ITEM2018 シーメンスヘルスケア ブースレポート
プレシジョン・メディシンの拡充など“4つのバリュー(付加価値)”の実現をめざし,AI技術も投入した最新ソリューションをアピール
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2018-4-24
シーメンスヘルスケアブース
シーメンスヘルスケアは,展示テーマに“Let’s shape the future of imaging together.”を掲げた。いま世界中を席巻しているAIやビッグデータといった技術トレンドが,これまでの医療のかたちを劇的に変化させる破壊的イノベーションをもたらし,それこそがこの先の医療をリードしていくとの展望から,“4つのバリュー(付加価値)”プロミスの実現に向けた,多くの新製品,ソリューションを来場者に提案した。
ITEMに先立って2018年4月5日(木)に開催されたメディア説明会では,森 秀顕代表取締役社長兼CEOが同社のビジョンと日本における取り組みについて説明した。森氏は,「コストを抑えつつ,優れた医療サービスを提供するため,製品やサービスの提供だけでなく,その先にあるバリューを実感してもらうことをめざす」と述べ,バリュー向上のためのプロミスとして,“Expanding precision medicine(プレシジョン・メディシンの拡充)”“Transforming care delivery(医療サービス提供の変革)”“Improving patient experience(患者満足度の向上)”“Digitalizing healthcare(医療デジタル化の推進)”の4つを示した。そして,これらを実現するためのツールが,患者や医療機関,サービスパートナーをつなぐデジタルクラウドプラットフォーム「Digital Ecosystem」とAI技術であるとしている。
そこでITEM 2018では,数多くの製品・サービスを,どのように4つのバリュープロミスにつなげるかという視点での展示が行われた。Image-Guided Therapyを次のステージへと押し上げる新コンセプト「nexaris Therapy Suites」は,複数モダリティを融合することで,より安全で高精度な治療を実現するとともに,ワークフローも向上させる。CTエリアでは,新製品のモバイルワークフローCT「SOMATOM go.Top」と「SOMATOM Edge Plus」の実機展示に加え,プレシジョン・メディシンに貢献する“FAST 3D Camera”をアピールした。MRIは,新技術コンセプト“BioMatrix Technology”を搭載した3T MRI「MAGNETOM Vida」を紹介。負担を軽減しつつ被検者に最適化した検査を行い,高画質画像を取得できる新技術をPRした。このほか新製品としては,多機能化で高度な精密検査を実現するデジタルマンモグラフィシステム「MAMMOMAT Revelation」や,コンパクトで汎用性が高く,高い画像性能を持つ超音波診断装置「ACUSON Juniper」などを展示。また,これらモダリティやAI技術,クラウドサービス「teamplay」をつなぐDigital Ecosystemの構想も紹介し,同社がめざすこれからの医療サービスの姿を来場者にアピールした。
●Image-Guided Therapy:モダリティの融合により安全性や効率を向上させる新コンセプトnexaris Therapy Suites
●CT:高機能で抜群のワークフローを持つSOMATOM go.TopとAI技術を搭載したFAST 3D CameraをPR
●MRI:BioMatrix Technologyで被検者ごとに検査を最適化するMAGNETOM Vida
●Digitalizing Healthcare:デジタルクラウドプラットフォームDigital Ecosystemで築く,これからの医療のかたちを提案
●Women’s Health:多機能化により精密検査を強力にサポートするMAMMOMAT Revelation
●超音波診断装置:多様な検査に対応するコンパクトなACUSON Juniper
●Image-Guided Therapy:モダリティの融合により安全性や効率を向上させる新コンセプトnexaris Therapy Suites
Image-Guided Therapy(IGT)のエリアでは,新しい環境コンセプトnexaris Therapy Suitesの中からIVR-CTシステム「nexaris Angio-CT」をアピールした。 nexaris Angio-CTは,CTとX線血管撮影装置(アンギオ装置)を融合し,あたかも一つのモダリティのように運用することで,安全性の向上,患者や術者の負担軽減,ワークフローの向上をめざして開発された。ブースではX線血管撮影装置「Artis Q」とSingle Source CT「SOMATOM Definition Edge」の組み合わせによるnexaris Angio-CTの実機を展示。なお,同社では1999年からIVR-CTを展開しているが,ITEMでの実機展示は今回が初となる。
