2014-4-23
島津製作所/島津メディカルシステムズ ブース
島津製作所/島津メディカルシステムズは,今年からの新しいグローバルな展示テーマとして「Passion for Details -Discovering new clinical values in diagnostic imaging」を掲げた。これには,製品やアプリケーションの臨床価値をより高めるため,情熱を持って開発に取り組んでいくという同社の思いが込められている。島津製作所では,“世界の顧客の成長に資するイノベーティブカンパニー”をめざすという基本方針の下,4月より新しい中期経営計画(2014年4月〜2017年3月)をスタート。医療機器事業では,装置の差別化や海外事業拡大によるX線診断装置事業の強化や,早期診断や治療などの新分野展開を事業戦略の軸に,10%を超える売上高増加率の目標を立てている。その達成に向け,今後新たな展示テーマで,国内外のユーザーに製品や技術をアピールしていくと言う。
ブースでは,新製品のデジタルX線一般撮影システム「RADspeed Pro V4 package」や無床診療所向け統合型電子カルテシステム「SimCLINIC T3α」のほか,血管撮影装置やX線テレビシステムの技術進歩,また,新分野として注力していく治療や分子イメージング関連の装置が紹介された。(4月12日取材)
●一般撮影装置:ユーザーの要望に柔軟に応えるソリューションを提案
ブース中央では,3月に正式リリースとなった一般撮影システム「RADspeed Pro V4 package」を展示した。一般撮影検査は,胸部や腹部,整形外科など対象領域が広く,さまざまな撮影手技があり,また検査件数も多いことから,スループットの良さが求められる。RADspeed Pro V4 packageは,FPDの搭載や,1台で撮影設定から画像処理までを行えるタッチパネル式の統合型コンソールにより,より高いスループットをめざして開発されたシステムで,RADspeed Proシリーズの最上位機種としてラインナップに加えられた。コンソール1台ですべての操作,画像確認が可能であるが,X線管球操作部のモニタや,検査室内の壁面やスタンドに設置できる情報表示モニタ(オプション)でも撮影準備や画像確認,撮影プロトコールの変更ができるため,操作者の動線を短縮し,スループット向上に貢献する。さらに,オプションで小型のコンソールも設置できる。
搭載されるFPDは,立位撮影は17インチ×17インチの固定型パネル,臥位撮影は14インチ×17インチのワイヤレスパネルを基本としているが,シンチレータ(CsI,GoS)や固定/ワイヤレスなど,ユーザーの要望に応じた組み合わせで提供できる。長尺撮影など,臨床的有用性の高いアプリケーションも搭載可能となっており,グリッドは着脱可能で,小児撮影の際など外して撮影することで,線量を抑えた検査を行える。
また,既存の院内DRシステムに合わせたいという要望に対しては,従来より提供している「RADspeed Pro」と組み合わせることができるソリューションとして,DR “NEUTRAL” solutionを紹介した。キヤノン,富士フイルムメディカル,コニカミノルタヘルスケアの各社のDRと組み合わせることができ,ニーズに応じた最適なシステムを提供する。
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●血管撮影装置:新しい画像処理システムを搭載予定のTriniasシリーズを紹介
血管撮影装置では,12インチ角FPDを搭載した床置き式装置「Trinias F12」を展示。Trinias F12は,頭頸部から下肢までの広範囲をカバーし,複数科でクロスオーバーに使用できる装置で,床置き式,天井走行式(C12),バイプレーン(B12)を展開している。ブースでは,Windows7対応の新しい画像処理システム“SCORE PRO Advance”が紹介された。SCORE PRO Advanceは,リアルタイム動体追跡ノイズリダクションにより,特に透視における画質が大幅に改善しており,ガイドワイヤの先端の視認性が向上し,手技の正確性と安全性の向上に貢献する。また,Trinias F12は,その臨床的価値を高めるために,“SCORE”を冠した高機能アプリケーションが搭載可能で,マスクラン不要で動きに強いDSAである“SCORE RSM”や,短時間で自動的に3D再構成画像表示が可能な“SCORE 3D”のブラッシュアップが図られている。
