SYNAPSEによるフィルムレスPACS 先進的なデジタル環境の整備を進め,ワイヤレスFPDを導入 自治医科大学附属病院
DR(CALNEO Cシリーズ)—フィルム&FCRの“DNA”を受け継ぐさまざまな先進技術

2013-8-26


半切タイプのFPD「FUJIFILM DR CALNEO C 1417 Wireless SQ」

半切タイプのFPD
「FUJIFILM DR CALNEO C 1417 Wireless SQ」

富士フイルムが培ってきたFCRの技術はDR(FPD)へと受け継がれ,独自開発の高感度パネルや定評ある画像処理技術を搭載した製品が多くの医療現場で活用されている。自治医科大学附属病院では,2005年5月に「SYNAPSE」によるPACSを構築し,病床数1132床,外来1日平均2700人にのぼる大学病院でフィルムレス運用をいち早く実現した。同院では,2007年に「BENEO」,2011年には「CALNEO-U」とFPD(DR)を導入。2013年3月には最新のワイヤレスFPD「CALNEO Cシリーズ」を導入して,FCRからDRへのシフトを進めている。医療画像のデジタル化を先進的に進めてきた同院での取り組みと,DRの運用を取材した。

増渕二郎 技師長

増渕二郎 技師長

神山辰彦 副技師長

神山辰彦 副技師長

盛満信広 主任

盛満信広 主任

 

■明室処理からFCRへ撮影業務の効率化を追求

自治医科大学附属病院の開院は1974年。中央放射線部では,1979年ごろからX線フィルムの明室処理システム(富士フイルム「ECシステム」)のフィールドテストを行うなど,明室処理の開発に携わったが,それがFCR導入につながっていると増渕二郎技師長は語る。「診療放射線技師が暗室に入らずに処理できることをめざして明室処理システムを導入したことから,富士フイルムとの関係がはじまりした。明室処理は技師の業務効率を考えた結果であり,FCRの導入へとつながることは自然の流れでした」。
1989年に最初のFCR7000シリーズが導入され,9000シリーズなどを経て,1999年から2000年にはカセッテタイプのFCR5000シリーズを導入,胸部撮影とマンモグラフィ以外はCR化されていった。
「当初はポータブルの撮影が中心でしたが,フィルムの画質にこだわる臨床科からの要望が強く,フィルムの質感に近づけつつ,デジタル画像の特性を生かした画像を作ることに苦労しました。1999年にマルチ周波数処理が搭載されて,安定した胸部画像処理が可能になりましたが,それまでは栃木県でもCR研究会を立ち上げて検討を行うなど,いろいろとチャレンジした時代でした」と神山副技師長は振り返る。
2003年に,マンモグラフィ以外で最後までフィルムが残っていた胸部撮影がFCR化され,全面CRによる運用となった。「胸部撮影では画質へのこだわりと同時に,患者サービスの一環として撮影後すぐにフィルムをお渡ししていたことも,CR化が遅れた一因です。立位の撮影装置に自動現像機を組み合わせて,撮影後30秒で現像していました。CRとレーザーイメージャではその運用ができなかったこともあって,最後までフィルムが残っていました」と神山副技師長は経緯を説明する。