nexaris Angio-CTの技術的なポイントは,アンギオ装置側で,CTやMRIの位置を三次元的に認識することにある。IVR-CTでは従来,CT撮影に続いて血管撮影を行う際,スライディングガントリCTをパーキングポジションまで退避させる必要があった。新たに開発された機能“Quick Switching”では,CT位置をアンギオ装置が認識することで,安全を確保できる最小限の移動で撮影モードの切り替えが可能になる。繰り返しの撮影をスムーズ,かつ安全に行え,治療時間の短縮に貢献する。なお,施設ごとの装置の配置に合わせて,安全範囲は設定される。
また,三次元的に位置を認識しているため,3Dロードマップの実施に当たっては,従来のようにCT画像とコーンビームCT画像で位置合わせをする手間がなくなり,CT画像をワークステーションに転送するだけで自動的に透視画像との位置合わせが行われる。透視中にアームの位置,テーブルの高さを変えても,拡大率も含めて自動で追従し,精度の高いナビゲーション画像で安全に手技を施行できる。このほか,アンギオ装置に患者登録するだけで,CT,MRIに患者情報が自動転送される“Common Patient Registration”機能も搭載され,業務の効率化,安全性の向上を図っている。
IVR-CTはこれまで,“MIYABI”というブランド名で展開してきたが,今後はnexarisに統一される。すべての機種の組み合わせが可能だが,新機能に対応する機種は限定され,X線血管撮影装置ではArtis QシリーズとArtis zeeシリーズのシングルプレーン天井懸垂型,CTはSOMATOM Definition Edge,SOMATOM Confidenceとなっている。
●CT:高機能で抜群のワークフローを持つSOMATOM go.TopとAI技術を搭載したFAST 3D CameraをPR
CTは,2018年に国内販売を開始する新製品を展示した。128スライスのSOMATOM go.Topは,2017年に発売した「SOMATOM go」(16スライス)とともに,Single Source CT,Dual Source CTに続く,CTの第三のカテゴリーである“モバイルワークフローCT”に分類される装置である。SOMATOM goの特長であるタブレット型コンソールによるワークフローはそのままに,ハイエンド装置の技術が惜しみなく投入された。
ガントリ前面左右に設置された着脱可能なタブレット端末では,患者登録から撮影部位選択,撮影後の画像確認まで,曝射以外のすべての操作を行える。そのため,スタッフは検査室と操作室を何度も行き来する必要がなくなり,常にベッドサイドで業務を行えるため,患者の安心感にもつながる。
新たに搭載された“Tin Filter技術”は,スズフィルタによりX線スペクトラムを変調させることで,大幅な被ばく低減を可能にする。胸部撮影では,通常のCT検査の約1/50,一般的な胸部X線撮影と同等の線量での撮影を実現。心臓や脊椎に重なった病変の検出が難しいという胸部X線撮影の課題を,同等の被ばく線量で撮影できるCT検査で克服する。
被ばく線量低減に加え,低侵襲化の技術としては,800mAを超える大電流での低管電圧撮影にもオプション対応しており,造影剤使用量を大幅に低減できる。また,Dual Energy Imaging技術“TwinBeam Dual Energy”や心臓CTといったより高度な検査も提供可能で,低侵襲かつ臨床的に有用性の高い画像で医療現場に貢献していく。
同社のバリュープロミスの一つ,プレシジョン・メディシンにフォーカスした新ソリューションとして,AIを搭載した3Dカメラ FAST 3D CameraをPRした。FAST 3D Cameraは,検査室天井にCT寝台を見下ろすように設置され,撮影ボタンを押すと画像認識技術と赤外線センサーにより,被検者の寝ている向きや体型,大きさ・体厚を認識し,撮影部位が中心となるように天板が撮影開始位置まで自動で移動する。この機能により,AEC(自動露出機構)のより正確な動作,再現性の向上,画質の向上などにつながる。また,患者が寝ている向きが設定と異なる場合にはアラートが表示されるため,医療事故を未然に防ぐことができる。“CTが患者を見る目”を持ったことにより,最適な被ばく線量で,最高の画像の提供を実現し,同時に検査スループットの向上にも寄与する。現時点では,組み合わせられるCT装置はSOMATOM Edge Plusのみだが,対応機種は順次拡大の予定である。