なお,Triniasシリーズでは,SCORE,SMART,SMILEの3つのSをコンセプトとしており,画像処理技術やアプリケーションを追究するSCORE Image,誰にでも簡単・すぐに操作ができるSMART Design,被ばく低減や高い安全性をめざすSMILE Conceptを軸に,今後も改良・開発が続けられていくという。新バージョンは現在,最終的な品質確認が行われており,2014年上期の発売を予定している。
島津製作所では,血管撮影装置のラインナップとして,8インチ角のFPDを搭載した循環器専用の「Trinias C8/F8/B8 package」(天井走行式/床置き式/バイプレーン)や,9インチ/17インチ角の直接変換方式FPDを搭載した「BRANSIST safire」を展開。それぞれ,臨床価値の高い高機能アプリケーションを搭載可能であり,直接変換/間接変換の別,また用途に合わせて,施設のニーズにマッチした装置を選択することができる。
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●X線テレビシステム:被ばく低減機能と長尺撮影アプリケーションの新バージョンをアピール
X線テレビシステムでは,ベスト・イン・クラスのFPD搭載装置「SONIALVISION G4」が展示された。17インチ×17インチの大視野FPDを搭載し,消化器や泌尿器検査,整形外科領域の一般撮影など,幅広い領域に対応する。フルフラットの天板は,乗降を楽にし,メンテナンスも容易に行えることから清潔を保つことができる。また,映像系が天板の端まで移動するため,泌尿器検査などでも患者へのアクセスがしやすい。1台でさまざまな診療科で使用できる投資対効果の高い装置として,医療現場からは高い評価を得ており,2013年1月の発売以後,約1年で納入実績は100台に上っている。
今回,新機能として,被ばく低減機能と,改良された長尺撮影アプリケーション“SLOT Advance”が紹介された。
SONIALVISION G4には,従来から被ばく低減への対応として,着脱可能なグリッドやボタン1つで切り替え可能なビームハードニングフィルタ,コリメータの左右片側だけを絞る半動絞り機能などを搭載しているが,新たに線量管理機能が搭載される。撮影や透視における線量を,検査終了後または透視中リアルタイムにコンソールに表示し,DICOMの線量管理の規格であるRDSRを実施できるようになり,患者の線量管理を容易に行える。
また,オプション搭載できる“SLOT Advance”は,歪みの少ない長尺画像を取得できるアプリケーションで,全脊椎や全下肢の精度の高い計測が可能になる。今回,画像処理の大幅な高速化が図られ,スキャン終了後約7秒で,つなぎ合わせがすんだ最終画像がモニタに表示される。長尺撮影で立位と臥位の両方を撮影する施設では,2体位目の撮影のためにベッドを動かしている間に1体位目の画像再構成が終わり,同じポジションのまますぐに撮影ができるので,非常に高いスループットを実現できる。
●回診用X線撮影装置:多様なシーンでの利用を提案する「MobileDaRt Evolution」
展示されたFPD搭載デジタル回診車「MobileDaRt Evolution」は,世界的に高い評価を得て販売実績が2000台を突破した。搭載されるワイヤレスFPDは,昨2013年からキヤノン社製と富士フイルムメディカル社製から選択できるようになっており,院内DRに合わせた提案が可能となっている。ブースでは,動物のデザインをあしらったデザインも含め4台の実機が展示され,来場者は実際に操作性などを確かめていた。また,これまでさまざまなユーザーにソリューションを提供してきた経験を基に,手術室や新生児医療,災害医療といったシーンでの画像の運用を含めた提案を行った。例えば手術室では,ワイヤレスFPDの利点を生かし,撮影した画像をすぐに室内の大型モニタに映し出すことで,安全で正確な手技を支援することができる。
●外科用X線テレビシステム:手術室などで高画質と高い操作性を提供する
「OPESCOPE ACTENO」
2013年9月発売の外科用X線テレビシステム「OPESCOPE ACTENO」は,現場からの高い評価を得て,国内施設への納入が進んでいる。従来機より広い開口径78cmのCアームを採用し,100万画素CCDカメラと独自の画像処理フィルタで画質を向上するとともに,バーチャルコリメーションや新しい線量管理機能などを搭載し,被ばく低減に貢献する。手動操作の完全バランス方式Cアームは,軽い操作感ですばやくポジショニングができ,また,従来機から継承したケーブルが外に出ないデザインにより,清潔を保つことができるといった点は,外科手術などにおいて高い有用性を発揮する。
