ITEM2019 シーメンスヘルスケア ブースレポート
ブースメッセージ“We enable you to deliver high-value care.”の下,プレシジョン・メディシンを推し進めるAIなどの先進技術を披露
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2019-4-24
シーメンスヘルスケアブース
“We enable you to deliver high-value care.”をブースメッセージに掲げたシーメンスヘルスケアは,人工知能(AI)技術を用いた製品やサービスをはじめ,MRIなどのハードウエアにおいても新製品を展示。先進的な技術を来場者に披露した。ブースメッセージの“We enable you to deliver high-value care.”には,価値の高いケアを実現するための製品・サービスを提供していくという,同社の姿勢が示されている。同社では現在,「医療サービス向上の核となる4つの価値」として,「プレシジョン・メディシンの拡充」「医療サービス提供の変革」「ペイシェント・エクスペリエンスの向上」「医療デジタル化の推進」の4項目を掲げて,事業を推進している。価値の高いケアを患者に提供するため製品・サービスはもちろんのこと,医療機関の経営改善や医療従事者の働き方改革を支援するソリューションを手がけている。このような事業展開の一環として,大学や研究機関,医療機関とのパートナーシップを強化している。今回のITEMに先立つ2019年2月5日には,AIの共同研究などを柱としたパートナーシップを一般社団法人徳洲会と締結。また,2018年11月9日にも,社会医療法人渡邊高記念会との間で,地域医療の充実化に向けたパートナーシップの締結を発表している。
これらの取り組みの中で重要となるのが,画像診断装置やヘルスケアIT,AIなどの先進的な技術である。今回のITEMでも新製品が多く展示された。ITEM初登場の新製品としては,3月12日に発表されたばかりの3T MRI「MAGNETOM Lumina」と1.5T MRI「MAGNETOM Altea」がまず挙げられる。両機種ともにハイエンドクラスに位置づけられる。被検者の体格によらず安定した高画質データが得られる“BioMatrix Technology”と高速撮像アプリケーションをパッケージ化した“Turbo Suite”を搭載している。また,血管撮影装置では,新型FDを採用した頭腹部インターベンション向けの「Artis zee i BA Twin」,コーンビームCT技術“Retina 3D”を搭載した外科用X線撮影装置「Cios Spin」がITEM会場でのデビューを飾った。一方,ヘルスケアITの関連では,医療クラウドサービス「teamplay」で期間限定のサービスとして提供される「AI画像解析受託サービス」が紹介された。このサービスには,AIアルゴリズムの“AI-Rad Companion”が使用される。さらに,撮影業務をオンラインでサポートできる遠隔撮影支援システム「syngo Virtual Cockpit」のデモンストレーションが行われた。
シーメンスヘルスケアでは,ユーザーが高い価値のケアを実現できるように,今後も先進技術を提供していく。今回の展示からは,その強い意気込みが感じられた。
●MRI:再現の高い画質を提供する“BioMatrix Technology”と高速撮像のための“Turbo Suite”を搭載した「MAGNETOM Lumina」「MAGNETOM Altea」
●ヘルスケアIT:「AI画像解析受託サービス」など,医療クラウドサービス「teamplay」をプラットフォームに,価値の高いケアの提供をアピール
●CT:AIによる高精度なポジショニングを実現する「FAST 3D Camera」やタブレット操作が可能な「SOMATOM go.Top」をPR
●X-ray:新型FD搭載で画質が向上した「Artis zee i BA Twin」と最新コーンビームCT技術搭載の「Cios Spin」が登場
●MI:半導体検出器により優れたTOF時間分解能を実現したPET/CT「Biograph Vision」を展示
●MRI:再現の高い画質を提供する“BioMatrix Technology”と高速撮像のための“Turbo Suite”を搭載した「MAGNETOM Lumina」「MAGNETOM Altea」
