ITEM2014 フィリップスエレクトロニクスジャパン ブースレポート
ハイエンドMRIや先進の画像再構成技術で,スループット向上やコスト抑制といった医療ニーズに応える
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2014-4-16
フィリップスエレクトロニクスジャパン ブース
フィリップスエレクトロニクスジャパンは,2014年のグローバルな展示テーマとして「Solutions for better care at lower costs」を掲げ,より低コストで,よりよい医療を提供するための新製品,新技術を中心にアピールした。初日に行われたメディア向けブース説明会で,ダニー・リスバーグ代表取締役社長が挨拶し,今回のテーマについて次のように述べた。
「われわれは,装置や技術のリーディングカンパニーであると自負しているが,患者さんにとって直接的にメリットなるのは,医療サービスを速く,簡単に,安全に,正確に受けられることである。また,病院にとっては医療コストも重要で,同じコストでより多くの患者さんを受け入れることも,経営的視点からは必要となる。コストへの対応は,患者さんの負担においても,病院経営においても,ベンダーにとっても大切なことであり,われわれは“innovation and you”を提供することで,課題に対応していきたいと考えている。社会に役立つ,意味のある“innovation and you”を提供することがフィリップスのテーマであり,社会との約束である」
ブースでは,4月7日に発売されたばかりのハイエンドMRI装置「Ingenia CX」や,進化したモデルベース逐次近似再構成技術“IMR Platinum”,カセッテ型ワイヤレスFPD「SkyPlate」を搭載できるデジタルX線一般撮影装置「DigitalDiagnost」の新バージョンなど,ルーチン検査を強力に支援する装置や技術,アプリケーションが紹介された。(4月11日取材)
●MRI:ハイエンド装置「Ingenia CX」によりルーチン検査の画質を向上
展示会場入口すぐのところに配置されたMRIコーナーでは,“臨床現場でのルーチン検査にこだわる”をテーマに,新製品のハイエンド装置「Ingenia CX」(3.0T/1.5T)を中心に,進化したアプリケーションや,生検,治療に役立つソリューションが紹介された。
Ingenia CXは,SNRを向上させるフルデジタルテクノロジー“dStream”と,最大傾斜磁場強度80mT/m(3.0T),66mT/m(1.5T)のグラディエントコイルを搭載した最上位機種。開口径は60cmで,従来機「Ingenia」より狭まるが,グラディエント強度はIngenia(3.0T:45mT/m,1.5T:33mT/m)と比べて大幅に高くなり,高速撮像法での画質が向上し,脳神経領域のEPIやDTI,心臓領域でハイパフォーマンスを発揮する。加えて,dStreamテクノロジーの“dS SENSE”も使用できるようになり,撮像時間の短縮が可能になっている。
新しいアプリケーションとしては,歪みやすい側頭葉などの歪みを抑えた拡散強調画像を得られる“TSE DWI”や,3.0Tで腹部や乳腺の拡散強調画像に現れやすいアーチファクトを低減する“LIPO”を展示。これらは,3.0T装置が普及している日本国内で研究が進められ,製品化に至ったもので,ITEM2014にて世界初展示となった。より高度な機能やオプション検査に向けたアプリケーション“Advanced MR”も紹介された。
また,ユーザーインターフェイスを一新し,シンプルな画面で簡単に操作できる“iPatient”も紹介。設定項目を限定し,日本語表示にするなど,MRI操作に慣れていない診療放射線技師でもクオリティを保った検査を行えるようにしている。なお,iPatientは,Multiva,Achievaも含め,すべての装置に2014年1月より搭載されている。
MRのソリューションとして,MRIガイド下前立腺生検システム「MR Therapy」を展示。ワークステーション「DynaCAD」でのシミュレーションにより,従来の超音波ガイド下よりも正確な穿刺が可能で,すでに導入している熊本中央病院では高い臨床評価を得ているという。このほか,Ingenia CXに搭載可能な放射線治療位置決めシステム「Ingenia MR-RT」も紹介した。これにより,患者の正確な軸情報を得ることができ,MRI特有の高コントラスト画像で腫瘍範囲を把握しながら,CTと同じようなスライス断面でのプランニングが可能になる。
