ITEM2022 キヤノンメディカルシステムズ ブースレポート
新AIブランド“Altivity”を中心にして顧客のアウトカムを最大化するワークフローの自動化技術などを搭載した多数の新製品を展示
- INFORMATION
- 取材速報
- report
2022-4-28
キヤノンメディカルシステムズブース
キヤノンメディカルシステムズは,ITEM2022に「Outcomes driven innovation. Made possible.」をテーマとして1000m2の大きなスペースでブースを出展した。展示テーマの“Outcomes driven innovation. Made possible.”は,RSNA2021から継続する共通のスローガンであり,臨床や病院経営における課題を解決するアウトカム(成果)実現を支援する,さまざまな製品やソリューションを出展した。その一つが,キヤノンメディカルシステムズの人工知能(AI)への取り組みをブランディングする“Altivity”であり,展示ブースの中央でそのコンセプトを大きく紹介した。また,今回のITEMに合わせて相次いで発表されたCT,MRIの新製品は,技術やデザインなどでキヤノン本社とのシナジーを生かした開発が進められており,その成果を前面に出して展示を構成し“プレシジョンメディシン”に向けた着実な進化が始まっていることを感じさせた。
●AI:プレシジョンメディシンの実現をめざす新AIブランド“Altivity”を紹介
●ヘルスケアIT:PSPとの協業で読影ビューワ「EV Insite R」とAIプラットフォームの連携をアピール
●CT:先進の自動化技術で新しいワークフローを提案する80列CT「Aquilion Serve」
●MRI:DLR-MRIの新製品「Vantage Fortian」の自動化機能を中心に展示を構成
●Angio:12インチ×16インチの高精細検出器“Hi-Def Detector”を搭載した「Alphenix Biplane」を展示
●X線:キヤノン製FPD「CXDI」を搭載した回診車「Mobirex i9」を出展
●超音波:AI搭載の「Aplio i-series / Prism Edition」,コンパクトな「Aplio flex」「Aplio go」など新ラインアップがそろう
●核医学:AIを応用して開発した“AiCE-i”を搭載した「Cartesion Prime」が注目を集める
●治療:リニアックの新製品「Elekta Harmony」の新機能を紹介
●AI:プレシジョンメディシンの実現をめざす新AIブランド“Altivity”を紹介
キヤノンメディカルシステムズは,2021年11月に行われた北米放射線学会(RSNA)に合わせて,同社の人工知能(AI)ソリューションを総称する新しいコンセプトとして“Altivity”を発表した。Altivityは,ラテン語で“高い”“深い”の意味である“Alt”と,“activity”や“creativity”など活動的な意味を持つ接尾語“-ivity”を組み合わせた造語で,特定の製品や技術ではなく,キヤノンメディカルシステムズがAIで取り組む方向性を示すブランド名となる。ブースでは,Altivityのコンセプトを紹介するラウンド形状のコーナーをブース中央に設置,タッチパネルディスプレイやジェスチャーナビゲーションを使った球体ディスプレイの演出などで,来場者がインタラクティブにアクセスできるアトラクション形式の展示を行った。壁面には,同社のこれまでの画像診断領域における開発の歴史やAltivityの今後の開発ロードマップが掲示され,過去から未来を俯瞰できる展示となっていた。
●ヘルスケアIT:PSPとの協業で読影ビューワ「EV Insite R」とAIプラットフォームの連携をアピール
ヘルスケアIT(HIT)コーナーでは,読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」を核とした新しい読影環境や,さまざまな診療データを統合して有機的な活用を支援する医療情報統合ビューワ「Abierto Cockpit」などを展示した。
