ITEM2019 島津製作所 ブースレポート
国際的な開発目標「SDGs」への貢献内容を出展品ごとに紹介,社会課題解決への取り組み姿勢をアピール
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2019-4-25
島津製作所ブース
島津製作所は,見えなかったものの「可視化」と質量分析のリーディングカンパニーとして併せ持つ「定量化」という強みを生かして,健康長寿社会の実現をめざし,さまざまな社会課題の解決に取り組んでいる。ITEM2019では,新しい試みとして,展示製品ごとに,2015年に国連サミットで採択された,持続可能な世界を実現するための国際的な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」への貢献内容を紹介。同社の製品がどのように社会的課題の解決に貢献しているかを具体的に示し,課題解決に取り組む島津製作所の姿勢を強くアピールした。
●血管撮影システム:新たな機能で環境や患者への負担を軽減する「Trinias C16 unity edition」
●X線一般撮影システム:優れた操作性と多彩なアプリケーションで健康長寿への貢献をめざす「RADspeed Pro style edition EDGE package」
●X線テレビシステム:新技術で超高齢社会の課題に取り組む「SONIALVISION G4」
●回診用X線撮影装置:使いやすく,救急災害支援にも有用な「MobileDaRt Evolution MX8 Version」
●乳房専用PET装置「Elmammo Avant Class」や近赤外光カメラシステム「LIGHTVISION」でがんの診断・治療をサポートする
●医用画像技術と分析計測技術を融合し,原発性アルドステロン症の検査をサポートする「AVS支援システム」
●近赤外光イメージング装置:脳の活動状態を可視化し,うつ病などの診断を補助する「SPEEDNIRS」
●再来受付システム「MERSYS-Ⅳ」や卓上支払機「Mer’C」,電子カルテシステム「SimCLINIC T3α XLink package」などで働き方改革をサポート
●血管撮影システム:新たな機能で環境や患者への負担を軽減する「Trinias C16 unity edition」
血管撮影システムTriniasシリーズからは,天井走行タイプで16インチ×12インチの大視野FPDを搭載した「Trinias C16 unity edition」が展示された。本装置は,頭部や腹部,四肢,心臓領域まで全身の検査・治療に対応するが,今回の展示の目玉となったのは,長尺DSAとロードマップ機能を融合させた“SCORE Chase”機能(オプション)である。従来,下肢長尺画像の作成は,分割して撮影した後,撮影した画像をつなぎ合わせる作業が必要であったが,SCORE Chase機能により,電動でテーブルを可変速しながら移動させて先端まで撮影し,撮影後に自動で長尺画像を生成することが可能になった。一度の撮影で作成できるため,造影剤の注入が1回ですみ,造影剤量を約35%,被ばく線量を約20%低減することを実現した。多機能カテーテルテーブル「SMART table」との組み合わせで,撮影時のテーブルの動きが記憶されるため,造影前後を位置ずれなく撮影でき,精度の高い長尺DSAが可能になる。
Trinias C16 unity editionには,今回展示された天井走行タイプ,16インチ×12インチFPDのほかに,12インチ×12インチや8インチ×8インチなど多様なサイズのFPDを搭載したCアームが,天井走行/床置きシングルプレーン,バイプレーンなどの各タイプでそろえられている。中でもバイプレーンは,一度の造影剤注入で2方向から撮影することで,シングルプレーンで複数回撮影する場合と比べて造影剤量を低減でき,患者負担の軽減に貢献する。さらに,発熱量を半減させ,冷却のための消費電力を抑制するほか,前世代システムでも重量比10%を改修することで最新システムにアップグレード可能な“reBORN”パッケージをすでに多くのシステムに提供しており,社会に対し負担の少ない“ものづくり”に取り組んでいる。
●X線一般撮影システム:優れた操作性と多彩なアプリケーションで健康長寿への貢献をめざす「RADspeed Pro style edition EDGE package」
新発売のX線一般撮影システム「RADspeed Pro style edition EDGE package」が展示された。RADspeed Proシリーズの新ラインアップで,同シリーズの優れた操作性に加え,トモシンセシス,長尺撮影,デュアルエナジーサブトラクションなどの多彩なアプリケーションで,健康長寿に貢献する点がアピールされた。撮影部位に合わせてX線管保持部が上下方向に自動追従する上下運動機能や,リモコン操作で天井走行式X線管懸垂器が自在に移動し,あらかじめ登録した位置に自動設定されるオートポジショニング機能を搭載。夜間などの人手が少ない場合でも,一人で患者の位置合わせと撮影が容易に行える。ガイド内にケーブルを収納して天井レールと一体化するケーブルガイドによって,X線管保持部の移動がスムーズになり,スタイリッシュかつ整然とした検査環境を実現している。
