2017-4-28
フィリップスエレクトロニクスジャパンブース
フィリップスエレクトロニクスジャパンは,ITEM2016よりもブースを広げ,より多くの製品・ソリューションを展示した。今回,ブースの目玉となったのが,血管撮影装置の次世代プラットフォーム「Azurion」である。ITEM初日の4月14日(金)にはAzurionの除幕式が行われ,華々しく開幕を飾った。除幕式,ならびにプレス向けブースツアーの冒頭に,3月1日付で代表取締役社長に就任した堤 浩幸氏が挨拶した。堤氏は,「フィリップスは,2025年までに30億人の健康・生活を豊かにすることをスローガンに掲げている。ナンバーワンのヘルステックカンパニーをめざし,健康的な生活から予後までをトータルにサポートするend to endのソリューション・技術の開発,サービスモデルの創造に取り組んでいる。あわせて,AIやビッグデータ,IoT,クラウドといったデジタル化も医療ソリューションに取り込むことで,患者さん,医療従事者,病院経営をサポートしていく。今回の展示では,人・IT・ソフトウエア・ハードウエアをひとつにするソリューションを中心に展示しており,なかでもAzurionはフィリップスの進む方向を象徴した新しいソリューションそのものだ」と,フィリップスのビジョンとAzurionの位置づけを説明した。
新製品・新機能としては,ミドルクラスの移動型デジタルX線撮影装置「MobileDiagnost M50」を新製品として紹介するとともに,MRIの“In-Bore Experience”や超音波診断装置「EPIQ」への新機能追加,ヘルスケアITとして画像管理システム「IDS7 VNA PACS」やネットワーク型マルチモダリティワークステーション「IntelliSpace Portal」の最新バージョンの機能・アプリケーションなどをアピールした。
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●血管撮影装置:次世代のプラットフォーム「Azurion」を堂々アピール
ITEM初日に行われた除幕式で,血管撮影装置の次世代プラットフォーム「Azurion」がお披露目された。除幕式では,堤社長の挨拶と実機のアンベールに続き,ロイヤルフィリップスIGTビジネスグループリーダーのBert van Meurs氏が挨拶した。Meurs氏は,「Azurionは,従来のX線血管撮影装置という枠を超える包括的な次世代のプラットフォームとして,7年の歳月をかけ,臨床現場の方々とともに開発した。評価機をグローバルで20システム,日本国内でも2システムを導入して評価した上で,今回の発売に至った」と,Azurionのねらいと経緯を述べた。
Azurionは,「AlluraClarity」ファミリーに実装されている“ClarityIQテクノロジー”による高画質と低被ばくの両立に加え,1000以上の新部品・技術の採用によりワークフローの改善を図り,質の高い治療をサポートするとともに,カテーテル室のパフォーマンスを向上させる。デザインもアルパインホワイトと呼ばれる新しいカラーを採用し,清潔感と高級感のあるものに一新した。
大きな特長の一つが,新開発の運用システム“コネクトOS”で,これにより血管撮影システムだけでなく電子カルテやPACS,血管内超音波(IVUS)などの周辺機器も含めて,Azurionのコンソールやキーボード,ワイヤレスマウスで操作が可能となる。手技にかかわるあらゆる情報を統合表示する治療室内の58インチ液晶モニタ“FlexVision”も改良され,多彩なレイアウトに加え,手技のステージに合わせて表示する情報のリサイズを,テーブルサイドのタッチスクリーンモジュールや操作室コンソールで容易に行える。タッチクスリーンモジュールには透視画像が表示され,指先操作で画像の拡大縮小やパンニング,エッジフィルタやコリメーションの操作ができ,周辺機器の操作もテーブルサイドで可能なため,オペレーターは常に術者の隣で意思疎通を図りながら,直感的な操作で術者をサポートできる。
さらに,新機能“プロシージャーカード”は,あらかじめ検査の撮影条件や画質,映像信号の種類やレイアウトなどを設定した“カード”を登録しておくことで,カードを選択するだけでセットアップを完了でき,準備時間を大幅に短縮する。カード登録数に上限はなく,施設ごとに必要な設定を作成・登録可能だ。また,プロシージャーカード機能の一つとしてタイムアウト時に有用なプロトコルチェックリスト機能は,検査の注意点や,準備のチェックリスト,検査で行う撮影方法といった,検査に携わるスタッフが共有すべき情報を記したPDFファイルやMicrosoft Office系のファイルをインポートし,準備中にFlexVisionに表示することができる。重要事項を共有することで,スムーズな検査を支援し,安全性の向上にも寄与する有効な機能であるとして,評価導入した施設から高い評価を得ている。
