Q(康田): IHEに準拠していることが基本となっているシステムやモダリティがあたり前になれば,公衆衛生センターでもIHEを導入できると思います。ただコスト面を考えると,IHEの導入は,いまは時期尚早に思えるのですが…。
A(武藤): コストというのは,放射線部門で考えると,RISの導入にどの程度のコストがかかるかということですね。
実を言うと,IHEについてまったく考慮されていないRISのシステムというのは,現状ではほとんどないと思います。RISとモダリティとの情報連携はDICOMですし,IHEも放射線部門から検討が進んできましたので,IHEで考えられているデータフローがRISには必ず含まれているわけです。ですから,RISを導入するということは,すなわちIHEに対応可能な状況であるということです。
Q(康田): それならもう少し,IHEに対する一般的な認識が広がっていてもいいような気がします。
A(江本): そうですね。ただ,導入施設はIHEを意識していなくても,ベンダーはIHEを意識して製品を開発している,という話はよく聞きます。特に,最近新しく発売されたシステムについては,その多くが部分的にはIHE対応になっています。システムを導入する際には製品自体のコストと,打ち合わせなどのコストがありますが,IHEであれば打ち合わせが簡単ですし,将来的な拡張や更新の際にも独自開発したものよりはコスト面でのメリットがあります。
当院では,2005年に内視鏡システムを追加したのですが,オーダ連携をする際に,オーダをHIS,RISのどちらから取るかという選択になります。HISベンダーはHISから取った方がシンプルだと提案したのですが,HISと内視鏡それぞれのベンダーとの打ち合わせが必要ですし,使用する通信方式によっては何時間もかかります。そして当然,その分費用も高くなるわけです。しかし,IHEの枠組みではRISから取ることになっていますし,当院ではIHEを実装していたために,“ワークリストはDICOMのMWMで”と伝えるだけですみました。業務のどの段階でどの情報が流れるかがわかっていますので,使い方もだいたい決まっているわけです。
A(桑山): 本当に打ち合わせは楽でしたね。顔合わせは30分,あとはメールを1〜2回やりとりするだけですんでしまいました。
Q(康田): 短期的なメリット,長期的なメリットがあるということですね。しかも,知らずにIHEを使っていたということであれば,それが一番のメリットです。
A(江本): 本当にそのとおりです。放射線部門では実際に,知らずにIHEを使っているところも多いと思います。また,現在は循環器科など,放射線科以外の分野でもIHEの検討が進んでいますので,今後はますます広がっていくでしょう。
Q(康田): 長期的には仕様が少しずつ変わるということがあると思うのですが,現状のシステムが将来的に使えなくなるということはあるのでしょうか。
A(桑山): 基本的にはないと思います。ただ,新しい機能ができて,DICOMの中でタグがないということであれば,新しいタグがDICOM規格に追加されることがあります。既存システムで新しい機能に対応しようとすると改造が必要になりますが,DICOMやHL7ではデータの取り出し方も決まっているので,改造も楽だと思います。
Q(康田): 公衆衛生センターで一番困っているのは患者情報の管理なので,まずそれをどうするかということをしっかり考えればいいということですね。
A(江本): いまはそういったシステムは単独では製品化されていませんが,RISの機能の中にうまく作り込んでくださいと,ベンダーにお願いすることです。いずれにしても,最終的に採用するかどうかは別にして,IHEでもできるかどうかということを,システム検討の際にはいつも話題にするというのも1つの方法かもしれませんね。
A(桑山): 私のように現場の立場から見ると,いま現在,技師の仕事として余分なことは1つもしていません。それでも,自然に必要なデータが流れてPACSまで届いて保存されているという状況が作れているのは,やはりIHEという支えがあるからだと思います。
Q(山本): これまでいろいろな資料を読んで,IHEを難しいと感じていた部分があったのですが,結局は,自院のワークフローに問題があり,それを解決するために使えるものからIHEを利用すればいいということなんですね。ちょっと気が楽になりました。
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