ITEM2016 富士フイルム ブースレポート
先進の画像処理技術で高画質・低線量撮影が可能なDRや高速化したPACSの新バージョンなどをアピール
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2016-4-27
富士フイルムメディカルブース
富士フイルムメディカルは,「Value from Innovation 医療のいちばん近くから,次代を見つめる。」をテーマに展示を行った。50周年を迎えた昨年と同様のテーマとなるが,これまで培ってきた独自の高い技術開発力をベースとしたX線診断装置から超音波画像診断装置,PACSやクラウドソリューションまで多くの製品やサービスの提供を通じて,診療におけるさまざまな課題や要望に応え続けることをアピールした。
ブースは,例年同様高いシェアを誇るDRソリューションや超音波診断装置などを中心とするモダリティソリューションと,PACSや3D画像解析ワークステーション,クラウドによる地域医療連携などのITソリューションの2つのゾーンで構成された。今年もITEMに合わせて多くの新製品がリリースされたが,モダリティではカセッテDRの「FUJIFILM DR CALNEO Smart」の新ラインナップ,長尺撮影が可能なロングサイズパネル「CALNEO GL」と電動式撮影台「FM-PL1」を組み合わせ,さらにそれらの製品に適用する新しい画像処理技術である“ダイナミック処理”,グリッドレス撮影を可能にする“Virtual Grid”の適応拡大などのバージョンアップをPR。また,片手で操作できるユーザーインターフェイスやWi-Fiによる画像転送など在宅や救急などでの使用にも適応したタブレット型超音波画像診断装置「SonoSite iViz」も注目を集めた。ITソリューションでは,国内トップシェアのPACSである「SYNAPSE」の最新バージョン「SYNAPSE 5」,データの長期保証や移行コストなどの課題に対応する「SYNAPSE VNA」,クラウドサービスを利用した放射線部門向けの管理支援サービス「ASSISTA Management」などを紹介した。(4月16日取材)
●さらに高画質,軽量化を図ったカセッテDR「CALNEO Smart」や長尺撮影を可能にする「CALNEO GL」を展示
DRソリューションの展示コンセプトは,“快適なワークフローと低線量を実現する FUJIFILM DR LOW-DOSE SOLUTIONS”。FCR時代から積み重ねてきたX線画像の画像処理技術によって,高画質だけでなく低線量での撮影を可能にし,検査室や病棟でのワークフローを変革する製品やサービスを展開することを強く印象づけた。特にDRコーナーでは,モダリティだけでなく新たに投入された画像処理技術を大きくフィーチャーし,X線画像の画質や診断能の決め手となる新しい画像処理エンジン“ダイナミック処理”,散乱線推定技術でグリッドレス撮影を可能にした“Virtual Grid”の適用部位拡大や胸部での骨除去画像を提供する“胸部アドバンス処理”などを紹介して,これらの技術によってさらなる低線量・高画質撮影が可能になることをアピールした。
〈軽量化・高画質化を図ったGOSタイプのCALNEO Smartの新製品を展示〉
製品としては,カセッテDR(ワイヤレスFPD)の「CALNEO Smart」シリーズの新製品やロングサイズパネルで長尺撮影に対応する「CALNEO GL」などを展示。2014年12月に発売された,ISS方式を採用し独自のノイズ低減回路による高画質化とマグネシウム合金を採用したシェルデザインなどを特長とする「CALNEO Smart」は,画質のみならず撮影時のワークフローまで考慮した設計が評価され国内外の多くのデザイン賞を受賞した。今回,新たにGOS(ガドリニウムオキサイドサルファ)タイプの蛍光体を採用した14×17インチの「FUJIFILM DR CALNEO Smart S47」と17×17インチの同S77が発売された。S47,S77は,従来のG47,G77からさらに軽量化と感度向上を図り,X線感度はDQE31%を実現し,S47は2.5kgとバッテリー交換式カセッテDRとして世界最軽量に,S77も従来より軽量化し3.1kgとなっている。また,2015年4月に全脊椎など長尺撮影が可能な17×49インチのロングサイズDR「FUJIFILM DR CALNEO GL」を発売しITEM2015の会場でお披露目したが,今年はそのパネルをセットして使用する電動式撮影台「FM-PL1」が展示された。「CALNEO GL」を用いた長尺撮影で立位はもちろん,前屈や側臥位,臥位といった撮影が簡易に対応できる。