Azurionには,手技全体の時間短縮をめざし開発された“インスタントパラレルワーキング機能”も実装されている。これは,透視検査中でも,操作室側で画像解析や周辺機器のセットアップ,次の検査の準備など別の作業を同時に行える機能で,トータルの検査時間を大幅に圧縮し,カテーテル室のパフォーマンスを向上することができる。
このように作業効率を追究したAzurionについて,Meurs氏は「Azurionは,単にクリニカルエクセレンスを追究するのではなく,医療の効率化が求められる中で,治療の質を落とさずにより多くの検査をこなしたいという現場の要求に応える新たなプラットフォームである。特に日本においては,さまざまな情報とモダリティを駆使する高度な手技が行われていることから,すべての情報を統合操作できるAzurionの機能の重要性は高い」と説明する。なお,海外ではAzurionの機能を生かし,IP電話サービスと接続することで教育やカンファレンス,コンサルテーションにも活用している。Miami Cardiac & Vascular Instituteでは,手技中の動画も含めてAzurionのあらゆる情報を統合したものを,離れた場所にいるフェローへのティーチングに用いるといった運用もされている。
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●MRI:“First time right(1回の検査で確実に診断する)”を実現する機能や技術を展示
MRIは,“今ある課題を,妥協しない未来へ”をテーマに,快適な検査環境を提供する“In-Bore Experience”の新機能や,MRI全体のデジタル化を図ったハードウエア“dSync”,さらにdSyncにより実現する最新のアプリケーションを来場者にアピールした。会場にはMRI部門グローバルトップのEric Jeanゼネラルマネージャーも訪れ,フィリップスのMRIのビジョンについてコメントした。Jean氏は,より短時間のMRI検査で確実な診断を行うこと,そして診断に限らず治療へも活用を拡大していくことを,「More accessible」「More definitive」「More impact」の3つのビジョンで説明した。
国内では30施設で稼働しているIn-Bore Experienceには,被検者の負担をさらに軽減する新しい機能が追加された。In-Bore Experienceでは,被検者はガントリ背部の壁面に映される映像を頭部コイルに設置された鏡で見ながら検査を受けられるが,この映像上に,息止めや検査の残り時間をプログレスバーや円グラフで表示する機能が追加された。検査の進捗状況がわかることで,被検者の心理的負担の軽減に貢献する。
新ハードウエアdSyncは,従来から実装されていた受信系のフルデジタルコイルシステムdStreamに,送信系のデジタル化と画像再構成システムの高速化を加え,超高速・高精度のデジタル制御により今後実装される次世代アプリケーションに対応する。2016年から標準搭載が始まっており,既存システムのアップグレードも可能だ。会場では併せて,dSyncにより可能になる最新のアプリケーションも紹介された。
まず,新シーケンス“Compressed SENSE”(W.I.P.)は,圧倒的な撮像時間短縮を実現する。一例として頭部ルーチン検査では,T2強調画像,T1強調画像,FLAIR,T2*強調画像,DWI,MRAの一連の撮像時間が,従来のパラレルイメージングSENSEでの17分37秒から,9分14秒まで短縮する。Compressed SENSEに応用されている圧縮技術とは,画像を圧縮して繰り返しデノイズ処理を行うため画像再構成時間の延長が懸念されるが,検査全体の時間短縮をめざして開発されたCompressed SENSEでは,検査終了後10秒で画像再構成が完了する。また,2D・3D撮像への対応やユニークなオプティマイズドサンプリングの採用,k space中心を重点的に埋めることでモーションアーチファクトを低減できるといった特長を持つ。まずは頭頸部,脊椎,四肢関節領域を対象にリリースし,次期バージョンで体幹部,循環器領域にも対応する予定である。将来的にはすべての領域,すべてのシーケンスに適用することをめざしており,フィリップスがMRIにSENSEを実装したときのようなイノベーションがCompressed SENSEによってもたらされることが期待される。
