2019-4-22
キヤノンメディカルシステムズブース
キヤノンメディカルシステムズは「Made possible.」を掲げて,展示面積1000m2と最も大きいスペースで展示を展開した。Made possible.のテーマは,キヤノンメディカルシステムズの経営スローガンである“Made for Life”をベースに,同社の持つ製品や技術力がさまざまな課題を解決できることをアピールするものだ。現社名となった2018年以来,多くの新製品を送り出してきたが,今年のブースではそれらの製品群が市場で評価され多くの臨床的な価値を生み出していることをアピールした。初日には,キヤノン代表取締役会長CEOの御手洗冨士夫氏も来場し,キヤノンメディカルシステムズの瀧口登志夫社長から説明を受けた。
ブースでは,特別コーナーとして“Collaborative imaging”を設け,各種モダリティやヘルスケアIT,AI技術を含めてキヤノンメディカルシステムズの総合力で医療の課題を解決するソリューションを提案した。HITでは,開発中のPACSなど読影のワークフローにAIを取り込んだシステムを紹介,CTやMRにおいてもディープラーニングを用いた画像再構成技術が実用化,あるいは臨床投入が近いことをアピールした。
●Collaborative imaging:モダリティ,ヘルスケアIT,AIがコラボレートして医療課題を解決するコンセプトを提案
●HealthcareIT:AIを組み込んだワークフローで診断支援や読影業務の効率化を図る
●CT:AIを用いた画像再構成技術“AiCE”など多数の臨床データで先進のCT技術をアピール
●MR:1.5T「Vantage Orian」や“Ultra Gradient system”の高分解能画像を展示
●UL:Aplio i800のSmart Fusion,タブレット超音波「Viamo sv7」をPR
●X線:“Alphenix+320列”の新Angio-CT,octaveによる高画質・低線量検査をアピール
●放射線治療:超伝導加速器でコンパクト,短期間導入でコストパフォーマンスの高い陽子線治療システムを紹介
●Collaborative imaging:モダリティ,ヘルスケアIT,AIがコラボレートして医療課題を解決するコンセプトを提案
ブース中央には,キヤノンメディカルシステムズが持つ幅広いソリューションを,疾患や領域といった視点で統合して提案する“Collaborative imaging”の特設展示を設けた。
“Collaborative imaging”とは,患者中心のケアをひとつ先のステージへ導くために,統合型ヘルスケアITソリューションを中心とした,モダリティやクリニカルアプリケーションの最先端の連携を示すコンセプトである。特設展示のコーナーでは,臨床領域ごとに事例を紹介し,その提案価値をClinical(臨床価値の向上),Operational(ワークフローの改善),Financial(病院経営への貢献)という観点からアピールした。
展示プレゼンテーションでは,疾患として「Stroke」「Structural Heart Disease」「Breast Cancer」の3つ領域を例に説明した。例えば,脳卒中診療の急性期から回復期までの患者ケアサイクルにおいて,急性期では治療の適応判断をサポートする“ベイズ推定アルゴリズム”を用いた”“CT 4D脳血流解析”の有用性を訴求,Aquillion ONEにより血行動態評価とペナンブラの評価が1回の撮影で行える点を強調した。ワークフローについては,AIとヘルスケアITの活用によって,特に院内で発生する膨大なデータマネジメントフローの改善に取り組んでいる最新の仕組みを紹介した。さらに,病院経営への貢献として,会計データとリンクしたデータ抽出により,病院ごとの最適な装置運用を解析し,改善を提案するサービスについても紹介した(日本での販売は未定)。
●HealthcareIT:AIを組み込んだワークフローで診断支援や読影業務の効率化を図る
HITコーナーでは,医療情報統合ビューア「Abierto Cockpit」や画像ソリューション「RapideyeCore Grande」を中心に,Collaborative imagingコーナーでも紹介された開発中のサーバやビューワ,ワークリストなどのAI技術を含めた新しい画像診断ワークフローを紹介したほか,2019年2月に発売された線量管理ワークステーション「DoseXross」や医用画像処理ワークステーションの「Vitrea」の新機能を中心に紹介した。
HITでのAIの展開としては,PACSの通常の読影フローの中にAIを取り込み,検査・読影をサポートするソリューションの提供を目的に開発が進められている。展示では,領域として脳神経外科領域(脳卒中)とオンコロジー(肺結節)をピックアップして,具体的なフローを提案した。脳梗塞の診療フローでは,撮影された頭部CT画像をAIを含むさまざまな画像解析を行うサーバに転送する。解析結果はマークアップし,リストで表示される。読影医はAIが示した結果を表示するビューワで参照し,解析結果はレポートに転送される。
さらに,キヤノンマーケティングジャパンが提供するクラウド型地域連携システム(W.I.P.)とも連携して,地域連携病院へ画像データ転送する機能なども紹介した。
