2016-4-25
GEヘルスケア・ジャパンブース
GEヘルスケア・ジャパンは,「Partners for Better Health」をテーマに掲げて展示を行った。超高齢社会が進む現在,わが国では医療費の増大化など多くの問題を抱えている。また,高齢化に伴う認知症患者,生活習慣に起因する肝疾患や脳・心臓などの血管疾患患者の増加といった疾病構造の変化が進んでいる。このような状況を踏まえ,現在,わが国では2025年に向けた医療提供体制の構築が取り組まれている。一方で,GE全体としては,近年IoT(Internet of Things)に注力している。GEでは,IoT基盤の「Predix」を開発して製造業などの分野でワールドワイドに提供を開始しており,デジタル・インダストリアル・カンパニーとして2020年までにソフトウエア事業を150億ドル規模に成長させるとしている。これらの背景の下,GEヘルスケア・ジャパンでは,IoTやクラウドなどのITを活用するとともに,疾患ごとに最適な製品やソリューションを提供して臨床アウトカムを改善し,顧客アウトカムの向上を図ることを2016年の成長戦略に掲げた。ITEMに先立ち4月12日に行われた成長戦略発表会において,川上 潤代表取締役社長兼CEOは,「装置のスペックだけにとどまらず,顧客の課題を解決し,アウトカムを実現するソリューションを提供していきたい」と述べ,臨床,経営,生産性といった多様化する課題に柔軟に対応するソリューションカンパニーをめざすという姿勢を示した。
それを象徴するサービスとして発表されたのが,IoTを活用した「Brilliant Hospital」構想である。ITEMでは,その第一弾として2016年5月にサービスインする「Brilliant RaDi」が大々的にPRされた。Brilliant RaDiは,装置からオンラインで保守・メンテナンスに関するデータを自動収集し,故障の発生などを未然に防ぐ,あるいはダウンタイムを最小限に抑えるというものである。さらに,疾患別アプローチとして,肝疾患と乳がん診療のソリューションを紹介するコーナーを設けた。また,新製品としては,ヘルスケアITにおいてRIS「Centricity RIS JP」とレポートシステム「Centricity Radiology Report JP」のデモンストレーションを行ったほか,血管撮影装置「Innova IGS ASSIST」シリーズ,X線骨密度測定装置「PRODIGY Fuga」が紹介された。(4月16日取材)
●IoTソリューション:「Brilliant Hospital」構想の第一弾として「Brilliant RaDi」を発表
GEでは,IoT基盤「Predix」をグローバルで展開している。Predixはクラウド環境で利用されるもので,これをベースにしたアプリケーション,サービスを基にデータセンターに蓄積されるビッグデータを分析。可視化,将来予測を行い,生産性・品質の向上などの最適化を図れる。すでに,製造業やエネルギー,物流などの産業分野では,着実に効果を上げている。これを医療分野に応用するというのがBrilliant Hospital構想である。
その最初のサービスとして2016年5月から始まるのが,Brilliant RaDiである。Brilliant RaDiでは,単なる保守サービスにとどまらず,画像診断装置から得られるデータからトラブルの予兆を見つけ出し,未然に故障を防ぐ。具体的には,画像診断装置などから発生する装置や検査に関する情報をデータセンターで収集して,そのデータを基にGEヘルスケア・ジャパンの専門チーム「GEコマンドセンター」が分析し,予防対策を講じる。これにより,ユーザー施設の装置を安定稼働させ,検査効率を向上させることができる。一方で,GEヘルスケア・ジャパンは,収集されたデータに基づき,部品交換を最適かつ速やかに行うことができ,メーカーとして生産性の向上を図ることにもつながる。
パイロット施設として先行してBrilliant RaDiを導入した伊勢赤十字病院では,日勤帯での緊急修理がなくなり,予定修理時間も約40%削減することができた。さらには,装置の稼働率が上がり,検査数も増加している。
同社では,今後もIoTを活用したBrilliant Hospital構想のソリューションを充実していくこととしている。
●ヘルスケアIT:「インテリジェント」「ベンダー・ニュートラル」「コラボレーション」をテーマに最新ソリューションを紹介
ヘルスケアITコーナーでは,「インテリジェント」「ベンダー・ニュートラル」「コラボレーション」をテーマに掲げ,最新のRISやレポートシステム,クラウドサービスなどの顧客アウトカムの向上につながるソリューションについて,ミニセミナーを交えて紹介した。
