ITEM2016 日立製作所 ブースレポート
“Innovating Healthcare, Embracing the Future”をコンセプトに,日立ヘルスケアがめざす医療イノベーションを展望
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2016-4-26
日立製作所ブース
日立製作所は,2016年4月1日に日立製作所ヘルスケア社と日立メディコ,日立アロカメディカルを統合し,日立製作所ヘルスケアビジネスユニットとして新しくスタートを切った。統合初の展示会となった今回,新コンセプトに“Innovating Healthcare, Embracing the Future”を掲げ,ヘルスケア事業の今後の方向性を示す展示を行った。正面ステージでは,日立がめざすこれからのヘルスケアや,今後提供される新しいサービスがプレゼンテーションされた。この中で,日立製作所執行役常務ヘルスケアビジネスユニットCEOの渡部眞也氏は,「医療はデータ活用によってこれから大きく変わります。日立はケアサイクル全体をITによって最適化し,一人一人に質の高い医療を提供できる社会システムの構築をめざします。その第一歩として,モダリティに加え疾患別ソリューションや手術支援,クラウドソリューション事業を強化し,データドリブンによるイノベーションでヘルスケアの課題解決に取り組みます」とメッセージを述べている。
これを具現化したのが今回の展示であり,ブース正面には「イノベーションエリア」が配置され,「診断ソリューションエリア」「治療ソリューションエリア」の3エリアで構成された。診断・治療・経営を支援する幅広いITソリューションや,各モダリティの最新装置・技術が来場者に紹介された。(4月15日取材)
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●ITソリューション:医療イノベーションを推進するヘルスケアクラウドを用いたデータ利活用ソリューションを提案
日立ヘルスケアのこれからの方向性として,今回大きく打ち出されたのが「データ利活用」。これを表すように,ブース正面にはITソリューションを紹介するイノベーションエリアが設けられた。日立が,データ活用による医療イノベーションを推進する上で中核と位置づけているのがヘルスケアクラウドだ。クラウドソリューションを活用し,「診断の質の向上」「治療の質の向上」「経営の質の向上」の3つの価値を提供するためのサービスやITシステム,トータルソリューションが大きくアピールされた。
「診断の質の向上」のために提案されたのが,DICOMやHL7のデータだけでなく,PDF化した文書データなども含めた院内の多様なデータをファイルサーバに一元管理し,横断的に検索することを目的に開発された「ヘルスケアデータ統合プラットフォーム」だ。取り込んだデータ内容を解析して検索用インデックスを生成することで,見たいものを,見たいときに,データ種別を超えて全文検索することができる。検索したデータは時系列表示することもできるため,患者の経過をあらゆるデータで追い,診断に役立てることも可能になる。これらのデータは,クラウド上にあるストレージへの自動バックアップもできるため,システムの故障時や災害時のBCP対策としても活用できる。暗号化やデータの改ざん禁止(WORM)機能など堅牢なセキュリティ対策を施しており,医療機関間の連携プラットフォームとしての活用など,幅広く提案をしていく予定だ。
「治療の質の向上」のために提案されたのが,統合データサーバを各モダリティやPACS,生体モニタ,HIS,RISとつなぎ,手術室や治療室のモニタに,見たいデータを見たいレイアウトで,リアルタイムに表示するソリューションである。このソリューションも含めて,日立が注力していくトータルソリューションとして紹介されたのが「スマート手術室ソリューション」である。これは,脳腫瘍摘出術や凍結手術器「CryoHit」による手技における手術機器環境の提案であり,日立が強みとするオープンMRI,ナビゲーションシステム,MRI対応の手術台や周辺機器,さらには別室や遠隔地にいるヘッドクオーターがさまざまな情報を基に手術支援を行う遠隔手術支援なども含め,これまでの導入実績を基にさらなる拡大をめざしていく。
「経営の質の向上」のためのソリューションとして展示されたのが,IoT,M2M技術を活用した「故障予兆診断サービス」である。世界中の装置から集めたビッグデータを解析することで装置固有の正常範囲を設定し,そこから大きく外れる信号をとらえると最寄りのサービス拠点にアラームが送られ,壊れる前に整備や部品交換を行う。評価導入した施設では,これによりダウンタイムを16.3%低減しており,装置の稼働率向上による経営への貢献,患者サービスの向上にもつながる。
その他クラウドソリューションとしては,日立独自の高速ファイル転送技術“Hitachi WAN Optimizer”搭載のゲートウェイを用いて検診車から画像データをクラウドに自動で高速転送し,施設や読影センターで即座に読影を行える「医用画像転送サービス」などが紹介された。
また,日立健康保険組合11万人のデータ解析やこれまで培ってきた病院運営のノウハウを基に提供する「病院運営支援サービス」を展示するコーナーでは,開発中の「病院運営改善シミュレーション」を紹介した。患者の流れと問題個所の可視化,改善施策のシミュレーションにより有効な改善策の選定を支援するソフトウエアで,日立が提供する病院経営コンサルテーションに利用される予定である。
