2022-5-10
島津製作所ブース
島津製作所は,さまざまな社会課題を解決し,予防から診断,治療,予後まで,一人ひとりの一生を通してヘルスケアに貢献することをめざし,“With Your Stories —lifetime healthcare support—”をテーマに新製品・技術を中心とした多彩なソリューションを紹介した。今回の展示では人工知能(AI)やDXをキーワードに,最新技術で診療現場の効率を向上させ,医療従事者や患者の負担を軽減する提案を行った。
AI技術の活用については,回診用X線撮影装置向けとX線テレビシステム向けのAIソフトウエア3種を4月に発表したほか,新製品の血管撮影システム「Trinias」最上位機種にAI技術を用いた画像処理技術を搭載。血管撮影システムの画像処理エンジンへのAI搭載は世界初であり,さまざまなソリューションへのAI応用を積極的に進めていることがうかがえる。また,新製品のX線テレビシステム「FLEXAVISION F4 Package」は医療ニーズの変化をとらえた製品で,透視検査と一般撮影に1台で対応できる機能を実装した。上位機種「SONIALVISON G4」では,新たなデバイス強調透視画像処理技術“DeEP”が追加され,より視認性の高い透視画像で医師の負担を軽減する。
さらに,DXで診療効率の向上などを提案するコーナーでは,受付や会計を効率化するクリニック向けのシステムや遺伝子解析装置など,ニューノーマル時代にも適した製品を来場者に紹介した。
●AI:回診用X線撮影装置とX線テレビシステム向けにAI技術を用いたソフトウエア3種をリリース
●血管撮影システム:AI技術を活用した画像処理により被ばく低減を図る「Trinias」の最上位機種を発表
●X線テレビシステム:「FLEXAVISION F4 」で透視検査室と一般撮影室の統合を提案
●一般撮影装置:X線管操作をサポートする新機能をPR
●DX:医療現場の効率化を図るクリニック向け製品や遺伝子解析装置など紹介
●AI:回診用X線撮影装置とX線テレビシステム向けにAI技術を用いたソフトウエア3種をリリース
島津製作所では,画像処理やAI技術などのソフトウエア機能の強化に力を注いでおり,AI技術を活用したソフトウエア機能3種類を4月7日にリリースした。
回診用X線撮影装置向けに開発された“遺残確認支援ソフトウエアSmart DSI”は,AIの深層学習を用いて,外科手術直後に行うX線撮影による異物遺残確認を支援し,効率的なチェックを可能にする。X線画像診断装置のワークステーション用プログラム「AI-Station」の機能として提供され,まずは回診用X線撮影装置「MobileDaRt Evolution MX8 Version cタイプ」に搭載可能となった。ガーゼや縫合針,鉗子など,人体以外の可能性があるものを色を付けて強調表示することで,骨と重なった領域などでも見逃しのリスクを低減し,医療従事者の負担を軽減する。処理画像は,撮影後にボタンを押して表示,または撮影後に自動表示され,スムーズなワークフローの中で利用できる。
X線テレビシステム向けのAIソフトウエアとして,「SONIALVISION G4」で利用できるトモシンセシスアプリケーション“T-smart PRO”と,腰椎骨密度測定を支援するアプリケーション“SmartBMD AI Assist”がリリースされた。
以前より提供している金属アーチファクトを低減するトモシンセシスアプリケーション“T-smart“では,オペレータが撮影後にパラメータを調整して金属分離の処理を行っていたが,T-smart PROでは,収集データから推奨の再構成パラメータが自動設定され,画像再構成が行われる。マニュアル作業を削減して検査時間の短縮に貢献するほか,AI技術を用いて高精度に金属を抽出することで,視認性の高い再構成画像をオペレータの経験によらずに容易に得ることができる。また,再構成にあたっては撮影画像から再構成範囲を自動設定するため,被検者は無理のない姿勢で検査を受けられる。
DXA法による骨密度測定を支援するSmartBMD AI Assistは,従来はマニュアルで行っていた腰椎撮影後の骨領域の抽出(セグメンテーション)を,深層学習を応用したAI技術により自動化する。X線撮影で描出されにくい骨密度が低い領域も高精度に抽出でき,手動による修正を最小限に抑える。マニュアル作業の手間を削減できるとともに,作業者ごとのバラツキも軽減でき,医療現場の作業効率が向上する。なお,2019年に発売した大腿骨向けの骨密度測定AI Assistアプリケーションを使用している施設からは,作業時間が約1/3に短縮したとの報告があることが紹介された。
●血管撮影システム:AI技術を活用した画像処理により被ばく低減を図る「Trinias」の最上位機種を発表
血管撮影システムは,これまでTriniasシリーズとしてunity editionやunity smart editionを提供してきたが,4月にシリーズ最上位機種となる「Trinias」が発売となった。ブースでは,シアター形式で装置やコンソールの動き・操作性をインタラクティブに紹介した。
Triniasは「現場の“リアル”を解決する」ため,「ALARA Design」「Lean Design」「Sustainable Design」の3つをコンセプトに開発された。低線量で視認性の高い画像を実現するALARA Designにおいては,世界で初めて血管撮影装置にAI技術を活用した画像処理エンジンを搭載。画像処理技術“SCORE Opera”は,効果的なノイズ抑制とコントラスト強調によりデバイスを明瞭に描出し,透視被ばく線量の約40%削減を可能にする。ワークフロー向上をめざしたLean Designでは,Cアーム動作の高速化や操作性向上が図られた。Cアームのポジションチェンジはワンボタンで操作可能で,移動待ち時間を55〜60%短縮する。また,ベッドサイドの操作レバーをマニュアル操作用のものに絞り,ほかの操作機能をタッチパネルに集約することでコンソールを小型化。タッチパネルでの操作は,約100の機能からカスタマイズできる。検査室や操作室でのタスクを効率的に処理するため,統合モニタソリューション“SMART Display”のレイアウトは,任意に設定・変更が可能だ。Sustainable Designについては,ソフトウエアパッケージの定期更新で常に最新の機能を使用できるサブスクリプションサービス「SCORE Link」を提供する。まずは,“SCORE RSM”(リアルタイムDSA)や“SCORE StentView”(ステント固定表示)など7つのアプリケーションからスタートする。
