ITEM2016 フィリップスエレクトロニクスジャパン ブースレポート
すべての検査でスペクトラルイメージングを可能にする「IQonスペクトラルCT」を遂に日本上市
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2016-4-25
フィリップスエレクトロニクスジャパンブース
フィリップスエレクトロニクスジャパンはITEM初日の4月15日(金),10時30分からブースにて新製品記者発表会・除幕式を行い,発売したばかりの二層検出器搭載型CT装置「IQonスペクトラルCT」,FPD搭載血管造影X線診断装置「Allura Centron」,移動式外科用X線システム「BV Vectra」の3製品を,大々的に発表した。除幕式では,ダニー・リスバーグ代表取締役社長が挨拶に立ち,「フィリップスは,1つの製品を1つのターゲットに向けて提供するような製品開発ではなく,健康管理から診断,治療,在宅と患者を中心としたヘルスケアプロセス全体に注目し,製品・技術の開発において意義のあるイノベーションを起こしていく」との姿勢を示した。続いて挨拶したロイヤルフィリップスCT事業ゼネラルマネージャーのミカエル・ストリンドランド氏は,フィリップスのCT事業を紹介し,「世界で3番目に大きい医療機器市場である日本にIQonスペクトラルCTを紹介できることを光栄に思う。われわれは,正しい診断を1回の検査で確実に行えることにフォーカスし,臨床の知見を活用した製品・技術開発により,病院経営におけるコスト削減に貢献していく」と述べた。
このほか,MRIやX線システム,超音波,ITシステムの製品群を展示するとともに,デジタルPET/CT(薬機法未承認)の技術展示など,フィリップスが誇る最先端の技術・製品が紹介され,ブースは大いににぎわいをみせた。(4月15,17日取材)
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●CT:二層検出器搭載によりスペクトラルイメージングを常時取得可能な「IQonスペクトラルCT」を日本市場に投入
RSNA2014での発表後,日本への展開が待たれていた「IQonスペクトラルCT」が遂に発売となり,来場者に大きく紹介された。IQonスペクトラルCTの合い言葉である「Spectral is Always On—すべての人にスペクトラルイメージングを−」が示すように,従来と変わらぬルーチン検査でスペクトラルイメージングが可能となることが大きな特長の一つである。
搭載された検出器「NanoPanel Prism」は,異なる素材の検出器を上下2層に重ねた構造となっている。上層のYttriumシンチレータで低エネルギー,下層のGOSシンチレータで高エネルギーを弁別して収集し,スペクトラルデータセット“SBI(Spectral Based Image)”を生成することで,撮影前にスペクトラルイメージングを撮影するかの判断や設定をすることなく,通常の120kVpの撮影をするだけで120kVp画像の取得に加えて,レトロスペクティブに必要に応じてスペクトラルイメージングを得ることができる。特殊な撮影法ではないため,AECやFOV,mAs,管球回転速度,心電図同期,逐次近似再構成など,従来の設定を変えずに撮影でき,被ばくを抑えた撮影が可能で,ワークフローも変わらない。
2層の検出器であるため,従来のdual energy撮影で課題となっていた位置ズレや時相ズレがなく,高精度・高画質のスペクトラルイメージングが可能な点も特長である。40〜200keVの仮想単色X線画像を容易に表示することができ,造影画像で濃染が弱い場合には低エネルギー画像を,金属アーチファクトが多い場合には高エネルギー画像を表示し,診断に役立てることができる。低エネルギー画像でもノイズの増加がない点も大きなメリットである。また,ヨード画像や実効原子番号(Z effective)画像を取得できることで,診断に有用な画像を提供できるだけでなく,例えば定期的に単純・造影によるフォローアップが必要な患者では,造影画像から仮想単純画像を得ることで撮影回数を減らし,被ばく低減に貢献できる可能性もある。
従来のdual energy撮影の課題であった事前の追加撮影の判断,データの位置ズレ・時相ズレ,仮想単色X線画像の画質低下などを解決する次世代のモダリティとして,今後の臨床応用が期待される。
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●血管撮影装置:多目的に使用できる15インチFPD搭載「Allura Centron」を発表
