2010年10月7日(木),GEヘルスケア・ジャパンから,外科用デジタルCアーム装置「Brivo OEC 850(ブリボ・オーイーシー・850)」が発売されました。Brivo OEC 850は,GEが2009年5月からスタートさせたヘルシーマジネーション戦略に基づいて開発された,新しいコンセプトのデジタル・モバイル・サージカル・イメージング装置です。高齢社会のニーズを見据え,画質と線量のバランス,高い操作性を実現し,高齢者に優しい低侵襲治療に貢献することをめざしています。Brivo OEC 850はまた,ヘルシーマジネーション製品としての認証を獲得した初めてのOECシリーズ装置になります。この度,日本での発売に際し,GEヘルスケアのGEサージェリー担当プレジデント兼CEOであるJoe Shrawder(ジョー・シュローダー)氏が来日。Brivo OEC 850開発の意図,日本,そして世界での事業展開などについて,お話をうかがいました。
●2010年10月,外科用デジタルCアーム装置「Brivo OEC 850」が日本で発売されました。まず最初に,開発の背景についてお聞かせください。
ご存知のように現在,世界は少子高齢化や医療費の高騰,医療の格差など,さまざまな問題に直面していますが,なかでも日本は,かつてない急速な高齢化が進行中です。このような課題の解決に向けてGEヘルスケアは,ヘルスケアに関するグローバル戦略として2009年,「ヘルシーマジネーション(healthymagination)」を掲げ,2015年までに60億ドルの投資を行うことを発表しました。特に,高齢化社会に対するヘルシーマジネーションでは,シルバー社会をゴールド社会に変える“From silver to gold”というコンセプトを掲げています。GEヘルスケアは高齢化社会をビジネスチャンスとしてとらえ,そのニーズを満たしていくような製品を開発することで,高齢者の生活改善などに貢献するとともに,ビジネスとして成長できることをめざしています。
今年(2010年)5月末にGE会長兼CEOであるジェフリー・イメルトが来日し,「GE ヘルシーマジネーションデイ2010―成長の源泉としてのヘルスケア構築に向けて」を開催しました。イメルト会長は基調講演で,GEのヘルシーマジネーションの取り組みについて報告し,“From silver to gold”というコンセプトは日本にとって重要な意味をもつことを強調しました。
“From silver to gold”においてはやはり,整形外科領域が重要なニーズとして浮かび上がってきました。高齢化に伴い,四肢・関節系(膝関節,股関節,脊椎,その他)のさまざまな障害,特に骨折などの問題が多く発生してきます。そこで,このような整形外科領域におけるニーズを満たすための製品開発を検討し始めたわけです。
そして,約2年間の開発の成果として,外科用デジタルCアーム装置「Brivo OEC 850」が開発され,世界に先駆けて10月7日に日本で発売されました。高い透視画像の質と被ばく量の低減を両立させる技術により,患者さんはもとより,医師,診療放射線技師など医療スタッフにも配慮するという観点から開発された装置です。また,簡単に使いこなせる操作性の良さで,ワークフローに優れた設計となっているため,効率の良い外科手術を行うことができます。
●「Brivo OEC 850」の特徴を具体的に教えてください。従来の製品との違いは何ですか。
Brivo OEC 850は,医療の質を高め,コストの低減を可能にするというヘルシーマジネーションの概念に沿った開発を行い,第三者機関によるヘルシーマジネーション認証を獲得した初めてのOECシリーズ装置です。患者さんのQOLの向上に寄与する侵襲の少ない治療法は今のトレンドです。特に高齢者にとっては,できるだけ身体への負担の少ない治療が求められます。このような低侵襲の外科治療で,長時間・複数回の透視撮影時に必要とされるのは,高画質撮影とX線照射量のバランスをとり,画像を最適化する機能です。Brivo OEC 850は,高齢者の骨折治療における低侵襲治療への貢献で医療の水準を上げるとともに医療費の減少を実現し,なおかつ,効率良く数多くの手術をこなせることで,医療へのアクセスをさらに向上させることが可能になります。
具体的な特徴をいくつか挙げてみます。
第一に,X線発生・検出から画像収集,処理,表示の各段階において,1024×1024マトリックスの高解像度撮影で画像の最適化を図る「Smart Definition Image Chain」を採用しています。これにより,画質と線量の最適なバランスが実現できます。
