ITEM2014 AZE ブースレポート
治療にも役立つ機能を搭載したボリュームレジストレーションビューアや,開発中の多彩なソフトウェアを紹介


2014-4-18

AZE


AZE ブース

AZE ブース

AZEは,ユーザーへの感謝の気持ちを込めて,「おもてなし」をコンセプトに日本の迎賓館でもある離宮をイメージしたブースで来場者を迎えた。葉桜の季節の開催となるITEMでも海外からの来場者にも和の心を感じて楽しんでほしいと,東屋に見立てた展示スペースの各所に桜を飾り立て,落ち着いた空間に華やかさを演出。茶室をイメージしたメインステージでは,ブラッシュアップしたボリュームレジストレーションビューア「AZE Phoenix」や,3Dワークステーション「AZE VirtualPlace」に搭載される先進的な各種ソフトウェアをアピールした。
畦元将吾代表取締役社長は,「ワークステーションをさらに医療現場で活用いただき,患者さんの利益につなげるために,ワークステーションの新時代の製品として開発したのがAZE Phoenixです。読影医も診療科医も使いやすいシステムをめざし,読影のしやすいビューアとして作り込むとともに,治療においても治療効果判定や経過観察を正確に,簡単にできる機能を搭載しました。これまでは,製品名を和風な名称にすることが多かったのですが,Phoenixとの名称には,よりグローバルに展開していきたいとの思いを込めています」とコメントした。(4月13日取材)

●ヘルスケアIT:近年の読影スタイルにマッチしたビューアと,治療にも役立つ多彩な機能を
提供する「AZE Phoenix」

ボリュームレジストレーションビューアAZE Phoenixは,フィルムからモニタへと読影環境が変わりつつあるなか,MRIやCTの膨大なボリュームデータを効率的に読影できるように設計されたビューアである。特にMRIは,ボリュームだけでなく,画像の種類も多いことから,読影業務の負担を増大させている。複数メーカーの多様な画像を日常的に扱っている東京大学医学部附属病院との共同研究で開発されたAZE Phoenixは,読影や画像比較のための機能を搭載し,さまざまな画像データが混在する環境でも,快適に読影を行えるような工夫が施された。
ビューアによる読影は,見たい画像の種類の分だけ,画面を分割して表示する必要がある。そのため,T1画像,T2画像の過去と現在を比較読影したい場合には4分割に,他の種類の画像を比較したい場合には,さらに6分割,8分割とビューアを並べる必要があり,その分,1つ1つが小さくなってしまう。対応策として,モニタを2台体制にすることもできるが,実際には1つのモニタを集中して見ることが多く,またモニタサイズを大きくすることも根本的な解決にはつながっていなかった。また,ハンギングプロトコルを設定して読影する方法もあるが,設定が複雑で制限があったり,他メーカーのCT装置の画像になると再設定が必要になったりと,読影医の負担軽減には必ずしもつながってない現状もあった。
そこで,AZE Phoenixには,これらの課題を克服する機能が実装された。“スマートタグ機能”は,モダリティ別,スライス厚,画像の種類,他院での撮像画像など,任意で決めたタグを画像に簡単に登録できる。画像には色分けされたタグが付けられ,サムネイルの小さい画像でもどの画像かを判別することができるとともに,目的の画像だけを簡単に呼び出すことができる。
また,“バーチャルシリーズ機能”は,ビューアに仮想的に複数の種類のデータを持たせ,画像上でマウスをドラッグするだけで,次々にデータを切り替えることができる。例えば,ビューアを過去と現在の2分割にし,それぞれに見たい種類のデータを持たせ,マウスのドラッグ操作だけで連続的に比較読影を行うことができる。設定されたデータの種類は,Webブラウザのタブのようにビューアの上部に表示されるため,種類の切り替えも容易である。
フィルム読影に慣れた読影医が1枚の画像の全体を隅々まで観察するのに対し,モニタ読影からスタートした読影医は,画像の一部に注目してスライスを連続的に表示し観察するという読影方法を行っているという。AZE Phoenixは,このような新しい時代の読影スタイルに合ったビューアと言えるだろう。スマートタグ機能とバーチャルシリーズ機能を組み合わせ,即席のハンギングプロトコルを任意に設計することで,快適な読影環境の構築に貢献できる。