新製品では,ITEM前に発表されたRIS「Centricity RIS JP」とレポートシステム「Centricity Radiology Report JP」がインテリジェントのソリューションとしてPRされた。また,これらのシステムと組み合わせる読影ビューワの「Centricity Universal Viewer」のデモンストレーションも行われた。Centricity RIS JPとCentricity Radiology Report JPは,医療現場の声を基にワークフローの向上を目的に開発。両システムともに,Centricity Universal Viewerとシームレスに連携する。Centricity RIS JPは,電子カルテシステムやオーダリングシステムから禁忌情報,アレルギー情報を取得し,安全に検査が施行できる。また,ユーザーインターフェイスの視認性も優れ,患者情報や検査内容がわかりやすい。同意書の取得状況や他部門の検査予約などの情報を把握でき,業務効率の向上を図れる。Centricity Radiology Report JPは,過去検査一覧からすぐに過去のレポートを参照できるようにしたほか,医療辞書や音声入力,テンププレートといった入力支援機能を用意しており,操作性が優れている。また,ティーチングファイルの作成も容易に行える。このRIS,レポートシステムと連携するCentricity Universal Viewerは,学習機能により,スクリーニングや精査,フォローアップといった検査の目的ごとに常に最適な画面レイアウトで画像を表示する“SRP(Smart Reading Protocol)”を搭載し,読影業務を支援する。3D画像処理などアプリケーションも充実している。
ベンダー・ニュートラルのソリューションとして紹介されたのが,統合画像管理・参照システム「Centricity Clinical Archive(CCA)」である。CCAは,医療機関内で発生するDICOM画像や非DICOM画像,レポート,紹介状,PDFなど個々のシステムで運用しているデータを統合管理。患者ごとにマトリックス表示をして,必要な情報をすぐに表示,参照できるシステムである。院内だけでなく地域医療連携における連携先医療機関との間でも情報を共有できる。医療情報の標準規約であるIHEに準拠しており,ベンダーの異なるシステム間でも容易に接続して将来にわたりデータを管理していける,接続性,拡張性,継続性に優れたまさにベンダー・ニュートラルなシステムである。
クラウドサービスである「医知の蔵2.0」のプレゼンテーションも行われた。サービスは,同等の設備を有する2か所のデータセンターでデータを保管する「医知の蔵プレミアム」と,2か所のデータセンターのうち,片方をバックアップ機能に絞って利用する「医知の蔵ベーシック」から選択できる。利用料は月ごとに発生したデータ量に応じて課金される。また,膨大化するデータを効率的に管理するための機能である“Image Lifecycle Management(ILM)”を有する。この機能は,利用頻度の低い過去画像を自動的に圧縮保存することで,サーバ使用量の増加を抑え,コストの最適化を図るものである。
|
|
●CT:「40th GECT Anniversary ~40年の歴史が創り出すClinical Outcome~」をテーマに「Revolution」ファミリーを展示
GEヘルスケアは,1975年にX線管と検出器が同時に回転する第三世代のCTを開発し,翌76年には「CT7800」を発表した。それから40年を迎えた今回のCTコーナーは,「40th GECT Anniversary ~40年の歴史が創り出すClinical Outcome~」をテーマに掲げた。展示では,フラッグシップの「Revolution CT」,「Revolution GSI」と「Revolution EVO」のRevolutionファミリー3機種のガントリがそろい踏みで披露された。
画質,スピード,カバレッジというCTに求められる3つの要素で最高のものをめざして開発されたRevolution CTは,160mmの撮影範囲をカバーする“Gemstone Clarity Detector”を採用。完全非接触にしたガントリのスリップリングにより,電子ノイズを25%削減。日本で開発・製造される3Dコリメータにより,散乱線を除去して,高画質化を図っている。
Revolution GSIは,デュアルエナジーイメージング機能である“Gemstone Spectral Imaging”が可能な装置である。また,Revolution EVOは,逐次近似応用再構成法である“ASiR-V”を搭載し,ノイズを抑えつつ高画質を実現。最大約82%の被ばく低減と低管電圧撮影による造影剤量削減を図っており,従来機種に比べて検査効率を40%向上させられる。
このほか,Revolutionファミリーの最新技術を紹介するプレゼンテーションコーナーも設けられた。
|
|
|
●MRI:“MAGiC”や“SILENT SCAN”などの技術の進化をアピール
MRIコーナーでは,2014年の北米放射線学会(RSNA2014)で発表され,前回のITEMで国内初披露された3T MRI「SIGNA Pioneer」が展示された。さらに,1回の撮像で7つのコントラストの異なる画像が得られる“MAGiC”や静音技術である“SILENT SCAN”のほか,最新アプリケーションが紹介された。
