ITEM2017 東芝メディカルシステムズ ブースレポート 
キヤノングループとして“Made for Life”のミッションを継承する製品群を力強くアピール


2017-4-21

キヤノンメディカルシステムズ


東芝メディカルシステムズブース。現社名では最後の出展となる。

東芝メディカルシステムズブース。
現社名では最後の出展となる。

東芝メディカルシステムズは,2016年3月のキヤノンによる株式取得の発表から,12月に各国の競争法規制当局のクリアランスを取得してキヤノンによる株式取得(子会社化)を発表,2017年1月には新社名が「キヤノンメディカルシステムズ」と内定したことが発表された。今回のITEM2017は,現社名では最後の出展となるが,展示ブースには東芝メディカルシステムズのロゴとともにキヤノンのロゴが大きく掲示され,このITEMが,キヤノングループの一員として新たな1歩を踏み出したことを改めてアピールする場となった。
展示会初日に会場内で開かれた記者会見で瀧口登志夫社長は,「東芝メディカルシステムズの名前では最後のITEMとなるが,“キヤノン”メディカルシステムズへの移行の年と位置づけ,実りある展示会にすべく社員一丸となって取り組んできた。われわれは,“Made for Life”のスピリットで医療に貢献すべく事業を展開してきたが,今後はキヤノングループとして,これをさらに推し進め実現できるように取り組んでいく。われわれのミッションは,臨床医が患者さんのためにより効率的で質の高い診療を提供するために,必要な情報を収集し統合し、そして加工してお届けすることである。今回のITEMでは,それを実現できる多くの新製品やさまざまな技術を具体的に提案している。今後はキヤノングループの力を結集して,高齢化に伴うさまざまな課題の解決に取り組んでいきたい」と述べた。
ブースには多くの新製品や技術が紹介され,東芝メディカルシステムズが持つ先進の技術をはじめとする総合力と,今後のキヤノンとのシナジー効果が期待される展示となった。

瀧口登志夫代表取締役社長

瀧口登志夫代表取締役社長

2つのロゴでキヤノングループでのスタートをアピール

2つのロゴでキヤノングループでのスタートをアピール

 

●CT:新しい地平を開く世界初の高精細CT「Aquilion Precision」を発表

CTでは,2001年から国立がんセンター(当時)の森山紀之氏(現・東京ミッドタウンクリニック健診センター長)らと開発を進めてきた,従来のCTより空間分解能を向上した世界初の高精細CT「Aquilion Precision」を発表し,ITEM会場で記者発表会を行うと同時にブースでの実機展示を行った。
Aquilion Precisionは,0.25mm×160列,面内方向に従来の2倍の1792チャンネルのX線検出器を搭載し,0.15mmの空間分解能を実現した。X線管球についても,新たに“MegaCool Micro”を開発,X線焦点を従来の1/2の幅0.4mm×0.5mmの極小焦点とし,最大管電流も600mAと高出力に対応し高い空間分解能とノイズの少ない画像収集を可能にする。また,撮影寝台についても高精細撮影に対応するため新たに開発され,“2段スライド機構”と“高精度天板制御機構”によってミクロの精度で撮影位置の制御が可能になっている。このほか,従来の約8倍の情報量となる収集データを高速で処理する画像再構成ユニット,新しいPUREViSION Opticsなど,Aquilion Precisionのために開発された技術が投入されている。Aquilion Precisionは,プロトタイプが稼働していた岩手医科大学,藤田保健衛生大学,国立がん研究センターに加え,岡山大学,九州大学,杏林大学の6施設に導入されている。価格は本体2億円で,大学病院や研究所などアカデミックサイトをターゲットにする。記者発表会で瀧口社長は,「Aquilion Precisionは,われわれがADCTで培ってきた技術や知見を集大成してCTの新たな地平を開くものだ。10年後には,高精細CTが次のスタンダードになる可能性を秘めていると期待している」と述べた。
このほか,展示ブースでは新製品として最上位機種の技術を投入した80列マルチスライスCT「Aquilion Prime SP」,またArea Detector CT(ADCT)のフラッグシップである「Aquilion ONE / GENESIS Edition」をさまざまなアプリケーションと合わせて展示した。また,今年は2007年に世界初のADCT「Aquilion ONE」を発売してから10周年となることから,その歴史をパネルで紹介した。

空間分解能0.15mmの世界初の高精細CT「Aquilion Precision」

空間分解能0.15mmの世界初の高精細CT
「Aquilion Precision」

0.25mm×0.25mmの超高精細検出器

0.25mm×0.25mmの超高精細検出器

   
PUREViSION Opticsなど最上位機種の技術を搭載した「Aquilion Prime SP」

PUREViSION Opticsなど最上位機種の技術を搭載した「Aquilion Prime SP」

Area Detector CTの10年を振り返るパネル展示

Area Detector CTの10年を振り返るパネル展示

 