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〈一新されたさまざまな画像処理技術をアピール〉
同社がFCR時代から培ってきたX線画像の画質を決定する画像処理エンジンが一新されたダイナミック処理(Dynamic Visualization Ⅱ)では,撮影された被写体の厚みを推測し最適なコントラストと濃度安定化処理を適応,最適な条件で画像全体を表示する。これによって,これまで難しかった体厚差が大きい椎体や全下肢撮影でも全体の観察が可能になる。また,独自の散乱性推定技術によってグリッドレスの撮影を可能にするVirtual Gridもバージョンアップし,胸部,腹部に加えて頸椎,腰椎,肩関節などの適用領域が追加され,グリッド比も1:1から20:1まで選択することができるようになった。
CALNEO GLでは,ダイナミック処理によって長尺撮影において関心領域に合わせた最適な画像が得られるようになった。また,Virtual Gridも新バージョンで利用が可能になり,グリッドレスでの撮影が可能になったほか,適用領域が拡大したことで部位に最適化された画像が得られることを紹介した。
さらに,胸部アドバンス処理(Bone Suppression Advance)は,胸部正面画像で骨陰影の低減を図る技術で,胸部読影に特化した白黒反転処理を施して提供する。これによって肺野内で骨に重なる病変などの検索を容易にする。胸部アドバンス処理は,胸部検診画像の読影のニーズの多いクリニック向けの医用画像診断ワークステーション「C@RNACORE」のオプションとして提供される。
そのほか,マンモグラフィの画像において粒状性の改善と低線量撮影を可能にする“Excellent-m 2D”,“Excellent-m 3D(トモシンセシス対応)”も紹介した。
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●高画質でコンパクトを実現するタブレット型超音波画像診断装置「SonoSite iViz」
超音波画像診断装置では,ITEM直前にリリースされたタブレット型超音波画像診断装置「SonoSite iViz」を展示した。SonoSite iVizは,2012年に富士フイルムが買収した携帯型超音波画像診断装置のトップメーカーであるSonoSite社のノウハウを注ぎ込み,小型ながら高画質を実現,堅牢性や操作性,撮影データの共有などに優れた新たなモバイル超音波として開発された装置だ。7インチ140万画素のカラー液晶モニタを装備し,B,M,カラードプラモードや各種の計測機能を搭載。重さは520gでバッテリー稼働時間は1時間となっている。最大の特長は片手での操作を可能にした“マルチタッチジェスチャーユーザーインターフェイス(UI)”で,プローブを持つ必要がある検査時に,片手で本体を持ち親指だけでモードの切り替えやフォーカスの変更,計測などが行えるUIを採用した。さらに,本体での写真撮影や音声の記録も可能で,在宅や救急の現場での記録などにも利用できる。本体のメモリは64GBで1000件以上の検査を記録でき,Wi-Fiを搭載しデータの転送が行えるほかUSBによる外部保管も可能となっている。ブースでは,実機での操作性を確かめる来場者で人だかりができる人気だった。
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●アーキテクチャを一新した新しいPACS「SYNAPSE 5」など医療情報の課題を解決する新しいソリューションを提案
ITソリューションコーナーのテーマは“Open Integration, Good Solution.”。富士フイルムメディカルでは,PACSの「SYNAPSE」を中心に統合診療支援プラットフォーム「CITA」,3D画像解析ワークステーション「SYNAPSE VINCENT」,クラウド型地域医療連携サービス「C@RNA Connect」など病院内から地域医療連携までをカバーする多くのソリューションを展開している。今回の展示では,画像情報の蓄積が進み,さらなる大容量化が求められる中で,診療のスピードの向上や管理など運用性,長期保管の信頼性などのニーズに応える新しいソリューションを展示した。