SIGNA Pioneerは,日本が開発・製造を行う“In Japan For Global”製品。コンパクトかつ検査効率に優れ,かつ高画質を求める日本のユーザーの意見を取り入れて開発された。その最大の特長である撮像技術MAGiCは,前回発表時には,1回の撮像でT1,T2,STIR,T1 FLAIR,T2 FLAIR,PDの6つのコントラスト画像が取得できていたが,その後さらに進化し,新たにdouble IR(DIR)に対応した。1回の撮像時間は5~6分程度で,ユーザーが任意で設定するTR,TE,TIのパラメータでコントラストが計算処理される。また,コンソールではマウス操作でコントラストを調整できる。
静音技術であるSILENT SCANは,専用ソフトウエアの“Silenz”と高安定電源システム,高速スイッチングが可能なRFコイル技術により,頻繁な電流の切り替えをなくし,検査環境音+3dBまでに音を低減した。さらに,SILENT SCANのシーケンスで,ASL法をベースにしたzero TE MRAは,TEを0にすることで血流による位相分散がなく,血管の屈曲した部分も血流の乱流による信号低下を防ぎ,明瞭に描出する。
このほか,ブース内では,非造影MRパーフュージョン撮像シーケンスの3D ASL法,動き補正技術“PROPELLER 3.0”と横隔膜同期技術“Body Navigator”,金属アーチファクトを低減する“MAVRIC-SL”などが紹介された。
|
●疾患別アプローチ:「Liver」と「Breast Health」コーナーを設けてモダリティを組み合わせた診断・治療支援を提案
ブース内では,同社がめざす疾患別アプローチに基づき,肝疾患をターゲットにしたLiverコーナーと,乳がんの診断・治療支援を紹介するBreast Healthコーナーが設けられた。
Liverコーナーでは,肝臓の組織弾性を画像化するMRエラストグラフィ技術である“MR Touch”が紹介された。MR Touchは,空気の振動を発生するアクティブ・ドライバーから,振動を伝播させるパッシブ・ドライバーで被検者に振動を与えながらMR撮像を行い,剪断波を画像化するもの。これにより相対的に肝臓の硬さを画質化する。線維化が進み硬くなった部位は赤色,正常な組織は青色で表示される。また,超音波診断装置の「LOGIQ E9 XDclear 2.0」も展示された。穿刺手技を支援するアプリケーション“Volume Navigation”を搭載しており,超音波画像に合わせてCT,MR画像が同期して表示される。
Breast Healthコーナーでは,乳腺用の超音波診断装置「Invenia ABUS」とデジタルマンモグラフィ「Senographe Essential」が展示された。Invenia ABUSは,自動スキャンを行うため,検査者の手技に依存しない均一な画質を得られる。また,スキャンヘッドには被検者に負担をかけないカーブ形状の“Reverse Curve”を採用している。一方のSenographe Essentialは,マルチ周波数強調やダイナミックレンジ圧縮などで視認性を高める画像処理技術“eContrast”が搭載された。オプションでデジタルブレストトモシンセシス機能“SenoClaire”を使用できる。SenoClaireは,画像再構成法に逐次近似法の“ASiRDBT”を採用し,アーチファクトを抑えた高画質の断層像を描出する。このほか,造影マンモグラフィ機能の“SenoBright”もオプションで用意される。
これら以外の疾患別アプローチに関しては,核医学のコーナーにおいて,βアミロイドプラーク検出用のPET製剤「ビザミル」を合成するための薬剤合成装置「FASTlab」を展示。超高齢社会で増加する認知症に対するソリューションを提案した。
|
|
●X線:血管撮影装置の「Innova IGS ASSIST」シリーズやX線骨密度測定装置 「PRODIGY Fuga」をPR
X線関連では,新製品として血管撮影装置「Innova IGS ASSIST」シリーズや,X線骨密度測定装置「PRODIGY Fuga」が紹介された。「Innova IGS ASSIST」シリーズは,FPDのサイズにより「Innova IGS 520 ASSIST」「Innova IGS 530 ASSIST」「Innova IGS 540 ASSIST」をラインナップ。それぞれ,20cm×20cm,30cm×30cm,40cm×40cmのFPDを搭載している。このFPDは,画質処理技術が見直され,ノイズを大幅に低減して高画質化が図られた。また,ハイブリッド手術などのインターベンション向けのアプリケーションを強化しており,TAVIの術前プランニングと手技中の3Dガイダンスを行う“Valve ASSIST”やステントと血管の位置関係を瞬時に確認できる“StentVesselViz”などが利用できる。
PRODIGY Fugaは,位置決めなどの手順を簡略化したことで,検査時間を短縮化。また腰椎や大腿骨近位部の標準的な測定における被ばく量は37μGyで,通常の胸部X線撮影の1/6程度と,低被ばくを実現している。
|
|
●お問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
住所:〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:カスタマーコールセンター 0120-202-021
URL:www.gehealthcare.co.jp