また,肺結節の診療フローでは,CT画像解析の結果を医師がビューワで確認する。また腫瘍の経時変化も記録することが可能で,記録されたデータを医療情報統合ビューワ「Abierto Cockpit」に送信して,タイムライン上でほかの検査結果とあわせて確認できることを紹介した。
【DoseXross】クロスモダリティ対応の線量管理システム
線量管理ワークステーション「DoseXross」は,CT,X線循環器システム(XR)の線量分析機能,稼働状況分析機能,個人線量履歴機能を提供する。線量情報の取り込みについては,DICOM RDSRのほか,セカンダリキャプチャ画像に対応しOCR機能で数値を読み込むことが可能になっている。線量分析機能では,使いやすくわかりやすいユーザーインターフェイスで線量情報の集計,分析が行える。プロトコールグループ機能では同種類の微妙に異なるプロトコールをグループ化して集計でき,DRLとの比較を容易にする。設定したしきい値を超えた検査についてはアラート機能で画面上に明示され,詳細情報を確認できる。また,個人線量履歴機能では,個人の検査内容をタイムラインで示し,モダリティごと,部位ごとにグラフィカルに表示して詳細が確認できるようになっている。今後,追加が予想されるマンモグラフィなどのモダリティにも柔軟に対応できることが特長だ。
【Vitrea】リアルな3Dを作成する“Global Illumination”
医用画像処理ワークステーションの「Vitrea」では,新たに搭載された三次元レンダリング技術の“Global Illumination”を紹介した。Global Illuminationでは,従来の3D画像のような単一の光線や反射のみでなく,多量の光線を緻密にシミュレートすることで実像に近い仮想3D画像を生成する。さらに,高速計算処理によって回転や拡大縮小などを従来のVR処理と変わらない時間で行いリアルタイム表示できる。そのほか,Vitreaでは,ベイズ推定アルゴリズムを用いた4D-perfusionによるサマリーマップ画像についてCTコーナーで紹介したほか,HITコーナーではAIにおける教師データの収集,作成を支援する“教師データ作成支援ツール(W.I.P.)”をPRした。
●CT:AIを用いた画像再構成技術“AiCE”など多数の臨床データで先進のCT技術をアピール
CTコーナーでは,高精細CT「Aquilion Precision」とADCTのフラッグシップである「Aquilion ONE/GENESIS Edition」を展示すると同時に,ディープラーニングを用いた画像再構成技術“AiCE”の技術紹介と最新臨床データをモニタで紹介した。AiCEは,ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いてCTの画像再構成を行い空間分解能向上とノイズ低減を図る。教師データとしてMBIR(FIRST)を応用したデータを用いていることが特徴である。昨年のITEM2018でAquilion Precisionへの搭載が発表されたが,11月にはRSNA2018に合わせてAquilion ONE/GENESIS Editionへの搭載が発表された。適応可能な領域は,Aquilion Precisionが“body”,Aquilion ONE/GENESIS Editionが“lung,body,cardiac”となっているが,さらにその他の領域にも展開していくとのことだ。
2019年1月に販売を開始した高機能16列マルチスライスCT「Aquilion Start」は,上位機種で培ってきた“PUREViSION Optics”やAIDR 3D EnhancedやSEMARといった高画質化技術を標準搭載し,最小設置面積9.8m2とコンパクトな装置になっている。“NAVI Mode + ”によってCT検査の一連の操作を対話形式でセットでき効率的な検査をサポートするほか,16列CTとしてコストパフォーマンスや運用サポートなどを含めた導入のしやすいサービスを提供することもアピールした。ブースでは,Aquilion StartとAquilion LightningについてVRによって両装置が設置された検査室・操作室の環境を疑似体験できるデモ展示を行った。
●MR:1.5T「Vantage Orian」や“Ultra Gradient system”の高分解能画像を展示
MRでは,1.5T MRI「Vantage Orian」が展示され,“MRシアター”を体験できるセットアップで来場者にアピールした。Vantage Orianは,3T装置で培った技術を投入して高画質化を図っているほか,ガントリから脱着が可能な寝台(ドッカブル寝台)を採用し,検査効率などを高めている。
また,研究機として国内では5台が稼働中の3T MRI「Vantage Galan 3T ZGO」について,稼動サイトの放射線科教授を対象としたインタビューVTRと,AIを用いた画像再構成技術“DLR:Deep Learning Reconstruction(W.I.P.)”を用いた最新の臨床画像をディスプレイで紹介した。“Ultra Gradient system”であるZGOでは,最大傾斜磁場強度(Gmax)100mT/mという磁場強度での撮像が可能で,従来よりも高分解能画像の撮像ができる。ブースではDLRと組み合わせて実現された高分解能で低ノイズの臨床データを含めて紹介した。さらに,ブースではデザインが一新された3.0Tの新装置(W.I.P.)を展示。これは研究機であるZGOの一般販売モデルとして開発している装置とのことだ。
