2019-4-30
富士フイルムメディカルブース
富士フイルムメディカルは,新しいコーポレートスローガンである「NEVER STOP 医療のいちばん近くから,時代を見つめる。」をテーマに掲げて展示した。展示ブースは,例年通りモダリティとITの2つのゾーンに分けて構成され,同社の持つ画像処理技術を生かした多くの製品,ソリューションを展示した。今年のITEM2019のトレンドともなった人工知能(AI)については,これまでメディカルAIとして「REiLI」のブランド名で紹介してきた技術が,新しいPACSのAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer」として薬機法の認証を受けた製品となったことを大きくアピールした。そのほか,3Dワークステーションの「SYNAPSE VINCENT」でもAI技術を活用し,薬機法認証を受けた“膝関節解析”などのアプリケーションを紹介した。モダリティでは,急増する在宅医療のニーズに応える携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair」,静止画X線画像で培った技術で低線量で高画質の動画像の取得を可能にした外科用Cアーム型透視システム「COREVISION」など,画像処理技術をベースに開発された新製品を中心に来場者に披露した。
●画像診断とAI技術を統合したワークフローを提供するAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer」
●「SYNAPSE VINCENT」の“膝関節解析”,“ボーンビューア”など薬機法認証済みの機能を紹介
●総重量3.5kgで在宅医療などでの簡便なX線撮影を可能にする携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair」
●低線量で高画質動画の描出を可能にする外科用Cアーム型透視システム「COREVISION」シリーズ
●マンモグラフィ検査時の痛みを軽減する“なごむね”をPR
●70MHz超高周波プローブを搭載した超音波診断装置「SonoSite Vevo MD」を先行出展
●画像診断とAI技術を統合したワークフローを提供するAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer」
ITソリューションコーナーに展示され,ITEM2019の富士フイルムメディカルブースで最も注目を集めたのが,2019年4月4日にリリースされたAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer」(SAI viewer)である。
富士フイルムは,同社がこれまで培ってきた画像処理技術とディープラーニングなど先進のAI技術を融合して,新しい画像診断支援のための技術を開発する取り組みを「REiLI」のブランド名で展開している。今回発表されたSAI viewerは,その最初の成果であり,日本の医療機関向けに展開する製品として“画像診断ワークステーション用プログラム”で薬機法の認証を受けている。
SAI viewerでは,AI技術を活用して開発された読影ワークフロー支援機能として,“臓器セグメンテーションおよびラベリング”,“骨経時サブトラクション”,“Virtual Thin Slice”の3つが提供される。また,3Dワークステーション「SYNAPSE VINCENT」で開発されたVRやMPRなどの3D表示機能など読影ビューワとしての高い機能を搭載していることも特徴だ。
1) 臓器セグメンテーションおよびラベリング
臓器セグメンテーションは,読影支援機能の根幹となる技術であり,全身の臓器や構造を病態や個人差にかかわらず認識・抽出する。これによって,病変などの検出,サブトラクション,スライス位置合わせなどが可能になる。脊椎領域では,頸骨,胸椎,肋骨などを自動抽出し“骨番号”を自動的に符番し,画像上に重ねて表示することで,レポート作成時の作業負荷の軽減を可能にする。また,骨を認識し骨のみを除去することも可能で,血管走行や石灰化の確認時の視認性が向上できる。
2) 骨経時サブトラクション
骨経時サブトラクションは,椎骨一つ一つを認識した上で過去画像との位置合わせを行い,CT値によるサブトラクションを行い経時的変化を算出して変化のある部分を色づけして表示する。圧迫骨折などで骨がなくなっていたりする場合でも,個々の椎骨を認識して正確に差分することが可能。読影時の経過や転移の観察は負荷が大きいが,自動認識によってサポートする機能だ。
3) Virtual Thin Slice
Virtual Thin Sliceでは,thickスライスで撮影されたCTデータからthinスライスの画像を仮想的に生成して,血管走行などを同じ条件での読影を可能にする。過去に撮影されたCT画像との比較を行う際に,撮影条件が異なると正確な読影が難しいことがあるが,Virtual Thin Sliceでthinスライスデータを生成することでより近い条件で比較が可能になる。Virtual Thin Sliceは頭部から下肢まで処理が可能だが,全身に対応できるのは臓器セグメンテーションによって部位認識を行った上で部位ごとに処理することで,少ないデータでもバラツキを抑えた短時間での提供が可能になった。
SAI viewerは,富士フイルムが今後実用化を進めていくさまざまなAI技術を統合的かつ効果的に利用できるプラットフォームであり,ブースではその一例として開発中のCAD機能なども紹介された。
●「SYNAPSE VINCENT」の“膝関節解析”,“ボーンビューア”など薬機法認証済みの機能を紹介
3D画像解析システムボリュームアナライザー「SYNAPSE VINCENT」は,近日発売予定のバージョン5.4から搭載される機能の中から“膝関節解析”,“ボーンビューア”などのアプリケーションを紹介した。両アプリケーションともこれまで技術としてはRSNAなどではすでに紹介されてきた機能だが,今回,薬機法の認証を経て搭載されたことを改めてアピールした。
膝関節解析は,MRIのデータからディープラーニング技術を活用して部位の自動認識,解析を行い,変形性膝関節症の診断・治療をサポートする。膝関節の軟骨欠損症などについては,再生医療(自家培養軟骨移植術)が保険適用となっているが,その適用条件として軟骨の欠損領域(4cm2以上)を確認することが求められている。従来は,関節鏡などを用いて直接軟骨の欠損状況を確認する方法がとられることから,侵襲性が高いこと,目視のため再現性や定量性に乏しいことが課題となっていた。