MRIコーナーには,新型MRIの2機種「MAGNETOM Lumina」(着脱式寝台タイプ)と「MAGNETOM Altea」(固定式寝台タイプ)が展示された。両機種ともに,高い再現性と生産性の実現をめざして開発された。MAGNETOMブランドのMRIは,研究用と臨床用に大別されるが,それぞれ3Tと1.5Tのハイエンドクラスに位置づけられる。Luminaは「月」,Alteaは「星」を意味する。
高い再現性を実現するための技術として両機種には,シーメンスの研究用プレミアムハイエンド装置「MAGNETOM Vida」に採用された“BioMatrix Technology”が搭載された。BioMatrix Technologyは,被検者の性別や年齢,体格といった生理学的特性の影響を受けることなく,再現性の高い,高画質画像を安定して撮像するための技術の総称であり,“BioMatrix Sensors”“BioMatrix Tuners”“BioMatrix Interfaces”で構成される。その中の1つ,BioMatrix Sensorsは,被検者をセッティングすると,寝台のスパインコイルに内蔵されたセンサが自動的に呼吸をモニタリングして呼吸同期撮像を行える。センサは2箇所に内蔵されており,ヘッドファースト,フィートファーストの両方に対応する。従来の呼吸同期撮像では呼吸ベルトや呼吸センサの取り付けが必要であったが,その作業が簡略化され,検査の効率化にも寄与する。また,BioMatrix Tunersの技術である“CoilShim”では,高精度のシミングを行えるシムコイルを頭頸部コイルに内蔵することで,磁場の不均一性を抑え安定した脂肪抑制効果を得られるようにした。BioMatrix Interfacesとしては,タッチ操作でポジショニングを容易に行え,検査時間を短縮できる“BioMatrix Select & Go”や,フットパネルをなくし,コントロールパネルで操作できる着脱式寝台などの技術がある。
生産性の向上については,高速撮像ためのアプリケーション群の総称である“Turbo Suite”が搭載された。Turbo Suiteは多断面同時励起を行う“SMS(Simultaneous Multi-Slice TSE and DWI)”とcompressed sensing(CS),パラレルイメージングで構成される,SMSによる“syngo RESOLVE”,CSによる3D-TOF MRAや“3D SPACE”などで大幅な時間短縮が可能となる。先行して評価を行っている聖路加国際病院では,撮像時間の短縮だけではなく,撮像時間を変えずに空間分解能を上げることで画質の向上を図っており,高い評価を得ているという。
さらに,被検者がガントリ内で映像と音声を視聴できる「Innovision」が展示された。オプションとして提供される。バッテリ駆動で,クッションには骨伝導スピーカーを内蔵。被検者の不安を軽減できることから,小児検査の多い施設から期待が寄せられているという。このほか,医療機関の経済的な負担を軽減する汎用性の高いコイル「UltraFlex」も紹介された。肩や膝用のラージサイズ,手首や足首用のスモールサイズがラインアップされている18chのコイルである。
●ヘルスケアIT:「AI画像解析受託サービス」など,医療クラウドサービス「teamplay」をプラットフォームに,価値の高いケアの提供をアピール
シーメンスヘルスケアでは,ヘルスケアITの普及に伴い医療機関内で発生するビッグデータを管理,利活用するための基盤として,医療クラウドサービス「teamplay」を2016年4月から展開している。teamplayのサービスは,被ばく線量情報管理の“teamplay Dose”,装置の利用情報を分析する“teamplay Usage”,撮影プロトコール管理の“teamplay protocol”でスタートしたが,その後もサービス内容の充実化を図り,画像データを共有できる“teamplay Image”も開始した。また,teamplayを基盤として,他社のアプリケーションを利用するための「teamplay Cloud Platform」を構築している。今回のITEMでは,teamplay Cloud Platformで利用できるサービスとして,6月から期間限定で開始する「AI画像解析受託サービス」を紹介した。AI画像解析受託サービスは,シーメンスが開発したAIアルゴリズム“AI-Rad Companion”を用いて,胸部CT画像の解析を行う。