第二に,簡単かつ迅速なポジショニングが求められるオペ室において,Brivo OEC 850は開口径78cm,深さ66cmのCアームを搭載し,Lateral回転410度,Obrit回転120度と,高い機動性を実現しています。非常にフレキシビリティに優れた装置のため,患者さん周りの操作が容易で,外科医にとっても良い画像視野が確保でき,患者さんに自由にアクセスしやすいという特徴があります。また,オペ室の中でも快適に動かしやすく,モバイル装置として別の部屋にもっていくことも可能で,可動性に優れているため,低侵襲治療の件数を増やすことにつながります。
第三に,開発の革新性が挙げられます。いままでのGEヘルスケアの製品開発とは異なるアプローチで開発されました。GEヘルスケアは常に,非常に先進的な製品開発を行う,テクノロジーリーダーであると自負しています。すなわち,多くの先進的な技術・アプリケーションを開発・搭載したプレミアム製品を市場に投入してきたわけですが,Brivo OEC 850に関しては,整形外科領域・手術にターゲットを絞り込んだ開発を行い,高齢化社会を念頭にリーズナブルな価格で製品を提供できることが大きな特徴です。一方, Optima CT660シリーズやOptima MR360 1.5Tのような非常に高い技術とデザインもまた,同時に提供することができる製品です。
●従来のプレミアム製品とは異なる,新しい市場を開拓していくことをめざしているのでしょうか。
そのとおりです。いままではここまでターゲットを絞った開発は行われてこなかったのですが,整形外科領域は日本市場で非常に重要になると考えていますので,そのニーズを満たすために開発したものです。OECシリーズ自体はこれまで,外科手術・血管外科手術などで一般的に使われてきましたが,それとは別の違う部分に着目して開発された良い例だと思います。
しかし,このような方向性がGEヘルスケアの技術革新を止めることにはなりません。われわれの先進的なイノベーションは続いていきますし,プレミアム製品はこれからも研究開発されていくわけで,その方向性やリーダー的な立場は何ら変わりませんが,それに加えて今回のような研究開発を行い,Brivo OEC 850というすばらしい製品が完成したわけです。本当に必要なものは何かという,非常に特異的な顧客のニーズに耳を傾け,それを満たすような製品を開発していくという姿勢の最初の成果と言えます。
●OEC 9900 Eliteの技術やアプリケーションでBrivo OEC 850にも搭載されているものはありますか?
また,Brivo OEC 850独自の技術があれば教えてください。
Brivo OEC 850においてもOEC 9900 Eliteや他のプレミアム製品技術が生かされていることはあります。例としては,画質の高さ,線量管理,ワークフローの良さ,使い勝手の良さや,装置自体のコンポーネントの技術も広く共有しています。しかし,Brivo OEC 850は整形外科領域(手術)にターゲットを絞って開発されたものなので,血管外科手術に必要な機能などは搭載していません。したがって,コストを抑えて提供することができるわけです。
Brivo OEC 850はむしろ,いままでのプレミアム装置と比べるより,整形外科領域での他社の製品との比較・競合の方が重要と考えています。使い勝手の良さ,ベストのワークフローを達成できる設計,画像転送などの接続性に優れ,将来的には遠隔サービスへの対応機能があり,堅牢性や信頼性の高さに優れています。特に日本市場では,高い堅牢性や信頼性が求められるので,重要なポイントと考えます。加えて,電力供給が途切れない,停電やプラグの損傷などにまったく影響されないUPS(無停電電源装置)を備えていますし,現状におけるベストの装置と考えています。
●日本におけるモバイルデジタルX線装置市場に占めるGEヘルスケアのシェア,今後の目標を教えてください。
日本のモバイルCアーム市場は約40億円です。昨2009年から2010年にかけて,OEC 9900 Eliteを販売していますが,シェアは16,7%で,残念ながらNo.1には届いておりません。Brivo OEC 850発売によって,一気にNo. 1に駆け上がりたいというのがいまの目標です。
●具体的な販売方法や戦略について教えてください。
日本の整形外科領域は多くのクリニックや単科の小中規模病院があることが特徴です。そのような市場に投入する製品ですので,国内のさまざまなディラーと協力しながら販売していきます。従来もOEC 9900 Eliteでは,ディラー販売を行ってきました。高齢者向けの整形外科領域にはいままで,他社も技術力を大きく投入した製品はありませんので,ニーズに合った製品を低コストであるにもかかわらず妥協せずに開発しました。高齢化社会の進展で市場ニーズが大きく変わってきているいま,さまざまなディーラーのサポートを受けながら,協力して販売していく関係をつくっていきたいと思います。
●ほぼ世界同時発売だそうですが,日本以外の市場ではどのような販売戦略を考えていますか?