■SYNAPSEを導入しフィルムレスPACSを実現

四ツ切サイズの「CALNEO C mini Wireless SQ」と充電用のクレードル

四ツ切サイズの「CALNEO C mini Wireless SQ」と
充電用のクレードル

同院の画像情報のデジタル化の過程で,もうひとつのキーとなったのがPACSの構築である。2005年に富士フイルムの「SYNAPSE」を導入し,1000床を超える大学病院で,病院全体を対象にしたフィルムレス運用を実現した。SYNAPSE導入について増渕技師長は,「電子カルテ導入と同時に,病院全体のPACSの導入に取り組みました。当初は,現場の運用を考慮して,3か月程度はフィルムも並行して出力し,徐々に移行する予定だったのですが,実際にPACSでの画像配信が始まると1か月ですべてフィルムレスの運用になりました」と言う。全病院の運用型PACSとしてSYNAPSEを選定した理由について,増渕技師長は次のように語る。 
「全病院に画像を配信するシステムとして,一番重要なことは安定性です。部門システムであれば運用で対応できますが,全病院PACSでは,システムダウンはそのまま診療に影響します。選定ではその点を重要視して検討しましたが,SYNAPSEではこれまで,PACSの停止は経験していません。病院全体の画像システムに責任のある立場としては大きく評価できる部分です」と言う。
中央放射線部では,SYNAPSEを中心に放射線情報システムの「F-RIS」と各モダリティをリンクし,電子カルテからオーダ情報の取得,撮影情報の転送,画像の保存までがリンクしたシステムを構築している。増渕技師長は,「PACSだけでなく,RISと一般撮影装置をはじめとするモダリティ間でオンラインで情報連携することで,撮影業務の効率化と確実な検査業務の遂行が可能になりました」とメリットを強調する。

■画像処理技術とPACSとの親和性でDRを導入

CALNEO Cは撮影から約1秒で画像が取得でき,検査効率が向上

CALNEO Cは撮影から約1秒で画像が取得でき,
検査効率が向上

FCRからフィルムレスPACSへと,デジタルによる撮影,運用のシステムを構築してきた同院で,一般撮影部門のデジタル化の次のステップとして進められているのがFPD(DR)の導入である。同院の一般撮影室は,胸部2室,骨・腹部2室,乳房,歯科・小児,骨塩定量装置で構成されているが,2007年に骨・腹部撮影室に最初のDRとして「FUJIFILM DR BENEO DR-XD100(以下,BENEO)」が導入された。2011年には,2つの胸部撮影室に間接変換方式FPDを採用した立位撮影タイプの「CALNEO U」が,そして2013年3月に,骨・腹部のもう1部屋にBENEOを導入すると同時に,CRに代わりワイヤレスFPDである「FUJIFILM DR CALNEO C(以下CALNEO C)」の半切タイプ(1417 Wireless SQ),四ツ切タイプ(mini Wireless SQ)が採用された。
一般撮影系へのDR導入の経緯について増渕技師長は,「当院では,FCRの導入に始まりフィルムレスPACSへと,デジタル画像診断の体制を築いてきましたので,FPDを用いた撮影装置の導入は当然の流れです。富士フイルムのDRシステムは, FCR時代からの画像処理技術を生かしながら,ハードウエアについても画質にこだわった開発が行われています。また,SYNAPSEやF-RISといった情報システムと連携した運用性も考慮しました」と説明する。
骨・腹部撮影室のBENEOは,直接変換方式のFPDを採用した一般撮影装置で,天井走行型のX線管球と立位用撮影スタンド,臥位用撮影テーブルで構成されている。BENEOでは,X線管からFPDまでトータルに提供し,富士フイルムの画像処理技術と組み合わせた撮影が可能で,X線管と立位用撮影スタンドが連動して連続撮影し,画像処理によって1枚の画像を構成する“長尺撮影”が可能になっている。また,CALNEO Uは,X線変換効率を高めた富士フイルム独自のISS(Irradiation Side Sampling)方式を採用したFPDを搭載した立位タイプの撮影装置である。

