FCR 30周年—フィルムからデジタルへ 〜受け継がれる革新のDNA〜

2013-8-26


FCR 30周年

●フィルムの持つ“センサー”,“表示”,“保存”の機能を
分解・再構築してデジタル化

FCRの開発は,デジタル技術が海のものとも山のものともわからなかった1975年にスタートしました。
プレハブの開発拠点に集められた若い技術者たちの,新しいX線診断システムを創造したいという熱意が,まったく新しいモダリティの誕生に向けたチャレンジへとつながりました。
FCR開発の基本方針は,“あらゆる特性においてアナログのX線写真を超えること”でした。開発の目標として,従来のスクリーン/フィルム系に比べて,診断画質,撮影感度,撮影処理能力,撮影コスト,撮影の自由度などをクリアすることを掲げ,具体的な開発ターゲットとなったのが,「画像センサー」「画像読み取りシステム」「画像診断アルゴリズム」の3つの要素技術でした。
画像センサーでは,X線フィルムに匹敵する感度を実現させるための発光効率の高い輝尽性蛍光体を発見したこと,画像読み取りシステムでは,センサーに蓄えられたエネルギーを読み取るために,アクリル板をチリ取り形状にした集光ガイドで集光効率を大幅に向上したことがブレイクスルーとなりました。
画像診断アルゴリズムの開発では,当時の限られたコンピュータ処理能力でデジタルデータを診断可能な画像に再構成するため,放射線診断医や臨床医との共同研究によって画像診断の根本的な理解を深め,画素や周波数処理について試行錯誤を繰り返してデジタル画像を作り上げていきました。
そして,最初の製品である「FCR101」が1983年に発売されました。日本から生まれた世界初のデジタルX線診断システムとして高い評価を受け,第1号機は鹿児島大学に導入されています。その後も処理スピードの向上や小型化を進め,日本のみならず全世界に普及し,30周年を迎えた2013年7月現在,全世界で10万台を超える販売台数を記録しています。

FCR発売30周年

 

●FCRで培われた画像処理技術をさまざまな医療画像システムに展開

X線のデジタル化にあたって,まずフィルムの“本質”を究めたことが,PACSも含めた次世代のX線画像診断の礎となり,FCRから継承された技術は現在の富士フイルムの多様な製品群に生かされています。
FCRにおけるイメージングプレートのセンサー技術はFPD(DR)に受け継がれ,受光素子基板をX線照射側に配置し,X線変換効率を高めた独自のISS(Irradiation Side Sampling)方式の開発など,高感度なセンサーの開発につながっています。それらを搭載したX線撮影装置「FUJIFILM DR BENEO-eX」やワイヤレスFPD「FUJIFILM DR CALNEO C」シリーズは,臨床現場で活用されています(DR 参照 )。
富士フイルムは,FCRで培った技術とフィルムの本質を知り尽くしたノウハウを生かし,真に臨床に貢献できるPACSとして,2000年に運用型PACS「SYNAPSE」を発売しました。SYNAPSEは,一般X線画像も含めたフィルムレス運用と,それを支える画像の転送や表示のスピード,保存における真正性や信頼性の確保,スケーラビリティを確保したシステムを他社に先駆けて実現しています(PACS 参照 )。
FCRの中核とも言える画像処理技術は,デジタル画像の利点を生かした処理によって診断支援情報を提供する“エネルギーサブトラクション”,“テンポラルサブトラクション”(画像処理 参照 )など,さまざまな独自技術としてデジタルX線画像の発展に貢献してきました。さらに,画像認識技術へと発展し,3次元画像解析システムボリュームアナライザー「SYNAPSE VINCENT」(3D・WS参照 )や,類似症例検索システム「SYNAPSE Case Match」(画像処理 参照 )として製品化されています。
また,富士フイルムの高度な画像技術は,高精細な画質が要求されるマンモグラフィの領域でもさまざまな新しい製品,診断技術を提供しています。a-Se 2層構造と光学式スイッチ技術による直接変換方式のFPDを採用したデジタルマンモグラフィ「AMULET」シリーズ,奥行きのあるリアルな3Dマンモグラフィの観察を可能にする「リアル3Dマンモグラフィ」,HCP(Hexagonal Closest Packing)構造による高感度FPDとトモシンセシスにも対応した「AMULET Innovality」など,革新的な新製品が次々に発売されています(マンモグラフィ 参照 )。

デジタルネットワーク

 

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37年前に,富士フイルムの小さなプロジェクトとして始まったチャレンジは,日本発そして世界初の新しいモダリティであるFCRとして,医療X線画像診断の世界に大きな革新をもたらしました。FCRから受け継がれたDNAは,チャレンジ精神とユーザーのニーズに応える率直さを併せ持ち,常に未来を見据えながら新しい製品を生み出しています。


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