トレイから半切FPDを取り出さずに,回転させることで撮影サイズの縦横変更が可能なほか,17インチ×17インチの大視野FPD専用トレイも選択可能になり,用途に合わせたトレイの選択の幅が広がった。また,「DR NEUTRAL2.0」というコンセプトに基づき,他社製DRとの連携も可能である。
さらに,既存の一般X線撮影装置でトモシンセシス撮影を可能にする“ユニバーサルトモシンセシス”(W.I.P.)を紹介した。これは,専用ファントムとともに患部を角度を変えて複数回撮影し,ファントム像からエックス線撮影装置のアライメントを算出,得られた画像を断層画像として再構成するもの。H/W(PC)とソフトウエアを追加するだけで,既存の一般X線撮影装置で撮影,再構成が可能な点が利点である。四肢や股関節などが対象で,撮影には1〜2分を要することから,固定具も開発中である。通常の検査では,微細な骨折などは見逃されることも多く,疼痛の長期化や他疾患の誘発につながる懸念が大きい。しかし,このようなアプリケーションの活用により,早期発見が可能になれば,健康寿命の延伸に貢献しうる。また,コニカミノルタ社と開発した動態イメージングも紹介した。これは,一般X線撮影装置で撮影した画像を動画にすることができ,慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の早期発見が期待される。
●X線テレビシステム:新技術で超高齢社会の課題に取り組む「SONIALVISION G4」
X線テレビシステム「SONIALVISION G4」は,幅広い検査に対応可能な装置だが,今回の展示では,健康長寿社会の実現に向け,骨粗鬆症や変形性関節症などの検査・診断に有用なトモシンセシスや骨密度測定機能などのアプリケーションに焦点が当てられた。
骨粗鬆症の罹患者数は約1300万人とも言われ,骨密度測定による早期発見が重要である。骨密度測定機能“Smart BMD”(オプション)は,DXA法による骨密度測定を短時間で精度良く行うことが可能である。さらに,骨密度測定の際に行う大腿骨のセグメンテーションを,人工知能(AI)のサポートで手間を簡略化する機能が,2019年夏に発売される予定である。一方,変形性関節症は,軟骨が摩耗し関節が変形する疾患で,罹患者数は約3000万人と推測される。人工関節置換術が行われるケースも多いが,金属製のため,術後のフォローアップが困難なことが課題となっている。SONIALVISION G4に搭載されている逐次近似法を用いた画像処理“T-smart”(オプション)では,トモシンセシスにより人工関節などの金属近辺の骨の状態を明瞭に描出できる。また,各検査での透視の低線量化では,新しいデジタル透視画像処理技術“SCORE PRO Advance”(W.I.P.)により,被ばく量を77%低減(自社比)しつつ,高画質が得られることも紹介された。
●回診用X線撮影装置:使いやすく,救急災害支援にも有用な「MobileDaRt Evolution MX8 Version」
回診用X線撮影装置「MobileDaRt」の最新バージョンである「MobileDaRt Evolution MX8 Version」は,島津社,キヤノン社,富士フイルム社に加え,コニカミノルタ社のDRシステムを搭載したタイプが初出展された。MobileDaRt Evolution MX8 Versionは,伸縮式支柱構造の採用により,走行時に広い視野を確保でき,女性や小柄な人でも扱いが容易なことが特長。19インチ大型タッチパネル式モニタを搭載し,画像を確認しやすく,タッチ操作もスムーズに行える。救急病棟での使用や救急災害支援に非常に有用なため,「すべてのひとに健康と福祉を」というSDGsの目標にも合致する。
ブースでは,医療従事者とその家族を対象に開催したデザイン募集企画「MobileDaRtデザインフェス」で,グランプリを受賞したデザインでラッピングした実機も展示されたほか,大型モニタでは全応募作品や各地のご当地キャラとのコラボレーションバージョンも紹介された。
●乳房専用PET装置「Elmammo Avant Class」や近赤外光カメラシステム「LIGHTVISION」でがんの診断・治療をサポートする
がんの診断・治療サポートをめざすソリューションとして,乳房専用PET装置「Elmammo Avant Class」と,近赤外光カメラシステム「LIGHTVISION」が展示された。
現在,日本人女性の11人に1人が生涯に一度は乳がんに罹患し,年間に約1万5000人が乳がんで死亡すると推定されており,早期発見の重要性が指摘されている。Elmammo Avant Classは,マンモグラフィと異なり,痛みを伴わずに検査可能なことに加え,従来機の特長である高い感度と全身PET装置の約2倍の解像度は維持したまま,胸壁近傍の撮像視野外領域(ブラインドエリア)の縮小を実現。現在,国内14施設で稼働し,人間ドックのオプション検査などに活用されている。今後は,国内での普及に加え,中国の富裕層を端緒として海外への展開も図る。なお,消費電力についても30%削減(自社比)されており,環境への負荷も軽減する。