■ワイヤレスFPDで一般撮影のひとつの完成形へ

CALNEO Cは,ISS方式を採用した間接変換方式のワイヤレスタイプのFPDである。現在,同院では骨・腹部撮影室のBENEOとの組み合わせで使用されている。一般撮影を担当する盛満信広主任はワイヤレスFPDのメリットについて,「CRに比べて撮影時間が短縮されました。BENEOに比べても,表示までの時間は短くなっています。撮影後に読み取りの必要がありませんので,ポジショニングを微調整して連続した撮影が可能です。実際に撮影がスピーディになって,患者さんの待ち時間も短縮していることを実感しています」と言う。
CALNEO Cのもう1つの特長が,据置型とワイヤレスのパネルを1つのDRコンソールでコントロールできることだ。同室では,BENEOの立位と臥位,2枚のFPDと2つの管球との組み合わせで計8種類のメニューが用意されており,アイコンをタッチするだけで撮影するパネルが選択できる。電子カルテとF-RIS,SYNAPSEをリンクした部門システムとの連携と相まって,正確で効率的な撮影業務が可能になる。盛満主任は,「患者情報やオーダの取得,撮影情報の転送と登録,画像の転送などがオンラインで行えることはもちろん,複数のパネルと管球が1つのシステムとして統合されており,1台のコンソールで簡単に操作が可能です」と使い勝手を評価する。増渕技師長は,「操作のための端末が増えるという物理的な問題だけでなく,RIS,PACSと連携することで,撮影の際に同じ患者さんの過去検査や検査データを確認できるなど,ワークフローが大きく向上しています。こういった連携は,富士フイルムがFCRの時代から,常に臨床現場のニーズと向き合ってきた成果ではないでしょうか」と言う。
実際に同院では,DRの導入によって省力化につながったと増渕技師長は言う。「CR撮影の時には技師が患者対応や撮影業務に専念できるように,撮影後のIPの読み取りや管理を行うサポート役のスタッフを配置していました。DR化によって画像読み取りのプロセスがなくなり,その分の人手を削減することにつながりました」
CALNEO Cの撮影線量は,CRに比べて30〜50%少ない設定になっており,被ばく線量も低減されている。増渕技師長は,「画質の向上やそれに伴う被ばく線量の低減,撮影時間の短縮,検査のワークフローの向上などを考えると,ワイヤレスタイプのFPDは一般撮影系のひとつの完成形ではないかと思います」と評価する。

据置型のFPDとワイヤレスFPDを1つのDRコンソールで操作が可能

据置型のFPDとワイヤレスFPDを
1つのDRコンソールで操作が可能

SYNAPSE,F-RISとの連携で撮影業務を効率化

SYNAPSE,F-RISとの連携で撮影業務を効率化

   
胸部撮影室の「FUJIFILM DR CALNEO U」

胸部撮影室の「FUJIFILM DR CALNEO U」

骨系・腹部撮影室の「FUJIFILM DR BENEO DR-XD100」。ワイヤレスFPDと組み合わせて運用。

骨系・腹部撮影室の「FUJIFILM DR BENEO DR-XD100」。ワイヤレスFPDと組み合わせて運用。

 

■デジタル時代における画質のスタンダードの確立を期待

FCRからPACS,DRまで富士フイルムの製品,技術の変遷を見てきた増渕技師長は,富士フイルムには頑固でいてほしいと要望する。「FCRへの転換の際には,現場にフィルムの画質へのこだわりが強く大変でしたが,PACSのフィルムレス化はモニタ診断の利便性が勝り,予想以上に早く移行しました。ユーザーは画像を見る方も作る方も楽な方向に,便利な方に流れます。当然ではありますが,本当にそれでいいのかという思いがあります。だからこそ,フィルムの時代から画質にこだわってきた富士フイルムには,これが真のX線画像の画質だという手本になってほしいと思います」と期待を述べた。
神山副技師長は,システムとしての低被ばくへの取り組みに期待する。「X線撮影において,線量をコントロールして最適な画像を撮影することが診療放射線技師としての使命ですが,デジタル化された現在では,技師が関与できる部分は少なくなっています。撮影装置とシステム側で線量をコントロールしたオート撮影とそのデータの管理が,今後は必要になると思います」。
アナログフィルムの持つ機能を残らずデジタル化することを目標に開発が進められたFCR。その根幹となる技術と思想は,次のステップであるDRにそのまま受け継がれている。増渕技師長は,「富士フイルムには,FCRを開発したチャレンジ精神を忘れることなく,これからのデジタル画像の新たなスタンダードを作っていってほしいと思います」と語った。

(2013年6月11日取材) 

 

自治医科大学附属病院
中央放射線部 増渕二郎 技師長,神山辰彦 副技師長,盛満信広 主任

自治医科大学附属病院

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