●ヘルスケアIT:在宅診療も支援する診療所向け電子カルテシステムを展示
4月8日に発売した無床診療所向け統合型電子カルテシステム「SimCLINIC T3α」は,診療所に必要な電子カルテ,レセプト,画像ファイリングの機能を一体化したシステム。カルテと,X線や内視鏡,超音波などの画像データを一元管理し,充実した医事機能を備えることで,診療所のIT化による業務効率の向上を支援する。
また,今後のさらなる高齢化への対応として,ニーズの高まっている在宅診療をサポートするため,新しく電子カルテ連携サーバを開発。訪問先で,iPadを用いてカルテの閲覧や入力ができる機能をオプションで搭載できる。従来から,セキュア回線を利用してリモートアクセス機能を使い,院外からカルテを閲覧・入力することは可能であったが,ブラウザ表示となるため,小さい画面では視認性や操作性が低下していた。そこでSimCLINIC T3αでは,iPad専用のアプリケーションを開発し,在宅診療に特化したシンプルで使いやすいレイアウトとオペレーションを実現した。
訪問予定の患者のカルテ情報をiPadにダウンロードし,訪問先で容易に参照できるとともに,緊急時には院外でダウンロードすることも可能。入力したデータは,電子カルテにアップロードできる。オンラインとオフラインの両方に対応したハイブリッド型のシステムであることも特徴である。また,画像の閲覧が必要であれば,サーバにログインすることで院外から閲覧することができる。
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●放射線治療用動体追跡システム:国内での導入が開始された「SyncTraX」を紹介
北海道大学大学院医学研究科と共同開発した放射線治療用動体追跡システム「SyncTraX」は,床と天井に設置されたそれぞれ2機のX線管球と受像部によるシステムで,治療中に2方向から透視による腫瘍近傍のモニタリングを行い,呼吸性移動のある腫瘍を追跡する。体表マーカーによる追跡よりも,実際に腫瘍周辺に留置した金マーカーをリアルタイムに監視することで,リニアック装置による照射の精度をより向上させる。国内2施設への納入が完了し,上期中の臨床使用開始を予定している。接続可能なリニアックは,バリアン社のTrueBeamとClinac iXの2機種で,今後は対応機種を広げていく予定だと言う。
●PET:乳房専用PET装置「Elmammo」を参考展示
薬事申請中の新製品として乳房専用PET装置「Elmammo」が参考展示され,来場者の関心を惹いていた。Elmammoは,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究プログラムにより開発された装置で,展示されたのは,薬事認証を得ている実証機のデザインを変更した臨床機。ピンクと白の配色の丸みを帯びたベッド型装置で,被検者は腹臥位で乗り,ガントリとなっているくぼみの部分に乳房を入れるだけで,乳房を圧迫することなく撮像できる。
全身用のPET装置とくらべ,分解能が高いことが特徴で,研究中のファントム画像などがパネルで紹介された。なお,全身PET検査直後に続けて本装置で検査すると,保険点数4000点を算定できる。他社にはない,まったく新しい装置として研究に注力しており,臨床機のリリースが待たれる。
●アプリケーション:ランチョンセミナーでは,さまざまな領域におけるトモシンセシスの有用性を紹介
ブースに設置されたApplication Galleryでは,X線テレビシステムのSONIALVISIONシリーズに搭載できる臨床価値の高い高機能アプリケーションが紹介された。トモシンセシスや,今回バージョンアップしたスロットラジオグラフィのSLOT Advance,また,さらなるノイズ低減が可能となったトモシンセシス再構成処理法“T-smart”などが,臨床画像とともに展示された。
12日(土)には,トモシンセシス技術の有用性をテーマとしたJRS共催ランチョンセミナー「FPDトモシンセシス技術の進化と臨床応用」が行われ,さまざまな領域における有用性について3名が講演を行った。司会を福田国彦氏(東京慈恵会医科大学)が務め,葛和 剛氏(市立奈良病院)が整形外科・頭部血管領域,大森鉄平氏(東京女子医科大学病院)が小腸カプセル内視鏡,出雲雄大氏(国立がん研究センター中央病院)が呼吸器内視鏡検査の,それぞれの領域におけるトモシンセシスの有用性を紹介した。
●お問い合わせ先
株式会社 島津製作所
住所:〒604-8511 京都市中京区西ノ京桑原町1
TEL:075-823-1271
URL:http://www.med.shimadzu.co.jp