2018-5-1
富士フイルムメディカルブース
富士フイルムメディカルは,昨年のITEM2017と同様に「Value from Innovation〜医療のいちばん近くから,次代を見つめる〜」をテーマとして,X線撮影装置を中心とするモダリティソリューションと,PACSやRIS,診療支援システムなどのITソリューションで展示を構成した。モダリティソリューションでは,新たに開発した特性の異なる2種類のX線検出部を積層した“デュアル構造”を持つデジタルX線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO Dual」,静止画で培った技術を適用し高鮮鋭の動画像と3D再構成画像の取得を可能にした外科用Cアーム型デジタル透視システム「COREVISION 3D」などを出展。また,マンモグラフィでは「AMULET Innovality」に搭載される圧迫自動減圧制御機能の“なごむね”や“乳腺量測定機能”などの新機能を中心にアピールした。
ITソリューションのエリアでは,富士フイルムが取り組むメディカルAI技術を「REiLI(怜悧)」のコンセプトとして発表し,こちらも大きな注目を集めた。同社の画像認識技術をベースに先進のAIを取り入れることで,診断支援やワークフロー改善に向けて開発を進めていることを紹介した。そのほか,三次元画像解析ボリュームアナライザー「SYNAPSE VINCENT」,PACSの「SYNAPSE 5」の新しいバージョンに搭載される数多くの機能を紹介した。
●2層構造のX線検出部でデュアルエネルギー撮影を可能にした「FUJIFILM DR CALNEO Dual」を発表
モダリティソリューションのエリアでは,カセッテDRの新技術として特性の異なる2種類のX線検出部を積層した“デュアル構造”を持つデジタルX線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO Dual」をブースの前面で大きくアピールした。CALNEO Dualは,2枚のX線検出器による“デュアルエネルギー”の撮影データから,通常のX線画像に加え骨密度測定用の骨強調画像が同時に取得できるのが特長だ。
CALNEO Dualは,17インチ×17インチ,16mmの厚さのカセッテDRの中に,CsI(ヨウ化セシウム)とGOS(ガドリニウムオキサイドサルファ)の2種類のX線吸収感度が異なる蛍光体を積層した。これによって,1回のX線照射で2つの画像(デュアルエネルギー)が収集でき,このデータを元に同社の画像処理技術である“エネルギーサブトラクション(ES)技術”を適用することで,骨強調画像と軟部組織画像に分離することができる。これまで腹部領域では,体格の変化や散乱線の影響でES技術を適用することが難しかったが,Virtual Gridで培った散乱線推定技術や粒状性を抑制してコントラストを高めるダイナミック処理(Dynamic Visualization Ⅱ)などの適用で画像処理の精度を向上し,より精度の高い骨組織の分離が可能になった。これによって椎体や股関節などの視認性が向上し,DXA法による骨密度測定が可能になった。
高齢化に伴って増加している骨粗鬆症の診断では,一般X線撮影による骨形状の確認と,DXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry)法による骨密度測定が関連学会から推奨されている。しかし,現在はX線撮影と骨密度測定を別の装置で行うため,装置間の移動やポジショニングなどで検査には時間を要するのが現状だ。また,骨密度測定の専用装置は大型で,クリニックなどでは設置スペースの関係から導入をあきらめるケースも少なくなかった。CALNEO Dualでは,従来のX線撮影装置にパネルを設置し,撮影コンソールに骨密度測定機能をインストールすることで,撮影室での1回の照射で形状確認用のX線画像の取得と,DXA法による骨密度測定が可能になる。骨密度の計測については,画面上で計測部位を選択すると椎体が自動で認識され数秒で計測が終了するなど,患者の負担軽減と検査を行う診療放射線技師の業務改善が期待できることをアピールした。
●静止画の技術で高鮮鋭,高コントラストのX線動画を提供する「COREVISION」シリーズを展示