●X線テレビシステム:「FLEXAVISION F4 Package」で透視検査室と一般撮影室の統合を提案
2022年1月に発売され,実機が初展示されたX線テレビシステム「FLEXAVISION F4 Package」は,透視と一般撮影に対応する17インチ×17インチのフルサイズFPDを搭載したハイブリッドな装置である。内視鏡検査増加による透視検査の減少と高齢化による一般撮影検査の増加という医療状況の変化を踏まえ,効率化や稼働率の向上,スペースの有効活用のために,本装置1台で透視室と撮影室を統合する提案を行った。オプションでワイヤレス運用が可能で,本体から取り外し可能なFPDは,重量約3.5kgと取り回しやすく,テーブル上に置いて整形領域の撮影や立位スタンドを使用した胸部撮影などに活用できる。また,座位での嚥下造影検査や,血管造影のDSA検査が可能なため腕のシャントPTA検査にも利用できるなど,幅広い検査に対応することができる。
多目的に利用できるX線テレビシステムの上位機種「SONIALVISON G4」は実機を展示するとともに,新しく追加されたデバイス強調透視画像処理技術“DeEP”を紹介した。SONIALVISON G4には低残像・低ノイズで鮮鋭度の高い透視画像を提供する透視画像処理エンジン“SCORE PRO Advance”が搭載されているが,DeEPの実装により胆膵管などの内視鏡検査で使用する細いガイドワイヤなどデバイスの視認性をさらに高めることができる。強調処理の強度は,LowとHighの2段階を用意。従来の透視では見えにくかったデバイスを見やすくすることで,医師のストレスを軽減し,検査時間の短縮や被ばく線量の低減に貢献する。
●一般撮影装置:X線管操作をサポートする新機能をPR
一般撮影装置は「RADspeed Pro style edition」の実機を展示し,新開発のパワーアシスト機能「POWER GLIDE」(オプション)をPRした。X線管懸垂器のハンドル部分にセンサーを搭載し,移動のためにハンドルをつかむと力を検出してパワーアシストが作動する。3段階あるアシストモードは懸垂器のパネルでワンタッチに切り替えでき,大きく移動する際にはアシストが強いモードで軽々と移動でき,位置調整ではアシストが弱いモードを選択することで細かな調整をしやすい。日々多くの検査件数をこなす診療放射線技師の負担を軽減し,生産性向上や働き方改革に貢献する。
●DX:医療現場の効率化を図るクリニック向け製品や遺伝子解析装置など紹介
DXによる診療・業務効率の向上などを提案するコーナーでは,クリニック向け製品や遺伝子解析装置など,感染対策としても有用なニューノーマル時代に対応した製品を展示した。
強みの一つである分析計測技術領域の製品として,ITEM 2021でも展示した遺伝子解析装置「AutoAmp」と,そのオプションとして提供される新製品・検体前処理装置「Amprep」を出展した。AutoAmpは,最大4検体を同時に,解析に必要な分注前処理工程からリアルタイムPCRまでを全自動で行う装置。新たに発売されたAmprepは,AutoAmpを用いたPCR検査をより効率的に行うために開発された。最大4つのプール検体の調製が可能で,1プール検体あたり最大5検体,最大20個別検体の前処理を自動で行うことができる。検体ラックはAutoAmpと互換性があり,調製ずみの検体をラックに入れたままAutoAmpにセットできる。
クリニック向け卓上支払機「Mer’C」は,幅460mm,奥行き320mmのコンパクト設計で受付カウンターなどに設置でき,会計業務を効率化するとともに,接触機会の低減で感染症対策にも貢献する。患者が診察券や請求書のバーコードをリーダーにかざし,わかりやすい画面案内に従って操作することで支払いを完了できる。電子カルテ「SimCLINIC T3」シリーズとの連携も可能で,4月から新しくキャッシュレス決済にも対応したことをアピールした。
受付システムはMERSYSシリーズの2機種を展示した。「MERSYS-Ⅹ」(W.I.P.,2022年初夏発売予定)は,“患者中心の医療サービスプラットフォーム”として次世代の受付システムと位置づけられた新製品である。島津製作所が開発中の病院向けデジタル問診サービス「Hospital Essentials」との連携で,初診患者の受付も可能な点が大きな特徴だ。患者はスマートフォンにHospital Essentialsアプリをダウンロードし,事前に基本情報を登録。登録後に表示される二次元バーコードを来院時にMERSYS-Ⅹで読み込むと,医事システムにデータが送られる。MERSYS-Ⅹは1台で初診受付,再診受付,支払いに対応しており,患者の待ち時間短縮,院内業務の効率化を実現し,快適な診療環境を提供する。
また,「MERSYS-Ⅳ ラジエーションパッケージ」(W.I.P.)は,RISと連携する放射線科受付システム。放射線科窓口が開く前から患者が並ぶと受付業務が混雑し,予約時間に検査を始められない状況も生じるが,本製品で診察券やバーコードによる受付と受付票出力を自動化することで,患者を待たせずにスムーズな案内が可能になる。
●お問い合わせ先
社名: 株式会社島津製作所
URL:https://www.med.shimadzu.co.jp/