キヤノンメディカルシステムズとPSP(株)は,4月11日にヘルスケアITソリューションにおける協業を発表した。キヤノンメディカルシステムズでは,PSPの読影ビューワソフトウエアである「EV Insite R」,医療クラウドPACSの「NOBORI」を,同社のAI解析技術などと組み合わせて展開することになる。ブースでは,EV Insite RとAbierto RSSのコアコンポーネントである「Abierto Automation Platform」を組み合わせた構成の端末を展示した。Abierto Automation Platformでは,Abierto RSSのアプリケーションとして頭部の“Hemorrhage analysis”,“Ischemia analysis”,“Brain Perfusion”,“Brain Vessel Occlusion”,体幹部の“Temporal Subtraction for Bone”などが利用できる。Abierto Automation Platformの解析結果から病変の指摘部位をクリックすると,EV Insite Rで該当する画像が連動して表示され参照できるなど,読影支援ための連携が可能なことをアピールした。
また,医療情報統合ビューワのAbierto Cockpitは,個々の患者について検査や治療の情報を統合して時間軸で表示し,診療をサポートする。展示では,開発中の新機能(W.I.P.)として,“関心領域計測値”とがんの“有害事象”の発生状況を表示するパネルを参考展示した。関心領域計測値は,Vitreaの“region tracking”の計測結果を時系列でグラフで表示する機能で,クリックすることで計測した画像を表示できることを紹介した。
●CT:先進の自動化技術で新しいワークフローを提案する80列CT「Aquilion Serve」
CTでは,2022年4月から販売を開始した80列CTの「Aquilion Serve」と,Area Detector CT(ADCT)の「Aquilion ONE / PRISM Edition」を実機展示した。中でも来場者の注目を集めていたのが,先進の自動化技術を搭載したAquilion Serveだ。キヤノン本社とのシナジーを活かして開発されたAquilion Serveでは,ガントリ内蔵カメラ,タッチパネルなどを用いた“Automatic Camera Positioning”,SilverBeam Filterを用いた“Automatic Scan Planning”,撮影後の画像表示レイアウトをプリセットできる“Automatic Hanging Layout”によって,一貫して安定した検査の提供をサポートする。これまでの80列CTと同様にディープラーニングを用いて設計した画像再構成技術“Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(AiCE-i)”を搭載して高画質で低被ばく検査が行えるほか,新開発の陽極熱容量5MHUのX線管球によって救急検査や心臓CT検査にも対応できコストパフォーマンスにも優れた装置となっている。
Automatic Camera Positioningでは,患者が寝台に寝たあと,ガントリのタッチパネルで撮影部位を選択。ガントリ内蔵カメラの映像を基に寝台の患者体位を検出し,撮影部位に適切なポジショニング位置を自動算出する。タッチパネル下のボタンを押すだけで寝台が撮影開始位置へ移動しポジショニングが終了する。また,Automatic Scan Planningでは,SilverBeam Filterを用いた低線量の“3D Landmark Scan”を行い,三次元データを含んだ位置決め画像を取得,このデータを基に撮影範囲を自動設定する。さらに,Automatic Hanging Layoutでは,部位や検査種別ごとに,MPR画像や3D画像などのレイアウトをあらかじめプリセットしておくことで,検査後に画像を自動で表示することができる。
また,Aquilion ONE / PRISM Editionは,2021年11月にディープラーニングを応用した超解像画像再構成技術“Precise IQ Engine(PIQE)”やSilverBeam Filterによる新たな被ばく低減技術などを搭載してバージョンアップされた。ブースでは,ADCTの画像を高精細CT「Aquilion Precision」の画像を教師データにした超解像画像再構成技術で高精細化が可能なことを臨床画像を含めて来場者にアピールした。
〈コンテナCT〉
