2018-5-8
島津製作所ブース
島津製作所は,“With Your Stories −−lifetime healthcare support−−”をテーマに,予防から診断,治療,予後まで,人生のすべてのステージを支える製品群を展示した。今回のITEMでは,X線システムを中心とした医療機器にかぎらず,島津のもう一つの事業の柱である分析機器を紹介するエリアを設け,医療機器と分析機器の融合による新たな医療の可能性を紹介した。この新しい取り組みについては,14日(土)に行われたJRS共催ランチョンセミナー13「質量分析技術が創出する最新医療−−異分野融合の一つの成果として」で,東北大学大学院医学系研究科放射線診断学分野教授の高瀬 圭氏が「質量分析計を用いた新たな副腎静脈サンプリング技術の開発と将来展望」として報告した。また,13日(金)にJRC合同特別講演「分析と医用の融合によるヘルスケアへの新展開のために」を講演した同社シニアフェローの田中耕一氏が所長を務める田中耕一記念質量分析研究所の成果を紹介するコーナーも設置された。
新製品としては,4月に発売されたばかりの島津社製DR搭載回診用X線撮影装置「MobileDaRt Evolution MX8 Version」や血管撮影システム「Trinias」シリーズの「unity edition」,乳房専用PET装置「Elmammo Avant Class」などをITEM初展示。プレゼンテーションステージでは,新製品の魅力を伝えるプログラムが用意された。
また,昨今は医療機関においても働き方改革が重視されるようになっていることから,医療従事者の業務負担を軽減するような機能やデザインという切り口でも製品のポイントを来場者にアピールした。
●回診用X線撮影装置:デザインを一新した第8世代の回診システム「MobileDaRt Evolution MX8 Version」
●血管撮影装置:“可視化”で手技を支援する「Trinias」シリーズ「unity edition」
●乳房専用PET装置:容易なポジショニングでブラインドエリアを縮小する「Elmammo Avant Class」
●X線透視装置:高画質・高機能でさまざまなシーンに対応する「SONIALVISION G4」
●分析機器:画像診断機器との融合で新たな可能性を生む高速液体クロマトグラフィ分析装置「Nexera LC-MS/MS」
●クリニック向け製品:幅広い領域に対応し高画質を提供するX線テレビシステム 「FLEXAVISION HB package eXceed edition」
●回診用X線撮影装置:デザインを一新した第8世代の回診システム「MobileDaRt Evolution MX8 Version」
全世界3500台以上の実績を持つ回診用X線撮影装置MobileDaRtに,第8世代のMobileDaRt Evolution MX8 Versionが登場した。卵のような“丸い”印象を与えるデザインで,第7世代の「MX7」から雰囲気が一新。展示のキーワードでもある働き方改革を意識し,撮影業務を行う診療放射線技師が少しでも楽に扱えることをコンセプトに開発された装置である。まず,病棟内を安全に移動しやすくするため,X線管球の支柱を伸縮構造とし,走行時には1.27mの高さにすることで前方視野を確保した。本体幅も56cmに狭小化することで,装置の前方車輪のあたりも視認しやすくなっている。回診業務で,ベッドの間やエレベーターなど狭い場所に入る際の取り回しに威力を発揮するモーターアシスト駆動もMX7より向上させた。これにより,本体の操作もさらにスムーズに行える。走行時には,操作者の身長に合わせてハンドルの高さを調整できるオプションも準備し,楽な姿勢で安全な走行をサポートする。また,X線管球ハンドルの上下2か所にロックボタンを設けたほか,コリメータ操作ダイヤルも管球の前面・後面につけたことで,撮影時の操作性も向上している。
本体には,19インチモニタを搭載。MX7の17インチから拡大したことで撮影後の画像確認をしやすくなり,フルフラットのため清掃も容易だ。このほか,収納ポケットに入れたFPDの盗難紛失を防ぐロック機能や,小物の収納スペースなど,効率的に回診業務を行うための細やかな工夫が施されている。
