2022-4-26
GEヘルスケア・ジャパンブース
GEヘルスケア・ジャパンは今回,「Building a world that works:より良い未来の創造にむけて」をテーマに掲げた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる医療現場のひっ迫,2024年4月に始まる医師の時間外労働の上限規制,団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題など,日本の医療は多くの課題を抱えている。このような状況を踏まえて,同社は,人工知能(AI)ブランドである「Edison」をはじめとしたデジタル技術を用いたソリューションを提供し,医療資源の有効活用や医療提供体制づくりのためのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援していく。ITEM 2022後の4月21日に行われた成長戦略発表会において,多田荘一郎代表取締役社長兼CEOは,デジタル技術やデータを活用することで,医療提供のあり方を改善していくとして,DXによるヒト中心の医療の実現を訴えた。
医療機関のDXに向け,EdisonプラットフォームのAI技術の実装も進んでいる。今回は,CTの新製品として「Revolution Ascend」を発表した。ハイエンド装置「Revolution CT」の技術を継承しており,AIを用いた撮影の自動化やディープラーニング画像再構成アルゴリズム“TrueFidelity Image(TFI)”などより,検査の効率化や画質向上・被ばく低減を実現する。また,MRIでも最新の1.5T MRI「SIGNA Prime」を発表した。最短7日間で稼働できるほか,電力・ヘリウム量の大幅な削減を実現している。また,ディープラーニング画像再構成アルゴリズム“AIR Recon DL”を採用している。
ヘルスケア・デジタル部門でも,DXを促進するソリューションが登場した。「ESW Radiation」は,放射線部門におけるモダリティの稼働状況や診療放射線技師の検査業務を可視化。データを分析することで,業務効率の向上やワークフローの改善などにつなげることができる。また,サイバー攻撃の防止対策に有効な「Cyber Security」,AI技術によりモダリティの故障を予測しダウンタイムを最小限に抑える「OnWatch Predict」を紹介した。
同社は,1982年に横河メディカルシステムとして設立され,2022年で40周年を迎えた。この間,日本のユーザーの声を取り入れた製品開発を行い,国内市場で展開してきた。今後も日本の医療が抱える課題の解決に取り組んでいく。
●CT:ワークフローを自動化して放射線部門の働き方改革を支援する最新CTのRevolution Ascend
●MRI:最短7日で稼働可能,経済性にも優れた1.5T MRIの新装置SIGNA Primeを発表
●ヘルスケア・デジタル:放射線部門の業務を可視化するESW Radiationやサイバーセキュリティ対策サービスなど経営に寄与するソリューションを紹介
●XA/DR/MG:幅広いニーズに対応する外科用CアームX線撮影装置「OEC」シリーズやハイブリッド手術室対応の血管撮影装置をアピール
●US:デュアルプローブと本体を一体化したポケットサイズ超音波診断装置「Vscan Air」を紹介
●MI:FOVを拡張し,自動ポジショニング機能を搭載した心臓専用半導体検出器搭載SPECT「MyoSPECT」を発表
●CT:ワークフローを自動化して放射線部門の働き方改革を支援する最新CTのRevolution Ascend
ITEM 2022に合わせて発表した最新CTのRevolution Ascendは,日本のユーザーの意見を反映して,国内チームが開発を主導。製造も本社(東京都日野市)で行われており,日本の医療機関向けに最適化されたガントリ開口径75cmの64列CTである。ハイエンド装置のRevolution CTに採用された技術が惜しみなく投入されており,“Effortless Workflow”と呼ばれる検査の自動化技術や,Edisonプラットフォームで開発されたディープラーニング画像再構成アルゴリズムのTFIを搭載している。