展示会場の外では,(株)Sanseiとの協業で開発された感染症対策を行った“医療コンテナCT(コンテナCT)”を展示した。コンテナCTは,CTに80列CT「Aquilion Lightning /Helios i Edition」を搭載し,清潔区域と汚染区域を分けたゾーニングで患者との接触を避けたオペレーションを可能とし,陰圧と陽圧のコントロールやHEPAフィルタ,UVランプでの除菌が行える空調設備,抗菌ガラスの壁面などで感染症対策が施されているのが特徴だ。さらに,7日間稼働可能な発電機を搭載し,海運・陸運が容易な標準規格のコンテナを採用することで,災害時でも迅速な対応が可能になっている。実際の車両が見られることもあり,会期中には多くの見学者が屋外の展示を訪れていた。
●MRI:DLR-MRIの新製品「Vantage Fortian」の自動化機能を中心に展示を構成
MRIでは,ITEMに合わせて発表された1.5T DLR-MRI「Vantage Fortian」が大きくフィーチャーされた。DLR-MRIは,ディープラーニングを再構成に応用した“Deep Learning Reconstruction”を搭載したMRI装置である。Vantage Fortianでは,DLRによるSNRの向上効果で高分解能画像の短時間収集やさらなる高精細画像の収集が可能になっているほか,新たに検査をアシストするさまざまな機能を搭載して新しい検査ワークフロー(Intelligent Workflow)を提案する装置となっている。Intelligent Workflowの一つが,キヤノン製のカメラを採用したシーリングカメラを用いたポジショニングやコイルセッティングのサポート機能だ。天井に設置されたシーリングカメラの映像から寝台上の患者体位を認識して,ポジショニングやコイルのセッティングに必要なガイド線を,ガントリ上部に設置されたインテリジェントモニタに表示する。検査者はこの画像を見ながら適切なポジショニングやコイルの設置が行える。また,“タブレットUXアプリケーション”は,これまで操作卓(コンソール)で行ってきた作業をすべてタブレット端末で行えるようにしたソフトウエアだ。検査前の患者情報や検査部位の確認,プロトコールの選択などが可能で,検査中の画像の確認も行うことができる。さらに,AI技術を応用した撮像断面アシスト機能“Auto Scan Assist”が搭載され,肝臓の位置決めをアシストする“LiverLine and SUREVOI Liver”,前立腺の位置決めをアシストする“ProstateLine+”,全脊椎の自動スライス設定や椎体のナンバリングをアシストする“W-SpineLine+”が新たに追加された。
●Angio:12インチ×16インチの高精細検出器“Hi-Def Detector”を搭載した「Alphenix Biplane」を展示
Angioブースでは,12インチ×16インチの高精細検出器”Hi-Def Detector"を搭載した「Alphenix Biplane」を展示した。Hi-Def Detectorは,画素サイズを76µmまで小さく設計したFPD(X線平面検出器)であり,従来FPDの画素サイズ194µmの約1/4の大きさにすることで,画像の高精細化を実現している。これまで頭部領域で使用されてきた12インチ×12インチFPDに加え,12インチ×16インチFPDにもHi-Def Detectorを搭載できるようにしたことで,全身のさまざまな領域でHi-Def Detectorの適応が可能となった。今回,Alphenix Biplaneの実機展示を通じて,Alphenixのラインアップが拡充したことをアピールした。
●X線:キヤノン製FPD「CXDI」を搭載した回診車「Mobirex i9」,デジタルX線TV「Astorex i9」を出展
デジタルX線では,回診用X線撮影装置「Mobirex i9」を展示した。2021年6月に発売された製品で,キヤノン製のデジタルラジオグラフィ(FPD)の「CXDI」シリーズと組み合わせて,院内を移動したX線撮影を可能にする。Mobirex i9は,本体の幅56cm,長さ128.5cm,支柱収納時の高さ127cmのコンパクト設計で,パワーアシストテクノロジーによって静かで滑らかな走行性を実現している。また,本体に組み込みの19インチのフルフラットの画面は,基本的なメニューなどが日本語表示で直感的にわかりやすく使いやすいデザインとなっている。また,CXDIのパネルはIP57(国際保護等級)に対応していることを水槽にパネルを浮かべたディスプレイでアピールした。
デジタルX線TVシステム「Astorex i9」は,昨年のITEM2021で発表された通常の胃透視検査から消化器科や泌尿器科の処置や検査まで多目的に使用できるX線透視装置である。今年のITEM2022では,寝台や映像系(X線管-FPD)を動かすことなく,透視中の関心領域の視野を移動できる“i-fluoro”ほか,高画質低線量コンセプトである“octave i”を臨床画像を交えて紹介した。寝台や映像系などが動かないため,天吊りモニタ,防護板に干渉せずに内視鏡検査や穿刺などの手技が安心してできるようになり,さらにはoctave iによる−65%の線量で安全に手技をサポートする。