●MRI:最大99%の静音効果を実現した1.5T「Vantage Elan / Zen Edition」など新製品を出展

MRIでは,こちらもITEM2017に合わせて発表された1.5T「Vantage Elan / Zen Edition」を展示した。Vantage Elan / Zen Editionは,従来からの最小設置面積約16m2のコンパクト設計,低ランニングコストなどはそのままに,最大99%の静音効果を実現する“Pianissimo Zen”や3Tのハイエンドの最新アプリケーションを多数搭載したことが特長だ。Pianissimo Zenは,撮像の際の電流波形の変動を限りなく小さくすることにより,検査時の騒音を最大99%低減する。検査室内だけでなく室外の診察室や待合室なども含めてMRIの騒音の少ない検査環境を提供する。また,Vantage Elan / Zen Editionでは,検査時の位置決めを支援し検査時間を短縮する生体構造認識技術を搭載している。新たに搭載された“SUREVOI”では,心臓検査での各種の設定を生体構造認識で自動で設定され,1回の撮像で同時に14断面を取得する“CardioLine+”と併用することで大幅な操作時間短縮を可能にする。さらに,「Vantage Galan 3T」に搭載されている“mUTE(minimized acoustic noise utilizing UTE) 4D-MRA”,腹部検査対応の横隔膜同期,整形分野での活用が期待されるUTEなど,ハイエンドのアプリケーションを多数搭載した。
その3T MRIのVantage Galan 3Tは,ITEMでは初出展となった(昨年は参考出展)。Vantage Galan 3Tは,画質ムラを低減する“Multi-phase Transmission”や,“Saturn Technology”,SNRを20%向上する“PURERF”などで,3Tとしての高画質を追究すると同時に,コンパクトな設置環境やEcoモードなどの導入のしやすさ,Pianissimo Zenやオープンボア(開口経71cm)など快適な検査環境にも配慮した装置となっているのが特徴だ。Vantage Elan / Zen Editionにも搭載されたmUTE 4D-MRAでは,静音化した頭部非造影MRA検査が可能になる。
さらに,MRIコーナーでは,薬機法認可を得たばかりの,映像による快適なMRI検査空間を演出する「MRシアター」を展示し,実際にその映像を体験できるようになっていた。そのほか,オレアメディカル社の豊富なMRI解析アプリケーションや,Pianissimo Zenによる静音検査を体験できるコーナーを設けて,MRIのアドバンテージをアピールした。

最大99%の静音効果を実現した1.5T MRI「Vantage Elan / Zen Edition」

最大99%の静音効果を実現した1.5T MRI
「Vantage Elan / Zen Edition」

3T MRI「Vantage Galan 3T」では快適な検査空間を演出する「MRシアター」と合わせて紹介

3T MRI「Vantage Galan 3T」では快適な検査空間を演出する「MRシアター」と合わせて紹介

   
Pianissimo Zenの静音効果を体験できるコーナー

Pianissimo Zenの静音効果を体験できるコーナー

オレアメディカル社のMRIアプリケーションをモニタで紹介

オレアメディカル社のMRIアプリケーションを
モニタで紹介

 