dSyncにより実現するもう一つのアプリケーションが,モレキュラー(分子)イメージングによる新しいコントラスト“Amide Proton Transfer(APT) imaging”(W.I.P.)である。これは,プロトン単体でなく,タンパクとペプチドのCEST効果を見るイメージングで,カラーマップで表示される。造影剤を使用することなく,脳腫瘍のグレーディングや治療効果のモニタリング,また,放射線治療後の再発と放射線壊死の鑑別ができるといった臨床的メリットを提供する。
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●CT:「IQon Spectral CT」のクリニカルメリットを臨床画像で紹介
CTエリアでは,“人にやさしく,確実性の高い診断へ”をテーマに,スペクトラルCT装置「IQon Spectral CT」と,IQon Spectral CT,「Brilliance iCT」シリーズ,「Ingenuity」シリーズに搭載可能な逐次近似画像再構成法“IMR Platinum”をアピールした。
IQon Spectral CTは,YttriumシンチレータとGOSシンチレータを二層に重ねた検出器で高エネルギーと低エネルギーに弁別してデータを収集することで,すべての検査においてレトロスペクティブにスペクトラルイメージングを実現するCTである。会場ではスライドプレゼンテーションで,造影剤の大幅な減量,虚血領域の明確化,ヨード密度画像による定量評価,検査失敗につながるトラブルをサポートするといった臨床的メリットをPRした。また,国内ユーザーへのインタビュー映像では,スペクトラルイメージングが有効だった症例などが紹介された。会場には8台のコンソール実機が用意され,来場者は実際に操作してスペクトラルイメージングを体感した。
IMR Platinumは,日常臨床において高画質・低被ばく・少造影剤量という新たな価値を提案する手法として展示した。IMR Platinum により64スライス以上のすべてのCT装置で,造影剤量を4割ほど低減しても従来と同等の画質を得ることができる。また,高画質化による下肢アンギオの明瞭化や,大幅なノイズ低減を利用した被ばく線量の低減も可能で,低線量の胸部CT検診でも肺野・縦隔ともにノイズの少ない画像を取得できることなどが紹介された。
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●超音波診断装置:肝線維化評価を支援する新機能を搭載したプレミアム機種「EPIQ」
超音波診断装置としてはプレミアム機種「EPIQ」と,mini EPIQがコンセプトのハイエンド機種「Affiniti 70」を展示した。このうちEPIQの最新トピックスとして紹介されたのが,Shear Wave Elastographyで組織の硬さをカラーマップと数値で表す新機能“ElastQ Imaging”と,そのデータの信頼性を示すカラーマップ“Confidence MAP”である。ElastQ Imagingは,色で肝臓の硬さを表すカラーROIを約5cm×6cmと大きく設定でき,複数点を同時に計測できる。また,息止め時に画像を取り込んでおくことで,後からスクロールバックして,任意の時相で計測することもでき,被検者の負担軽減や,検査時間の短縮に貢献する。また,硬さ評価では肝臓の動きや肝内血管によりデータにバラツキが出るが,Confidence MAPに切り替えることで,計測ROIの信頼性を確認することができ,より高精度に肝臓の定量評価が可能になる。
また,EPIQのクリニカルメリットの高い機能として,CTやMRIなどの画像とリアルタイム超音波画像をフュージョンする機能“PercuNav”に含まれる“Auto Registration”もアピールした。肝表面形状,または肝内血管の立体構造をベースに,自動で高精度に位置合わせを行うことができ,マニュアルでは10〜20分も要していた位置合わせが,ワンボタン操作でわずか2〜3分で完了し,検査効率を大幅に向上させる。
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●X線撮影装置:ミドルクラスの移動型X線撮影装置「MobileDiagnost M50」を発表
