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ITEM2021 キヤノンメディカルシステムズ ブースレポート “Made Possible”をテーマに,高精細画像とAI応用技術を融合して医療の課題解決を可能にするソリューションを提案

2021-5-14

キヤノンメディカルシステムズブース

キヤノンメディカルシステムズブース   

キヤノンメディカルシステムズは,テーマを”Made Possible”として2年ぶりのITEMの展示を例年と変わらない規模で構成し来場者を迎えた。しかし,今回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大に配慮し,展示の内容や来場者を迎える社員の数を制限し,さらに来場者の出入りもチェックしてブース内で密な状況をつくらないように配慮して運営された。さらに,今年のITEMは横浜での3日間のリアル展示に加えて,ネット上で“Web-ITEM2021”(2021年5月12日〜6月3日)が開催されるが,同社では特設サイトを横浜での開幕に合わせて先行公開した。
ブースは大きく“X線”“モダリティ”“ヘルスケアIT”で構成された。X線のコーナーでは,ITEMにあわせて発売されたX線TVシステムの待望の新製品であるデジタルX線TVシステム「Astorex i9」が大きくフィーチャーされた。また,モダリティコーナーは,同社が他社に先駆けて製品化したディープラーニングを用いて設計された画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」を搭載したCT,MRI,PET/CTの実機を中心に,AiCEをキー技術として各モダリティが大きなアドバンテージを生み出していることをアピールした。また,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大への対応が長引く中で,COVID-19対応の検査ソリューションとして医療コンテナを利用したオンサイトの迅速検査環境を提案した。

 

●X線:ユーザーの声を取り入れたデジタルX線TVシステムの新製品「Astorex i9」をお披露目
●CT:AiCEや新しいDE撮影技術を搭載した「Aquilion ONE/PRISM Edition」
●MRI:AiCEを搭載したMRIのフルラインアップと臨床アプリケーションをアピール
●核医学(NM):PET部にもAiCEを搭載したデジタルPET-CT「Cartesion Prime」
●ヘルスケアIT:AI技術を応用して読影や検査を支援するさまざまなソリューションを展示
●治療:高精度の定位放射線治療を実現する放射線治療装置「Versa HD HDRS」
●超音波:「Aplio i800」の“Liver Package”とタブレット端末型の「Viamo sv7」を展示
●COVID-19対応:医療コンテナでの新型コロナウイルス感染症対策ソリューションをアピール

●X線:ユーザーの声を取り入れたデジタルX線TVシステムの新製品「Astorex i9」をお披露目

X線コーナーでは,ITEM開幕直前の2021年4月16日から国内販売が始まったデジタルX線TVシステムの新製品「Astorex i9(アストレックス アイナイン)」が展示の中心を占めた。Astorex i9は,オーバーチューブタイプのX線TVシステムで,バリウム検査からERCP,泌尿器科や整形外科の処置や検査まで多目的に使用できる。Astorex i9は,ユーザーの声を取り入れて新たな理想のX線TV装置を生み出す“Beyond”プロジェクトから誕生した製品だ。製品設計を1から見直し,キヤノン製平面検出器“i-FPD”を採用し,新たに開発した画像処理装置“i-DR”と組み合わせて,患者,医療従事者の双方が安全で安心な検査,処置が行える機能を搭載した。その一つが寝台や映像系(X線管やFPD)を移動させずに透視中に必要な視野の移動を可能にする“i-fluoro”だ。i-fluoroでは,アームや天板などを動作させないため,振動などが発生せずスコープが体内に入っていたり,穿刺などでもより安全な手技が可能になる。また,同社のX線透視装置としては初めてのトモシンセシス機能である“i-slice”や,長尺撮影の“i-stitch”など新機能を数多く搭載する。さらに,同社ではX線TVシステムにおいて高画質で低被ばくの検査を実現するコンセプトとして“octave”を展開しているが,今回その技術を見直して“octave i”に進化したことを紹介した。
そのほか,AngioコーナーではX線循環器診断システム「Alphenix」の独自機能である高精細検出器が,従来の12インチ×12インチFPDに加え,新たに12インチ×16インチFPDにも搭載可能になったことを発表した。高精細検出器は,従来FPDの画素サイズ194μmをその約1/4である76μmまで小さく設計することで,高精細な画質を提供できる。今回,12インチ×16インチFPDにも搭載可能になったことで,腹部領域においても血管像やデバイスの視認性向上が期待できる。
今回は,COVID-19感染拡大防止の観点から,展示する製品を絞ったためさまざまな工夫が行われた。Angioコーナーでは,実物のコンソールを操作すると画面内のAlphenixが連動して動く”Virtual Alphenix”が展示され,Cアームや寝台の操作性を疑似体験することができた。

