ITEM2017 GEヘルスケア・ジャパン ブースレポート
“Partners for Better Health”をテーマに,デジタル技術により,患者の健康と医療機関の生産性向上,経営改善に貢献するソリューションを提案
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2017-4-26
GEヘルスケア・ジャパンブース
GEヘルスケア・ジャパンブースのメインテーマは,“Partners for Better Health”。さらに,「卓越した臨床の質をもたらす最新テクノロジー」「経営の効率化を実現するデジタル技術」「日本の医療課題解決のための密なパートナーシップ」をコンセプトに,臨床的な有用性はもちろんのこと,放射線部門をはじめとした医療機関内の業務効率化を推し進め,経営改善につながり,患者の健康と医療機関の経営に貢献するためのソリューションを提案した。
JRC2017に先立つ4月7日(金)には恒例の成長戦略発表会を開催し,2月13日に代表取締役社長兼CEOに就任した多田荘一郎氏が,国内事業の展開について,報道関係者に説明した。
この中で多田社長は,日本の医療が抱える課題として,超高齢社会における介護や高齢者の併存疾患,医療資源の偏在化,健康寿命の延伸などに言及。課題解決に向けたイノベーションとして,「アカデミック・ケアエリア」「製品+サービス」「デジタル×IT連携」の取り組みを複合的に進めると述べた。そして,これらの取り組みにより,予防・早期発見,個別化医療,生産性向上と効率化,地域医療体制のエコシステムの構築を図り,医療機関や患者,地域医療に貢献するというビジョンを示した。この戦略にのっとり,アカデミック・ケアエリアの施策として,2017年3月30日には,国立循環器病研究センターとの間で,画像診断装置の共同研究や,IoTを活用して情報の一元化や業務改善を図る次世代病院情報システムの開発を行うパートナーシップ契約を締結している。
ITEM会場内でも,ヘルスケアデジタル,デジタルサービス分野においてITやIoTを組み合わせたデータマネジメントと地域医療連携の貢献するソリューションのPRに力を入れていた。同社が提供するVNA(Vendor Neutral Archive)基盤である「Centricity Clinical Archive(CCA)」をベースに,院内で発生する画像データを統合管理する仕組みがPRされたほか,前回のITEM前に発表されたIoTのサービス「Brilliant RaDi」などが紹介された。一方,画像診断装置の新製品も数多く展示された。MRIではハイエンドクラス3T装置の「SIGNA Architect」のモックアップが披露されたほか,同じく3T装置の「SIGNA Pioneer」の新バージョン機,1.5T装置「SIGNA Voyager」の紹介が行われた。また,デジタルマンモグラフィ「Senographe Pristina」,四肢専用外科用X線撮影装置「OEC Elite MiniView」,半導体検出器を搭載したPET/CT「Discovery MI」,SPECT/CT「Discovery NM/CT 670 CZT」もITEM初披露となった。
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●ヘルスケアデジタル,デジタルサービス:放射線部門の生産性を向上し,業務改善につながるVNAソリューション
GE全体では,IoT基盤の「Predix」を用いて,製造業や運輸業などの幅広い産業分野にソリューションを提供している。もちろん医療分野でも同様に,前回のITEMで「Brilliant Hospital」構想のサービスであるBrilliant RaDiを紹介し,本格的に展開し始めた。このように,デジタル技術を活用して,医療機関や地域医療連携のためのソリューションを手がけていくことから,従来の「ヘルスケアIT」というカテゴリをさらに拡大する意味で,「ヘルスケアデジタル」と「デジタルサービス」として,デモンストレーションやプレゼンテーションを行った。
その中でも特に力を入れてPRされたのが,医療機関で発生する医用画像や診療情報を統合管理する同社のVNAの基盤であるCCAによるデータマネジメントである。現在,多くの医療機関では,PACSだけでなく,非DICOM画像の保管システムなど複数のシステムが稼働している。これら複数のシステムのデータを,IHEといった標準規約を用いてVNAに保管することで,個々のシステムのベンダーに依存することなく情報を統合管理できる。また、施設内にとどまらず地域医療連携においても,各施設異なるベンダーのPACSの画像や診療情報を統合管理し,参照することが可能となる。