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●CT:逐次近似再構成技術“IMR Platinum”で,3分以内の画像再構成を実現
昨年のITEM2013で発表されたモデルベースの逐次近似再構成技術“IMR”がバージョンアップした“IMR Platinum”が,臨床画像とともに紹介された。FBP法と比べ,ノイズを最大90%低減でき,大幅な画質向上が可能になる点はIMRと同様であるが,金属アーチファクト抑制技術“O-MAR”との併用が可能になり,さらに臨床的価値が増している。低管電圧撮影でもIMR Platinumを適用すればノイズを低減できるため,より線量を抑えた撮影が可能になる。
IMR Platinumは,インテル社と共同開発した超高速画像再構成コンピュータユニット「HyperSight IMR」を搭載し,GPUも計算処理に使用するという特徴を持つ。このハードウエアに,最適な画像を作り出すアルゴリズムを組み合わせることで,IMRでは5分以内とされていた画像再構成が3分以内で可能となり,ルーチン検査での適用をさらに後押しする。
もう1つの特徴として,心電図同期,呼吸同期が可能になったことが挙げられる。従来検査では被ばく線量が多いとされていた心筋パーフュージョンなどにも対応でき,大幅な被ばく低減と,画質向上を実現する。
Brilliance iCTとIngenuityのシリーズに搭載可能で,2013年末から臨床への導入が始まっている。既存装置へのアップグレードにも対応する。
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●血管撮影装置:インターベンションのためのアプリケーション「OncoSuiteパッケージ」を初展示
検査室を模した一角では,シングルプレーン天井走行式の血管撮影装置「AlluraClarity FD20」の実機を展示するとともに,3月にリリースされた,腫瘍塞栓やアブレーションなどのがん治療のためのアプリケーション「OncoSuiteパッケージ」も初めて披露された。これは,肝動脈化学塞栓療法(TACE)などの塞栓療法において腫瘍の栄養血管候補を自動で抽出する「EmboGuide」と,3D穿刺ガイドソフトウエア「XperGuide」に術前のシミュレーションサポート機能を搭載した「XperGuide Ablation」から構成されるインターベンションのためのアプリケーションパッケージ。
例えば,肝動脈化学塞栓療法(TACE)では,2時相を連続撮影する独自技術“Dual phase XperCT”を用いてターゲット腫瘍に対する治療計画を立て,EmboGuideによりターゲットへの栄養血管を抽出し,透視画像に3Dロードマップを重ねて塞栓物質の注入を行うことで,より確実,安全に治療を行うことができる。なお,ターゲットは複数を同時に設定できる点も特徴である。
XperGuide Ablationは,凍結治療など複数の針を穿刺する治療においても,針ごとのアブレーションの範囲をシミュレーションすることができ,また新たに,PET,CTのデータをオーバーレイして表示することも可能となり,より確実で正確なアブレーションを実施することが可能となる。
ブースでは,大幅な被ばく低減と高画質を実現するAlluraClarityの臨床画像も展示され,すでに導入済みの装置に対してもアップブレードできるパッケージの提供が始まったことが紹介された。
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●X線撮影装置:ワークフローを向上させる新技術などを中心にアピール
プレミアハイエンドのFPD搭載一般撮影装置「DigitalDiagnost」のオプションとして2つの新製品が展示された。「SkyPlate」は,大幅に軽量化に成功したカセッテ型ワイヤレスポータブルディテクタ。半切サイズ(2.8kg)と四つ切りサイズ(1.6kg)の2サイズを提供し,70cmの高さから落としても壊れない衝撃耐久性を備える。もう1つの新製品「SkyFlow」は,SkyPlateにオプション搭載できる新技術で,胸部撮影においてグリッドなしでも,グリッドありと同等の画質を実現するソフトウエア。検査でのグリッドの入れ替え作業の手間と時間を削減し,ワークフローの向上に貢献する。