“i-fluoro”など安全・安心の検査,処置を可能にする「Astorex i9」

“i-fluoro”など安全・安心の検査,処置を可能にする「Astorex i9」

 

高精細検出器が12インチ×16インチのパネルにも対応

高精細検出器が12インチ×16インチのパネルにも対応

 

“Virtual Alphenix”で実際の操作感を体験

“Virtual Alphenix”で実際の操作感を体験

 

●CT:AiCEや新しいDE撮影技術を搭載した「Aquilion ONE/PRISM Edition」

CTコーナーで展示された「Aquilion ONE/PRISM Edition」は,AiCEやDual Energy技術の新たな方式である“Spectral Imaging System”を搭載したADCTのフラッグシップ機である。今回は新CT透視システムの操作卓や,キヤノン製のWebカメラと組み合わせて展示された。新CT透視システムは,オプションで提供される生検やドレナージなどCT透視下での手技をサポートするシステム。タッチパネルを採用した操作卓は,寝台やガントリの移動のほか,画面の切り替えなども可能で,術者が穿刺の手技に関する操作を一人で行えるようになっている。今回ブースの展示で提案されたWebカメラソリューションは,キヤノン製のWebカメラを使って,CT室内や撮影時の患者監視用カメラとして利用するもの。キヤノンはネットワークカメラ事業を展開しているが,そのリソースを活用したものだ。
そのほか,80列で開口径90cmのラージボアを持つマルチスライスCT「Aquilion Exceed LB」,高精細CT「Aquilion Precision」については,モニタプレゼンテーションで紹介した。Aquilion Exceed LBは,放射線治療計画や救急用として導入されてきたラージボアCTの待望の多列化(80列)装置だ。高剛性の寝台やAiCEの搭載などさらなる精度の向上が期待されることをアピールした。

新CT透視システムの操作卓と組み合わせて展示されたAquilion ONE/PRISM Edition

新CT透視システムの操作卓と組み合わせて展示されたAquilion ONE/PRISM Edition

 

タッチパネルを採用した新CT透視システムの操作卓

タッチパネルを採用した新CT透視システムの操作卓

 

キヤノン製のWebカメラとの組み合わせを提案

キヤノン製のWebカメラとの組み合わせを提案

 

●MRI:DLR-MRIのこれまでの実績や導入施設の評価ポイントをアピール

MRIでは,実機としてフラッグシップ機の3T MRI「Vantage Centurian」を展示し,Deep Learningを用いたSNR向上技術であるDeep Learning Reconstruction(DLR,AiCE)が,同社のMRI装置にフルラインアップで搭載されたことを大きくアピールした。
キヤノンメディカルシステムズでは,DLR-MRIの開発を2018年からボルドー大学,熊本大学と共同でスタート,2019年に3TのVantage Centurianに世界で初めて搭載したのを皮切りに,2020年には3T MRI「Vantage Galan 3T / Focus Edition」,1.5Tの「Vantage Orian」「Vantage Gracian」へと拡充,2021年3月時点ですでにDLR-MRIが約100施設に導入されている。
DLR-MRIは,SNRの低い画像と高い画像の関係性を深層学習させて高精度なニューラルネットワーク(DCNN)を設計。これによってSNRの低い画像をSNRの高い画像に再構成することが可能で,DLR-MRIとはノイズを除去しSNRを向上させる技術だと言える。DLR-MRIの特長の1つは高いSNRの改善効果で従来と比べて最大で3.2倍の効果が得られている(同社比)。また,学習方法を工夫して高周波成分であるノイズのみを選択的に除去することで,コントラストやシーケンスを問わず,コイルや撮像部位などに依存せず,全身のさまざまな撮像に適用できるのもメリットである。
臨床での有用性としては,高精細画像の取得と短時間撮像という2つが考えられる。高精細画像では,空間分解能を上げて撮像することで従来は難しかった脳血管領域のLSA(穿通枝)が非造影で描出でき,術前や術中のシミュレーションに使われていることを紹介した。また,高速撮像技術と組み合わせることで高画質化と短時間化の両立が可能となる。柔軟な飛び込み検査に対応可能になったことで,月間の検査件数が増加した施設の例を紹介した。
また,最新バージョン(V7)では,“Compressed SPEEDER”“Fast 3D mode”が機能拡張され,“Exsper”“Fat Fraction Quantification”などのアプリケーションが追加されたが,これらとAiCEが実現するMRI検査の新標準を導入施設の使用経験とともに説明した。すでに,DLR-MRIが日常臨床で大きな成果をあげており、MRI検査の標準となっていることをアピールした。