●MRI:BioMatrix Technologyで被検者ごとに検査を最適化するMAGNETOM Vida
MRIは,日本国内で2017年11月に発売した3T MRIのMAGNETOM Vidaを展示した。最大の特長は,プレシジョン・メディシンを追究した新技術コンセプトBioMatrix Technologyを初めて実装したことである。ブースでは,“Anticipate”“Adapt”“Accelerate”をキーワードに,搭載された3つの機能を紹介した。
Anticipate(予想する)技術として搭載されたのが,“BioMatrix Sensors”である。寝台に埋め込まれた脊椎コイル内に,呼吸信号を検知するセンサを内蔵することで,被検者が寝台に寝るだけでリアルタイムに呼吸をモニタリングし,呼吸同期を可能とする。呼吸ベルトや呼吸センサの取り付けが不要で,被検者の負担を軽減できる。
Adapt(適応する)技術としては,“BioMatrix Tuners”が搭載された。MRI検査でシム調整が難しい頭頸部の磁場均一性を高めるため,頭頸部コイルにシムコイルを内蔵した。ガントリ内蔵シムコイルよりも撮像部位に近い場所からシム調整ができるため,より良好な脂肪抑制効果を得ることができる。また,頭頚部コイルは被検者に合わせて3段階(0°,9°,18°)に傾くチルト機構を搭載し,被検者に負担の少ない体位で,より精度の高い検査を実現する。
そして,Accelerate(加速する)技術として実装された“BioMatrix Interfaces”は,操作者の負担を軽減し,ワークフローを向上させる。ガントリ前面左右に設置された液晶タッチパネルでは,情報表示だけでなく,検査部位設定などの操作が可能になった。パネルに表示された人体模式図から検査部位を選択するだけで,検査部位が撮像中心となるように自動でテーブルが移動する。
このほか,ハード面の機能としては,着脱式テーブルに電動アシストが搭載された。ハンドルを両手で握り,動かそうと力を加えたときだけ作動する安全機構となっている。テーブルの着脱や車輪ロックなどをハンドル手元のボタンで操作できるようにしたことで,寝台周りからフットペダルなどをなくし安全性を高めた。また,テーブル中央に5つ目の車輪を設けることで,取り外した際の取り回しが向上している。
撮像技術としては,Compressed Sensing(圧縮センシング:CS)を用いた心臓シネ検査,肝臓ダイナミック検査の臨床的有用性をアピールした。CSは,収集するデータを1/10〜1/20に減らしても画像再構成が可能な技術で,撮像時間を大幅に短縮することができる。これにより,心臓,肝臓ともに安静呼吸下での検査が可能になり,心臓シネ検査は従来の16倍以上の撮像スピードを実現。肝臓ダイナミック検査では,CSを応用したGRASP-VIBEにより造影前から後期相まで連続的にデータを収集することで,息止めなしでの撮像が可能になった。
●Digitalizing Healthcare:デジタルクラウドプラットフォームDigital Ecosystemで築く,これからの医療のかたちを提案
同社がめざす4つのバリュープロミス実現のためのツールとして紹介したのが,クラウドサービスteamplayを拡張させたデジタルクラウドプラットフォームDigital Ecosystemである。
国内では2016年から展開されているteamplayは,画像診断機器から得られる情報をクラウドに集約し,線量情報管理“Dose Management”や利用状況分析“Usage Management”,検査プロトコール管理“Protocols”などの機能を提供している。これを進化させたDigital Ecosystemでは,teamplayの機能はその一部となり,将来的にはAI技術やDigital Ecosystemに賛同するサービスパートナーのアプリケーションなども組み込んだクラウドプラットフォームに成長させ,ユーザーが活用できることをめざしている。日本国内への導入時期は未定だが,米国では試験運用が始まっており,実際に複数のサービスパートナーのアプリケーションも提供されている。
teamplayについては機能強化が図られ,クラウド上に集約されたビッグデータを基に,自施設と他施設(国内のteamplay利用全施設の平均)の被ばく線量のベンチマーク分析が可能になった。他施設の平均から見て,自施設がどのあたりに位置するかを客観的に把握でき,自施設の線量適正化に活用できる。現在のところ施設種別(大学病院やイメージセンターなど)での絞り込み分析ができ,さらにデータが集まれば県や医療圏,病床数などを絞り込んで分析できる機能を提供する予定で,さらに詳細な分析が可能になる。