MRの最新アプリケーションや機能としては,Ultra Gradientシステムによる歪みの少ない“High Quality DWI”,高速な3D撮像を可能にする“Fast 3D”,非造影で1回のスキャンで動態撮像が可能な“mASTAR”,ステントの内腔評価を可能にする“UTE with Time-SLIP”,動態撮像と金属に強い“mUTE 4D-MRA”などを紹介した。“ForeSee View”は,ROI操作に沿ってリアルタイムに撮像結果がわかるため,断面設定の失敗が少なくなり検査時間の延長を防ぐことができる。
●UL:Aplio i800のSmart Fusion,タブレット超音波「Viamo sv7」をPR
UL(超音波診断装置)では,“Aplio i-series”のフラッグシップである「Aplio i800」,昨年のITEM2018で初出展されたハイエンドの“Aplio a-series”から「Aplio a550」を展示した。Aplio i800では,CTやMR画像とのフュージョンによる“Smart Fusion”によって穿刺などをサポートできることを,実際にファントムを使ってPRした。従来のCT/MRに加えて,PET-CTにも対応し,Quad ViewによってCTの解剖学的画像とPETの機能画像を表示しながら,HIFUなどの穿刺治療が可能になる。また,世界初の超高周波リニアプローブである33MHz高周波リニアプローブ“PLI-3003BX”もITEMでは初めて出展された。PLI-3003BXでは,33MHzの高周波によって表在領域の微細な構造の観察が可能で,展示では“SMI(Superb Micro-vascular Imaging)”による血流や静脈弁周囲の血液のうっ滞などの高精細画像をアピールした。そのほか,2018年11月に発売したタブレット超音波「Viamo sv7」がITEMでは初展示された。Viamo sv7は,12インチのモニタで1回の充電で3時間使用することができる。病院内での持ち運びや在宅や訪問診療,スポーツ診療での利用が期待される。
●X線:“Alphenix+320列”の新Angio-CT,octaveによる高画質・低線量検査をアピール
XRでは,次世代のアンギオシステムとして昨年のITEM2018で発表された「Alphenix」と,ADCTのフラッグシップ機である「Aquilion ONE」を組み合わせたAngio-CTシステムを展示した。同システムはRSNA2018でも展示されたが,天井走行式ダブルアームの「Alphenix Sky+」と320列CTを組み合わせることで,高画質と多彩なアプリケーションを利用した診断・治療を,低被ばくでより少ない侵襲で可能にする。Alphenixでは,Cアームをテーブルの頭頂方向ではなく“横入れ”で3D撮影が可能な機構を採用,ADCTによる高速撮影と併せて迅速で正確なIVRが可能になる。また,「Alphenix Workstation」ではカテーテル治療を支援するさまざまな機能が搭載されている。腫瘍に対する栄養血管候補を自動選択して表示する“Embolization Plan”が,複数の腫瘍に対する処理に対応したことを紹介した。
多目的デジタルX線TVシステム「Ultimax-i」は,17インチ×17インチの大型FPDを搭載したX線TVシステムで,Cアームによるフレキシブルな撮影によって診断だけでなく,ERCPのほか整形や気管支領域などの透視下手技や治療にも幅広く対応できる。展示では,高画質・低線量検査コンセプトの“octave”と組み合わせることで,最大で65%の線量低減が可能になることをアピールした。octaveは,多重解像度SNRFやデジタル補償フィルタ(DCF)によって高画質・低線量検査を可能にする最新技術のコンセプトである。ブースではoctaveの臨床画像について,上部消化管やERCP関連などの症例別,通常から低被ばくまでの線量別,フレームレート別に参照できるようにして,効果の違いを説明した。
そのほか,マンモグラフィでは従来からの患者にやさしい検査を提供するコンセプトを継承し,高精度のトモシンセシス撮影を可能にする「Pe・ru・ru LaPlus」とマンモビューワ「Rapideye Saqura」などを展示した。
●放射線治療:超伝導加速器でコンパクト,短期間導入でコストパフォーマンスの高い陽子線治療システムを紹介
キヤノンメディカルシステムズは,2016年からベルギーIBA社の陽子線治療システム「PROTEUS ONE」の販売を行っている。PROTEUS ONEは,超伝導によって加速器(シンクロサイクロトロン)を小型化するなどでテニスコート1面分の面積で設置できるコンパクトな設置性の高さが特徴である。また,装置をコンパクトにしたことで短期間で施設立ち上げが可能で,従来の半分以下(これまでの実績で約9か月程度)で稼働しており,リニアック並みの運用を可能にする。220°のオープンガントリによって治療室部分も広くなっており,ペンシルビームスキャンによる精確な照射とあわせて高い設置性を誇る。ブースでは,模型を使ってコンパクトな設置性をアピールした。
●お問い合わせ先
社名:キヤノンメディカルシステムズ株式会社
TEL:0287-26-5100
URL:https://jp.medical.canon/