Effortless Workflowは,検査前から検査後の画像解析までをAI技術ならびに自動化技術でサポートする。検査前には,寝台上の天井に設置したAI技術を用いた「Deep Learning カメラユニット」により,目的の撮影部位がアイソセンタになるよう自動で高精度のポジショニングを行い,スカウト画像を基に患者個々に合わせた最適な撮影パラメータを提案してくれる。これにより画質の向上も図れる。また,撮影前に画像解析を設定しておくことで,スキャン後には自動で処理が行われる。検査時の作業工程を簡略化し,業務の効率化が図れ,ワークフローを向上。放射線部門のスタッフの業務負荷を抑え,検査を標準化して,常に質の高い画像の提供が可能となる。また,広いガントリと検査時間の短縮は被検者の負担軽減にもつながる。さらに,TFIにより,低線量でも高画質を得られるようになったことも,被検者のメリットである。加えて,TFIはノイズ低減により診断しやすい画像を得られるため,放射線科医の負担軽減にもなる。
CT関連でのもう1つのトピックが,心臓CTのモーションアーチファクト抑制技術“SnapShot Freeze 2”である。従来のSnapShot Freezeは冠動脈のモーションアーチファクトをターゲットとしていた。その進化版となるSnapShot Freeze 2は,冠動脈のモーションアーチファクトを従来以上抑制できるようになったことに加え,弁や心筋など心臓全体の動きも抑えられるようになった。これにより,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)などstructural heart disease(SHD)治療において有用な情報を提供できるようになった。
●MRI:最短7日で稼働可能,経済性にも優れた1.5T MRIの新装置SIGNA Primeを発表
MRIの新製品として発表したのが1.5T MRIのSIGNA Primeだ。“Easy to learn. Powerful to use.”をコンセプトに開発されたSIGNA Primeは,医療機関経営に寄与する柔軟な設計思想,質の高い検査を確実に行える直感的な操作,AI技術による画質向上と検査の自動化を特徴としている。柔軟な設計思想に基づいて採用されたのが,新型の“IPM(Innovative Platform Magnet)”である。0.33ppmの優れた磁場均一性を有しているほか,冷却性能の向上と軽量化が図られた。従来装置と比べて,稼働ヘリウム量70%減,電気容量25%減を実現している。また,最小設置面積は24m2と,設置場所が限られている日本の医療機関にも導入しやすい装置となっている。さらに,設置期間は最短7営業日で,ダウンタイムが短いことも医療機関にとってはメリットとなる。直感的な操作を可能とするために,ユーザーインターフェイスも一新。“エクスプレスモード”と“クラシックモード”を用意したほか,撮像プロトコールの選択やワークフローをサポートする機能を搭載し,検査担当者の経験に依存することなく,質の高い画像を安定して得られるようにした。画質の向上については,新たなデジタル技術である“Total Digital Imaging(TDI)”によって実現した。TDIは,1素子に対して1つのA/D変換器を用意し,重み付けにより画像を最適化する。加えて,AIR Recon DLによりノイズを低減した画像が得られ,読影効率の向上にも寄与する。
AIR Recon DL搭載装置は現在,全世界で約800台が稼働しており,日本では2021年4月以降50施設以上で使用されている。撮像時間が従来の半分程度になるなど大幅な短縮が図られているほか,放射線科医の読影時間も短くなっており,経営にも貢献しているという。このほかの“AIR Technology”に関しては,ブランケットのように柔らかい「AIR coil」の新ラインアップ「AIR Multi-Purpose Coil」を紹介した。コンパクトなサイズで肩や膝,足首などの整形領域,心臓などに対応。従来の「AIR Anterior Array Coil」と「48ch AIR Head Coil」の3つのコイルでほぼすべての検査に対応できる。
このほか,前回のITEMで発表した3D撮像のアプリケーション“oZTEo”も紹介した。独自のゼロTE技術により骨を画像化できる。ブース内ではoZTEoの骨画像を基に3Dプリンタで作成した骨の3Dモデルを展示。さらに,2022年度診療報酬改定によりMRエラストグラフィの算定が可能となったことを踏まえ,“MR Touch”もアピールした。MRエラストグラフィは600点の加算が新設された。MR Touchは現在,国内で約70施設が導入しているという。
●ヘルスケア・デジタル:放射線部門の業務を可視化するESW Radiationやサイバーセキュリティ対策サービスなど経営に寄与するソリューションを紹介