MX8 Versionは,ユーザーのニーズに合わせてDRを組み合わせられるDR“NEUTRAL”2.0対応のシステムで,日本国内では,2018年1月にキヤノン社製,富士フイルム社製のDRに対応するタイプを先行して発売。そして,4月に島津社製DR搭載のiタイプが発売となった。iタイプには,グリッドレス撮影が可能な画像処理機能“Smart SR”に加え,新しい画像強調処理オプション“Fine-View”が搭載可能となっている。Fine-Viewはチューブやガーゼといった体内の異物を強調表示する画像処理で,ワンボタンで通常の撮影画像と切り替えて表示でき,カテーテルの位置確認や術後の遺残確認を簡単に実施できる。設定により通常画像とともにFine-View画像をPACSに転送することも可能だ。また,回診業務を支援する機能として,支柱を格納してもモニタ隅に次の検査の行き先を表示する機能もiタイプに搭載された。次の検査の病室番号や撮影部位,医師からの指示などを走行しながら確認できることで,スムーズに次の撮影操作に入ることができる。
●血管撮影装置:“可視化”で手技を支援する「Trinias」シリーズ「unity edition」
2017年10月に国内販売を開始した血管撮影システムTriniasシリーズunity editionは,新しい画像処理技術やチルト機能を備えたカテーテルテーブルの組み合わせなどにより,高度なインターベンションを強力に支援するシステムである。会場には,下肢撮影など広範囲の撮影にも対応する16インチ×12インチの大視野FPDを搭載した「Trinias C16 unity edition」を,新しいカテーテルテーブルと組み合わせて展示した。
島津は画像処理技術の開発において,“可視化”に重点を置いている。術中にステントの形状やポジショニングをリアルタイムに確認するためのアプリケーションが,“SCORE StentShot”と“SCORE StentView”である。SCORE StentShotは,従来と照射線量を変えずにノイズを約50%低減することができ,拡張したステントの編み目構造も明瞭に視認できる。また,SCORE StentViewは心拍により動くステントを固定・強調表示し,これらにより経験の浅い術者にもわかりやすい画像を提供する。
DSAを支援する“Flex-APS”(Flexible Active Pixel Shift)は,体動による造影前後の位置ズレを,ピクセル単位で三次元的に自動補正する機能で,アーチファクトのない精度の高いDSA画像を提供する。
また,高齢化に伴い増加傾向にあるPAD(Peripheral Arterial Disease:末梢動脈疾患)の診断に有用な機能として“SCORE Chase”をアピールした。従来,下肢造影画像は分割して撮影し,つなぎ合わせる必要があったが,SCORE Chaseでは造影の様子をリアルタイムに確認しながらテーブルを動かして連続的に画像を収集し,撮影終了後に自動で長尺画像が生成される。造影,撮影が1回ですむため,従来と比べ造影剤量・被ばく線量を低減することができ,低侵襲な検査を提供する。
新開発のカテーテルテーブルは,チルト機能が搭載された。縦・横・斜め(上方17°,下方20°,左右方向各16°)にチルトが可能で,柔軟なポジショニングを実現している。また,高い防水性能を備えるとともに,ケーブル類をテーブルに内蔵することで,清潔・安全に使用することができる。
●乳房専用PET装置:容易なポジショニングでブラインドエリアを縮小する「Elmammo Avant Class」
2017年9月に国内販売を開始した乳房専用PET装置「Elmammo Avant Class」は,前機種「Elmammo」からベッドの改良や検出器の最適化を図った。Elmammoは被検者がベッドに腹臥位となり検出器ホールに乳房を片方ずつ入れることで,乳房PET検査を行える専用装置。多くの臨床画像を提示し,全身用PET/CT装置では検出が困難な非常に小さな乳がんの描出や,化学療法前後の評価など,高い精度で検査できることを示した。乳房を圧迫するなどの負担もなく,被検者に優しい検査を提供する。
Elmammo Avant Classは,高感度・高解像度を変えることなく,快適性の向上,ポジショニングのしやすさ,ブラインドエリア縮小のための改良が施された。まず,ベッドの顔を乗せる部分のクッションを着脱式にすることで,被検者の首への負担を軽減。同様に,検出器周囲のクッションも取り外せるようにし,あわせて天板を検出器に近接したことで,天板から検出器面までの距離を18mm縮小した。これにより,ポジショニングを特に工夫することもなく,胸壁側のブラインドエリアを縮小した。
また,Elmammoでは検出器が3リング式(156mm視野)であったが,日本人の体型に合わせて2リング式(103mm視野)を標準タイプとすることで,装置の価格も抑えている。
●X線透視装置:高画質・高機能でさまざまなシーンに対応する「SONIALVISION G4」