●ヘルスケアIT:「Medical Informatics」として統合ビューワ「Augmented Clinical Cockpit」をアピール

ヘルスケアITコーナーでは,今年は「Medical Informatics」として,新しいコンセプトの統合ビューワ「Augmented Clinical Cockpit」(W.I.P.)を前面に出してアピールした。Augmented Clinical Cockpitは,画像情報だけでなく電子カルテなど院内で発生するデータを集約して,患者の診療という観点から関連する情報を統合的に参照,活用できるビューワとして開発されている。“Augmented”には,“AI(人工知能技術)の活用などによって煩雑な業務を効率化し,人間の新たな知識領域を拡張する”という意味が込められているという。単なる情報の参照にとどまらず,治療とその結果(効果)を対比して時系列で表示したり,タイムラインを範囲指定すると該当する所見や検査結果がハイライトされるなど,データの“意味のある統合表示”が可能になる。データの表示についても自由で柔軟なレイアウトが可能で,診療の場面で最適な情報をワークフローの流れに沿って提示することができる。さらに,診療ガイドラインなどに基づいて,診療のチェックポイントを登録することで,医師の診断や治療の意思決定を支援する。これらの診療の判断内容を蓄積することで,将来的にはAIなどを用いた自動学習による意思決定支援も可能になるという。
また,2016年に子会社のバイタル社を通じた買収で東芝メディカルシステムズのグループに加わったカロス・ヘルス社のVNDM(Vendor Neutral Dataflow Management)を参考展示した。VNDMは,アーカイブを必須とせず,ベンダーの異なる各種システム(PACSや電子カルテ)を統合しグループ病院間や地域連携での情報共有を可能にする次世代統合プラットフォーム。IHEやXDS,DICOMWebなどの最新の標準規格をベースにした完全なオープンアーキテクチャを採用しており,vendor neutralなシステム構築を可能にする。tagの自動変換を行うことで,ストレージを必要せず直接のデータ共有が可能になる。これによって,初期投資が抑えられ運用後に必要に応じて柔軟な拡張が可能になる。
東芝メディカルシステムズとしては,このVNDMを核に統合して構築された,さまざまなデータを参照するためのビューワとしてAugmented Clinical Cockpitを利用することで,新たな次世代のヘルスケアITソリューションを提供することをPRした。
また,画像処理ワークステーション「Vitrea」コーナーでは循環器,脳神経領域を中心に,MR Wall Motion Trackingや頭部急性期向け解析アプリケーションなど,同社の各モダリティと組み合わせた先進性の高い解析ソリューションを紹介した。

意味のある統合表示を可能にする新コンセプトビューワ「Augmented Clinical Cockpit」

意味のある統合表示を可能にする新コンセプトビューワ「Augmented Clinical Cockpit」

カロス・ヘルス社の統合プラットフォーム「VNDM(Vendor Neutral Dataflow Management)」

カロス・ヘルス社の統合プラットフォーム「VNDM(Vendor Neutral Dataflow Management)」

   
医療画像処理ワークステーション「Vitrea」は全モダリティに対応

医療画像処理ワークステーション「Vitrea」は
全モダリティに対応

 

 

●X線:新画像処理“Octave”を搭載したCアームX線TVシステム「Ultimax-i」

X線コーナーでは,CアームX線TVシステム「Ultimax-i」に,低線量・高画質を可能にする新たな画像処理コンセプト“Octave”を搭載したことを紹介した。Ultimax-iは,Cアームと17インチ×17インチのFPDを組み合わせることで,広い視野と多方向からの観察を可能にして幅広い検査に対応する。ERCPやミエログラフィなど透視下のさまざまな手技のニーズが増えており,高画質で広い検査空間を確保できるCアーム型X線TVシステムとしてUltimax-iは7割以上のシェアを持っている。
今回,Ultimax-iに新しい高画質・低線量検査のためのコンセプトとして搭載されたのが,“Octave”である。Octaveは,新たに開発したリアルタイム画像処理技術と低線量のためのアイテムを組み合わせて,高画質・低線量を高いレベルで両立したもので,従来より照射線量を約65%低減する。技術としては,従来から採用されていたSNRFやDCFを高いレベルで進化させながらも,新たな技術を追加した8つの最新技術から構成され,従来より1オクターブ上の診断・治療に最適な線量と画質のバランスを提供することで,安心・安全な医療を提供する。展示では,Octaveにより実現される低線量ながら高画質な画像と,実機を展示し広い検査スペースや使い勝手を実感できるように構成されていた。
また,X線管保持装置から撮影台まですべてを一新した一般撮影装置「RADREX DRite」(薬機法未承認)を出展した。RADREX DRiteは,立位,臥位の撮影台と天井走行式のX線管保持装置が連動して動き,立位から臥位などの撮影位置の変更の際に,プリセットボタンにあらかじめポジショニングを登録しておくことで,1ボタンでセッティングを可能にする。X線管保持装置はキャタピラータイプを採用し,天井のX軸Y軸方向の稼働レールのキャタピラー内にケーブルを収められるように設計されている。また,マニュアル撮影の際には,ハンドル部分に内蔵された人感センサによって,グリップすればパワーアシストが稼働する機構が採用されているのが特徴だ。
そのほか,血管撮影装置については,“IVR Suite”としてCTと組み合わせて設置するAngioCTの運用について,大画面のモニタで実際の稼働施設での状況やメリットを紹介した。

新画像処理技術“octave”を搭載したCアームX線TVシステム「Ultimax-i」

新画像処理技術“octave”を搭載した
CアームX線TVシステム「Ultimax-i」

X線管保持装置から撮影台まで一新した一般撮影装置「RADREX DRite」(薬機法未承認)を出展

X線管保持装置から撮影台まで一新した一般撮影装置「RADREX DRite」(薬機法未承認)を出展

   
人感センサを搭載してマニュアル撮影にも対応する。

人感センサを搭載してマニュアル撮影にも対応する。

“IVR Suite”としてCTと組み合わせて設置するangioCTの運用を紹介

“IVR Suite”としてCTと組み合わせて設置する
angioCTの運用を紹介

 