〈SYNAPSE 5〉
PACSでは,SYNAPSEの最新バージョン「SYNAPSE 5(ファイブ)」を出展した。SYNAPSE 5は開発言語を含めてシステムのアーキテクチャを一新し,サーバサイドレンダリング方式を採用。従来,クライアント側で行われていた処理をすべてサーバ側で行い,処理結果のみをクライアント端末に送信して表示することで従来の2倍の高速化を可能にした。PACSでは,CTなどで1検査の画像枚数が増大しており,データ送信によるネットワークの負荷が問題になっている。また,大規模施設では端末台数が増え,読影用だけでなく電子カルテ端末などさまざまな環境が混在し,システムのバージョンアップなどでのクライアント管理の負担が高まっていた。SYNAPSE 5ではサーバサイドレンダリング方式でこれを解消し,クライアントにはデータが残らないためセキュリティ性も向上する。SYNAPSE 5に保存された画像は,HTML5に対応したWebブラウザで閲覧可能で,Windows以外のPCやタブレット端末からのアクセスも可能なマルチプラットフォームをサポートする。ブースでは,2000枚を超えるCTのシリーズを一気に表示してMPRで参照するスピードを端末で紹介して来場者にPRした。
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〈統合アーカイブシステム「SYNAPSE VNA」〉
院内の異なるメーカーの診断画像や患者情報などさまざまな診療情報を一元的に管理,保管する統合アーカイブシステム「SYNAPSE VNA」を展示した。VNA(Vendor Neutral Archive)は,メーカーの異なるPACSのデータや,DICOM画像だけでなく多様な診療情報を標準的な規格に基づいて一元的に管理・保管できるアーカイブシステムで,グループ病院の運営が多い米国ではその必要性から普及が進んでいる。日本でも,大学病院を中心に蓄積されたデジタルデータの大容量化に伴うシステム移行時の問題や,地域医療連携でのデータ活用の必要性などからニーズが高まっている。富士フイルムメディカルは,2015年5月に米国でVNAで豊富な実績を持つTeraMedica社を買収。SYNAPSE VNAは,米国でのMayo clinicなど多くの医療機関で稼働実績のあるTeraMedica社のノウハウを生かし国内向けに新たに展開するものだ。国内では2016年1月から大阪大学医学部附属病院に導入されており,既存のデータと今後6年間で発生が予想されるデータを合わせて約700TBをVNAで保管。これによってデータの長期の保存性や安全性が保証されるほか,メーカーを問わずデータを一元管理できることから,運用の安定性やデータ共有にも活用できると期待されている。ブースでは,システムの特長を端末で紹介したほか,実際の導入事例についてステージでプレゼンテーションした。
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〈放射線部門向けの管理支援サービス「ASSISTA Management」〉
「ASSISTA Management」は,放射線部門のX線検査時の撮影線量指標(Exposure Index:EI値)や再撮影などの情報を収集し,クラウドにアップロードして業務分析を行える管理支援サービスである。X線検査時の撮影条件などの記録は義務づけられているものの,その管理や利用にはデータの収集や入力など手間がかかっていた。ASSISTA Managementでは,オンラインで撮影線量やEI値,撮影実績,検査時間,稼働実績などの情報を収集,クラウド上でデータを集計・解析処理を行い,各種情報を撮影機器ごと,撮影者別,検査室別といった項目でグラフ化やリスト化が行える。フィルムレス化によって写損(再撮影)率などはわかりにくくなっているが,見える化することで撮影の質の向上に貢献する。ASSISTA Managementは,放射線部門のマネジメントを支援するツールとして期待される。
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●お問い合わせ先
富士フイルムメディカル
住所:東京都港区西麻布2-26-30
TEL:03-6419-8033
URL:http://fms.fujifilm.co.jp/