最初にAiCEが搭載された3T MRIのフラッグシップ「Vantage Centurian」

最初にAiCEが搭載された3T MRIのフラッグシップ「Vantage Centurian」

 

DLR-MRI(AiCE)で従来は難しかった頭頸部のLSAを非造影で描出

DLR-MRI(AiCE)で従来は難しかった頭頸部のLSAを非造影で描出

 

“Fat Fraction Quantification”での定量評価にもAiCEを適応

“Fat Fraction Quantification”での定量評価にもAiCEを適応

 

●核医学(NM):PET部にもAiCEを搭載したデジタルPET-CT「Cartesion Prime」

核医学では,デジタルPET-CT「Cartesion Prime」を実機展示した。Cartesion Primeは同社初のデジタルPET-CTで,PET検出器は高分解能LYSOシンチレータと半導体光センサを組み合わせ,280ピコ秒未満のTOF時間分解能を実現している。また,検出器幅を体軸方向に27cmに拡大し,全身検査のスループット向上,脳や心臓を1回で撮像できるなど効率的なデータ収集を可能にする。
CT部には最新の80列CT(Aquilion Prime SP相当)を採用。0.5mm×80列による高速撮影,X線光学系技術“PUREViSION Optics”をベースにした高画質を実現し,金属アーチファクト低減処理“SEMAR”などCTの最新技術を利用できる。
さらに今回,新たにディープラーニングを用いて設計された画像再構成技術(AiCE-i)をPET部とCT部の両方に搭載した。AiCEによって,シグナルとノイズを効果的に分離することで,被ばくの低減や検査時間短縮への寄与が期待できる。

核医学(PET)にもAiCEの適応をアピール

核医学(PET)にもAiCEの適応をアピール

 

27cm幅に検出器を拡大したデジタルPET-CT「Cartesion Prime」

27cm幅に検出器を拡大したデジタルPET-CT「Cartesion Prime」

 

●ヘルスケアIT:AI技術を応用して読影や検査を支援するさまざまなソリューションを展示

ヘルスケアITのセクションでは,“Collaborative imaging”を可能にする製品やソリューションを展開した。読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」のほか,「Abierto Cockpit」,医用画像処理ワークステーション「Vitrea」,3D医用画像解析システム「AZE Virtual Place」,線量管理ワークステーション「DoseXross」,画像診断部門情報システム「RapideyeAgent」などを展示した。
Abierto RSSは,ディープラーニングなどのAI技術によって読影支援を提供するプラットフォームで,“Automation Platform”や“Findings Navigator”によって,自動化と解析結果の一元的な参照を可能にする。Abierto RSSの急性期脳卒中に対するソリューション(Abierto RSS for Stroke)では,CT画像(単純,造影)から,“Hemorrhage analysis”“Ischemia analysis”“Brain Perfusion”“Brain Vessel Occlusion”の4つのアプリケーションによって解析を行い診断支援を行う。これによって救急での迅速な診断や不慣れな医師の支援,さらにはスタッフの働き方改革へ貢献できることをアピールした。そのほか,参考展示(W.I.P.)として,Abierto RSS for Oncologyのボーンサブトラクション機能(仮称)や新しい画像ビューワなどを提案した。Oncologyのボーンサブトラクション機能は,前立腺がんなどの骨転移の経過観察の際に,過去のCT画像とのサブトラクションを行い,CT値の高い部分を赤,低い部分を青で表示し,読影を支援する。解析結果をレポートに自動で反映する機能を搭載する。また,開発中の新しい画像ビューワでは,画像の自動レイアウト機能やCTとMRIなど異なるモダリティの画像を自動で位置合わせする“Anatomical landmark”などの機能を紹介した。また,医療情報統合ビューワ「Abierto Cockpit」では,Vitreaで開発中の固形がんの経時変化の追尾表示や化学療法支援システム“CyberOncology”との連携を紹介した(W.I.P.)。

読影支援ソリューションAbierto RSSの“Hemorrhage analysis”

読影支援ソリューションAbierto RSSの“Hemorrhage analysis”

 

Abierto RSSのIschemia analysis”

Abierto RSSのIschemia analysis”

 

Abierto RSSの“Brain Perfusion”

Abierto RSSの“Brain Perfusion”

 

Abierto RSS for Oncologyのボーンサブトラクション機能(W.I.P.)