●超音波:AI搭載の「Aplio i-series / Prism Edition」,コンパクトな「Aplio flex」「Aplio go」など新ラインアップがそろう
超音波コーナーでは,2021年5月に発売されたプレミアムクラスの超音波診断装置「Aplio i-series / Prism Edition」,ITEM直前に発表され7月から販売される「Aplio flex」と「Aplio go」が展示された。Aplio i-series / Prism Editionでは,ディープラーニングやマシンラーニングといったAI技術を用いて開発されたアプリケーションなどで検査を支援する。また,“iBeam+”技術や高周波プローブなどで高画質での検査が可能になっている。ブースでは,Attenuation Imagingなど“Liver Package”で肝疾患の各ステージでの定量評価が可能なことを紹介した。また,Aplio flexとAplio goは,コンパクトな装置に生活習慣病管理のアプリケーションなどが搭載可能で,効率の高い検査ワークフローで日常の検査を支援できる。
〈ApliGate〉
超音波診断装置の検査画像をキャプチャーして遠隔地との共有が可能なソリューションを紹介
超音波コーナーでは,超音波診断装置の臨床画像をリアルタイムで遠隔地の相手と共有できる“ApliGate”を紹介した。超音波診断装置の画像を映像出力端子(HDMI)からキャプチャーしてPCやスマートフォンなどに入力。インターネット回線を使って検査中の映像をリアルタイムに共有することで,コンサルテーションや遠隔診断が期待できる。遠隔との連携プラットフォームには,“Zoom”“Microsoft Teams”といったWeb会議システムを使用する。ApliGateは超音波診断装置から映像をキャプチャーする部分を担い,ユーザーはそれを外部入力として映像を共有しながら双方向のコミュニケーションを行う。ApliGateはキャプチャーした映像から患者名やIDを匿名化して出力でき,セキュリティを担保する。
ApliGateでは,超音波のライブ画像が共有できるため,検査をしながら遠隔地の上級医や専門医のコンサルテーションやアドバイスが得られることがメリットである。コロナ禍で病院訪問が制限される中でのコミュニケーション,医師偏在地域での専門医からのアドバイス,また教育的な効果も期待できる。使用例としては,医師不足の離島や地方での遠隔サポート,病院内でのコンサルテーション,グループ病院内での教育,キヤノンメディカルシステムズからのサポートなどが想定されている。対応機種は「Aplio i-series / Prism Edition」「Aplio a-series」「Aplio flex」「Aplio go」となっている。
●核医学:AIを応用して開発した“AiCE-i”を搭載した「Cartesion Prime」が注目を集める
核医学では,同社初のデジタルPET-CTシステムである「Cartesion Prime」を実機展示。ディープラーニング応用した画像再構成技術である“Advanced intelligent Clear-IQ Engine integrated(AiCE-i)”を搭載し,PETにおいても画質の向上や被ばくの低減といった効果が得られる。Cartesion Primeは,27cmの大視野PET検出器や空冷式の検出器によるメンテナンスコスト低減などが評価されて,国内での稼働台数が順調に伸びていることをアピールした。
●治療:リニアックの新製品「Elekta Harmony」の新機能を紹介
放射線治療ではX線治療装置(リニアック)の新製品として「Elekta Harmony」(Elekta社製)と,コンパクト設計でテニスコート2面の面積で設置が可能な陽子線治療装置「PROTEUS ONE」(IBA社製)をモニタでのプレゼンテーションで紹介した。Harmonyでは,自動顔認識システムを採用して照射開始時に治療対象患者を認証して安全な治療が行えることなど最新の機能を説明した。
●お問い合わせ先
社名:キヤノンメディカルシステムズ株式会社
TEL:0287-26-5100
URL:https://jp.medical.canon/