また,AZE Phoenixの根幹をなすボリュームレジストレーション機能は,比較する画像についてボリュームデータを瞬時に作成し,解剖学的な位置情報を基に高い精度で位置合わせをして,同じスライスを表示することが可能。病変の経時的変化など,診断や経過観察に有用であることはもちろんだが,ITEM2014では,治療における有用性が大きく紹介された。例えば,肝がんへのラジオ波焼灼療法(RFA)であれば,術後,焼灼範囲を画像で確認できることから,術前の腫瘍が描出された画像とレジストレーションすることで,腫瘍全体が焼灼範囲内に入っているかを確実に確認することができ,再発のリスクを低減することができる。さらに,これに対してsliding MIP機能を用いれば,血管走行を確認しながら,あらゆる断面から焼灼範囲に腫瘍が収まっているかを確認することができる。

2014年初めには,ネットワーク型の「AZE Phoenix Lexus network」を発表。院内各所からの閲覧や解析処理を安定的に行うことができ,画像の解析・読影・診断に対する放射線科医,診療科医,診療放射線技師のニーズに応えるサービスとして提供を開始している。

スマートタグ機能とバーチャルシリーズ機能を組み合わせた即席のハンギングプロトコル

スマートタグ機能とバーチャルシリーズ機能を
組み合わせた即席のハンギングプロトコル

RFAの前後の画像を重ね合わせることで,腫瘍が焼灼範囲に収まっているかを一目で確認できる(中央)。

RFAの前後の画像を重ね合わせることで,腫瘍が焼灼範囲に収まっているかを一目で確認できる(中央)。

 

●ソフトウェア:ワークステーション「AZE VirtualPlace」に追加される新機能を中心に紹介

◆逐次近似画像再構成応用技術“iIR”(W.I.P.)

元画像(左)とiIR Σ(仮)でノイズを除去した画像(右)

元画像(左)とiIR Σ(仮)で
ノイズを除去した画像(右)

RSNAで発表された逐次近似画像再構成応用技術iIRは,ワークステーションで,ポストプロセスに画像のノイズ低減を行える新技術。現在も開発が進められており,研究中の画像や搭載予定の機能など,進捗の状況が紹介された。
iIRの仕組みは,CTからワークステーションに取り込んだ画像データを順投影によりサイノグラムデータに戻し,そのデータに逐次近似画像再構成を応用して正確なノイズパターンを作成し,そのノイズパターンを原画像から差し引くというもの。ノイズだけを除去する方法であるため,CTメーカーの画像の特徴を損なうことなくノイズを除去することができ,どのメーカーの画像に対しても適用できる。
従来のフィルタ処理によるノイズ除去では,空気と軟部組織など,CT値差が大きい境界線では高い信号値が抜けてしまうため,CTCにおける壁面構造や肺血管が損なわれる可能性があった。これに対しiIRは,データを損なうことなくノイズだけを除去することが可能となるため,小さいポリープや末梢血管も損なわずに表現することができる。研究中の画像では,SD値の大幅な改善が見込めるデータが出ており,線量低減にも貢献することが期待される。
RSNA時点では,iIRはPerfusionのみへの適用だったが,その後開発が進み,単一フェーズ画像への適用も可能な“iIR Σ”(仮)も追加されることが紹介された。これにより,腹部など他の領域への適用も可能になり,全身領域に適用する技術の開発を予定しているという。

◆心臓解析

心臓解析では,従来からあったFusion EXと冠動脈解析が強化されるとともに,新しく心筋領域分割機能が追加される。
冠動脈CTと心筋SPECTをフュージョンするFusion EXは,技術をブラッシュアップし,1分ほどを要していた解析処理が20〜30秒で可能になる。なお,CTとSPECTのレジストレーション技術は特許を取得している。Reversibilityと心筋血流予備能の計算モードが追加されたほか,冠動脈CTと心筋SPECTの解析中に,冠動脈抽出,ラベリング,血管保存などの冠動脈解析が同時に行われるようになり,20〜30秒の間に心筋と冠動脈の両方の解析を完了させることができる。
また,オランダ・エラスムス大学医療センターと愛媛大学と共同開発した心筋領域分割機能が追加される。これは,肝臓解析ソフトウェアに搭載されているセグメンテーション手法を心臓に応用したもので,心筋の領域(冠動脈の支配領域)を分割し,その領域が左室心筋全体の何%を占めるかを算出することができる。冠動脈治療において,冠動脈の栄養領域が心筋に占める割合によって薬物治療とステントやバイパス治療とを選択することで予後リスクを低減できるとの論文も発表されており,従来のBull's eyeよりも高い精度で評価できることから,治療方針の選択に有益な情報を提供することができる。新機能は2014年7月に搭載される予定。

