Q(成尾):
鈴鹿中央総合病院では,2007年に大規模なシステム更新,新規システムの導入を控えており,現在,IHE-Jの実装も視野に入れてシステムの選定を行っています。
ところで,IHE-JではDICOMやHL7の使い方を示すガイドラインが示されており,医療業務のワークフローを定義したものが“統合プロファイル”であるということは理解しているのですが,具体的に,電子カルテのオーダ種のうち,どの程度までをカバーしているのかがわかりません。
A(奥田): 現在定義されている統合プロファイルは,主に放射線領域と検体領域で,循環器領域や内視鏡領域,病理などにも,どんどん拡張しています。
Q(成尾): HL7で標準化するとは言っても,会計などではアメリカと方式が違うために,対応できない部分がありますね。その場合,日本のベンダーが独自解釈して製品を開発しているのでしょうか。
A(奥田): そのとおりです。これまではシングルベンダーでシステム構築を行う医療機関も多く,そのベンダーの仕様に合わせれば,何も問題はありませんでした。しかし,今後はマルチベンダーによるシステム構築が増えてくると思いますので,そうなったときには,IHE-Jなどが示したHL7やDICOMについてのガイドラインに則って,各ベンダーがシステム開発を行うという流れになってくると思います。標準化が進むことで,医療機関にとってはコストの低減にもつながります。
Q(成尾): 確かに,各医療機関がシングルベンダーで独自にシステム構築をするよりも,マルチベンダーで必要なシステムが選択でき,値段も安く,運用もスムーズであれば,そのメリットはとても大きいと思います。
A(奥田): システム構築の際に必要な費用には,システムの費用と人件費があります。パッケージであればシステム構築の費用は抑えられますが,システムエンジニア(SE)の人件費は予想以上に高額です。人件費は,テストも含めて,SEが現場でどの程度の時間をかけるかで決まりますが,各医療機関の独自の部分が多ければ多いほど,当然時間がかかります。言い換えれば,時間の短縮が大幅なコストダウンにつながるのです。
岡崎市民病院では,システムの導入に必要な費用のうち,約6割が人件費でしたが,IHE-Jガイドラインを採用したことで,その人件費を大幅に抑えることができました。なぜなら,IHE-Jガイドラインを採用したシステムでは,すでに“コネクタソン”という接続試験が終わっているため,その分,確認作業にかかる時間が短縮できるからです。もちろん,IHE-Jがすべての業務に対応しているわけではないので,確認作業もゼロにはなりませんが,必ず時間は短縮されます。
Q(松本): 毎年行われているコネクタソンでつながったシステム同士は,実際に必ずつながるということなのでしょうか。
A(奥田): コネクタソンではアクタ同士をつないでいますので,そのアクタが採用されている製品同士はIHE-Jでつなぐことが可能です。IHE-Jでは,3システム以上と接続できれば合格を表す「○」,接続評価が一部不足しているものは「△」といった星取り表を用意していますので,それが参考になると思います。
A(奥): 毎年4月に開催されているJRCでは“CyberRad”という,IHE-Jを採用したシステム同士をつなぐデモツアーを行っています。それに参加していただけば,IHE-Jでシステムをつなぐということが,よくわかっていただけると思います。
Q(成尾): ただ,コストについては,2006年11月の医療情報学会で行われたセッションの中で,標準化をしようとすると,逆にシステムの値段が高くなってしまうということが話題になっていました。
A(奥): 残念ながら,現状では確かにそのとおりです。IHE-Jに則った製品がこれまでなかったために,新規開発になってしまう部分が多いからです。ただ,これは過渡期の現象です。以前は,例えばCTにDICOMを採用しようとすると,必ずその分の費用が発生していました。が,いまでは頼まなくても付いてくる。IHE-JもDICOMと同じような流れをたどっていくと思います。 ページトップへ
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