2019-5-7
ザイオソフト/アミンブース
ザイオソフト / アミンは,3D医用画像処理ワークステーション(WS)「Ziostation2」の新機能を中心に,PhyZiodynamicsやRealiZeなどが可能にする最新の画像処理・解析技術をアピールした。ブースデザインは,2018年に引き続き天井を吹き抜けにした明るく開放的なスタイルを採用し,「Ziostation2」のアプリケーションを紹介する多くのディスプレイとあわせて先進性をPRした。
今年のブースでトピックとなったのは,同社が国産で初めて汎用PCで3D画像処理を実現した「M900」を発売してから20周年になることを記念した企画展示である。これまでの製品や技術開発の歴史を振り返る年表や,「M900」「M900 QUADRA」などの“実機”を展示し,日本における3D画像処理のスタンダードとなった「Ziostation2」の20年の歩みを紹介した。「Ziostation2」のアプリケーションは,PhyZiodynamicsやRealiZeテクノロジーを用いて精度の向上を図っている。ブースでは,その中から標準機能で搭載されている腎臓の自動抽出,アプリケーションとして「MR冠動脈解析2」「MRダイナミック解析」「CT心筋ECV解析」などを紹介した。
●3D画像処理の普及を拡大した「M900」など3DWSの歴史を紹介する特別展示
1999年に発売された「M900」は,汎用PCでの超高速3Dレンダリング処理を実現した国産初の三次元医用画像処理ワークステーション(WS)である。2019年は,その「M900」の発売から20周年に当たることから,ブースではこれまでの歩みを紹介する展示を企画し,「M900」の発売から現在までのザイオソフトの技術開発の歴史を振り返る年表,実際に使用された「M900」や「M900 QUADRA」の実機(PCの筐体)が展示された。
「M900」が登場した1990年代後半は医療における3D画像の黎明期であり,3D画像作成には主に海外製の大型UNIXワークステーションが使われていたが,英語ベースの操作環境や処理時間がネックとなっていた。「M900」は,汎用PCを使いながら高速で精細なレンダリングを実現し,日本語表記による使いやすい操作性とあわせて,日本の臨床現場での3D画像を実用レベルまで押し上げたエポックメイキングな製品となった。
2002年には「M900 QUADRA」が登場。「M900 QUADRA」では,マルチモダリティフュージョンや4D表示,心臓解析,大腸解析など実用的なクリニカルアプリケーションが数多く開発され,現在へと続く3DWS活用の基本となった。さらに,2005年に「ZIOSTATION」が発売され,独自開発の“ZEEK Engine”によって骨除去や血管抽出の自動処理が可能になり,主要な処理をサーバで行うことで3D画像の利用範囲を広げたネットワーク型ソリューションも提供された。そして,2010年に「Ziostation2」が登場し,ともにザイオソフトの独自技術であるPhyZiodynamicsやRealiZeテクノロジーによって,CTやMRデータの大容量化が進む臨床現場での画像処理を支えている。
近年,人工知能(AI)技術の画像診断領域への急速な普及が進み,各社がAIを用いた新しい読影支援ワークフローの構築に取り組んでいる。ザイオソフトも開発の中で早い段階から機械学習などAI技術を取り入れてきたが,「M900」をいち早く世に送り出し,独自技術のPhyZiodynamicsやRealiZeを生み出した高い技術力がアドバンテージとなっていることを感じさせた。
●RealiZeテクノロジーで精度が向上したZiostation2のアプリケーションをPR
Ziostation2では,PhyZiodynamicsやRealiZeテクノロジーを適応することで継続的にアプリケーションの機能を強化している。ブースでは,タッチパネル式のディスプレイで領域や症例,またはアプリケーションを選択することで各機能を臨床データとともに紹介し,Ziostation2の豊富な機能を確認できるようにした。