FPD搭載X線テレビシステム「SONIALVISION G4」は,低被ばくで高画質透視画像をリアルタイムに得られる画像処理技術 “SUREengine FAST”をアピールするとともに,多彩なオプション機能を来場者に紹介した。2017年から標準搭載されているSUREengine FASTは,高速な演算処理により線量を低減しても残像の少ない高画質を提供でき,増加するERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)検査などを支援する。従来と比べ,被ばく線量を約60%に落としても同等の画質を得られるため,被検者や手技を行う医師の被ばくを低減できる。パラメータ調整により,いっそうの被ばく低減も可能だ。また,ERCPのように透視画像や内視鏡画像などさまざまな情報を閲覧しながら行う検査を想定し,大画面モニタに情報を集約して表示する展示も行った。SONIALVISION G4は,トモシンセシス撮影や長尺撮影といった高機能アプリケーションを提供できることが特徴の一つだが,今回,骨密度測定機能“Smart BMD”に新しく高画質モードが搭載されたことが紹介された。これにより体格の大きい被検者の腰椎の測定でも,視認性が向上しセグメンテーション処理を容易に行うことができる。
●分析機器:画像診断機器との融合で新たな可能性を生む高速液体クロマトグラフィ分析装置「Nexera LC-MS/MS」
島津のもう一つの柱の事業である分析機器を紹介するコーナーでは,高速液体クロマトグラフィ分析装置「Nexera LC-MS/MS」と検体前処理装置「CLAM-2000 CL」を展示した。近年,新生児マススクリーニングや血中の薬物動態モニタリングなど,臨床分野における高速液体クロマトグラフ質量分析計の活用が拡大しており,本システムの導入により,信頼性,再現性の高いデータを得ることができる。東北大学の高瀬教授は,血管撮影室内にNexera LC-MS/MSを導入し,原発性アルドステロン症を原因とする高血圧の治療にNexera LC-MS/MSを応用している。分析機器は従来,専門性の高い装置で操作が難しかったが,島津ではインターフェースを改良するなど扱いやすさを工夫することで,臨床現場への導入を可能にした。血管撮影装置と融合することで,採取場所が明らかな検体を分析することができ,より精度の高い検査が期待される。
●クリニック向け製品:幅広い領域に対応し高画質を提供するX線テレビシステム 「FLEXAVISION HB package eXceed edition」
クリニック向けの製品を紹介するコーナーでは,X線テレビシステム 「FLEXAVISION HB package eXceed edition」や電子カルテシステム 「SimCLINIC T3α XLink package」,デジタルマンモグラフィ「Senographe Crystal Nova」(GE社製)を展示した。
FLEXAVISION HB package eXceed editionは, クリニックでの使いやすさを追究したシステム。画質調整の手間を省く高画質を提供し,広い撮影視野と1.5mまで引き伸ばせる映像系などにより,さまざまな領域の検査に1台で対応する。オプションでワイヤレスFPDにも対応しており,撮影から透視に切り替える際には,FPDが自動でテーブル外に退避する機能を搭載した。これにより,タイミングを逃すことなく,スムーズな撮影/透視が可能になっている。
GE社との提携により,島津からも販売提供されるSenographe Crystal Novaは,スクリーニングに特化した世界最小クラスのコンパクトなシステム。わかりやすいインターフェースを採用し,シンプルな操作で高スループットを実現する。画素サイズは100μm,間接変換方式のシステムであるが,上位機種の技術を投入することで,直接変換方式に匹敵する高画質を提供可能となっている。
島津はこれまでX線システムを中心に提供してきたが,多様化する医療施設のニーズに対応するため,よりトータルな提案をしていく方針を示しており,その取り組みの一つとして島津エス・ディー社製の再来受付システム「MERSYS-Ⅳ」を紹介した。会場では19インチの大画面タッチパネルを搭載したタイプを展示。音声ガイダンスや人感センサーを搭載しており,大きくわかりやすい画面表示で,病院における再来受付業務を支援する。
●お問い合わせ先
社名:株式会社島津製作所 医用機器事業部グローバルマーケティング部
販売促進グループ
住所:京都市中京区西ノ京桑原町1
TEL:075-823-1271
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