冠動脈CTと心筋SPECTをフュージョンしたFusion EX

冠動脈CTと心筋SPECTをフュージョンしたFusion EX

冠動脈の支配領域の割合を算出する心筋領域分割機能

冠動脈の支配領域の割合を算出する心筋領域分割機能

 

◆大腸解析

大腸解析機能をブラッシュアップし,抽出速度が従来の3倍に高速化するとともに,機能ボタンを使いやすい位置に配置し直すなど,インターフェイスを一新する。距離計測を実施した際に,記録ボタンを押すと,サイズやキャプチャなどレポートに必要な情報が自動的にキャプチャされる機能も追加する。
また,ポリープなど球体の部位に対して,色付けする機能も追加し,読影をサポートする。さらに,ポリープを記録するポリープリストについて,記録された位置に応じてリストの表示位置を変える改良を行い,仰臥位と腹臥位で隣同士に並べられたリストに記録された構造物を容易に見分けられるようにした。ポリープであれば,どちらの体位でも同様の位置に記録されるのに対し,残渣などであれば片方の体位でしか記録されないため,一目で把握できるようになる。7月にリリース予定。

大腸解析:右上がポリープリスト

大腸解析:右上がポリープリスト

 

◆Wash out map

乳がんや前立腺がんの診断で行われるダイナミック造影MRIによる性状評価では,濃染のピーク値に対してのWash outのパターンが観察される。従来のWash out mapでは,ユーザーがピークとなるフェーズを指定して,ピークの値を決めていたが,これを自動で検出する機能を追加する。前立腺がんなどで,複数の腫瘍がある場合にも,ピクセルごとの異なるピークフェーズの検出が可能となる。7月にリリース予定。

ピークフェーズを自動検出するWash out map

ピークフェーズを自動検出するWash out map

 

◆DTI解析

2013年末にリリースしたcomputed DWIは,最低2つの任意のb値を入力するだけで,ワークステーションで新しいb値のDWIを推定することができる機能。高いb値では,ノイズが非常に多く乗ってくるため診断に適さないが,この手法では基本的にノイズが増えないため,前立腺がんの診断などで望まれるb=2000程度の高い値でも,高コントラストのDWIを得ることができる。また,症例によって腫瘍を見やすいb値も異なるため,computed DWIにより後から微調整ができることは,臨床的な有用性が高いと言える。
また,ADCボリュームヒストグラム解析では,腫瘍の悪性度を反映するADC値をヒストグラムで表示することで,その尖度と歪度から,悪性度を予測することができる。

腫瘍の悪性度を予測するADCボリュームヒストグラム解析

腫瘍の悪性度を予測する
ADCボリュームヒストグラム解析

 

◆肺野解析

従来はトレースや指定など,手入力操作で解析が必要だったが,肺野解析機能により,肺体積の自動算出,気管支,肺動脈,肺静脈の自動抽出が行えるようになる。肺動静脈を自動で分類して,末梢まで血管を描出することも可能。肺血管を指定すると血流領域を測定でき,体積情報とあわせて用いることで,肺切除の領域決定など手術計画に利用できる。7月リリース予定。

セグメンテーション手法を応用した肺野解析

セグメンテーション手法を応用した肺野解析

 

●3Dプリンタへの出力機能やタブレットでの3D表示など,時流に即した技術を開発

このところ,3Dプリンタが広く注目されているが,AZE VirtualPlaceで作成した3Dデータを,3Dプリンタで用いられるSTL形式に変換できる機能を追加,標準搭載する。整形外科の大腿骨骨頭や肩関節の置換術において,術前にVirtualPlaceで正確な計測,3Dモデルを作成し,3Dプリンタで骨モデルなどを作ることで,最適な装具を作るのに役立つ。ブースの一角には3Dプリンタを設置し,実演が行われていた。また,zSpace社のタブレットと連携し,3Dモデルをタブレットペンを使って操作し観察できる技術を開発中で,ブースでは実演が行われ来場者の関心を集めた。

3Dプリンタの実演

3Dプリンタの実演

zSpace社のタブレットと連携した表示方法を開発中

zSpace社のタブレットと連携した表示方法を開発中

 

●お問い合わせ先
株式会社AZE
住所:〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN館13F
TEL:03-3212-7721
URL:http://www.aze.co.jp

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