RealiZeは,形状認識機能と解剖学的情報や統計的な情報を複合して利用することで,画像認識,抽出,解析を可能にする三次元医療画像認識技術である。RealiZeテクノロジーは各アプリケーションに適応することで画像処理の精度を向上させているが,標準機能の“3D解析/4D解析”についても精度の向上や自動抽出が可能な領域が広がっていることを紹介した。
3D解析/4D解析では,ボリュームデータを高速で読み込み,VRのほかMPR,CPR,MIP,MinIP,Gradient MIP,SUM,VE(仮想内視鏡)といった表示が可能になっている。また,高度なマスク機能である“分離”を利用したマスクツールによって,容易かつ正確な臓器の抽出が可能になった。今回は,RealiZeテクノロジーを用いることでMR画像から腎臓の自動抽出が可能になり,肥大した嚢胞腎でも高い精度で自動抽出が可能で,多発性嚢胞腎の経過観察などをサポートできることをアピールした。
〈MR冠動脈解析2〉
「MR冠動脈解析2」は,Ziostation2で定評のあるCTデータを用いた「CT冠動脈解析2」と同様に,MRIデータから冠動脈を抽出してCPR,ストレートビュー,短軸像,MIP,Flex Surface MIP,VR表示するソフトウエアである。データを読み込む同時に血管の抽出が自動で行われ,冠動脈の名称を自動ラベリングされるが,この自動認識と解析にRealiZeテクノロジーが適用され,抽出精度が向上した。パスの選択や修正なども容易に可能となっている。
〈MRダイナミック解析〉
MRダイナミック解析では,MRIで撮像されたダイナミック画像からTIC(time intensity curve)とパラメトリックマップ(Wash in,Wash out)の表示ができる。造影前後の画像を利用することから,正確な計測,観察のためには体動などによる位置ずれが課題となるが,Ziostation2のMRダイナミック解析では非剛体位置合わせによって,より正確なTICの描画が可能になる。パラメトリックマップは,Wash in,Wash outをワンクリックで切り替えが可能で,腫瘍性状の局在や良性悪性度の診断をサポートする。乳がんの良悪性鑑別において,造影MRIによるWash in,Wash outの確認が重要とされているが,MRダイナミック解析ではデータの読み込みから,乳房の形態認識,TICやパラメトリックマップの作成までを直感的に操作でき,乳がん診療を支援する。
〈CT心筋ECV解析〉
CT心筋ECV解析は,CTの遅延造影データから単純CTをサブトラクションしてヘマトクリット値や左室内腔のCT値を利用してECV(extracellular volume fraction:細胞外液分画)を計測してマッピング表示する。ここでも,遅延造影フェーズと単純フェーズのサブトラクション時に非剛体位置合わせを行うことで位置ずれの少ない精度の高い差分データが得られる。解析では,16セグメントのECVが算出可能で短軸面断層像(SA)にマッピングして観察できる。ECVを用いた心臓および腹部(肝臓・膵臓)での組織性状の診断については共催のランチョンセミナーのテーマとなった(次項参照)。
●Ziostation2を用いたECV解析の活用についてのランチョンセミナーを開催
JRC3日目の4月14日(日)には,学会共催ランチョンセミナー28として「Ziostation2のECV解析による組織性状診断の確立」をテーマに開催した。粟井和夫氏(広島大学大学院)を座長として,熊本大学大学院 生命科学研究部画像診断解析学の尾田済太郎氏が「Ziostation2のECV解析による組織性状診断の確立〜心臓〜」を,鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻腫瘍学講座の福倉良彦氏が「同〜肝臓・膵臓〜」を講演した。尾田氏は,心臓におけるT1 mappingの有用性を説明した上で,CT遅延造影とECV解析による心筋評価の可能性について概説した。また,福倉氏は,心臓に使われるECVを肝臓や膵がんの解析に応用した方法について述べた。(講演内容はセミナーレポートとして,インナービジョン誌2019年8月号およびインナビネットのザイオソフトスペシャル に掲載予定)。
●お問い合わせ先
ザイオソフト株式会社/アミン株式会社
TEL:03‐5427-1921
URL:https://www.zio.co.jp/