長期的なデータ保管の観点からも,VNAを採用するメリットは大きい。世界ナンバーワンの運用実績(Market share ranking published by IHS, Medical Enterprise Data Storage Market - 2015)を持つ同社のVNAは,システム更新の際,データ移行の費用や時間を抑えられ,医療機関の資産であるデータを安心して長期間運用できる。また,同社のVNAは「InSite BB」などの保守サービスにより常時システムを監視し,システムダウンを未然に防ぐなど,高い信頼性も有している。
加えて,VNAに保管されたデータは,ベンダーを問わず,ユーザーの用途や好みに応じたビューワで参照することが可能となる。AI(機械学習)を用いた“Smart Reading Protocol(SRP)”や3D画像解析など豊富な機能を持つ「Centricity Universal Viewer」や他社のビューワが利用できるため,放射線科医の読影効率の向上にも寄与する。
このほか,PACSやRIS,画像診断装置から得られたデータを基に,装置の稼働状況や検査時間などをKPI(Key Performance Indicators)として可視化し,ダッシュボード表示することで,放射線部門の業務改善に役立てられる「Analytics Solutions」(販売時期未定)も紹介された。
なお,Brilliant RaDiについては,国内で運用されているシステム数が50に上り,日勤時間帯のダウンの削減時間率が平均54%を記録。多くの施設でメリットを生んでいることが紹介された。
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●MRI:研究用途にも対応するハイエンドクラスSIGNA Architectや“SIGNA Works”などの最新技術をアピール
2016年の国際磁気共鳴医学会(ISMRM)で発表され,北米放射線学会(RSNA)でも大きな注目を集めたSIGNA Architectが,日本国内で初披露された。臨床だけでなく研究ニーズにも応える3T MRIで,「Discovery MR750w 3.0T」の上位機種に位置づけられる。フルデジタル装置として,“TDI(Total Digital Imaging)RFテクノロジー”と呼ばれる第二世代のデジタルRF技術を採用。SNRが同社のアナログMRIより最大59%,デジタルMRIより最大27%向上する。撮像技術のプラットフォーム “SIGNA Works” の1つである “HyperWorks” と呼ばれる各種アプリケーションを搭載。このHyperWorksには圧縮センシング(compressed sensing:CS)“HyperSense”やmulti-band MRIの“HyperBand”などの高速撮像アプリケーションが用意されており,臨床的に有用な画像を短時間で取得できる。さらに,1秒間に6万2000枚の画像処理を行う“高速リコンストラクションエンジン”や“エクスプレス患者テーブル”,画像解析処理を本体コンソールで行う“READY View”により,検査のスループットを向上する。このほか,“reFINE”と呼ばれる部位ごとに信号を補正し画質を向上する技術や,アーチファクトを抑える技術など,ハイエンド装置にふさわしい技術が搭載され,高精度の画像を安定して得ることができる。
さらに,SIGNA Architectに組み合わせる「48チャンネルヘッドコイル」も紹介された。従来の頭部用コイルよりSNRが最大51%向上するほか,被検者の負担を軽減する鏡が取り付けられるなどの工夫が施されている。
2015年に発売されたSIGNA Pioneerが,バージョンアップした。日本ユーザーの意見を基に開発された開口径70cmのワイドボア装置で,発売当初は1回の撮像で6種類のコントラスト画像が得られる“MAGiC”を搭載し話題を呼んだ。新バージョンでは,Productivityを向上させるGEMR共通のプラットホームであるSIGNA Worksが採用され,HyperSenseなどの最新撮像アプリケーションが搭載可能になり,検査時間の短縮が可能である。また,静音化技術である“SILENT SCAN”も2.0へと進化し,さらなる撮像時間の短縮とコントラスト拡張が図れる。
2016年11月に発表された1.5T MRIのSIGNA Voyagerは,SIGNA Pioneerと同じ筐体を採用。70cmの開口径と56cmのテーブル幅,テーブル最低高52cmなど,被検者にとって優しく,検査者にとってもセッティングが容易な装置になっている。幅広いテーブル幅はよりよい撮影ポジショニングを可能とし,整形領域でのオフセンターの撮像で有効である。また第二世代のデジタルRF技術TDI(Total Digital Imaging)を搭載しSNRを向上。 “IDEAL”や“MAVRIC-SL”など,MRの課題であるアーチファクトを抑え,高精度の画像が得られるアプリケーションも搭載した。