昨年のITEM2017で,最新技術として参考展示された,同社の静止画の画像処理技術を生かしてX線動画像を高画質化する技術を搭載した新製品として,外科用Cアーム型デジタル透視システム「COREVISION」シリーズがブースでお披露目された。COREVISIONシリーズは,12インチのパネルを搭載し180°のスキャンを行うことで術中の3D画像が取得できるフラッグシップモデルの「COREVISION 3D」,20cm角のパネルを搭載したスタンダードモデルの「COREVISION LD」,モニタ一体型で省スペース設計の「COREVISION SD」の3機種のラインアップを用意する。これまでのX線動画像では,連続的な静止画像(フレーム)を重ね合わせて処理する方法が用いられるが,残像の発生や鮮鋭性の低下などが問題となっていた。COREVISIONの新X線動画処理エンジン「Dynamic Core Engine」では,動いた領域を検出して補正を行う“動き補正加算平均処理”を開発し低ノイズ化と高鮮鋭度を両立,さらに静止画で用いられているダイナミック処理(Dynamic Visualization Ⅱ)でハレーションを抑制し被写体全体の高コントラスト化を可能にした。また,FPDについても画素サイズ150μmで静止画FPDで定評のあるISS方式を採用し,透視撮影に求められる静音性や熱処理を施すことで安定性を確保した。これらの技術によって,低線量で高コントラストのX線動画像が取得が可能になった。フラッグシップとなるCOREVISION 3Dでは,180°の回転撮影による3D画像の取得も可能になる。
ブースではCOREVISION 3Dによる臨床画像を供覧し,DSA画像において辺縁までクリアで高コントラストの画像を提供することで血流が確認できること,また,Cアームの回転撮影で再構成した精度の高い3D画像によってスクリューなどの留置の状態を確認でき,別室のCT撮影を行うことなくスムーズに手技が進められることを紹介した。
●マンモグラフィ「AMULET Innovality」で“なごむね”などの機能を強化
デジタル式乳房用X線診断装置「AMULET Innovality」は,高画質で低線量の撮影と乳房を圧迫する圧力を分散させる“Fit-Sweet圧迫板”など受診者にやさしい機能の搭載で,国内では年間導入ベースでトップシェアを誇っている。ITEM2018のマンモグラフィコーナーの展示では,AMULET Innovalityに加わった5つの新機能を中心に展示した。
その1つが,圧迫自動減圧制御(Comfort Comp)機能の“なごむね”である。乳房検査での圧迫時の痛みはマンモグラフィの受診率が向上しない要因の一つになっている。“なごむね”は,通常の圧迫圧で乳房を加圧した後,厚みが変化しない範囲(変化の大きさが+3mm以内)で圧迫圧を減圧する機能だ。これは,乳房の厚みが加圧時よりも減圧時のほうが薄くなる特性(ヒステリシス現象)を利用したもので,通常の圧迫方法よりも最大圧迫圧となっている時間を短縮できる。“なごむね”の適用は,特別な手順や機構は必要なくボタン操作で適応できるため,従来の撮影のワークフローを変えることなく,患者の負担を軽減できるのがメリットだ。
また,“乳腺量測定機能”は,高濃度乳房(デンスブレスト)などの乳房のタイプの判断を定量的に行える機能(オプション)として,2016年から提供されているが,今回,乳房内だけでなく乳腺領域での乳腺量の計測機能を追加した。日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)が定める乳腺分類基準に沿った算出方法で,マンモグラフィ画像から乳腺量を自動算出する。この機能はトモシンセシス画像にも適用でき,読影医の乳房の構成の判断をサポートする情報を定量的に提供できる。
そのほか,トモシンセシス撮影用の固定フェースガード“フェースガードT Comfort”,造影マンモグラフィでエネルギーサブトラクションによって造影効果を強調する“CEDM機能”,トモシンセシス撮影の画像データから2D画像を生成する“S-view+”などを紹介した。
●在宅医療向けのポータブル撮影用の小線源管球を参考展示
入院医療から在宅中心の医療へのシフトが進む中で,富士フイルムメディカルではクラウドソリューションの「ASSISTA Portal」などで在宅医療向けのサービスを強化している。その中で,在宅でのX線撮影において,CALNEO Smartなどの高感度パネルやVirtual Gridなどの画像技術でグリッドレスの撮影が可能になったことで,低出力のX線出力でも従来と同等の画質が得られることを生かし,従来の装置から出力を1/3程度下げ,重量を約半分に軽量化し小型化した,ポータブル撮影向けの小出力X線撮影装置を参考展示した。
●富士フイルムの新しいメディカルAI技術のコンセプト「REiLI」を発表