Abierto RSS for Oncologyのボーンサブトラクション機能(W.I.P.)

 

●治療:高精度の定位放射線治療を実現する放射線治療装置「Versa HD HDRS」

治療では,高精度の定位放射線治療を実現するエレクタ社製放射線治療装置「Versa HD HDRS」と,コンパクト設計で都市部での設置を可能にしたIBA社製陽子線治療装置「PROTEUS®ONE」についてモニタで紹介した。
Versa HD HDRSは,エレクタ社のリニアックのフラッグシップモデルで,High-definition Dynamic Radio Surgery(HDRS)を提供する。その3つの特徴は,1) アダプティブワークフロー,2) 定位治療を簡単に(体表面のIGRTであるCatalyst,超音波によるIGRTのClarityなど),3) Elekta Assurance(効率的なQAソリューション)である。アダプティブワークフローでは,エレクタのMRIリニアック(Elekta Unity)の技術をX線の従来のシステムに応用し,患者の体型変化にも対応した高精度の治療を可能にする。

エレクタ社製放射線治療装置「Versa HD HDRS」とIBA社製陽子線治療装置を紹介

エレクタ社製放射線治療装置「Versa HD HDRS」とIBA社製陽子線治療装置を紹介

 

Versa HD HDRSの3つの特徴

Versa HD HDRSの3つの特徴

 

●超音波:「Aplio i800」の“Liver Package”とタブレット端末型の「Viamo sv7」を展示

超音波診断装置では,フラッグシップのラインアップである“Aplio iシリーズ”の中で,汎用タイプの最上位機種である「Aplio i800」とタブレット端末型の「Viamo sv7」を展示した。
Aplio i800では,肝疾患の進行度合いをトータルにカバーする“Liver Package”を紹介した。Liver Packageでは,Attenuation Imaging(ATI),Shear Wave Dispersion(SWD),Shear Wave Elastgraphy(SWE)などで,脂肪肝から肝炎,肝線維化,肝硬変と進展する肝疾患の各ステージの病態を把握できる。展示では,各アプリケーションによる定量情報を一目で参照できるレーダー表示などを紹介した。
また,タブレット型で12.3インチの画面を持つViamo sv7は,重さ1.45kgで3時間のバッテリ駆動で,診察室やベッドサイド,救急医療や在宅医療などさまざまなシーンでの活用が期待できる。展示では,新たに12MHzの高周波プローブに対応したことをPRした。

フラッグシップの「Aplio i800」

フラッグシップの「Aplio i800」

 

Liver Packageのレーダー表示

Liver Packageのレーダー表示

 

タブレット端末型の「Viamo sv7」では12MHzの高周波プローブに対応

タブレット端末型の「Viamo sv7」では12MHzの高周波プローブに対応

 

●COVID-19対応:医療コンテナでの新型コロナウイルス感染症対策ソリューションをアピール

COVID-19感染対策として,展示会場外のエリアで(株)Sanseiが開発した医療コンテナソリューション「MC(Medical Container)-Cube」と,キヤノンメディカルシステムズの蛍光LAMP法などを用いた,オンサイトで迅速な検査環境の構築を可能にするソリューションを展示した。MC-Cubeは,CTやMRIなどの画像診断機器や処置室,検査室などさまざまな医療設備をユニット化できる拡張性や応用性を備えた医療用のコンテナソリューション。キヤノンメディカルシステムズでは,COVID-19の迅速検査のほか,80列CTを搭載した感染症対策コンテナCTも製品化している。展示では,検体採取用のブース仕様のコンテナとキヤノンメディカルシステムズの「新型コロナウイルスRNA検出試薬LAMPdirect/Genelyzer KIT」および等温増幅蛍光測定装置「Genelyzer F」シリーズを設置した検査室仕様の2台のコンテナを設置。2台を連結させて唾液の採取から増幅,検査までのフローを紹介した。

展示会場の屋外に設置された医療コンテナ。検体採取と検査室は実際には平行に並べて設置される。

展示会場の屋外に設置された医療コンテナ。検体採取と検査室は実際には平行に並べて設置される。

 

個室になっておりそれぞれで検体を採取

個室になっておりそれぞれで検体を採取

 

検査室コンテナには等温増幅蛍光測定装置「Genelyzer F」シリーズを設置

検査室コンテナには等温増幅蛍光測定装置「Genelyzer F」シリーズを設置

 

●お問い合わせ先
社名:キヤノンメディカルシステムズ株式会社
TEL:0287-26-5100
URL:https://jp.medical.canon/