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●CT:“Smart Cardiac Technology”と “GSI Xtream” を組み込んで進化した「Revolution CT」
CTのコーナーでは,2014年のITEMで発表されたRevolution CTに新たに搭載された技術が紹介された。
その一つSmart Cardiac Technologyは,心臓CTの撮影を容易にするとともに,ワークフローの改善を図る新技術である。Smart Cardiac Technologyには,被検者の心拍データから至適撮影プロトコールを自動で設定してスキャンを行う“Auto Gating”,冠動脈のモーションアーチファクトを解析して至適心位相で撮影できる“Smart Phase”,冠動脈のモーションアーチファクトを解析し静止冠動脈画像を再構成する“SnapShot Freeze”がある。これらのアプリケーションを用いることで,検査者の経験に左右されず,至適タイミングで,高精度の心臓CT検査が可能となり,検査のスループットが大幅に向上する。
また,デュアルエナジーイメージング技術も新たになった。Revolution CTにオプションで搭載される“GSI Xtream”は,従来デュアルエナジーイメージングの課題であった画質,被ばく,ワークフローを改善する技術として,2016年のRSNAで発表され,今回のITEMを機に日本国内でも発売が開始された。これまでの同社技術では約40mm幅のデータ取得であったが,GSI Xtreamにより約80mmのデータが得られる。これにより,さらなる高速撮影ができる。加えて,コンピュータユニットを新たにしたことで再構成時間も短縮化されて,ルーチン検査でのデュアルエナジーイメージングが可能となった。仮想単色X線画像や物質弁別画像が日常検査で得られるようになると期待される。
このほか,CTコーナーでは,今回のITEMに合わせて初の試みとなる「Revolutionize CT Image Contest 2017」の結果がパネルで紹介された。これは,Revolution CTのほか,「Revolution GSI」「Discovery CT750HD」の3機種のユーザーを対象にしたWebコンテストで,投票もユーザーが行う。頭頸部(血管系含む),胸腹部骨盤部全般,体幹部血管系,心臓系,整形・その他の部門に分け,それぞれ最優秀賞1施設,優秀賞2施設が選出される。受賞作品の画像が撮影条件などとともに披露された。
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●MI:半導体検出器搭載PET/CTのDiscovery MI,SPECT/CTのDiscovery NM/CT 670 CZTを紹介
2016年8月に発表されたPET/CTのDiscovery MIとSPECT/CTのDiscovery NM/CT 670 CZTがITEMで初めて紹介された。両機種ともに国内初の半導体検出器を搭載した装置である。
Discovery MIに搭載された“LightBurst Digital Detector” は,silicon photomultipliers(SiPM)半導体を使用している。従来のPMT検出器より時間分解能が上がり,解像度が2倍に向上している。さらに,高感度化の技術である“ コンプトン散乱リカバリー” を新たに開発し,雑音等価計数率(NECR)が約20%向上。検査時間と被ばく線量を従来装置の約1/2にできる。発表当初は体軸方向20cmの撮像範囲を有する4リング型であったが,コストを抑えてより導入しやすくなった3リング型(撮像範囲15cm)もラインアップした。4リング型を「Discovery MI.v」,3リング型を「Discovery MI.e」として展開していく。なお,Discovery MI.eを4リングにアップグレードすることもできる。
さらに,画像再構成技術である“Q.Clear”を採用しており,定量精度が向上したことで,治療効果判定を目的としたPET検査を施行することが可能である。