サービスの流れとしては,まずユーザーがteamplay Cloud Platformを経由して胸部CT画像をシーメンスヘルスケアに送信する。シーメンスヘルスケアでは,受け取った胸部CT画像をエンジニアがAI-Rad Companionで解析処理を行い,病変の検出・計測結果をレポートとして,ユーザーに送信する。画像送信から返信までの期間は2日程度を想定しているという。AI-Rad Companionは,RSNA 2018で発表されたAIアルゴリズムで,現在は胸部CT画像に対して解析を行うが,今後部位や画像診断装置の拡大も見込まれる。胸部では結節の検出とサイズ計測,肺気腫率の計測,心臓では体積計測や冠動脈の石灰化の検出,大血管では直径の計測などの解析を行い,自動的にレポートを作成する。シーメンスでは,1990年代からAI技術の開発を進めており,これまで40を超える技術に機械学習などのAIを応用してきた。さらに,ディープラーニングを用いた技術として,2018年のITEMでは「FAST 3D Camera」を発表している。AIに関する特許は100を超えており,その高い技術力が,今後も多くの製品に投入されていくに違いない。
なお,teamplay Cloud Platformの他社のアプリケーションとしては,アルムの汎用画像診断装置用プログラム“Join”やハートフローの“FFRCT”がある。
ヘルスケアIT関連では,画像診断ITソリューション「syngo.via」の画像再構成技術である“Cinematic VRT”も注目を浴びた。テレビ,映画で使用されるコンピュータグラフィックス技術により,反射光を用いて従来のVR画像よりも質感や影などをリアルに表現する。CT・MR画像からワンクリックで容易に再構成が可能で,術前のシミュレーションや患者説明などで威力を発揮する。同社のPACS「syngo.plaza 3D+」でもCinematic VRTを作成できる。
このほか,遠隔プロトコル支援システム「syngo Virtual Cockpit」も展示された。CTやMRI検査における装置の操作を遠隔で支援するもので,シーメンスの装置に対して使用できる。ユーザーインターフェイスは,チャット機能,モダリティ共有画面,IPカメラで構成され,画面を確認しながら,離れた場所にあるモダリティの操作を支援する。syngo Virtual Cockpitを導入することにより,人材不足の解消や検査の標準化が可能になり,スタッフの教育ツールにもなると期待される。
●CT:AIによる高精度なポジショニングを実現する「FAST 3D Camera」やタブレット操作が可能な「SOMATOM go.Top」をPR
CTコーナーでは,AI技術搭載の「FAST 3D Camera」とハイエンドクラスのDual Source CT「SOMATOM Drive」を組み合わせたシステム,タブレット操作が可能な「SOMATOM go.Top」が展示された。前回のITEMで発表されたFAST 3D Cameraは,Single Source CTの最上位機種「SOMATOM Edge Plus」に加え,新たにSOMATOM Driveにも対応した。寝台を見下ろすように天井に取り付けられたカメラと赤外線センサで寝台に横たわった被検者を撮影・計測し,3Dモデリングを行う。そのデータをAIアルゴリズムで解析し,自動的にアイソセンターになるようにポジショニングする。最適なポジショニングが行われることで,再撮影のリスクを軽減して,画質の向上を図れる。さらに,被ばく線量の低減にもつながるほか,スループットの向上にも寄与する。
今回,FAST 3D Cameraへの対応が発表されたSOMATOM Driveは,管電流が最大1600mAまで設定できるハイパワーX線管“Straton MX Sigma”を採用。低電圧撮影でも高画質を実現し,被ばく線量や造影剤量の低減を図れる,ハイエンドクラスにふさわしい被検者にとっても優しい装置である。さらに,検出器は“Stellar infinity Detector”を搭載しており,スキャンスピード458mm/s,時間分解能75msを実現。心臓CTにおいて高心拍の被検者に対してβブロッカーを用いない撮影が可能になる。