Alluraシリーズの最新システム「Allura Centron」は,長年の実績を持つAlluraシリーズの基本設計を継承しつつ,15インチFPDを搭載し,全身領域の低侵襲インターベンションに特化したシステムソリューションである。「Allura Xperシリーズ」では10インチと20インチのFPD搭載システムをラインナップしているが,Allura Centronにはその中間となる15インチFPDを搭載し,天板に175cmの長いストロークを持たせることで,心臓,頭部,腹部,末梢と広い領域のインターベンション手技に対応できるようにした。1室を多目的に使用したい施設をメインターゲットに展開していく。
画質やX線管の耐久性などは従来のAlluraシリーズと同様で,高画質と高い安定性を持つ。現行装置を同じユーザーインターフェイスを採用しており,既存ユーザーには使いやすく,新規ユーザーにもわかりやすいシンプルな操作性を実現している。加えて,近年は経済性も重視される傾向が強まっていることから,床置き式Cアームを採用し,建築コストなども含めたトータルコストオーナーシップ(TCO)を軽減するパッケージとなっている。
また,インターベンション手技を支援する各種アプリケーションも組み合わせ可能である。心臓を1回の多軌道回転撮影で多方向から造影撮影することで狭窄部位を観察する“XperSwing”やデバイスを強調して可視化する“StentBoost”,高速三次元画像再構成技術“3D-RA”などのツールを搭載でき,低侵襲で効率の良いインターベンションを支援する。
ブースでは,2015年に統合した血管内超音波検査装置の大手ボルケーノ社のIVUSイメージングシステムやカテーテルを併せて展示。ボルケーノ社は,末梢血管から心臓まで広い領域で使用できるフェーズドアレイ(電子式)を有しており,ローテーショナル(機械式)とあわせて術者にIVUSの選択肢を提供する。血管撮影装置による外側からのイメージとIVUSによる内側からのイメージ,そして圧センサワイヤによる虚血診断を組み合わせた統合ソリューションとして来場者にアピールした。
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●X線撮影装置:整形外科領域に特化した経済性重視の移動式外科用X線システム「BV Vectra」を初展示
フィリップスは1955年にI.I.搭載外科用Cアーム「BV20」を発売後,移動式外科用X線システムにおける長い歴史と経験を持つ。2000年代後半からはFPD搭載型のハイスペック装置の開発に専念していたが,整形外科に特化したミニマム構成で,長期に安定して使えるシステムを求める医療現場の声に応え,「BV Vectra」をリリースした。BV Vectraは,手技において整形外科医が手を掛けずに安定して良好な透視画像が得られること,また最小限のトレーニングで扱える操作性を重視して開発されている。
搭載された9インチI.I.は6インチI.I.とほぼ同じ外観の小型設計で,さまざまな角度(最大125°回転)に振りやすいことに加え,Cアームの奥行きは66cmと十分な幅を持つため体格の大きい患者における位置決めも容易にする。また,X線管球は50KHU/分と冷却率に優れることから,透視撮影を長時間連続して行うことができる。Cアームには完全カウンターバランス方式を採用し,アームに備えられたグリップによるハンドリングで容易な位置決め,位置変更を実現する高い操作性も特長だ。ユーザーインターフェイスがWindowsベースとなっていることも国内のユーザーには使いやすいと言える。
画質の面では,整形外科医が手技に集中できるよう,高画質であることはもとより,手技を支援する高速画像処理機能を標準装備している。メタルアーチファクト軽減機能“MetalSmart”は,自動で解剖学的位置を認識し,手技に有用なコントラストの良い画像を提供する。また,I.I.は中心にセンサーがあるためオフセンターにターゲット部位があると良好な画像を得られないことが懸念されるが,BV Vectraでは“BodySmart”機能により,ターゲット部位に合わせた画質調整が行われ明瞭な透視・撮影画像を得られる。
すでに欧州やインド,アジアでは展開が始まっている。国内では,今回のITEM2016でのお披露目後に,5月に開催される日本整形外科学会でも展示が予定されており,整形領域の手技を支援する経済的なシステムとして耳目を集めるだろう。
また,回診装置としては,移動型デジタルX線撮影装置「MobileDiagnost wDR」を展示した。FPD搭載・コンソール一体型の装置で,軽量なカセッテ型ワイヤレスFPD「SkyPlate」やノイズ抑制処理技術“SkyFlow”との組み合わせが可能。発生器が20kWと40kWの2タイプから選択でき,一般撮影と同等の40kWの発生器を搭載したタイプは,1システムで一般撮影系検査を完結できる。病棟や手術室での使用だけでなく,災害時には非常電源での充電使用も可能で,骨折などの初期画像診断にも役立つシステムとなっている。