イノベーションで日本の医療が抱える課題の解決に取り組んできた同社であるが,ヘルスケア・デジタルのコーナーでは,放射線部門など医療機関の経営に寄与するソリューションをアピールした。今回発表したESW Radiationは,放射線部門のモダリティの稼働状況や診療放射線技師の検査業務を可視化する。同社は従来,医療機関全体での医療機器運用の最適化といった業務改善を支援する「アセット・パフォーマンス・マネジメント(APM)」を提供していた。これは施設内にある超音波診断装置などの医療機器にセンサを取り付け,稼働状況のデータを収集して可視化するソリューションで,無駄をなくし経済的かつ効率的な医療機器の運用を実現する。また,電子カルテなどのデータを基に病床の稼働状況やスタッフの勤務状況を可視化し,リアルタイムで病床の稼働率向上やスタッフの配置の最適化を行える「コマンドセンター」も提供してきた。ITEM 2022で紹介したESW Radiationは,このようなツールを放射線部門に特化させている。検査オーダの分析や撮影室ごと,診療放射線技師ごとの検査のバラツキを可視化して,モダリティの管理やスタッフの働き方改革などの業務改善を支援する。ESW Radiationはクラウド,サブスクリプション方式で提供され,同社の保守サービスに追加する形で利用することが可能だ。
コマンドセンターは,2021年4月に日本で初めて導入した社会医療法人誠光会淡海医療センター(旧・草津総合病院)において多くの成果が生まれていることがITEM 2022期間中に発表された。同センターでは,コマンドセンター導入後の2021年度における病床稼働率が94.1%(+4.2%)となり,診療単価は6.2%向上。さらに,スタッフの残業時間が44%削減できたという。
今回のITEMでは,社会問題にもなっているサイバー攻撃への対策も紹介した。シスコシステムズ社との協業による「Cyber Security」は,保守サービスである「InSite」の専用ルーターと医療機関のネットワークとの間にファイアウォール機能を追加し,不正アクセスやマルウェアの脅威からモダリティを防御する。施設外からどのモダリティに接続できる状態なのかをユーザーが把握できる。また,施設内から外部に発信される異常な通信も早期に検知でき,情報の流出などを防止する。加えて,常に最新のアンチウイルス,アンチスパイウエアにも対応する。
このほか,モダリティの故障を予測する「OnWatch Predict」もアピールした。モダリティを24時間365日リモートで監視し,モダリティから取得するセンサーデータに加え、過去の統計データなどからAIが故障の予兆を解析。交換部品の手配や修理のスケジュール設定を自動的に行う。これにより,モダリティの突発的なダウンタイムを最小限に抑えられ,稼働日数が増加するなど,経営にも寄与する。まずはMRIからサービスが開始される。
●XA/DR/MG:幅広いニーズに対応する外科用CアームX線撮影装置「OEC」シリーズやハイブリッド手術室対応の血管撮影装置をアピール
外科用CアームX線撮影装置「OEC」シリーズは,整形外科から血管外科まで幅広い手術に対応するため,豊富なラインアップを展開している。その中から今回は,「OEC 3D」と「OEC One CFD」の2機種を展示した。OEC 3Dは31cmのCMOSフラットパネルディテクタ(FPD)を採用し,被ばく線量を抑えて高精細画像を取得可能。19cm×19cm×19cmの広範囲での3D撮影が可能で,例えば3回に分けていた撮影を2回で完了できるといったメリットがある。操作性も良さも特長で,Cアームに配置されたタッチパネルで直感的に行える。撮影はわずか4ステップで,撮影後にはすぐに32インチの4Kモニタ上で画像を確認できる。Cアームはカーボンファイバーを採用し,高い堅牢性を有するとともに軽量で扱いやすくなっている。
並んで展示したOEC One CFDは,OEC 3Dと同じく31cmのFPDを採用した27インチ4Kモニタ一体型の装置を展示した。コンパクト設計のため,スペースの限られた手術室でも運用しやすい。ワイヤレス仕様のフットスイッチを採用することで,配線を本体の電源ケーブルだけにでき,手術を妨げにならない。さらに,5分間稼働可能なバッテリーを搭載しており,装置の移動時でも電源を落とさずにすむ。