富士フイルムは,昨年のRSNA2017で画像診断などヘルスケアIT分野での人工知能(AI)の開発の方向性を初めて紹介したが,今回のITEM2018では同社のメディカルAI技術について「REiLI(レイリ,怜悧)」のブランド名で展開していくことを紹介した。富士フイルムでは,FCRの時代からデジタル画像の領域で常に最先端の画像処理,画像認識の技術開発に取り組んできた。その技術をベースにして,近年,ディープラーニングなど新しいAI技術が急速に進展する中で,さまざまなAI技術を取り込みながら,同社のコア技術と融合させ,新たな価値を生み出すことをめざした医療画像技術のコンセプトがREiLIである。
REiLIでは,臓器セグメンテーション(解剖学的構造の把握を支援),コンピュータ支援診断(病変の検出・計測を支援),読影ワークフローの標準化(レポートの自動作成の支援)の3つの領域でのAI活用をめざして開発を進めている。臓器セグメンテーションでは,CTなどの2次元の画像から臓器の位置や形状を識別して抽出する技術。個人の形状の違い,疾患の有無,造影非造影など撮影条件にかかわらず正確で安定した臓器の認識をめざす。これは,SYNAPSE VINCENTで培ってきた自動認識技術をベースに,正確なセグメンテーションを行い特徴量を抽出した上で,AIを適用することで精度の向上が期待される。富士フイルムでは,これらの技術をPACSと統合して、ワークフローも含めて製品化し,薬機法の承認を含めて医療機器としての提供が行えるように進めているとのことだ。
●“4Dフロー”,“IVRシミュレータ”など「SYNAPSE VINCENT」の新バージョンの機能を展示
三次元画像解析ボリュームアナライザー「SYNAPSE VINCENT」のオプション機能で,2018年4月にリリースされる最新バージョンに搭載予定の“MRI用血流解析;4Dフロー”と“IVRシミュレータ”を紹介した。
4Dフローは,MRIの3D Phase Contrast法で収集された複数の時相の画像から,血流情報を4Dで可視化するアプリケーション。wall share stress(WSS)やストリームラインなどでの表示が可能となっている。動脈瘤などの瘤内の乱流の状態などが可視化でき,診断や患者への説明などにも利用できる。SYNAPSE VINCENTのアプリケーションの1つとして利用できるので,1端末だけでなく院内の複数の端末で同時に解析や参照ができるのがメリットだ。また,IVRシミュレータは,緊急塞栓術などIVRの際の血管のルート選択のためのナビゲーション画像を,全身CTの画像から作成するアプリケーション。一刻を争う手技で出血部位など患部までのルートを仮想透視画像上に表示し,分岐部分や血管の方向をプロットしてIVRの手技をサポートする。
●レポートの視認性の向上や3DWSとの連携が強化された「SYNAPSE 5」 の最新バージョンを紹介
システム設計を刷新し,高速・高機能で信頼性の高いPACSとして2016年に登場した「SYNAPSE 5」は,サーバサイドレンダリング方式を採用したゼロフットプリントのPACSビューワとして,マルチプラットフォームの運用,他科システムやVNAとの連携など柔軟で拡張性の高い構築行えるのが特長だ。
ITEM2018では,視認性の向上など使い勝手と連携の強化をコンセプトに開発された最新バージョンの機能を中心に紹介した。最新バージョンでは,ワークリスト画面の視認性の向上,左右対称のレポートレイアウト,スライス位置合わせ機能,SYNAPSE VINCENTと連携して読影ビューワ内でシンスライスデータ処理が可能になっている。ワークリストやレポートの表示では,新たに縦型画面が採用された。縦型レイアウトによって,ワークリストではリストの表示件数が増え1日の検査状況を一覧でき,また,リスト上で所見の確認ができるなど情報へのアクセス性が向上した。また,レポート記入画面では左右対称のレイアウトで,過去検査と対比した参照と記入が可能になる。
スライスの自動位置合わせは,過去検査を開く際に画面のフレームにドラッグ&ドロップするだけで,現在開いている検査のスライス面と同じ位置に自動位置合わせを行って展開する機能。画像解析によって処理するため,スライス面だけでなくFOVの連動も可能になる。また,SYNAPSE VINCENTの連携を強化し,PACSビューワのフレーム内にSYNAPSE VINCENTのサーバのシンスライスデータを呼び込み,MIP/MPRの処理が可能になった。再構成画像はPACSに直接エクスポートして保存できる。
●お問い合わせ先
社名:富士フイルムメディカル
住所:東京都港区西麻布2-26-30
TEL:03-6419-8033
URL:http://fms.fujifilm.co.jp/index.html