ITEM2015 AZE ブースレポート
被ばく線量の最適化に貢献する新分野ソリューションとAZE VirtualPlaceの最新ソフトウェアを中心に紹介


2015-4-29

AZE


AZEブース

AZEブース

AZEは,昨2014年9月よりキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループの一員として新体制がスタート。ITEM2015では,キヤノンMJと,同じくキヤノンMJの医療機器販売事業部であるキヤノンライフケアソリューションズとの共同出展となり,AZEはキヤノンブースの一角に黒を基調としたブースを設けた。ブースでは,主力製品である3Dワークステーション「AZE VirtualPlace」とボリュームレジストレーションビューア「AZE Phoenix」の機能やアプリケーションをデモ機を使って来場者に説明するとともに,AZE VirtualPlace,AZE Phoenixと並んでAZEの新しい軸となる新ソリューション「被ばく線量最適化ソリューション」をアピールした。
また,キヤノンMJが主体となり,AZEがAZE Phoenixなどを提供する医用画像クラウドサービス「Medical Image Place」もキヤノンMJのブースで紹介されたほか,AZE VirtualPlaceで作成したデータを用いた3Dモニタや3Dプリントソリューションも展示された。(4月18日取材)

デモ機でAZE VirtualPlaceやAZE PhoenixをPR

デモ機でAZE VirtualPlaceやAZE PhoenixをPR

AZE展2014の応募作品をパネルで紹介

AZE展2014の応募作品をパネルで紹介

 

●被ばく線量最適化ソリューション:“人にやさしい医療”をめざして開発中のAZEの第3の基軸となる新分野ソリューション

これまで,各領域に特化した3D画像解析を行うAZE VirtualPlaceと,独自のレジストレーション技術を応用したビューアAZE Phoenixを製品・サービスの大きな軸として展開してきたAZEが,今回新しく提案したのが「被ばく線量最適化ソリューション」である。ブースでは,現在開発中の2つのツール・機能を中心に,概要と開発状況が紹介された。いずれも,2015年中のリリースをめざして開発が進められている。

〈線量管理支援ツール(W.I.P.)〉
線量管理支援ツール(W.I.P.)は,臨床検査における被検者の被ばく線量管理を支援するソフトウェアで,医療被ばくの最適化のために推奨されている診断参考レベル(Diagnostic Reference Level:DRL)を施設内で簡単に運用することが可能になる。この線量管理支援ツールの大きな特長は,線量指標として,CTDIvol,DLPだけでなく,被検者の実際の体格を基にしたSize-Specific Dose Estimation(SSDE)も自動で算出される点である。
被ばく線量の管理には,一般的にCTDIvol,DLPが線量指標として用いられているが,これは成人の人体を模した直径32cm(腹部)と直径16cm(頭部)のファントムを使って正規化した指標であるため,特に小児の検査においては適切な線量管理ができないことが課題となっている。そこで近年提案されているのが新しい指標SSDEで,これは,被検者の実際の体輪郭から実効直径を求め,その実効直径から線量を評価することができる。開発中の線量管理支援ツールでは,DICOMデータを基に体輪郭を自動計測して実効直径を算出し,SSDEが自動計算されるため,簡便に線量管理に用いることができる。ユーザーはDICOM画像を読み込み,領域とCT機種名を選択するだけで,線量指標が自動で計算され,管電流マップも表示される。なお,国内で使用されているCT装置各機種のパラメータが搭載されている。

線量管理支援ツール(W.I.P.)の画面。線量指標として,CTDIvol,DLP,SSDEが自動で算出される。

線量管理支援ツール(W.I.P.)の画面。線量指標として,
CTDIvol,DLP,SSDEが自動で算出される。

 

〈統計的CT画像ノイズ低減機能(W.I.P.)〉
統計的CT画像ノイズ低減機能(W.I.P.)は,thin sliceのボリュームデータに適応した画像ノイズ低減機能。各ピクセルの三次元的近傍から推定されたノイズの統計量を基にノイズパターンを解析し,元の画像からノイズを差分することで画像ノイズの低減を行う。レトロスペクティブにノイズを低減できるため,thin slice画像再構成などの場合に生じる線量不足による画像ノイズを低減することができる。画像ノイズ(SD)測定では,線量を約1/4に低減しても同等の画質を得られるという。ノイズを低減することでコントラストが向上し,物体抽出の精度が上がるため,MIP画像やVR画像などで血管をより明瞭に描出することが可能になる。ワークステーションによる画像解析の精度は元画像のクオリティに依存するため,ノイズの少ない画像を得られることで,画像解析も容易になる。

レトロスペクティブにノイズを低減する統計的CT画像ノイズ低減機能(W.I.P.)

レトロスペクティブにノイズを低減する統計的CT画像ノイズ低減機能(W.I.P.)

 

ノイズに埋もれた血管もノイズを低減することで観察可能

ノイズに埋もれた血管もノイズを低減することで観察可能

 

VR表示など,さまざまな表示法でノイズ低減効果が実感できる。

VR表示など,さまざまな表示法でノイズ低減効果が実感できる。

 

●ソフトウェア:流体解析により血流を可視化する4D Flow(W.I.P.)など最新ソフトウェアを紹介

AZE VirtualPlaceを紹介するコーナーでは,昨年のITEM2014で発表した心臓解析や大腸解析,肺野解析などに加え,開発中の新しいソフトウエア“4D Flow”(W.I.P.)や各種機能をアピールした。

〈MRI:“4D Flow”(W.I.P.)〉
“4D Flow”(W.I.P.)は,初お披露目となった血流解析のソフトウェア。MRIの3D phase contrast法にて得られるデータを解析し,x軸,y軸,z軸方向の信号強度をベクトル化することで,血流の方向と速さの可視化を実現する。血流の方向が矢印で,流速がカラーマップで示され,血流がよどんでいるところ,乱流しているところを観察できる。現在,症例検討を重ねているところで研究レベルではあるが,腹部大動脈瘤や脳動脈瘤の評価,大動脈解離の予測に利用できる可能性があるという。また,先天性心奇形は症状がなければ手術を控えるが,4D Flowにより心血流を把握することで,手術が必要なタイミングを適切に判断できる可能性があると期待される。2015年中のリリースを目標に開発が進んでいる。

血流の方向と速さの可視化した“4D Flow”(W.I.P.)

