,また,軽量化RFコイル(コイルは薬事未承認)を採用することで,セッティングにかかる時間を約40%短縮。さらに,撮影時間の倍速(SENSE倍速)を最大16倍速としたことで,頭部や腹部のルーチン検査が約10分で実施可能となっている。
また,昨2012年にMRI対応の植え込み型心臓ペースメーカーが薬事承認を取得したことを受け,検査条件の1つである被検者のモニタリングのためのワイヤレスMR用生体情報モニタ「Invivo Essential」と「Invivo Expresssion」(国内では2012年7月に発売)もMultivaと併せて展示し,トータルソリューションを提案した。
アプリケーションとしては,動き補正の“MultiVane2.0”や脂肪抑制の“mDIXON TSE”,非造影パフュージョン撮像“pCASL”,肝脂肪の定量化“mDIXON Quant”に加え,日本のニーズを反映して新しく開発した整形領域の三次元撮像法“3DMSK View”などが紹介された。
モックアップが展示された,2010年発売のフラグシップモデル「Ingenia 3.0T」は全世界で230台,日本国内では45台(受注ベースで64台)が導入され,2011年発売の「Ingenia 1.5T」も国内導入32台に上り,Ingeniaは国内の受注ベースで合わせて100台を超えている。ユーザーからは,種類の多いデジタルコイルが高く評価されており,これまでに全国から集まった多くの臨床画像とともに紹介された。
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◆治療効果解析も可能なマルチモダリティ解析ワークステーション「IntelliSpace Portal」
CT/MRI/NMのマルチモダリティの画像をサーバで一元管理し,豊富なクリニカルアプリケーションを利用できるIntelliSpace Portalでは,腫瘍の治療効果解析アプリケーション“tumor tracking”が紹介された。RSNA2012やECR2013において,化学療法の治療効果をtumor trackingで確認するという発表が行われ,注目を集めている。tumor trackingは,簡単に腫瘍をモニタリングできることが特徴で,治療前の画像上で腫瘍部分をクリックすると自動的にトレースされ,さらに治療後の画像上でも同じ部分の腫瘍が自動でトレースされる。解析結果はヒストグラムとして表示され,一目で治療の効果を確認することができる。
●血管撮影装置:大幅な被ばく低減を可能にするAlluraClarityを中心にトータルソリューションを提案
実機が初展示となる血管撮影装置「AlluraClarity」シリーズが,ブース受付隣の検査室を模したスペースで紹介された。高画質と低被ばくを両立させたAlluraClarityでは,従来装置と同等の画質が,大幅に低減した被ばく量で取得可能となる。従来と比べ心臓領域では約50%,頭部・四肢では約1/4の被ばく線量で良好な画像が取得できるとの結果も出ているという。またインターベンショナルツールとして,CTやMRIなどの画像と透視画像のオーバーレイ表示や,経食道3Dエコーとカテーテル治療を統合させるEchoNavigatorなど,手技を支援するマルチモダリティマッチングも紹介した。
AlluraClarityは,循環器用/頭腹部・全身用,シングルプレーン/バイプレーンのラインナップを準備し,日本国内ですでに36台が稼働している。
また,奥行きを広げてポジショニングを容易にした第2世代のFPD搭載外科用Cアームシステム「Veradius Neo」を展示したほか,模擬検査室では,音や照明によって検査環境を演出し,患者をリラックスさせるAmbient Experienceや,リアルタイムに術者の線量管理を行うワイヤレス小型線量計「DoseAware」も併せたトータルソリューションの提案を行った。
●X線撮影装置:バイオプシー対応のMammoDiagnost DRで,検診から精検までをカバー
X線撮影装置のコーナーでは,ステレオバイオプシーに対応したFPD搭載デジタルマンモグラフィシステム「MammoDiagnost DR」と,マンモグラフィ専用ビューワ「IDS7/mx」での臨床画像を中心に展示した。MammoDiagnost DRは,α-Se(アモルファスセレン)採用の直接変換方式かつ画素サイズ85μmのFPDと,わずかなコントラストの差を描出できるマルチ周波数処理“UNIQUE”アルゴリズムにより,診療に最適な画像を提供する。セッティングの容易なバイオプシーユニットや,被検者をサポートするバイオプシー専用チェアを用意しており,1台で検診から精検まで対応することができる。さらに,新バージョンでは,MLO撮影時に左右移動することでポジショニングを容易にするパドルシフト機能や,日本人に多い高濃度乳腺に対応するAECモードも搭載された。
このほか,FPD搭載一般撮影装置「DigitalDiagnost」のEleva Workspot(コンソール)によるワークフローのデモンストレーションや,昨年よりもさらに画質が向上したDigitalDiagnostの臨床画像が展示された。
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●PET/MR:ハイエンド装置を組み合わせた「Ingenuity TF PET/MR」
AMI(分子イメージング)では,「Ingenuity TF PET/MR」がミニチュアモックアップと臨床画像で紹介された。Ingenuity TF PET/MRは,MultiTransmit搭載のフィリップスのハイエンドMRI装置「Achieva 3.0T TX」をベースとしたMRI部分と,Time of Flight(TOF)が可能なPET部分で構成され,中央のテーブルを回転させてそれぞれの画像を収集し,高精度で安定した全身のPET/MR画像を取得することができる。MRIのコイルを装着したままPET検査を行うことができ,それぞれの検査装置として使用することも可能である。全身の腫瘍のステージングや,頭部の非造影MRAとPETの重ね合わせなどに有用性があり,海外では15サイト程度で稼働している。
●超音波診断装置:経食道3Dエコーなど高機能アプリケーションも搭載可能なコンパクト装置「CX50 xMATRIX」
超音波診断装置では,最上位機種の「iU22 xMATRIX」と,コンパクトタイプの「CX50 xMATRIX」の2台を展示した。
iU22 xMATRIXでは,世界で初めて縦横のマトリックス状に9000の素子を配列したコンベックスプローブにより,従来は難しかったクリアなボリュームデータを得ることができる。他のプローブも,素子にPureWaveクリスタルを採用することで,体格の大きい被検者でも良好な画像を得ることができる。
CX50 xMATRIXは,コンパクトなポータブルタイプでありながら,プローブの素子にPureWaveクリスタルを採用することで,高機能・高画質を実現した。コンパクトな筐体で,手術室やベッドサイドなどさまざまな環境で精度の高い検査を可能にする。さらに,オプションで対応する経食道の3Dエコーは,血管撮影装置AlluraClarityの画像とリンクさせて表示することができ,精度の高いインターベンションを支援する。
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●ヘルスケアIT:スマートデバイスで画像を閲覧できる「Lite View」
ヘルスケアITコーナーでは,同社のPACSである「IDS7 PACS」の画像データを,さまざまなタブレット端末で閲覧を可能にするスマートデバイスソリューション「Lite View」を新しく紹介した。Lite Viewは,iOS,Android,Windows PCなどで利用でき,IDS7 PACSのサーバで動作するため,追加のサーバが必要ないことが特長だ。利用するには,購入したライセンスをIDS7 PACSサーバで設定することで,タブレット端末からブラウザを用いてPACSの画像を閲覧できる。サービスは,ライセンスが5つまで付与されるタイプと,ライセンスフリーの2タイプで提供される。
また,読影医の業務の負担軽減を目的に,Windows上でタッチパネル操作を可能にしたインターフェイス機能「マトリックスウィンドウ」も紹介した。
お問い合わせ先:
株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン
〒108-8507 東京都港区港南2-13-37
TEL 0120-556-494
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