膝関節解析では,MRIの特定撮影条件からディープラーニング技術を活用して部位の自動認識や軟骨,半月板の厚みの定量解析が可能になった。MRIのデータを読み込むと,大腿骨,脛骨,軟骨(大腿骨側,脛骨側),半月板を自動認識して抽出する。軟骨の厚みマップは薄くなっている部分を赤く表示する。欠損領域については,保険適用の条件の一つである欠損領域4cm2を画像上で簡単に計測することができる。
また,ボーンビューアは,肋骨のストレッチビューとラベリングを自動で展開して表示する機能で,肋骨の骨折や骨転移,小児の仮骨形成の確認を容易にする。そのほか,最新バージョン(V5.4)では,PI-RADS(Prostate Imaging and Reporting and Data System) Version2に準拠したレポート機能を持つ前立腺解析などが搭載された。
●総重量3.5kgで在宅医療などでの簡便なX線撮影を可能にする携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair」
モダリティソリューションでは,2018年10月に販売を開始した携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair」がITEMで初展示となった。CALNEO Xairは,重量3.5kgと小型・軽量化を図ったポータブルタイプのX線発生装置で,携帯性に優れており在宅医療など撮影スペースが限られた状況でのX線撮影と画像確認を可能にする。小型・軽量化が可能になったのは,同社のISS(Irradiation Side Sampling)方式を採用したFPDとノイズ低減回路を搭載したカセッテDR「FUJIFILM CALNEO Smart」などの高感度検出能を持つカセッテDRと組み合わせることで,低線量でも高画質画像の取得できるようになったことが大きい。フル充電で100ショットの撮影が可能で,装置背面の操作ボタンは両手で保持した状態で操作できるようにボタンレイアウトが工夫されている。ブースでは,在宅医療などでの撮影時に使用する保持スタンドなどもあわせて展示した。CALNEO Xairは,装置のデザインだけでなく,その製品コンセプトやそれを実現した技術が総合的に評価されて,「グッドデザイン・ベスト100」(日本),「iFデザイン賞金賞」(ドイツ),「レッドドット・デザイン賞」(ドイツ)の最高賞である“Best of the Best賞”など各国のデザイン賞を受賞した。
●低線量で高画質動画の描出を可能にする外科用Cアーム型透視システム「COREVISION」シリーズ
「COREVISION」シリーズは,X線静止画像で培ってきた画像処理技術を生かしたX線動画処理エンジン“ダイナミックコアエンジン”を搭載した外科用Cアーム型デジタル透視システムである。昨年のITEM2018に合わせて発表され展示されたが,今年は低線量ながら高鮮鋭,高コントラストで得られた多くの臨床データを含めて紹介した。COREVISIONシリーズは3つの製品がラインアップされており,最上位機種となる「COREVISION 3D」は,31cm×31cmの大画面FDを搭載し,Cアームの180°相当の回転による“Smart Scan”によって術中の3D画像撮影が可能となっている。スタンダードの「COREVISION LD」は,31cm×31cmのFDでCアームの開口83cmとワイドで手術台などとの干渉を避け,165°までの振り角によって幅広い角度でのポジショニングを可能にする。「COREVISION SD」は,20.5cm×20.5cmのFDで19インチデュアルモニタ一体型のオールインワンタイプで省スペースで手術室などでの撮影や手技をサポートする。FDパネルには,COREVISION 3DとLDはISS方式を,SDにはCMOSタイプが採用されている。
ブースではCOREVISION 3Dの3D画像で,脊椎の圧迫骨折による椎体間固定術や膝などの人工関節置換術をサポートすることを実際の臨床画像を紹介してアピールした。
●マンモグラフィ検査時の痛みを軽減する“なごむね”をPR
マンモグラフィのコーナーでは,デジタル式乳房用X線診断装置「AMULET Innovality」と,マンモグラフィ検査を受けやすい環境や機能を提供するため“AMULET Harmony Solution”として展開しているオプションの中から,“なごむね(Comfort Comp)”“乳腺量(Density Category)表示”“CEDM機能”“S-view(合成2D)”を中心に紹介した。
圧迫自動減圧制御(Comfort Comp)機能の“なごむね”は,最大圧迫圧の時間を短縮することで受診者の感じる痛みを軽減する機能である。マンモグラフィ検査の受診が増えない理由の一つに検査時の“痛み”がある。マンモグラフィでは,乳房の厚みを抑え少ない線量で画質を上げるために,どうしても圧迫の必要があるがこれが痛みの要因となる。なごむねは,乳房の厚みが加圧時よりも減圧時のほうが薄くなる特性(ヒステリシス現象)を利用して,圧は同じでも最大圧迫時間を短くする手法である。撮影する診療放射線技師にとっても“痛いのは一瞬だけですよ”というように声がけやリラックスを促すコミュニケーションの手段となるなど,少しでも被検者の負担を軽減するツールとしての活用が期待される。
●70MHz超高周波プローブを搭載した超音波診断装置「SonoSite Vevo MD」を先行出展
超音波診断装置では,70MHzの超高周波プローブを搭載した超高周波超音波画像診断装置「SonoSite Vevo MD」を先行出展した。米国では2016年にFDAの承認を受け販売を開始し,国内でも研究用途向けで販売されていたが,今回,臨床向けとしてITEMで先行展示を行った。SonoSite Vevo MDは,70MHzと48MHzの超高周波プローブを利用でき,70MHzでは最小分解能30μmの超高精細画像が取得できる。これによって,表在の血管やリンパ管など従来の超音波診断装置では描出が難しかった組織の描出が可能で,形成外科領域などでの活用が期待される。
●お問い合わせ先
社名:富士フイルムメディカル株式会社 営業本部マーケティング部
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
TEL:03-6419-8033
URL:http://fms.fujifilm.co.jp/