イノベーションエリアではほかにも,3月28日から稼働を開始した独立行政法人国立病院機構の「国立病院機構 診療情報集積基盤」(NCDA)のデータ集積基盤で用いられている電子カルテのマルチベンダー接続・連携サービスや,地域包括ケアシステム支援ソリューション,電子カルテ・医事会計・PACS一体型の診療所向けソリューション「Hi-SEED W3」などが展示され,データ活用によるイノベーションを推し進める多様なサービス・ソリューションが紹介された。
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●MRI:“ORIGIN5”を「TRILLIUM OVAL」に実装し,「ECHELON OVAL」では静音化技術が実用化
MRIでは,昨2015年に1.5T MRI「ECHELON OVAL」に搭載された新しいシステムソフトウエア“ORIGIN5”が,3T MRI「TRILLIUM OVAL」にも実装可能になったことが発表された。ORIGIN5は,信号取得から画像再構成処理までのすべての工程でノイズ低減処理を最適化する新画像再構成エンジン「REALISE」を搭載。これにより,従来と同時間撮像での高画質化,また,同空間分解能の画像取得を短時間化することが可能になる。高機能アプリケーションも数多く搭載し,脳の微細構造情報を得ることで神経変性疾患の早期鑑別などに役立つDKIや,脳神経領域において実用化していたMRSが乳房にも適用可能となっている。会場では,TRILLIUM OVALのモックアップとともに,新しく発売された従来の約2倍の感度を持つ頭部用32ch高感度受信コイルを展示。ORIGIN5と組み合わせ,高精細・高速撮像を実現するシステムとしてアピールした。
1.5T装置であるECHELON OVALについては,4月から静音化技術の搭載が可能になったことをアピールした。静音化技術は各社が発表しているが,日立の静音化技術は,従来と画質,検査時間をほぼ変えずに音圧をおよそ1/10に低減できることが特長である。この静音化技術を来場者に伝えるため,ブースの一角にはVR(virtual reality)を使った体験コーナーを設置。来場者が次々に静音化技術による効果と,OVALシリーズの特長である横74cm×縦65cmのオーバルボアを疑似体験した。
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●超音波診断装置:ARIETTAシリーズ3製品と乳房用超音波システムを新製品として発表
数多くの新製品が出展された超音波診断装置は,ARIETTAシリーズに追加された3製品と,ウーマンズヘルスとして乳房用超音波システムを展示した。
2016年2月に発表された「ARIETTA Precision」は,手術室や治療室での使用をメインターゲットとした,設置性,操作性を追求したシステム。多くの医療機器が置かれる手術室でもフレキシブルに配置して使用できるように,本体とモニタをワイヤレスでつないだ分離可能な構成となっている。モニタはスタンドによる据え置きや壁掛け,天吊りが可能で,操作卓はタブレット端末を採用することでスタンドから取り外して操作することもできる。タブレット端末の操作卓はもちろん,モニタも全面タッチパネルとすることで,普段から超音波診断装置を扱いなれていない医師や,操作補助を行うMEや看護師が直感的に操作することができる。併せて日立が強みとする幅広いプローブラインナップもアピールし,把持鉗子を用いた使用にも対応した術中用プローブ「L43K」などを展示した。ARIETTA Precisionに接続可能なプローブは,現在は術中プローブなどが中心だが,今後は通常のプローブの接続も増やし,より汎用性を広げていく予定だ。
コンパクトながら高画質・高機能が特長のシリーズ最上位機種「ARIETTA S70」は,肝組織の硬さを評価する機能として“Shear Wave Measurement(SWM)”が追加されたことが紹介された。SWMでは肝びまん性疾患における炎症と線維化を合わせた硬さを,従来から搭載されている“Real-time Tissue Elastography(RTE)”では線維化の硬さを評価できることから,2つの方法を合わせた使用により,組織が炎症と線維化のどちらにより近いかを推測することができる。また,“Real-time Virtual Sonography(RVS)”の新機能“3D Sim-Navigator”は,超音波画像とCTやMRIの同一スライス面の連動表示,ならびにボリュームデータから作成した3D立体ボディマーク機能により,複数穿刺の穿刺ラインのシミュレーションを可能にする。
ARIETTAシリーズのエリアでは,POCUS(Point Of Care Ultrasound)に向けて開発されたコンパクト装置「ARIETTA Prologue」も展示された。
ウーマンズヘルスのエリアでは,乳房用超音波システムAutomated Whole Breast Ultrasound Scanner「ASU-SOFIA」が紹介された。日立の小型超音波診断装置「Noblus」と一体型のシステムとして,日本国内でも販売を開始する。ASU-SOFIAは,ホール内のプローブが回転して自動で乳房の画像を収集する。ワークステーション上で収集されたデータをボリュームデータに変換することでCプレーン画像の再構成など解析が行われる。スキャン時間は片側52秒と短く,ワークステーションの解析に時間もかからないことから,スキャンから検査所見作成までの時間の大幅な短縮を実現する。