米国ではまだFDAの認可がとれていないのですが,南アメリカ,アジア,欧州などでは段階的に上市していく考えです。世界の国々によってはやはり,日本と同様に,高齢化社会が進み,その結果として整形外科手術が増えるような状況がありますし,中国,ロシア,インドなどでは,例えば,車が増えても道路事情が悪く,運転マナーも悪い(笑)など,交通事故が増えるような状況があります。このような各国さまざまな状況に対して,Brivo OEC 850が何らかの助けになればと希望しています。
●Brivo OEC 850はヘルシーマジネーション製品に認証されたとのことですが,その選定基準を教えてください。
ヘルシーマジネーションの認証は,“クオリティ”と“コスト”と“アクセス”という3つの観点から評価されます。具体的に数値的な要件が決まっていて,それを実証しなければならないという厳格な基準があり,著名な外部認証独立機関であるOxford Analyticaから認定証が発行され,証明されます。クオリティは画像だけでなく,線量管理も含めた医療に対する貢献という意味での質が問われます。Brivo OEC 850の場合は,低侵襲治療を可能にするという意味でのクオリティが認められたと考えています。2010年7月現在で26製品が認証され,Brivo OEC 850は一番新しい26番目になります。
認証は外部へのアピールだけでなく,社内的にも大きな意味をもってきます。クオリティとコストとアクセスを改善させるような開発でなければ意味がないと,自らを問うていくためのものになります。ヘルシーマジネーションの認証とは,非常に明快に開発意義を絞っていくことができる概念であると思います。非常に厳しい基準ですが,GEヘルスケアの全製品がヘルシーマジネーションの戦略に添った形で認証されることが望ましいと考えています。
●今後,GEヘルスケアは,Brivo OEC 850のような,特異的な市場ニーズに添った製品開発に力を入れていくのでしょうか?
GEヘルスケアは,製品のポートフォリオをあらゆるレベルで新しくしていこうとしています。例えば,プレミアム製品ではハイブリッドオペ室に向けて,OEC 9900に続く製品開発も行っていますし,途上国に対しては非常にローエンドの製品開発,つまり,ヘルシーマジネーションのアクセスに重点をおいた開発も行っています。これは,途上国の何億という人たちに,より良い医療を提供できることにつながります。このように,プレミアムからローエンドまで,両方の方向を見据えて製品開発を行っていきます。
GEヘルスケアはこれまで,プレミアム製品開発で成長してきましたが,弱者のために何ができるかという視点から,大きな転換点に立っています。国内では高齢者にとって何が役立つか,途上国ではその国自体にどう役立つかという視点が重要であり,X線装置関係ではBrivo OEC 850がその最初のシステムになるのです。
●では最後に,日本の医療関係者の皆様にメッセージをお願いします。
Brivo OEC 850を発売したいま,非常にエキサイティングな時期を迎えています。日本市場においてモバイル外科手術領域で定評のあるOECシリーズが今回,その能力を整形外科領域の低侵襲治療に広げることができました。ぜひ多くの日本の患者さん,そして医療関係者の皆様に,Brivo OEC 850を通じてベネフィットを感じていただければと思います。これまで培ってきた日本の医療関係者との信頼関係をもとに,新しいコンセプトの製品を発売できたことについて,皆様のご助力に感謝いたします。
(2010年10月7日取材:文責inNavi.NET)
◎略歴 Joe Shrawder(ジョー・シュローダー)氏 GEヘルスケア GEサージェリー担当プレジデント兼CEO 1986年 GE入社。GEエアロスペースの製造管理プログラム担当。その後,GEクオーツに入社し,アジア太平洋地域の事業担当ゼネラルマネージャー,GEクオーツ・ヨーロッパ担当マネージング・ディレクターを歴任し,13年間勤務。その後,GEヘルスケアに入社し,ヘルスケア・システム・サービス担当ゼネラル・マネージャー,グローバル・バリュー・プロダクト担当ゼネラル・マネージャー,再生製品・アクセサリ「ゴールドシール」プログラム担当ゼネラル・マネージャー,グローバルサービスのクオリティリーダーなどの要職を経て,2009年から現職。 |
●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
広報:松井
TEL 0120-202-021
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・From silver to gold
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