Q(松嶋): 彩のクリニックがIHE導入によるシステム構築を考える理由は3つあります。1つは,どうすれば苦労をせずにPACSなどのシステムを更新できるか,2つ目は,近々電子カルテを導入する予定がありますので,PACSなどとの連携を考えたときに,標準化を視野に入れる必要があるということです。そして3つ目は,病診連携や遠隔読影を見据えたシステム構築が必要だということです。この3つをより良く実現するために,IHEをどのように活用していけばよいでしょうか。
A(松田): まずは,何をしたいかを明確に決めることです。IHEのソリューションは限られていますので,それで解決可能な問題があれば採用することです。IHEありきで考えると本来の問題解決にならない場合もありますから。
Q(松嶋): 医療連携をする場合,例えば相手施設もIHEに準拠していなければならないのでしょうか。
A(松田): それが理想ですが,必ずしも必須ではありません。相手にDICOMやHL7の規格で情報を出してもらえれば運用することはできます。ただし,それはオフラインの場合です。オンラインの場合は,同じソリューションがないと難しい場合もあります。
Q(松嶋): やはりインフラの整備としては,IHEが世の中に浸透しているというのが理想だということですね。
A(奥): そういう意味では,DICOMは世界中に広がりました。この時点で最低限のインフラ整備が終わっているわけです。もう一歩,IHEというところまで行けば,インターネットのケーブルを引くように,本当に簡単に施設間連携が可能になると思います。ベンダーの用意するパッケージを買ってくればすぐに連携できるところまで来れば,その価値はとても大きいと思います。しかし,ビジネスとして成り立たないと,「普及」というキャンペーンが形骸化してしまう恐れがあります。
Q(松嶋): ベンダーがIHEをビジネスとしてとらえて,ベンダーの方から提案してくるようになるでしょうか。
A(奥): 例えば大学病院などは,今後ある程度,IHE-Jでシステムを構築しましょうという話になってくると思います。また,とても小さな医療機関,例えば(無床)診療所などには,IHE-Jが普及する可能性が高いと思います。実際にいま,埼玉医大と圏央入間クリニックは,IHE-Jで連携しています。圏央入間クリニックでは限定された,たった1つの機能だけしかIHEに対応していませんが,それは,撮影した画像をオンラインで直接つながっていない埼玉医大のシステムで読影に用いる場合にもっとも手軽な方法だったからです。つまり,IHE-Jは仕組みを丸ごと全部ではなく,一部の医療情報システムの機能だけを施設の特徴に応じていいとこ取りして提供されていくようなスタイルが,今後は増えていくと思います。メーカーとしても,このシステムを入れればあの施設とつなげますよ,というメリットをアピールできるので,とても良いビジネスと言えます。それがユーザーにとっても,非常に簡単なIHEの導入になるわけです。
Q(松嶋): 私はこれまでIHEというと,すべてフルセットのようなイメージを持っていたのですが,そんなに簡単にIHEが導入できるというのは,疑問が氷解した思いです。自分たちが何をしたいのか,IHEで何が解決できるのかを明確にすることが重要であり,ある1つの目的でIHEを導入するだけでも,業務においては十分な運用ができるというお話をうかがいましたが,これは規模の小さな施設にとってはとても大切なことだと思います。IHEに対して感じていた敷居の高さも,だいぶ低くなったような気がします。シングルベンダーに近い感覚でIHEを導入できるわけですね。
ページトップへ |