ITEM2019 ケアストリームヘルス ブースレポート 
VNAからAIまで画像診断をトータルに支援する“Clinical Collaboration Platform”をアピール


2019-5-8


ケアストリームヘルスブース

ケアストリームヘルスブース

ケアストリームヘルスは,「Whatever You’re Facing, Let’s Talk it Through」をテーマに展示した。ブースでは,画像診断システムの統合プラットフォームである“Clinical Collaboration Platform”の新機能を中心に紹介した。特に,画像診断管理加算3で必要となる検査内容や線量管理などの機能を強化した「CARESTREAM RIS-J」や,米国で先行して展開されているAIを取り込んだ画像診断プロセスの紹介に来場者の注目が集まった。なお,ITEM直前の3月に,Carestream Health(米国)がヘルスケアITシステム(HCIS)事業を,Royal Philips(オランダ)に売却することが発表された。日本でのケアストリームヘルスの事業は2016年からHCIS領域にフォーカスされており,今後の展開が注目される中での展示となった。

●ヘルスケアITシステム事業のフィリップスへの売却を発表

フィリップスへのHCISの売却は2019年下半期に完了する方針で,それまでは独立して営業を継続するとされている。米国とは異なり,日本では2016年から事業領域をHCISに集中しており,日本法人の動向を含めてこれからが注目されるが,同社の河野亨事業部長は次のようにコメントした。
「米国で3月7日に,日本ではそれに基づいたリリースを8日に発表しました。フィリップスは,100か国以上で事業を展開し2兆円以上の売上規模を持つグローバル企業です。ヘルスケア領域においても,モダリティだけでなくITシステムを含めて高い技術力に基づいた,独自の製品を多く持っています。今回の売却でわれわれが持つVNAやAIを含めたヘルスケアIT製品がそこに加わることで,既存のフィリップスの製品とのシナジー効果によって,ユーザーの満足度を向上する質の高い製品を提供できるのではとわれわれも期待しています」
「2019年下半期に売却のプロセスが完了する予定で,その後,HCISの部門がフィリップスに移行することになります。日本では2016年から事業領域をHCISに特化していますが,以前から販売してきたCR・DRやプリンタのサービス,メンテナンスを行う部門やアナログ製品を提供する部門があります。そこはケアストリームヘルスに残り引き続き提供していきますので,日本でもケアストリームの事業は存続します。これまでコダックからケアストリームヘルスへと受け継がれてきたDNAが,フィリップスに加わることでどのような変化が起きるのか,これからの展開に期待していただきたいと思います」

●統合的な読影環境を提供する“Clinical Collaboration Platform”をアピール

同社の医用画像情報システム(PACS)は,“Clinical Collaboration Platform”として,診断用ビューワ「Vue PACS Client」,参照用の「Vue Motion」,放射線情報システム「CARESTREAM RIS-J」のほか,診療データの統合アーカイブ(VNA)である「Vue Archive」などが一体的に提供されている。日本においても,ブランドを見直した現行のバージョンは2018年5月から販売が開始されている。展示では,読影環境としてVue PACS ClientやVue Motionが持つ高度かつ豊富な基本機能を改めて紹介したほか,“チャット&画面共有”など新機能についてアピールした。
ケアストリームヘルスのVue PACS Clientは,ボリュームデータをベースにした3D自動位置合わせ機能(複数検査間のスライス位置の同期)や病変セグメンテーション(病変領域の抽出,計測,経時変化の自動フォローアップ,RECISTに対応した自動計算)などの機能を特徴とする。これらの機能は,今でこそ同様の機能が他社システムでも搭載されているが,Vue PACSの登場当初から実現されており,先進機能をいち早く製品化する同社の技術力の高さを感じさせる。ブースでは,基本機能として自動位置合わせ(レジストレーション)のほか,マウスの右クリック左クリックからの操作,キーボードショートカットによる操作,また任意の機能のショートカットへの登録など,読影業務をサポートする機能を改めて紹介した。また,新しく搭載された機能としてチャットと画面共有を活用した読影支援について説明した。これは,検査や画像についてアドバイスやコメントがほしいときに,ネットワーク上でSNSのような機能を利用して気軽に会話ができる“チャット機能”と,画面を共有して互いに同じ画像を参照できる“画面共有”で構成される。画面共有では,画像の拡大,ウィンドウレベルの変更,アノテーションなどで,その場にいるようなディスカッションが可能なことを端末を使って紹介した。

Vue PACS/Vue Motionのチャット機能。会話したい相手を選択するとSNSのようなウィンドウがポップアップしチャットできる。Vue Motion(手前)とVue PACS Clientで利用可能。

Vue PACS/Vue Motionのチャット機能。会話したい相手を選択するとSNSのようなウィンドウがポップアップしチャットできる。Vue Motion(手前)とVue PACS Clientで利用可能。

 

画面共有機能では同じ画面を共有してディスカッションが可能。画像の拡大や矢印などのアノテーションも共有できる。

画面共有機能では同じ画面を共有してディスカッションが可能。画像の拡大や矢印などのアノテーションも共有できる。

 

“Clinical Collaboration Platform”の“ワークフローオーケストレーター”

“Clinical Collaboration Platform”の“ワークフローオーケストレーター”

 