血管撮影装置は,ハイブリッド手術室ソリューションを紹介した。「マグナス手術台」など手術室の関連製品を手がけるゲティンゲグループ・ジャパン社のゲティンゲ エクスペリエンスセンターとオンラインで接続し,同センターで稼働する「Discovery IGS 7 OR」のデモンストレーションを行った。Discovery IGS 7 ORは自走式のCアームを採用。天井にレールを配置せずに運用できる。このため,手術台の頭上にHEPAフィルタを設置でき,清潔な室内を保てる。また,無影灯も最適な位置に設置可能だ。自走式Cアームを採用した血管撮影装置は第2世代の「Allia IGS 7」も登場している。高度化するSHD治療といったハイブリッド手術,インターベンションを支援するための“Valve ASSIST 2”などのASSISTアプリケーションも充実している。
マンモグラフィは「Senographe Pristina」と3Dバイオプシーが可能な「Pristina Serena」を展示した。Senographe Pristinaは,乳房支持台の角をカーブさせ,被検者の痛みを軽減する工夫がなされている。トモシンセシスは,逐次近似法“ASiRDBT”により低被ばくで撮影でき,step & shoot法によって,ボケの少ない画像が得られる。さらに,10mmと0.5mmの2種類の画像で観察でき,効率的な読影が可能となる。Pristina Serenaは,造影マンモグラフィガイド下生検機能“Serena Bright”が利用できる。病変部が疑われる部位が明瞭に描出されることから,高い精度で生検を行える。
●US:デュアルプローブと本体を一体化したポケットサイズ超音波診断装置「Vscan Air」を紹介
超音波診断装置は2021年6月に発表したポケットサイズの超音波診断装置Vscan Airを展示した。コンベックスプローブ・リニアプローブのデュアルプローブを採用し,本体と一体化。浅部から深部までの検査が可能である。画像表示は専用アプリケーションをインストールしたiOS,Androidのスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスをユーザーの好み,用途に合わせて使用できる。両者はWi-FiとBluetoothによるワイヤレス接続を行う。プローブ一体型の本体は,寸法が64mm(W)×131mm(H)×31mm(D),重量が205gという小型・軽量化を実現。バッテリー駆動時間は連続スキャン時間が50分となっている。IP67の防塵・防水規格,1.2mからの落下衝撃にも耐えるなど堅牢性に優れ,保証期間も3年間とし,ユーザーは安心して使用できる。救急や災害医療,在宅医療などでのpoint-of-care超音波(POCUS)で有用な装置である。
ブースには,循環器領域向けの「Vivid E95 Ultra Edition」も展示した。SHD治療を支援するためのアプリケーションが充実しており,ハイブリッド手術室での運用についてデモンストレーションを行った。SHD治療向けのアプリケーションとしては,三尖弁の評価を行う“4D Auto TVQ”を紹介した。三尖弁に対するカテーテルインターベンションは国内でも治験が進んでおり,今後の保険収載が見込まれる。4D Auto TVQは計測など定量評価が可能で,手技のナビゲーションツールとして期待される。
●MI:FOVを拡張し,自動ポジショニング機能を搭載した心臓専用半導体検出器搭載SPECT「MyoSPECT」を発表
核医学関連では,最新の心臓専用半導体検出器搭載SPECTのMyoSPECTを紹介した。「Discovery NM 530c」の後継機種に位置づけられる。CZT半導体を採用しており,放射線を直接電気信号に変換することで高いγ線検出効率を実現している。Discovery NM 530cよりもFOVを76%拡大し,体格の大きな被検者の心臓も描出できるようになった。さらに,新開発の“Smart Positioning”により,被検者の心臓を自動で認識し,撮像位置,FOVの設定を支援する。
また,核医学向けのワークステーション「Xeleris V」も新機能(W.I.P)を紹介していた。画像診断と放射線治療を融合したセラノスティクスにおける被ばく線量を自動で算出するアプリケーションを搭載。加えて,骨や肺,肝臓などの臓器の自動セグメンテーションも行う。これからのアプリケーションはEdisonプラットフォームで開発されている。
●お問い合わせ先
社名:GEヘルスケア・ジャパン株式会社
住所:東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021
URL:https://www.gehealthcare.co.jp/