血流の方向と速さの可視化した“4D Flow”(W.I.P.)

 

〈CT:肝臓解析“3D PDFレポート”〉
日本国内のユーザーからの要望で開発され,RSNA2014で発表された“3D PDFレポート”がITEM初展示となった。3D PDFレポートは,AZE VirtualPlaceで作成した3Dイメージを,PDF上で回転・レイヤーといった操作できる形式でデータ出力をする機能。PDF出力されたデータは軽く,軽快な操作や,メール添付による転送も可能で,ワークステーションを搭載してない一般PCでも操作できる。
現在は肝臓解析ソフトウェアに対応しており,肝切除や肝移植の術前に解析したデータを3D PDFレポートで出力することで,カンファレンスや患者への説明に使用できる。また,カットラインを解析したデータを手術室でモニタやタブレットに表示して,手技の際に参照することもできる。肝実質や血管走行の3Dイメージを任意の方向から観察できるため,構造を把握しやすく,特に腹腔鏡下など視野の限られる手術では,切除を進めるに当たり次にどのような血管が現れるかを把握でき,安全・安心な手技を支援する。

患者説明や術中の確認に役立つ“3D PDFレポート”

患者説明や術中の確認に役立つ“3D PDFレポート”

 

〈CT:心臓解析“心筋内膜抽出機能”〉
昨2014年9月にリリースし,RSNA2014で紹介された心臓解析の“心筋内膜抽出機能”が,臨床データとともに展示された。心筋内膜抽出機能は,造影CT画像からワンクリックで左室心内膜のみを抽出し,CT値を反映したカラーマップをVR画像で表示する機能。心筋梗塞は心筋の内側から外側に向けて徐々に進展するため,心内膜の虚血を観察することで,心筋虚血を早期に検出することができる。

心筋内膜を自動抽出し,CT値をカラーマッピングする“心筋内膜抽出機能”

心筋内膜を自動抽出し,CT値をカラーマッピングする“心筋内膜抽出機能”

 

●医用画像クラウドサービス「Medical Image Place」を活用した遠隔読影インフラサービスをPR

キヤノンブースのキヤノンMJのエリアでは,AZEがキヤノングループとなったことで実現した医用画像クラウドサービス「Medical Image Place」のコンテンツの一つである,「遠隔読影インフラサービス」が紹介された。Medical Image Placeは,キヤノンMJグループが運営するクラウドサービス基盤を活用し,高度なセキュリティ対策の下,日本国内のデータセンターにデータを多重保管できるクラウドサービス。ITEM2015直前の4月14日に,Medical Image Placeの新サービスとして「医用画像外部保管サービス」の提供も開始されたが,昨2014年10月に第一弾のサービスとして開始されたのが,遠隔読影インフラサービスである。
Medical Image Placeは,キヤノンMJと北海道大学発のベンチャー企業であるメディカルイメージラボ社が共同開発したもので,遠隔読影サービス事業者であるメディカルイメージラボが持つ高い実績・経験を基に開発された。遠隔読影インフラサービスでは,AZEのボリュームレジストレーションビューアAZE Phoenixが標準搭載され,読影を行う際のビューアとして利用される。遠隔読影を行う医師のもとにAZE VirtualPlaceが導入されていれば,AZE Phoenixと連携し,高度な画像処理・解析を読影に生かすことができる。

遠隔読影インフラサービスを提供する医用画像クラウドサービス「Medical Image Place」

遠隔読影インフラサービスを提供する医用画像クラウドサービス「Medical Image Place」

 

●AZE VirtualPlaceで作成したボリュームデータを3Dモニタや3Dプリンタで表現

キヤノンMJエリアでは,AZE VirtualPlaceで作成したボリュームデータをさまざまな形で活用するためのソリューションも展示された。
米国・zSpace社の3Dバーチャルリアリティモニタ「zSpace」にAZE VirtualPlaceで作成した3D画像を表示する“3Dバーチャルシミュレーション”(W.I.P.)は,モニタの実機を展示し,来場者が実際に画像の見え方や操作感を確かめた。専用のメガネを装着すると,3D画像がモニタに浮かんでいるようなホログラフィック映像として観察することができ,センサー搭載のタブレットペンでホログラフィックに触れるようにして回転などの操作をすることができる。従来の画像表示法を超えるリアリティで,立体的な観察,直感的な操作ができることで,術前シミュレーションなどに活用できる可能性がある。
また,AZE VirtualPlaceに,作成したボリュームデータを3Dプリンタ用のSTL形式で出力する機能が搭載されたことから,AZE VirtualPlaceのデータを基に3Dプリンタで作成されたさまざまな領域の3Dモデルの実物が展示された。

zSpaceのホログラフィック映像をAZE VirtualPlace(右)とともに展示。

zSpaceのホログラフィック映像をAZE VirtualPlace(右)とともに展示。

AZE VirtualPlaceのデータを基に作成された3Dモデル

AZE VirtualPlaceのデータを基に作成された3Dモデル

 

●お問い合わせ先
株式会社AZE
住所:〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN館13F
TEL:03-3212-7721
URL:http://www.aze.co.jp

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