●ゼブラ社のAIエンジンのほか自社開発のAIを含めて診断支援の機能をPR

ITEM2019のトレンドともなったAIへの取り組みとしては,RSNA2018でも紹介したゼブラ・メディカル・ビジョン(ゼブラ社)のAIエンジンのVue PACSへの統合,自社開発の病変管理機能(Lesion Management)やCTの脊椎自動ラベリングなどを紹介した(すべてW.I.P.)。
ゼブラ社のAIは,Vue PACS Clientに統合されており端末で対象画像を表示すると,判断した結果を示すポップアップウィンドウが開く。部位や画像種別に応じて適応されたAIプロセスがアイコンで表示されるが,所見なしの場合はアイコンが緑,所見ありでは赤で表示される。マウスオーバーで判断内容の詳細が表示される。AIの判定結果はワンクリックでレポートに転送されるように,システムとしての連携が図られていることを説明した。ゼブラ社のAIエンジンはCT,一般撮影,マンモグラフィなどで10以上のプロセスが開発されているが,FDAの承認を受けているのは,“肺気腫”“脂肪肝”“冠動脈石灰化”“骨密度”“脊椎圧迫骨折”の5つである。そのほか,ケアストリームヘルスが自社開発しているAIは,胸部CT画像での肺結節をはじめとした,病変の自動認識・抽出,脊椎ラベリングの自動化などで,従来からVue PACSで提供してきた機能を自動化する方向で取り組んでいるのが特徴だ。
AI利用のワークフローとしては,モダリティからサーバに画像データが登録された時点でAIによるスクリーニングを行い,その結果を基に“ワークフローオーケストレーター”のワークリスト上には優先順位などをつけて表示される。

ゼブラ社のAIエンジンをVue PACSに統合(W.I.P.)。ゼブラアイコン(黄)の横に判定に使用されたAIプロセスのアイコンを表示。所見ありの場合には赤くなる。

ゼブラ社のAIエンジンをVue PACSに統合(W.I.P.)。ゼブラアイコン(黄)の横に判定に使用されたAIプロセスのアイコンを表示。所見ありの場合には赤くなる。

 

自社開発のAIによる胸部CT画像での肺結節の自動認識・抽出(W.I.P.)

自社開発のAIによる胸部CT画像での肺結節の自動認識・抽出(W.I.P.)

 

同じく自社開発の脊椎ラベリングの自動化機能(W.I.P.)

同じく自社開発の脊椎ラベリングの自動化機能(W.I.P.)

 

●現場からの要望に応え,きめ細かく機能を充実させた「CARESTREAM RIS-J」

「CARESTREAM RIS-J」は,パッケージ製品として提供されているが,施設ごとの要望に対応してカスタマイズにも柔軟に対応し,その成果を逐次製品にフィードバックすることで,きめの細かいシステムとして成熟を続けてきている。2019年の展示では,医療安全や2018年度の診療報酬改定で盛り込まれた画像診断管理加算3の施設要件に対応する機能を中心に紹介した。
医療安全としては,患者基本情報にあわせて注意が必要な検査データを表示する機能を追加した。例えば,造影検査がある場合に検査データと連動してクレアチニンの数値と検査日を表示できるが,表示の際に基準よりも高い場合に文字を赤で,3か月以内の検査データがない場合は黒字で表示するなど,判断ができやすい表示方法をとっている。
また,画像診断管理加算3の施設基準では,核医学検査を含めて被ばく線量管理が求められるが,CARESTREAM RIS-Jでは核医学薬品管理をサポートしており,線量管理を含めて業務支援の機能を提供している。この機能の中で現場からの要望で追加した機能として,放射性医薬品の実投与量を入力する仕組みを紹介した。より正確な線量管理のために使った薬剤だけでなく実際に使用した情報が必要になるが,CARESTREAM RIS-Jでは投与時の実施入力で実投与量を入力する欄を設けた。入力された数値はRI薬品管理システムにも反映されるほか,線量管理システムへも提供が可能となる。従来は,手書きや転記などが必要だったが,注射時のタイミングでの入力とシステム間の連携によって確実で正確な情報管理が可能になる。そのほか,核医学検査関連では,管理のために必要とされる帳票類が多い。CARESTREAM RIS-Jでは,入退出管理表,放射性医薬品入手・使用・廃棄の記録,排気管理記録など,ガイドラインに準拠した帳票類をそろえている。
プレチェック機能は,放射線科医による検査前の撮影内容のチェックを支援する仕組みである。これも画像診断管理加算3などで“検査前の画像診断管理を行っていること”が求められていることから,撮影法やプロトコールについて一覧でまとめてチェックできるようにしたものだ。新たに線量管理システム(外部システムを含む)を起動するボタンを設置し,必要に応じて個人線量記録を確認しながらプレチェックが行えるようにした。
現在,最新のバージョンは3.5だが,現場からの要望でカスタマイズしたポイントを蓄積し,製品版にも逐次反映させていく。

ユーザーからの要望を製品に反映させた放射線情報システム「CARESTREAM RIS-J」

ユーザーからの要望を製品に反映させた放射線情報システム「CARESTREAM RIS-J」

 

注意が必要な検査結果を患者基本情報とあわせて表示。基準値を超えている場合には赤字になる。

注意が必要な検査結果を患者基本情報とあわせて表示。基準値を超えている場合には赤字になる。

 

核医学での放射性医薬品の実投与量を入力して線量管理を支援

核医学での放射性医薬品の実投与量を入力して線量管理を支援

 

CARESTREAM RIS-Jのプレチェック機能

CARESTREAM RIS-Jのプレチェック機能

 

線量管理システムを起動するボタンを設けてプレチェックをサポート

線量管理システムを起動するボタンを設けてプレチェックをサポート

 

RI薬剤管理業務に関するさまざまな帳票類を用意

RI薬剤管理業務に関するさまざまな帳票類を用意

 

●お問い合わせ先
社名:ケアストリームヘルス株式会社
部署:HCIS事業統括部 マーケティング・コミュニケーション
住所:東京都江東区冬木11-17 イシマビル
TEL:03-5646-2500
URL:http://www.carestream.jp/


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