X線撮影装置の新製品として,ITEM直前に薬機法承認を取得したFPD搭載移動型デジタルX線撮影装置「MobileDiagnost M50」を展示した。フィリップスはこれまで,日本国内向けのX線撮影装置としては,一般撮影,移動型装置ともにハイエンドシステムのみを展開していたが,機能を絞り価格を抑えた中級機種についても,2016年から展開を開始した。MobileDiagnost M50は,搭載バッテリーの小型化や,移動操作を手押し式とすることで,ハイエンド装置と比べ重量を1/3と軽量・小型化を実現。また,搭載されるワイヤレスFPDをMobileDiagnost M50専用に独自開発することで,価格を大幅に抑えた。19インチのタッチスクリーンモニタを搭載したコンソールには,ハイエンド装置と同じ“Eleva Workspot”が採用され,マルチ周波数処理技術“UNIQUE”を使用できることから,画像の周波数帯域ごとに最適な画像処理が施された,診断に有用な画像を得ることができる。専用FPDは,Gadoxタイプのシンチレータを搭載し,ピクセルサイズは139μm,半切サイズの1サイズが用意されている。
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●ヘルスケアIT:シームレスに連携するIT環境と最新クリニカルアプリケーションを提案
ヘルスケアITは,ITシステムの連携によりワークフローの改善などを図るソリューションを提案する「Enterprise Imaging and Clinical Information」と,多数のクリニカルアプリケーションを搭載したネットワーク型マルチモダリティワークステーションの最新バージョン「IntelliSpace Portal V9」を紹介する「Imaging Clinical Application and Platform」の2つに分け展示を行った。
Enterprise Imaging and Clinical Informationでは,画像管理システム「IDS7 VNA PACS R19.1」と動画管理システム「IntelliSpace Cardiovascular」,レポートシステム「iReport」を組み合わせ,これらを1つのサーバで稼働させることで,シームレスな連携とコストダウンを実現することをアピールするとともに,がんと循環器領域をテーマに,実機を用いて連携のデモンストレーションが行われた。循環器領域のデモでは,IntelliSpace Cardiovascularで患者の検査履歴のポータル管理や,PACSの画像参照,透視動画,ECG波形の表示などを容易に行うことができ,マルチモダリティに対応するiReportにより放射線科だけでなく,超音波やIVRのレポート作成もシームレスに行えることを紹介した。
RSNA2016で発表された最新バージョンのIntelliSpace Portal V9には,MRIの頭部領域アプリケーションとして,“LoBI(Longitudinal Brain Image)”と“CoBI(Compare Brain Image)”が搭載された。LoBIは,脳腫瘍などの経時的な変化をグラフにより定量的に示し,症状の進行の確認に役立てることができる。またLoBIの一機能であるCoBIは,検査時期の異なる2つの画像から差分画像を作成し信号の変化をカラーマップで表示し,視認しにくい小さな変化なども明瞭に示すことで読影を支援する。このほか,IntelliSpace Portal では,TAVIで鼠径部の血管径計測も可能になるなど,各種の機能向上が図られている。国内では6月末頃より納入開始を予定している。
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●核医学:PETとCTのベストバランスを実現した「Ingenuity TF PET/CT」
核医学エリアでは,現行システムの「Ingenuity TF PET/CT」とデジタルPET/CT(薬機法未承認)の技術や画像をプレゼンテーションした。Ingenuity TF PET/CTは,逐次近似応用画像再構成“iDose4”や金属アーチファクト低減技術“O-MAR”,Time-of-Flight技術を採用し,PETとCTのベストバランスを実現したシステムとして展開している。また,Ingenuity TF PET/CT では,画質と定量性を高める技術をまとめたコンセプト“xPand5”を掲げており,それぞれの技術をアピールした。このうち“xFine”は,ハードウエアのパワーを上げることで,実用可能な画像再構成時間で2mm厚の画像再構成を実現。コントラストと空間分解能の向上だけでなく,より正確なSUVが可能になる。
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●お問い合わせ先
株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン
住所:東京都港区港南2-13-37 フィリップスビル
TEL:ヘルスケア事業部 お客様窓口 0120-556-494
URL:http://www.philips.co.jp/healthcare