LIGHTVISIONは,ICG(インドシアニングリーン)を用いて直視下では確認できない組織表面下のリンパ管を可視化し,乳がん手術時のセンチネルリンパ生検を支援する装置。ICGの適応範囲が血管や組織の血流評価にも拡大され,臨床応用の広がりが期待される。ブースでは,リンパ浮腫に対するリンパ管静脈吻合術における応用が紹介された。乳がん手術時にリンパ節郭清を受けた患者のリンパ浮腫発症率は約10%と言われ,通常,弾力ストッキング着用などの対症療法が行われるが,近年注目されているリンパ管静脈吻合術により,QOL向上やリンパ浮腫の改善が期待できる。LIGHTVISIONはその治療支援に有用であり,島津では今後,普及に力を入れる考えだ。
●医用画像技術と分析計測技術を融合し,原発性アルドステロン症の検査をサポートする「AVS支援システム」
島津のもう一つのコア技術である分析計測技術の応用例として,血管撮影システムによって得たX線画像と液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8050」による分析結果を融合記録する「AVS支援システム」が紹介された。AVS(Adrenal Venous Sampling:副腎静脈サンプリング)は,高血圧の原因の一つである原発性アルドステロン症の検査。AVS支援システムは,東北大学と共同開発した研究用システムで,血管撮影システムで体内を透視しながらカテーテルで採血し,その位置をX線画像・分析結果融合ソフトウエア「Sampling Viewer」でX線画像上に記録する。その後,血液中の成分をLCMS-8050で分析し,採血した位置情報と紐づけて記録することができる。従来は,外部の受託分析機関に血液検体を預ける必要があり,結果が得られるまで数日から1週間程度必要だったが,血液採取から成分分析・解析までの一連の作業を同一の医療機関内で迅速に行うことが可能になった。
●近赤外光イメージング装置:脳の活動状態を可視化し,うつ病などの診断を補助する「SPEEDNIRS」
近赤外光イメージング装置「SPEEDNIRS」は,血中酸素化ヘモグロビン濃度の変化をとらえて脳の活動状態を可視化する。小型化,軽量化を実現し,シールドルームなどの大がかりな設備が不要で,大うつ病や双極性障害,統合失調症の鑑別診断の補助ツールとして活用できる。近年,増加が社会的課題となっているうつ病などの精神疾患の診察に際し,問診に加えSPEEDNIRSを使用することで,早期の鑑別や治療開始が期待される。また,客観的なデータを示すことで,患者の納得を得られやすいという利点もある。
●再来受付システム「MERSYS-Ⅳ」や卓上支払機「Mer’C」,電子カルテシステム「SimCLINIC T3α XLink package」などで働き方改革をサポート
医療現場の働き方改革をサポートするシステムとして,再来受付システム「MERSYS-Ⅳ」や卓上支払機「Mer’C」(いずれも島津エス・ディー社製),電子カルテシステム「SimCLINIC T3α XLink package」などが展示された。
MERSYS-Ⅳは,大型タッチパネルと音声ガイダンスでスムーズな受付を実現し,医療機関の外来受付をサポートする。また,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトによるAI問診サービスの成果報告も展示された。来院した患者が,タッチパネル上で主訴などを回答していくと,AIがどの診療科に行くべきかを提示する仕組みで,働き方改革へのさらなる貢献を実現するものとして参考出展された。なお,MERSYS-ⅣをはじめとするMERSYSシリーズは,子会社の島津エス・ディー(株)が販売していたが,2019年4月1日より販売業務を島津へ移管した。
2018年11月に発売開始した業界初の卓上支払機Mer’Cは,受付カウンターにも設置可能な小型タイプ。既存の会計システムや,SimCLINIC T3α XLink packageなどの電子カルテシステムと連携し,患者がタッチパネルの操作に従って容易に精算でき,現金管理業務の効率化や人的ミスの抑制につながる。
SimCLINIC T3α XLink packageは,国際標準規格であるDICOMに準拠した患者情報連携機能を標準搭載したことで,画像診断システムとの連携において,患者情報入力の大幅な省力化を実現した。また,在宅診療支援機能を搭載し,iPadにカルテ情報をダウンロードし,訪問先や移動中に参照することができる。さらに,(株)flixyのWEB問診アプリケーション「メルプ」との連携で,スマートフォンなどで事前に問診が可能なシステムも紹介された。
●お問い合わせ先
社名:株式会社島津製作所 医用機器事業部グローバルマーケティング部
販売促進グループ
住所:京都市中京区西ノ京桑原町1
TEL:075-823-1271
URL:https://www.med.shimadzu.co.jp/