SPECT/CTのDiscovery NM/CT 670 CZTには,テルル化亜鉛カドミウム(CZT)検出器を用いている。CZT検出器によって,γ線を直接電気信号に変換できるようになり分解能が向上。さらに,散乱成分を除去したノイズの少ない高精度な画像を描出する。また,エネルギー分解能が高いことから,99mTcと123Iといった2核種の同時収集が可能となり,これまで分けていた検査を同時に施行できるようになる。
このほか,MIコーナーでは,放射性医薬品の合成が可能な「FASTlab」が展示された。1台でFDG・ビザミルの合成が可能であり,省スペースで効率的な運用が可能となる。
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●X-ray:ハイエンドデジタルマンモグラフィSenographe Pristinaやインターベンション支援の“ASSIST”アプリケーションをPR
X-Ray関連では,2016年10月に発表されたハイエンドのデジタルマンモグラフィSenographe Pristinaが来場者の関心を集めた。Senographe Essentialの後継機種に位置づけられるSenographe Pristinaは,検査時の痛みを軽減し,不安を抑えるためのデザイン・設計がされている。ブッキーは角を丸くすることで,被検者があまり痛みを感じないようなきめ細かな配慮がされている。また,被検者が撮影中に手を添えるソフトアームレストにLEDライトを施し,リラックスできる雰囲気を醸し出すようにした。オプションで用意されるトモシンセシス“Seno3D”用のフェイスシールドも顔の輪郭に沿うよう設計されている。被検者だけでなく,検査者にとっても優しい設計となっており,検出器の後方にワーキングスペースを確保して,ポジショニングなどをしやすくした。さらに,X線管の傾きを深い角度まで調整できることで,車いすを使用する被検者のMLO撮影にも容易に対応する。
Seno3Dは角度を変えながら9回の撮影を行い,画像再構成法である“ASiRDBT”を用いて,トモシンセシス画像を作成する。アーチファクトを抑え,微小な病変も検出しやすい高精細な画像を描出できる。また,専用ワークステーションの「SenoIris」に搭載された“Volume Preview”を用いることで,Seno3Dの画像から2D画像を作成でき,2つの画像を並列表示して読影を行える。
血管撮影装置では,インターベンションの支援するアプリケーションが紹介された。「Virtual ASSIST」と呼ばれるコンソールが用意され,「Discovery IGS ASSIST」シリーズ,「Innova IGS ASSIST」シリーズに搭載されるASSISTアプリケーションが,インターベンションの手技中どのように役立つのかをシミュレーションできるようにした。ASSISTアプリケーションの中で注目されたのは,“Needle ASSIST”である。Needle ASSISTでは,2方向からの透視撮影を行い,その情報を基に針の位置や目的部位までの距離などを表示して,安全かつ高精度の手技を支援する。さらに,肝臓がんの肝動脈化学塞栓療法(TACE)において,栄養血管を抽出する“FlightPlan for Liver”,2方向からの透視像とCT画像を重ねて表示する腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(EVAR)用の“EVAR ASSIST”が紹介された。
このほか,四肢専用外科用X撮影装置として2016年9月に発表されたOEC Elite MiniViewも展示された。
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●US:乳房用超音波診断装置「Invenia ABUS」やポケット型超音波診断装置「Vscan」など独自の技術を紹介
超音波診断装置では,自動走査により検査者によらず均一性の高い画像を得られる「Invenia ABUS」やポケット型超音波診断装置「Vscan」が展示された。Invenia ABUSのスキャンヘッドは,丸みのあるデザインになっていて,不快感を抑えるとともに,均一に乳房の密着できるようにしている。
Vscanは,2010年に発売。本体390gという軽さを実現しながらBモードとカラードプラが撮像できる。さらに,2014年には,2in1方式プローブ採用の上位機種「Vscan Dual Probe」が発表された。Vscanの展示コーナーでは,開発中の技術も紹介されていた。
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●お問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
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