一方,SOMATOM go.Topは,前回のITEMで初披露されたモバイルワークフローCT。ガントリ前面に固定もできるタブレット型のコンソールを採用。このタブレットで,患者登録から撮影部位・プロトコールの設定,撮影後の画像確認まで,ほとんどの操作を行える。従来のCTのように検査室と操作室を行き来することなく,タブレットを持ちながら寝台横で被検者の顔を見ながら撮影業務を進めることができ,まさにJRC 2019のテーマにある「患者に寄り添って」検査ができるCTである。このほか,装置本体と造影剤のインジェクタを一体化していることもSOMATOM go.Topの特長である。
さらに,両機種ともに,X線スペクトラムの最適化を図る技術として,フィルタの素材にスズ(Sn)を用いた“Tin filter technology”を搭載。従来に比べ大幅な被ばく低減を実現し,胸部単純X線撮影と同等の被ばく線量で高画質画像を得られるようにした。このTin filter technologyは,今後発表されるシーメンスのCT装置にはすべて搭載される予定である。
●X-ray:新型FD搭載で画質が向上した「Artis zee i BA Twin」と最新コーンビームCT技術搭載の「Cios Spin」が登場
X線撮影装置関連では,2018年7月に発表された「Artis zee i」シリーズのバイプレーンシステム「Artis zee i BA Twin」,2018年10月に発表された外科用X線撮影装置の「Cios Spin」がITEM初お目見えとなった。
Artis zee iシリーズは,検出器に新型“HDRフラットディテクタ”を搭載している。16ビットの階調度を有するHDRフラットディテクタは,従来の14ビットのFDよりも階調表現が豊かになり4倍の描出能を実現。軟部組織も十分なコントラストで描出する。さらに,“HDR Reconstruction Engine”による画像再構成ではそのまま16ビットのデータとして出力する。これにより,コーンビームCT技術“syngo DynaCT HDR”において,高画質の3D画像を得ることができ,インターベンションにおける手技を支援する。ブース内に展示されたArtis zee i BA TwinのFDのサイズは30cm×38cmで,主に頭腹部のインターベンションに対応する。
一方のCios Spinは,高解像度のデータが得られる30cm×30cmの“CMOSフラットディテクタ”を搭載。16cm×16cm×16cmの広いFOVを実現している。Cアームは,手技の妨げとならない196°という広い稼働域を確保している。さらに,コーンビームCT技術“Retina 3D”により,骨やインプラント,デバイスを高精度に抽出した3D画像を手術中に作成できる。アプリケーションとしては,体内のスクリューを自動的に検出して,ナンバリングを行う“Screw Scout”,金属アーチファクトを軽減する“MAR”,ワイヤやデバイスの刺入方向をガイドする2Dガイディング機能“Target Pointer”を搭載する。
●MI:半導体検出器により優れたTOF時間分解能を実現したPET/CT「Biograph Vision」を展示
核医学装置としては,2018年11月に発表した半導体(SiPM)検出器を搭載したPET/CT「Biograph Vision」を披露した。SiPM検出器により214psという優れたtime-of-flight (TOF)時間分解能を実現。従来の光電子増倍管よりも時間分解能が大幅に向上したことで,高精度な画像を得られる。さらに,TOFの実効感度は従来の2.5倍から6.2倍へと大幅に上がっている。加えてクリスタルのサイズも3.2mm×3.2mmと従来サイズより小型化を図り,空間分解能も向上させた。また,寝台には,リニアモータ駆動によりスムーズな動作を実現する“FlowMotion”技術が採用されている。これにより,1つの撮像プロトコールで任意の撮像を行える。ほかにも,78cmの広い開口径,長さ132cmのショートガントリという被検者に優しい設計もBiograph Visionの特長である。
●お問い合わせ先
社名:シーメンスヘルスケア株式会社
住所:品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL:0120-041-387
URL:https://www.siemens-healthineers.com/jp/
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