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●MRI:体内デバイスを管理し安全な検査を支援する“ScanWise Implant”など未来を見据えたソリューションを紹介
MRIでは,今回の展示テーマを「MRIと未来について考える」とし,団塊の世代が75歳を迎える2025年問題に向けて,何にフォーカスすべきかを考える展示を行った。
安全なMRI検査のためのアシストインターフェイス“ScanWise Implant”は,ペースメーカーやインプラントなど,高齢化に伴い増加すると考えられる体内インプラントデバイスを持つ被検者の検査に対応するためのアプリケーション。近年は,ある条件下でのMRI検査が可能なインプラントデバイスが増えているが,実際には臨床現場でのリスク管理は容易でない。そこで,ScanWise Implantでは,ペースメーカーであれば添付文書に書かれた条件となるパラメータ(SARやB1+rms)を入力することで,近づけてはいけないガントリの場所を確認できるとともに,パラメータの上限値制限を行うことで自動的にパラメータが調整され,安全なMRI検査を施行することができる。
また,昨年のITEM2015で発表された映像と音楽で快適な検査環境を演出する“In-Bore Experience”は,1.5T MRI装置「Ingenia 1.5T」のモックアップとを組み合わせて展示され,来場者が次々と体験していた。In-Bore Experienceは今回,新バージョンの2.0が登場。残り検査時間や息止め時間をわかりやすく映像に示すことができ,被検者の負担を軽減したさらに優しい検査を実現する。なお,In-Bore Experienceはすでに国内施設への納入が始まっており,現場から高い評価を得ている。ブースでは導入事例をまとめた冊子を配布し,「閉所恐怖症で検査ができない被検者がゼロに」「初めて患者さんに検査後に握手を求められた」といった導入施設の声を紹介した。
また,Advanced Applicationとしては,国内ユーザーとともに共同研究し製品化に至ったアプリケーションを臨床画像とともに展示。非造影で脳血流イメージを得られる“3D-CINEMA”やblack blood imagingの“iMSDE”,高空間分解能の神経鞘を描出する“3D-SHINKEI”などをアピールした。
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●超音波診断装置:マルチモダリティの自動三次元位置合わせ機能“Auto Registration”が実装可能になったプレミアム機種「EPIQ」
超音波診断装置としては,プレミアム超音波診断装置「EPIQ」とEPIQを小型・シンプル化した「Affiniti」を展示した。
EPIQは,超音波ビームの形成技術「nSIGHT」により時間分解能と空間分解能の両立を可能にした装置で,今回新しく,ボリュームデータを用いて高精度かつ短時間に位置合わせを行う“Auto Registration”機能が使えるようになったことが大きく紹介された。センサをプローブに装着してプローブの位置を認識し,CT画像との位置合わせをリアルタイムに自動で行う。現在は肝臓を対象としており,ボリュームデータを取得することで血管構造または肝表面形態から高精度な位置合わせを実現し,肝がん治療時のナビゲーションや治療効果判定に活用することができる。
EPIQは深部から表層,また広い領域の検査に対応し,各種プローブもそろえられている。フィリップス独自の単結晶PureWaveテクノロジーの素子を配列したプローブは発熱を抑える技術に優れており,小型経胸壁3Dプローブ「x5-1」や経食道3Dプローブ「x7-2t」ではクリアで高画質な心臓イメージを取得でき,また腹部用プローブ「C5-1」では近視野から遠視野まで均一かつ高精細なイメージを取得できる。
Affinitiには,EPIQのソフトウエアが移植され,EPIQと同じ高画質な画像を得られる。3D機能を省くことでコストを抑えつつ,心臓,腹部,血管,表在と広い領域で利用できるコストパフォーマンスに優れた装置となっている。
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●ヘルスケアIT:多彩なクリニカルアプリケーションを搭載した「IntelliSpace Portal V8」など先進のソリューションを紹介
ヘルスケアITエリアでは,毎年バージョンアップを重ね,進化し続けるネットワーク型マルチモダリティワークステーション「IntelliSpace Portal V8」など,臨床ニーズに応える製品群を展示した。