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●CT:12m2を下回る検査室に設置可能な16列,64列のSupriaシリーズをアピール
CTのエリアでは,患者,操作者,経営,環境に優しい最新の「Supria」シリーズをアピールした。Supriaシリーズは,2013年8月に16列マルチスライスCT「Supria」,2015年1月に64列マルチスライスCT「Supria Grande」,そして2015年11月にそれぞれをリニューアルした「Supria Advance」と「Supria Grande Advance」をリリースしており,すでに国内で600台,海外を合わせて900台を出荷している。Supriaシリーズは,75cmの大開口径ながらガントリは幅2m,高さ1.85mを下回り,ガントリ,寝台,操作卓の3ユニットで構成された小型設計が特長の装置。会場では3m×4mの検査室をイメージした木目調タイルの上にモックアップを設置し,コンパクトさを実感できるように展示した。Supria AdvanceとSupria Grande Advanceは,12m2を下回る検査室にも設置できるように寝台の撮影範囲の変更を可能にしている。また,新機能として待機電力を約30%低減するエコモードを搭載しており,経営と環境に優しい装置となっている。なお,検出器交換により16列から64列へのアップグレードにも対応可能だ。
海外での事例として,プロジェクションマッピングを使って検査室全体を演出する検査室ソリューションも紹介し,今後国内でのニーズがあれば検討していくという。
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●X線システム:高画質化・低被ばく化に貢献する新画像処理エンジンを搭載したX線透視撮影システム「CUREVISTA」
X線システムとしては,2015年11月に発売した新画像処理エンジン“FAiCE-V NEXT STAGE1”搭載のX線透視撮影システム「CUREVISTA」を大きくアピールした。最大視野42cm×42cmのFPDを搭載したCUREVISTAは,映像系が長手・横手方向にスライドする2ウェイアーム,テーブル後方やテーブル両サイドからもアクセスしやすいオフセットオープンデザインが特長のシステムで,内視鏡検査や経皮的手技などの安全な施行を支援する。今回は実機展示とともに,導入施設の事例を紹介する形で治療の質を向上させる内視鏡治療トータルソリューションとして提案した。
新搭載のFAiCE-V NEXT STAGE1には,動き追従型ノイズ除去技術“MTNR(Motion Tracking Noise Reduction)”と映像フレームレート補完技術“FRC(Frame Rate Conversion)”の2つの技術が実装されている。MTNRは,内視鏡やカテーテルなどが映る動きがある部分と,それ以外の動きのない部分のそれぞれに対して,最適なノイズ除去処理を行うことで,明瞭な透視像を得ることができる。またFRCは,前後2つのフレーム画像から,その間を補完する画像を生成することで,なめらかな透視像を表示する。従来の半分のフレームレートでも同等の透視像を得られるため,X線照射回数を減らすことができ被ばくを低減することができる。
このほか,ワイヤレスFPDを搭載した「Sirius Starmobile tiara」も実機を展示。Sirius Starmobile tiaraは,搭載された15インチモニタに撮影後3秒未満で画像を表示するスループットに優れたシステムで,病棟だけでなく救急や手術室でも活用できる。来場者は,位置決めをしやすい独自のパンタグラフアームや,コンパクトで小回りの利く走行性などを確かめていた。
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●放射線・粒子線治療:世界14施設の受注実績を持つ粒子線治療システムをアピール
治療ソリューションエリアでは,国内外で納入の進む粒子線治療システムの映像や模型での紹介,X線放射線治療システムTomoTherapy,並びに放射線計画ソフトウエアの実機などが展示された。
日立の陽子線・重粒子線治療システムは,1994年に放射線医学総合研究所にHIMACの一部を納入後,国内と北米を中心に14施設の受注実績を持つ。2015年には,米国ジョンズ・ホプキンスのSibley Memorial Hospitalと永守記念最先端がん治療研究センター(京都市)向けの陽子線治療システムを新たに受注し,計画が進められている。
北海道大学と共同開発したスポットスキャニング技術と動体追跡技術を組み合わせ照射精度を高めた「陽子線治療システム PROBEAT-RT」は,ガントリや加速器の小型化により,従来と比べ約7割にまでコンパクト化が可能になった。治療室をイメージした模型の展示に加え,2013年に稼働を開始した名古屋陽子線治療センターの建設の様子を追った映像も上映した。
X線放射線治療システムTomoTherapyでは,MLCの実機を展示し,高速に開閉するMLCのスピードを確認でき,TomoTherapyのシステムの理解に役立った。また治療計画ソフトウエアは「Pinnacle3」と「RayStation」を展示。来場者は実機を使って操作性を体感した。
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●お問い合わせ先
株式会社日立製作所
URL:www.hitachi.co.jp/healthcare