デジタルマンモグラフィは,1回の低線量撮影で画像とスペクトラル情報を同時に収集できる「MicroDose mammography SI」が初めて展示された。CTにおいては,エネルギー弁別の臨床応用の研究が進んでいるが,フィリップスではいち早くこの技術をマンモグラフィに搭載。撮影では,ガントリの動きがユニークなラインスキャナ方式を用いたフォトンカウンティング技術で,低線量で画像データとスペクトラルデータを収集する。ワークフローの向上をめざした操作系の開発が行われており,検査での操作は,ほぼキーパッドのみで完結させることができる。収集したスペクトラルデータは,ソフトウエア“BreastDensityMeasurement”で解析することで,乳腺量や乳腺密度を客観的かつ定量的に把握でき,今後の臨床での活用が期待される。
また,マンモグラフィのコーナーでは,フィリップス独自のライティング技術を応用した検査室の環境システム「Ambient Experience」もあわせて紹介された。Ambient Experienceは,どのモダリティにも提供可能で,患者にとっては検査における緊張の緩和に,また医療スタッフにとってはよりよい検査環境の提供に貢献するソリューション。タッチ式のコントロールパネルで簡単に色やデザインのテーマを設定することができ,患者の好む検査環境を提供することができる。
このほか,FPD搭載モバイルCアーム「Veradius Neo」も展示され,駆動部分にカラーバンドを採用することで直感的な操作が可能なことや,Cアームの筐体に付けられたスタンドモニタで,操作するコメディカルも画像を確認できるといった点がアピールされた。
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●超音波診断装置:ハイエンド装置をリニューアルし,高画質と高感度を両立
超音波診断装置では,2013年末にハイエンド機種が10年ぶりにリニューアルを果たした。11月に発売されたプレミアム超音波診断装置「EPIQ」には,高画質・リアルタイム性を実現する超音波ビームの形成技術「nSIGHT」など最新の技術が搭載され,従来はトレードオフの関係であった高画質と高感度を両立し,心臓や腹部など,部位を問わずに臨床価値の高い情報を提供する。デザインも一新し,クラス最軽量の104.3kgと軽量化を実現。バッテリーも搭載し,女性技師でも容易に持ち運べて,院内のどこでも使用することができる機動力の高いハイエンド装置となっている。EPIQの開発にあたっては,海外の技術者を日本に滞在させ,画質を中心に日本の医師の声を大きく反映させた。ブースでは,高性能でありながら汎用性の高い「HD15 Purewave」と,3D経食道や体表3D,Shear Wave Elastographyなど高機能アプリケーションが搭載された「EPIQ7」,またプレミアムコンパクト装置の「CX50 xMATRIX」を展示し,ニーズに合わせた幅広い提案を行った。
●ヘルスケアIT:放射線画像管理システム「IDS7 PACS」の新バージョンを提案
ヘルスケアITは,“快適な読影空間をつくる”をテーマに,読影室を模したブースで製品を展示。「IDS7 PACS」の最新バージョンを中心に,レポート,RIS,ワークステーションを連携させ,快適な読影,スループットの向上を可能にするソリューション提案を行った。新バージョンのIDS7 PACSには,教育や発表用に2次データを1クリックでPowerPointなどへ貼り付けられる機能や,院内での医師の連携を高めるためPACS上でチャットが可能な機能を追加。また,外傷での緊急検査などにおいて,PACS上で血管の計測・解析などができる機能など,クリニカルアプリケーションの強化が図られている。
さらに,地域連携のための機能も強化し,VNA(ベンダーニュートラルアーカイブ)というコンセプトをいち早く取り入れ,どのベンダーの検査データでも一元的に管理できるようになっている。
●PET/MR:「Ingenuity TF PET/MR」の国内導入が開始
PETとMRIのハイクラス装置を融合した「Ingenuity TF PET/MR」を,スケールモデルと映像で紹介した。PETとMRIにはそれぞれ,最新の技術が搭載され,融合装置でありながら妥協のない検査が可能である。中央のテーブルが回転し,患者を同じポジションで固定したままPETとMRIを撮像でき,高い精度で画像のフュージョンが可能。4月より九州大学にて国内第一号機が稼働することから,今後,臨床でのアウトプットが期待される。
●お問い合わせ先
株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン
住所:東京都港区港南2-13-37フィリップスビル
TEL:0120-556-494
URL:http://www.philips.co.jp/healthcare