IntelliSpace Portal V8は,「マルチモダリティ」「マルチクリニカルドメイン」「マルチベンダー」をキーワードとしたワークステーション。ネットワーク型のため,PCがサーバに接続されていれば院内のどこからでもアクセスすることができる。現在は同時接続ライセンス数が2〜15のシステムとして提供されている。CT,MRIだけでなく,核医学,超音波,アンギオなどの画像を集約して,画像参照や画像解析をすることができ,70を超えるアプリケーションを提供可能。これらのアプリケーションをモダリティごとだけではなく,診療科ごとにも提案することで,放射線科だけでなく各臨床科でも利用しやすいように改良し,医療の質の向上と医師の労働時間の短縮に貢献していく。
新しいアプリケーションとして,CT画像から肺動脈血栓症が疑われる部位を自動的に検出・表示する“Pulmonary Arteries Analysis”や,がん化する可能性のある肺結節を検出し,年齢や性別,家族歴といった情報を合わせてがん確率を計算する“Lung Nodule Assesment(LNA)”,CT/MRI/NMに対応する腫瘍トラッキングソフトウエア“Multi Modality Tumor Tracking”などを紹介した。
画像管理システム「IDS7 VNA PACS」も最新バージョンを展示。DICOM・非DICOMを一元的に管理できるためデータ移行が容易であるといった利点や,地域連携における活用をNHS(英国)などでの海外事例を含めて紹介した。またアプリケーションとしては,3D画像データを解剖学的に登録することで,過去画像やマルチモダリティ画像との比較読影を容易にする“アナトミカルリンク”などをアピールした。
2015年秋に発売された心血管部門PACSである動画画像管理ソリューション「IntelliSpace CardioVascular(ISCV)」は,心電図,心臓CT,心臓MRIや超音波の画像など,心血管診療に必要な一連のデータを一元管理することができる。検査機器や各部門システムと連携することで,患者履歴を時系列で表示することができ,各データのアイコンをクリックすると参照ビューワや所見(PDF取込も可)データが表示される。カンファレンス,プレゼンテーションの機能が実装されており,スムーズなデータの閲覧やアウトプットが可能で,日常の診療から,教育,研究までを支援する。
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●マンモグラフィ:低被ばく・高画質のMicroDose mammography SIを臨床画像でアピール
マンモグラフィは今回,モニタを使ってデジタル式乳房用X線撮影装置「MicroDose mammography SI」の製品プレゼンテーションと臨床画像の展示を行った。MicroDose mammography SIは,アナログ/デジタル変換のないフォトンカウンティング技術と散乱線を97%以上除去するマルチスリットスキャン技術を実装し,従来のシステムと比べ被ばく線量を大幅に抑えた撮影が可能となっている。1回の撮影で50μmの高精細画像とスペクトラル情報の同時収集が可能で,解析ソフトウエア「Breast Density Measurement」によりスペクトラル情報から乳腺量を定量的に解析できる。客観的な乳腺量評価は超音波検査追加の必要性を判断する指標にもなり,特にアジア人に多い高密度乳腺において付加価値の高い検査を実現する。
なお,物質を弁別するスペクトラル情報の臨床応用をめざして海外では臨床研究が進められており,将来的には腫瘤や囊胞の同定などもできるようになることが期待される。
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●核医学:空間分解能・時間分解能の向上を可能にするデジタルPET/CTの技術展示
核医学のコーナーでは,デジタルPET/CT(薬機法未承認)の技術展示が行われた。検出器にフォトマル(光電子倍増管)に替わり半導体を採用することで,発光体の大きさと同じ4mm×4mmの検出器で光子をとらえられることが技術的に大きな特長と言える。アナログ/デジタル変換のないフルデジタルであり,ノイズに強く,信号を取りこぼすことがないため,空間分解能の高いシャープな画像を得ることができる。また,Time-of-Flight技術を採用し,消滅放射線の検出器への到達時間を計測することで,精度の高いデータを短時間に得ることができ,時間分解能も向上する。画質の向上,撮像時間の短縮を両立するシステムであり,今後の日本国内への導入が待たれる。
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●お問い合わせ先
(株)フィリップスエレクトロニクスジャパン
住所:東京都港区港南2-13-37 フィリップスビル
TEL:0120-556-494
URL:http://www.philips.co.jp/healthcare