ホーム の中の取材報告の中の 2011の中のNEC医療セミナー2011東京 マネジメントサイクルと医療情報学の課題を取り上げたセミナーを開催

取材報告

2011
NEC医療セミナー2011東京
マネジメントサイクルと医療情報学の課題を取り上げたセミナーを開催

山口琢也氏(医療ソリューション事業部)
山口琢也氏
(医療ソリューション事業部)

村田晃一郎氏(北里大学)
村田晃一郎氏
(北里大学)

木村通男氏(浜松医科大学)
木村通男氏
(浜松医科大学)

講演会場風景
講演会場風景

  NECは,「NEC医療セミナー2011東京」を,2月25日(金),同社本社ビルで開催した。同医療セミナーは,病院運営や電子カルテなどの最新動向を中心とした講演と,NECおよび関連企業のシステム展示を中心に毎年開催されている。

  講演会にあたって挨拶した医療ソリューション事業部の山口琢也事業部長は,これまでのNECの医療情報システムへの取り組みを紹介し,電子カルテ導入の第1期が終わり次の方向性を探っているところだと述べ,新技術,新デバイス,院内・院外へのデータ活用の方法がポイントだと紹介した。院内のデータ活用では,“DPCナレッジ”などの経営に直結するシステムの展開,技術面では電子タグ,RFIDに対応したソリューションを挙げ,さらにスマートフォンやタブレット端末の活用の方向性を探っていくとした。
  院外のデータ連携では,政府の施策や実証事業に積極的に参画することで進めていくと述べ,基盤となるID-Linkなどのソリューションに力を入れ,SS-MIXやHL7に準拠しつつ地域連携医療の構築をサポートしていきたいと結んだ。

  講演1は,村田晃一郎氏(北里大学病院病院長補佐)による「医療現場におけるマネジメントサイクルについて−参照と評価の連鎖」。村田氏は,「データマネジメントの変化」と「業務マネジメントの変化」を中心に,現在の医療情報システムの課題を概説した。データマネジメントの変化とは,少子高齢化の影響で疾病の慢性化と長期化が進んだこと,同時に政府の進めるIT化施策によって医療情報の安心で安全な管理が義務づけられるようになり,医療機関がコストを考えながら対応する“ITガバナンス”が求められていることだ。村田氏は,こういった状況が,病院情報システムを院内に閉じたシステムでは継続不可能にしつつあり,病院は仕方なく“クラウドに追い込まれている”のだと述べた。この時代のデータマネジメントは,情報を治療層,連携層,長期層に分け,参照できる(しやすい)かたちで要約やインデックスが必要になるとした。業務マネジメントの変化では,病院情報システムは“ウォーターフォールモデル”と診療の“PDCAサイクル”の軋轢の歴史だったことを紹介し,これからはPDCAを補完する新しい参照系システムと,チーム医療の中でスタッフが情報収集するツールを提供する必要があると述べた。
  また,NECが開発中の新しい参照系システムや,村田氏がプロジェクトリーダーとして進めている北里大学4病院の一括更新プロジェクトについても紹介した。同プロジェクトは,大学病院と東病院のシステム構築を先行して進め2012年1月にスタート,残りの2病院が同年5月に稼働の予定とのことだ。

  講演2では,木村通男氏(浜松医科大学医療情報部教授)が「医療情報の歴史とこれからめざすべきもの」と題して講演した。2010年11月の第30回医療情報学連合大会で,木村氏が行った学会長講演の内容と,今年になってから日本医療情報学会が主催・共催した3つのシンポジウム,講演会の内容をサマライズして,木村氏の意見を合わせて紹介した。
  「学会長講演」では,医療情報学会の歩みと医療情報システムの歴史を紹介し,重要な研究課題,政策課題に現状での点数をつけた。さらに,今後5年の医療情報学の課題として,1.国立大学や公的なプロジェクトでは失敗の報告が出にくいが,それをいかに共有していくか,2.標準化されたデータからインフォメーションにする重要性,3.どこまで税負担するかを判断する材料を医療情報が提供すること,を挙げた。
  3つのイベントの内容紹介では,木村氏が医療情報学会理事長として中心的に進めた,1月29日に行われたワークショップ「可搬型媒体(CD-R)を用いた画像情報連携の現状と問題解決を考察する」,22日の「医療分野におけるID等に関する政策研究」ワークショップ,2月10日のシンポジウム「診療データ連携と診療責任のあり方を考える」について,企画のねらいと成果を紹介した。

  システム展示では,電子カルテシステムの「MegaOakHR」や(株)シーエスアイの「MegaOak-MI・RA・Is/PX」,DPCコーディング支援システム「DPCナレッジ」,医学管理料算定支援システム「医学管理料なび」など幅広く紹介した。また,地域医療連携サービス「ID-Link」のほか,スマートフォン・タブレット端末など多くのソリューションを出展した。


●問い合わせ先
NEC 医療ソリューション事業部
TEL 03-3798-6756
http://www.nec.co.jp/medsq/index.html


【関連記事】

NEC医療セミナー2010東京 クリニカルパスの実践的活用などをテーマにした講演とシステム展示を開催

メディプラザとGEヘルスケア・ジャパンがクラウドをテーマにしたセミナーを開催