●Women’s Health:多機能化により精密検査を強力にサポートするMAMMOMAT Revelation
Women’s Health エリアでは,ITEM開幕前日の4月12日に発売されたデジタルマンモグラフィシステムMAMMOMAT Revelationの実機と臨床画像を展示した。マンモグラフィシステムはこれまで,精密検査対応の「MAMMOMAT Inspiration」シリーズとスクリーニング対応の「MAMMOMAT Fusion」をラインアップしていたが,MAMMOMAT Revelationはより高度な精密検査のために多機能化が図られている。
Dual Energyとサブトラクション法を使用した造影マンモグラフィ“TiCEM(Titanium Contrast Enhanced Mammography)”を新たに搭載でき,閉所恐怖症などで乳房MRIが受けられない患者に対して造影検査を提供する。造影剤はMRIと異なるため,MRI造影剤にアレルギーがある患者にも造影検査ができる可能性がある。
また,日本人女性に多いデンスブレスト(高濃度乳房)では,マンモグラフィでの検出能が低下することが知られているが,MAMMOMAT Revelationでは通常の撮影と同時に乳腺密度を自動測定する“Insight BD(Insight Breast Density)”を実装することで,客観的な乳腺密度データを表示する。撮影後すぐに,超音波診断装置などによる追加検査が必要かを被検者に説明することができ,より被検者に寄り添った検査を提供できる。
バイオプシーも進化し,ステレオバイオプシーだけでなく,トモシンセシスによるターゲッティングが可能になった。同社のトモシンセシスは±25°と大きな振り角(50°)が特長で,2°ごとに曝射して収集した25枚の2D画像から,トモシンセシス画像を再構成する。この広角撮影により,2D撮影では重なってしまう病変を確実に分離できる。 バイオプシーにおいては,簡単な操作で正確にターゲット設定ができるとともに,“InSpect”機能により患者をポジショニングしたまま採取した標本の撮影が可能で,ワークフロー改善に大きく貢献する。
圧迫板については,乳房圧迫による不快感や痛みを軽減するため,しなりやすい素材を採用した。乳房の形状に沿って全体が均等に圧迫されるため,圧が一点に集中せず,痛みを和らげることができる。また,角に丸みを持たせることで,胸壁や腋窩に接する際の痛みも軽減する。
トモシンセシス撮影では,通常2D,“Insight 2D”(合成2D),“EMPIRE”(逐次近似法を用いたトモシンセシス画像),“Insight 3D”(立体的な情報を提供する回転画像)の4種類の画像処理が行われ,いずれもピクセルサイズ85μmの画像を提供する。
●超音波診断装置:多様な検査に対応するコンパクトなACUSON Juniper
超音波診断装置は,新製品であるACUSON Juniperやフラッグシップモデルの「ACUSON S2000」などを展示した。同社は,樹木の名を冠した超音波診断装置シリーズを新たにラインアップし,その第一弾として発売されたのがACUSON Juniperである。Juniperとは,ジン(蒸留酒)の香り付けに使われるセイヨウネズで,最も広い生息域を持つ樹木の一つ。ACUSON Juniperは,その名のとおり,幅広い診療科で活用できる汎用機として開発された。さまざまな領域の検査に対応するよう,16種類のプローブと5つのプローブポートを備え,プローブ付け替えの手間を軽減する。本体は,院内各所での使用を想定してコンパクト化を図り,ACUSON S2000と比べ設置面積を36%縮小した。また,バッテリー搭載により,スタンバイモードにしたまま移動し,コンセントを入れて起動スイッチを押した5秒後には検査が可能となっている。
画質についても,約1年をかけた国内のユーザーの評価を経て作り込まれており,日本の医師や検査技師の求める,診断に有用な高画質を実現した。さらに,検査,診断をサポートする高機能アプリケーションも搭載。肝臓を対象にエラストグラフィ“Virtual Touch Quantification(VTQ)”が可能で,肝硬度をワンクリックで計測できる。また,AI技術を利用した心臓計測機能“eSie Measure”では,ルーチン検査における自動計測が可能で,また心臓内腔のトレースを自動で行う機能も有する。
●お問い合わせ先
社名:シーメンスヘルスケア株式会社
住所:品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL:0120-041-387
URL:www.healthcare.siemens.co.jp