●Breast Solution:トモシンセシスに対応した「Pe・ru・ru LaPlus」を展示

マンモグラフィでは,新たにトモシンセシスに対応したデジタルマンモグラフィ「Pe・ru・ru LaPlus」を展示,ITEM開催直前に薬機法認証が得られたとのことで初お披露目となった。従来の「Pe・ru・ru DIGITAL」のコンセプトを踏襲し,ラウンドフォルムによる安心感や検査時の痛みの少ない圧迫システムといった特徴をさらにブラッシュアップ,MLO撮影時に腕がずれないような装置デザインに改良され,よりポジショニングが安定しやすくなった。さらに,同社のマンモグラフィとしては初めてトモシンセシスに対応した。FPDについては,直接変換方式,視野サイズ18cm×24cm,画素サイズ85μmで,トモシンセシス撮影は±5°,合計10°の範囲で行う。
そのほか,“Breast Solution”として,マンモグラフィから超音波診断装置,乳腺MRI,生検までトータルソリューションを提供できるアドバンテージを,実際に一連の製品を並べてアピールした。2016年のITEMでも紹介された,マンモグラフィの病変の位置情報を超音波診断装置のボディマークに表示して検査をサポートする“エコースキャンガイド”など,密接な連携が可能なことを紹介した。

トモシンセシスに対応したデジタルマンモグラフィ「Pe・ru・ru LaPlus」

トモシンセシスに対応したデジタルマンモグラフィ「Pe・ru・ru LaPlus」

超音波検査をサポートする“エコースキャンガイド”など“Breast Solution”をPR

超音波検査をサポートする“エコースキャンガイド”など“Breast Solution”をPR

 

●Interview:スタッフが一丸となりチームとして対応する営業体制の構築を進めたい
国内営業本部本部長 森田一夫 氏

国内営業本部本部長 森田一夫 氏

国内営業本部本部長
森田一夫 氏

2017年4月に新たに国内営業本部の営業本部長に就任した森田一夫氏に,キヤノングループ入りし新たなスタートとなる東芝メディカルシステムズの営業戦略と今後の取り組みについてインタビューした。

◎キヤノングループの一員として。
森田 正直に言って,昨年の株式譲渡から正式な承認が下りるまでの間,社員は不安な気持ちだったと思います。昨年末のキヤノンの子会社化の決議,今年に入って新社名が内定したことで,ようやく社員にも安心感と新体制への実感が生まれました。今回のITEMでは,ブースにキヤノングループのロゴが入り,その下で多数の新製品や価値のある技術を発表できたことは,新体制で今まで以上に医療に貢献していくんだというマインドを全員が確認する良いきっかけになりました。

◎国内の営業体制について。
森田 東芝メディカルシステムズのアドバンテージは,お客様の一番近いところに常に営業やサービスのスタッフがいることです。お客様の近くで課題や要望をおうかがいして適切な製品を提供し,それをサポートし,さらにフィードバックをいただいて次の製品や技術開発に生かしてきました。それは今後キヤノングループとなっても変わりませんし,両社が一緒になることで技術開発だけでなく,営業体制の面でも良いシナジーを生んでいければと期待しています。
国内市場はJIRA統計によると,ほぼ横ばいの傾向にあります。さらに,来年度の診療報酬改定では病院機能の役割分担明確化などにより,さらに病院経営は厳しさを増すことが予想されています。人口の減少や都市部と地方での格差が広がることも考えられます。その中で,全国どこでも当社の良さを生かせるような営業やサポートが継続できるような体制を考えていきます。

◎営業本部長としての意気込みを。
森田 お客様の満足度を高めるためには,スタッフが一丸となりチームとして対応することが必要です。今の時代は個人個人が独立したプレーヤーになって動く傾向が強いですが,原点に戻ってお客様の満足度をさらに高めるためには点(個人)でフォローするのではなく,面(チーム)でやっていくことが大切です。そのためには,会社として仲間意識を持ち団結力を持ったチームとなることが重要です。営業も技術部門も全員がマインドを共有して,お客様が一番何をしたら喜んでくれるか,満足してくれるかを考えながら面で対応できるような国内の営業体制をめざしていきます。

 

●お問い合わせ先
東芝メディカルシステムズ株式会社
住所:栃木県大田原市下石上1385番地
TEL:0287-26-5100
URL:http://www.toshiba-medical.co.jp/

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