GEヘルスケア・ジャパン(株)は,2011年9月29日(木)に,赤坂パークビル(東京都港区)において,第3回ヘルシーマジネーション・カレッジを開催した。ヘルシーマジネーション・カレッジは,医療や疾患に関する深い理解を促すため報道関係者向けに開催しているもので,過去2回は在宅医療と医療被ばくをテーマに取り上げた。
今回は,国内の肝臓超音波の第一人者である兵庫医科大学病院超音波センター教授の飯島尋子氏を講師に迎え,国内の死亡原因の3位を占め,高齢化に伴い増加傾向にある肝がん・肝疾患に関する動向や,それらの早期発見・早期治療に寄与する最新技術についての講演が行われた。また,同日より本格発売となる,同社の汎用超音波診断装置「LOGIQ S8」が発表され,実機も展示された。
はじめに,代表取締役社長兼CEOの川上 潤氏が挨拶に立ち,GEが掲げるイニシアチブのひとつであるヘルシーマジネーションと,日本のヘルスケア事業における“Silver to Gold戦略”について紹介した。川上氏は,同社では高齢化に伴いニーズが高まる分野に対してトータルに製品やソリューションを提供していくCare Area Focusを戦略に掲げており,世界に先駆けて高齢化が進む日本から世界に向けてソリューションを発信していくとの展望を述べた。また,Care Area Focusの一分野に肝臓疾患を取り上げる背景として,画像診断に対する要望が大きい領域であることと,肝がん患者の世界分布ではアジアが約8割を占め,肝臓疾患が“アジアの疾患”ともいえることを挙げた。
続いて,飯島氏が「超高齢社会ニッポンで静かに進む新たな国民病(1)『肝疾患』〜沈黙の臓器“肝臓”に宿る特有の潜在リスクと最新診療法を徹底解剖」をテーマに講演した。肝臓は,予備能力が高く,慢性肝炎や肝硬変になっても自覚症状が出ないことが多いため“沈黙の臓器”と呼ばれる。飯島氏は,自覚症状がない患者(ヘルシーキャリア)の症例を紹介するとともに,近年は,B型・C型肝炎ウイルス以外を原因とする肝がんが増加傾向にあることや,糖尿病や脂肪肝が肝がんのリスクファクターとなることなどを解説した。
また,飯島氏は肝がんの最新診断法について述べ,動脈血流が少ない早期肝がんの診断には,造影MRI検査(EOB-MRI)や造影超音波検査(Sonazoid)が有用であることや,超音波検査による肝硬変の診断について,症例を示しながら説明した。さらに,超音波ナビゲーションを使用した肝がんの最新治療や,インターフェロンによる生命予後の改善などについて解説し,肝がんや肝疾患には早期発見・早期治療が重要であると締めくくった。
終わりに,超音波技術本部長の鈴木陽一氏が,「GEの肝疾患の早期発見・早期治療に対する取り組み」と題し,肝がん患者の高齢化により生じる課題に対する同社のアプローチや,早期肝がんの標準的な治療であるRFAへのソリューションサポートなどを説明した。
加えて,鈴木氏は,肝疾患の診断や治療効果判定に高い有用性が期待される超音波診断装置として,新製品「LOGIQ S8」を紹介。同装置は,肝疾患診断向けの機能を充実させた小型軽量モデルで,ヘルシーマジネーションの重点分野のひとつである「地域に適した技術開発」の一環として,日本人の身体的特徴に合わせて画像の最適化が施されている。肝疾患診断向けの機能として,造影検査の条件設定の自動調整機能や,CTやMRIの画像を同一画面に表示する「Volume Navigation」を搭載した。また,同社従来機(LOGIQ 7)と比べ,メインキャビネットを約80%に小型化,重量(85kg)を65%軽量化している。鈴木氏は,小型・軽量化により検査室への移動が困難な高齢者のために病棟へ持っていくことが容易な同装置は,患者の高齢化という課題に対するひとつのアプローチであるとした。なお,同装置は,キーボードの高さを変更可能なエルゴノミクスデザインの採用や,豊富なアプリケーションと計測機能の搭載により,肝疾患に限らず下肢から胸腹部まで幅広い領域に対応することが可能となっている。
なお,次回の第4回ヘルシーマジネーション・カレッジは,今回に続く国民病シリーズの第2弾として,「骨粗鬆症」をテーマに11月に開催予定である。 |